2月に幕張メッセで開催されたジャパンキャンピングカーショー(JCCS)2024で、バンテックが会場内に「街」を作り出して来場者をアッと驚かせた。そもそも、同社がブースのデザインにこだわるのは、今に始まったことではない。初めてテーマに沿った展示形態に取り組んだのは、10年前のJCCS2014。「バンテックリゾート」をテーマに凝ったディスプレーを行ったこの年から、バンテックでは毎年テーマを決めてブースづくりをすることが慣例になったという。
今回は、バンテック広報部部長の露木伸也さんにインタビューを敢行。JCCS2024のブースデザインに込められた思いや同社のこだわりについて、お話を伺った。
幕張メッセに登場した“バンテックタウン”
会場内に架空の街を作り上げた、JCCS2024のバンテックブース。エントランスゲートをくぐると、そこには異国の街のようなワクワクする空間が広がる。単に車両を展示するだけではなく、今年もバンテックの世界観を体現したブースづくりで多くの来場者を楽しませた。
「今回のショーでは、会場内に『バンテックタウン』という街を作りました。今までキャンピングカーという乗り物は、旅やアウトドアなどのレジャーを楽しむために使われてきました。それがここ数年では、災害時の避難施設や移動オフィスなどの使い方が多くのユーザーに広がり、キャンピングカーがレジャーだけではない“日常にあるモビリティ”として認知されつつあります。とはいえ、一般ユーザーにとってキャンピングカーはまだまだ珍しい乗り物。そこで今回のブースは、街の中にキャンピングカーを自然に溶け込ませるデザインで、日常でも使えるバンテックキャンピングカーの世界観を表現しました」
キャンピングカーが日常にある世界
長く広い歩道の両脇にはレンガ調の支柱がシンメトリーに配置され、そこにバンテック製キャンピングカーを等間隔に展示。街の風景に展示車両を溶け込ませることで、「街で見かけるキャンピングカー」「街で使えるキャンピングカー」という世界観を演出した。
ゆったりとした歩道に設置された欧州イメージの木製ベンチは、ディスプレーではなくバンテックタウンを訪れた人の休憩用。キャンピングカーショーの展示ブースでは珍しい設備だが、そこにはどんな意図が込められているのだろうか?
「JCCSの会場は、大勢の来場者が訪れる空間でありながら、ゆっくり休憩できるスペースが少ない。それなら、バンテックブースのベンチで休憩してもらおうと考えました。今回のブースデザインのテーマである街(バンテックタウン)は、そこに人がいることで完成します。ベンチで休憩する人、クルマの見学をする人、買い物をする人などでにぎわう日常の中に、キャンピングカーが自然な形で溶け込む。お客様を含むすべての要素が、バンテックタウンという空間を作り上げるイメージです」
支柱の中には、リチウムイオンバッテリーシステム「イリス」を共同開発したエコフロー製のポータブル電源を配置。照明や支柱に埋め込まれた液晶モニター、展示車両の外部電源など、ブース内で使用する電気をポータブル電源から供給することで、最先端のポータブル電源の性能と有用性をわかりやすく表現した。
ブースの奥に配置したバンテックパーツセンターは、街の中にあるショップをイメージ。買い物客でにぎわう店舗もまた、バンテックタウンを構成する要素のひとつだ。
パーツセンターの一角で子供たちから人気を集めていたラップルランド。スコップでお菓子をすくって本体の中に入れ、スイッチを押して内容物を熱圧着。車載専用ラップ式トイレ「ラップル」の使い方と利便性を、アトラクション感覚で楽しみながら体験できる。
「キャンピングカーというモノを売るのではなく、“キャンピングカーがある時間”を売る。それが、バンテックの基本思想です。普通車と比べれば確かにキャンピングカーは高額ですが、そこにはお金で買えない価値がある。JCCS2024のバンテックブースでは、旅やアウトドア、趣味、ビジネス、防災シェルターなど、日常でも使えるキャンピングカーの魅力を多くの人に体験してもらえるように工夫しました」
バンテックのクルマづくりのこだわり
バンテックの大きなこだわりのひとつが、「速納宣言」だ。キャンピングカーは、納車まで時間がかかるのが一般的。人気モデルとなると1年半~2年待ちは当たり前だが、バンテックでは可能な限り早いタイミングでユーザーの元に車両を提供することに注力している。
「バンテックでは、『キャンピングカーがある時間を売るからには、お客様を長期間お待たせするのは失礼だ』と考えています。“速納宣言”をキャッチフレーズに、オーダーから納車まで早ければ1カ月、遅くても6か月程度。それを実現するために製造プロセスの効率化を図り、1日2台・年間730台ペースの生産体制を整えました。営業と製造現場の間に、管理部門を設けているのもポイントです。お客様のニーズに沿って製造中の車両をマッチングしたり、製造ラインの進捗を把握して正確な納車時期をお伝えしたりと、受注~製造~納車の過程を円滑にする役割を担っています」
「バンテックの企業理念は、Comfort with safty。キャンピングカーが『快適で安全』なモビリティであるために、2つの要素を融合したクルマづくりを追求しています。安全面の最大のこだわりであるCSボディは、万が一の事故の際に継ぎ目のない一体成型のFRPボディが衝撃を拡散して、しっかりと乗員の身を守ります。
快適面でのこだわりは、初めてキャンピングカーに乗る人でも不便を感じずに生活できる、オールインワン仕様にしていることです。一般的なキャンピングカーは多くの装備がオプション化されていて、購入時にどのオプションを選べばいいのか悩んでしまいがちですが、バンテック製キャンピングカーは、エアコン、FFヒーター、エントランスのセキュリティ集中ドアロックといった重要な装備をすべて標準化しています」
1年を通して快適にキャンピングカー旅を楽しめるように、家庭用エアコンとFFヒーターが全モデルに標準装備されている。
万が一のガス漏れをいち早く感知する、ガス警報器も全車標準装備。安心して車内生活を送るための重要なアイテムだ。
旅先でもゆったりとした時間を過ごせるように、ラグジュアリーな空間づくりにもこだわっている。ジルシリーズの室内は、光と影を意識的に取り入れることで、ホテルのようなラグジュアリー感を演出。インテリアの随所に暖色系のLED間接照明を配し、優雅なイメージを作り上げている。
ジルノーブルに標準装備されたワイングラススタンド。実用性と同時に車内で過ごす豊かな時間も重視する、バンテックのこだわりを象徴する装備のひとつだ。
今年は、普通免許で運転できるカムロード・ガソリン車ベースのミドルクラスキャブコン(ジル480スキップの後継モデル)や、タイで先行リリースしたハイラックスベースのキャブコンなど、注目のニューモデルが続々とリリースされる予定。2024年もバンテックの動向から目が離せそうにない。