バンテック「V670」の登場で 国産キャンピングカーが変わる

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フィアット・デュカトを採用したバンテックの狙い

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2018年2月2日から3日間開催された国内最大級のキャンピングカーイベント「ジャパンキャンピングカーショー2018」(千葉・幕張メッセ)の会場で、来場者の注目をもっとも集めた車が「VANTECH(バンテック)株式会社」「V670」である。
なにしろベース車両がフィアット・デュカト。欧州のキャンピングカー市場の70%を占めるといわれる人気シャシーを使っただけでも話題性は十分であるが、それによって、従来の国産キャンピングカーとは一線を画す美しいフォルムを実現したことでも見学者の注目を浴びた。
今回バンテックが採用したのは、シャシーメーカーとして世界的に有名な「アルコ」が、そのフィアット・デュカトのキャブ部とパワーユニットを使って製品化しているキャブコン用シャシー。特に今回の車は、全長やホイールベースもバンテックのオーダーに合わせて調整されたもので、いわば“バンテック専用アルコシャシー”といっていい。

ファイット・デュカトが国産キャンピングカーのベース車として検討されるようになったのは、実は昨年のこの「ジャパンキャンピングカーショー」からである。フィアット社の代理店を務めるFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)ジャパン社が、国産バンコンのタネ車としてデュカトを使ってはどうかという提案を掲げ、昨年のショー会場にサンプルとしてのバンボディを持ち込んだのだ。
もちろん、それに対する日本のビルダーたちの反響は大きく、フィアットシャシーの購入を前向きに検討した会社も多かった。
だが、それから1年経っても、このバンボディの輸入は実現していない。一説によると、日本の排ガス検査をクリアするための対策を講じるのに手間取っているからだという。しかし、その対策がクリアされたあかつきには、2019年から正規輸入が開始されるという情報も一部では流れている。

昨年(2017年)のジャパンキャンピングカーショーで披露されたフィアット・デュカトのバンボディ
昨年(2017年)のジャパンキャンピングカーショーで披露されたフィアット・デュカトのバンボディ

世界戦略車種としてのポテンシャリティは?

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今回バンテックが架装したフィアット・デュカトは、昨年サンプルとして上陸したそのバンボディではなく、純然たるキャブコンシャシーであることがミソ。国産キャブコンのリーディングカンパニーを自負する同社としては、やはりバンコンよりもキャブコンで勝負したかったのだろう。
現在、国産キャブコンのベース車としては、トヨタ・カムロードが圧倒的なシェアを誇っている。これはトヨタ自動車が国産キャブコン専用シャシーとして開発したもので、架装効率もよく、走行性に対する信頼度も高い。

もともとカムロードは、現行の200系に切り替わるとき、バンテックが100系カムロードに架装したレオバンクスをもとに再設計されたものだといわれている。当時のトヨタ自動車は、レオバンクスにバンテックがオプションとして用意していたありったけの装備品を取り付けて走行データを収集。2WD、4WDともに前後のホイールを共通化したり、幅広のボディにも対応するような超ロングステーのバックミラーを標準化するなどの変更を加えた。
そういった意味で、現行カムロードは“バンテック仕様”ともいえるもので、それがゆえにバンテック車はカムロードとの相性がよく、看板車種のジルを始め、ジル520、コルドシリーズなど、同社の主要商品の大半がカムロードで構成されることになった。
しかし、1997年にデビューしてからすでに20年を超えたシャシーだけに、ユーザーの立場に立つと新鮮味が乏しくなっているのも事実。それだけに、欧州で人気のあるフィアット・デュカトをベースにした国産キャンピングカーへの期待も高まっていた。
それをいちばん痛感していたのは、バンテック自身であったかもしれない。

バンテックの「V670」の登場に対し、国産キャンピングカーを開発しているライバルメーカーたちはどのような感想を持ったのだろうか。
フロントダイネットにリヤ常設ベッドという同車のレイアウトを見て、「一般的な欧州キャブコンのレイアウトを踏襲しているかぎり、本場のフィアットキャンパーよりアドバンテージがあるとは思えない」という疑問を呈した声もあった。しかし、「他社に先駆けてフィアットシャシーを使ったことに敬意を表する」という好意的な感想を漏らす声の方が多かった。それだけこのシャシーに対しては、多くの国産ビルダーが熱い視線を注いでいたことが伝わってくる。

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同車を開発したバンテック自身は、今回の開発にどのような想いを寄せていたのだろうか。
「“メイドインジャパン”という称号を掲げられるキャンピングカーが日本にあることを世界に発信したかった」と同社の佐藤徹代表は語る。
「トヨタとか日産のようなグローバルな大手メーカーに対しては、日本人は、日本の産業を支えてくれる頼もしい存在だというリスペクトを持っています。しかし、キャンピングカー産業に対してはどうかというと、この業界は、まだトヨタや日産のようなリスペクトを寄せられる存在に成長していない。このV670がきっかけになって、日本のキャンピングカーが世界的レベルで語られる日が来ることを願いたい」
佐藤代表は、V670がバンテックの「世界戦略車種」であるとは明言しなかったが、以上のような言葉を聞くかぎり、同車が海外マーケットにも視線を向けた商品として企画されたことは明白である。

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では、バンテックはいったいいつ頃から、フィアットに目を付けていたのだろうか。佐藤代表は語る。
「実は、私がフィアットのトラックベースのキャンピングカーを作ろうと意識したのは、2015年のデュッセルドルフのキャラバンサロンを見たときからです。
その展示場で、フィアットの標準シャシーをアルコシャシーに変えたモデルが展示されていたんですね。それを見た途端むらむらと妄想が膨らんで(笑)、これを使ったキャブコン開発の夢に取り付かれてしまいました。そこで、2016年の8月から、V670の企画をスタートさせました」
そのとき佐藤代表の脳裏には、バンテック製のフィアットモデルが、デュッセルドルフのショー会場で、欧州キャンピングカーと肩を並べる姿が浮かんでいたのかもしれない。

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だが、仮にこの車がヨーロッパ市場でデビューする日があったとしても、本場もののフィアット軍団がひしめいている世界に戦いを挑んで、はたして勝ち目はあるのだろうか。 「やり方によってはある」と断言したのは、意外にもバンテックのライバルと目される会社のうちの1社長であった。 「このV670を、世界に冠たる日本の電装機器を搭載したキャンピングカーとして熟成させ、ヨーロッパ車がまだ実現していない新しいエネルギー環境を創造するキャンピングカーとしてイメージづければ、それなりの勝機がある」というのだ。
たとえば、限られた電気容量のなかで、省エネをにらみながら家庭用エアコンを回す技術などは日本製キャンピングカーが突出している。
また、プラズマクラスターのような、空気の汚れを浄化する空調設備などにおいても日本の技術は世界を陵駕している。そういう装備を搭載したキャンピングカーといえば、世界の注目も集まる。
つまり、省エネや空気の浄化を推進する「エコロジー空間」としてのキャンピングカーというイメージを打ち出せば、日本製キャンピングカーは「クールジャパン」というブランド力を獲得することになる。そして、そこで生まれた室内空間こそ、まさに「清潔と静寂」が溶け合う“日本の美”を実現した空間になる。

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日本のハイテクノロジーが「和」テイストを生む

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実は、すでにバンテックの開発スタッフたちが、この車ではそれを意識していた。
「もし仮に海外で勝負することになれば、そこで大きな武器になるのが“和テイスト”だと思っているんです」というのは、このV670のデザインで陣頭指揮を執った木嶋伸介氏である。彼のいう“和テイスト”というのは、もちろん造形デザインとしての日本的意匠も含むが、それ以上に、空調や採光といった皮膚感覚や視覚に関わる繊細なジャパンテクノロジーを意味していた。
「たとえば照明なども、私たちが日東光学(現 株式会社nittoh)さんと共同開発したモビライトという照明機器を使って、日本人でしか表現できないような繊細でありながらもクリアな光の世界を演出してみました」と木嶋氏は語る。

さらに、シーケンサーを組み込んだコントロールパネルにいろいろな機能を持たせ、将来的にはWi-Fi とつないで、冷暖房などの車内的操作も携帯から遠隔操作できるようにしたり、タイヤの空気圧の状態などもエアモニによって3D画像で表示したりすることも検討中だとか。
同氏は、日本のテクノロジーを揶揄する「ガラパゴス化」という言葉を恐れてはいけないという。むしろ、過剰なくらいのギミック、過剰なくらいの高品質。それを満載したハイテクノロジー空間こそ、日本的エキゾチシズムとして見直される時代が来るのではないかとも。
そして、そこまで技術を突き詰めていけば、逆に、はじめて必要な装備と必要でない装備を見極める哲学が生まれ、そこから本当のコストダウンが生まれると断言する。

ちなみに「V670」の「V」とは、バンテックの頭文字としての「V」であると同時に、かつて同社がフラッグシップモデルとして開発した「Vega(ベガ)」という車種が復活したことを意味する「V」でもある。さらにいえば、同社に勝利をもたらすという意味を込めた「ビクトリー」の「V」であるかもしれない。

WRITER PROFILE
町田厚成
町田厚成 (まちだ・あつなり)

1950年東京生まれ。 1976年よりトヨタ自動車広報誌『モーターエイジ』の編集者として活躍。自動車評論家の徳大寺有恒著 『ダンディートーク (Ⅰ・Ⅱ)』ほか各界著名人の著作の編集に携わる。 1993年『全国キャンプ場ガイド』の編集長に就任。1994年より『RV&キャンピングカーガイド(後のキャンピングカースーパーガイド)』の編集長を兼任。著書に『キャンピングカーをつくる30人の男たち』。現キャンピングカーライター。

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