以前の記事「北海道キャンピングカー旅に欠かせないフェリー選びの基礎知識」でも解説したとおり、本州と北海道は道路がつながっていないため、キャンピングカーで北海道に渡るにはフェリーの乗船が必須となる。
気になるのが、その料金だ。北海道キャンピングカー旅で費用の大部分を占めるのは、北海道までの往復交通費。フェリーによって運賃が異なるため、どのフェリー会社(航路)を利用するかで、旅行費用は大きく変わってくる。また、到着する北海道の港も、函館、小樽、苫小牧、室蘭など、フェリーによってさまざま。つまり、フェリーは旅行費用や旅の行程に関わる重要なファクターであり、「どのフェリーを選ぶか」が北海道キャンピングカー旅の成否を決めるといっても過言ではないのだ。
今回は、家族との北海道キャンピングカー旅をライフワークとして、過去12年間で200泊以上の北海道旅を経験してきた筆者が、本州と北海道をつなぐ各フェリーの特徴やメリット・デメリットを、自らの経験を基に解説する。
自分のニーズに合ったフェリーをチョイスして、充実した北海道の旅を!
津軽海峡フェリー
データ
- 航路
- 青森~函館、大間~函館
- 航海時間
- 3時間40分(青森便)、1時間30分(大間便)
- 運賃の目安
- 大人2220円~、車両6m未満1万6460円~(青森~函館)
※料金は時期によって変動
青森~函館、大間~函館の2つの航路で、本州と北海道を結ぶフェリー。
過去12年間に及ぶ家族との北海道キャンピングカー旅で、もっとも乗船した回数が多いのがこの「津軽海峡フェリー」だ。最大のメリットは、運賃が安いこと。WEB予約限定のお得な「海割」を利用すれば、さらにお得感はアップする。各社のフェリー運賃が高額になる観光シーズンの場合、青森までの高速料金とガソリン代を合計しても、この航路が費用的にもっとも安く上がるケースがほとんどだ。
青森~函館航路は往路・復路それぞれで1日8便と便数が多く、混雑するシーズンでも予約を取りやすいのがメリット。メイン航路の青森~函館便はフェリーが大きく豪華なので、3時間40分という短い航海時間と相まって、2等船室でも十分快適な船旅ができる。
もっとも短い航海時間で北海道に渡れること、ドッグルームやドッグバルコニーなどの設備が充実していることから、ワンコ連れのユーザーにもお勧めだ。
- 料金は時期による変動制だが、運賃が安い
- 便数が多く、トップシーズンでも予約が取りやすい
- ドッグルームなど愛犬家にうれしいペット設備が充実
- 乗船時間が短く、船が苦手な人でもOK
商船三井フェリー
データ
- 航路
- 大洗~苫小牧
- 航海時間
- 17時間45分~19時間15分
- 運賃の目安
- 大人8740円~、車両5m未満2万6740円~
※料金は時期によって変動
大洗と苫小牧を18~19時間で結ぶ「さんふらわあ」は、首都圏から北海道までもっとも快適に渡れる航路。クルマで走る距離が短くて済むので、長距離運転に自信のない人や年配のユーザーにはとくにお勧めだ。
運航ダイヤは、夕方発~翌日午後着の「夕方便」と、深夜発~当日夜着の「深夜便」があり、前者は多彩な客室とレストランなどの充実した設備で快適な船旅を楽しめる豪華なフェリー。後者はデラックスルーム2室のほかは全室1段ベッドのカジュアルルームとなり、深夜の移動中にゆったり就寝できる仕様となっている。
体力的にラクで快適性も申し分ないが、時期によって運賃が大きく変動し、トップシーズンになると料金がかなり高額になるのがデメリットだ。
- 首都圏在住者がもっともラクに渡道できる航路
- 運賃は時期による変動制で、トップシーズンは高額になる
- 船が大きく、設備も申し分ない
太平洋フェリー
データ
- 航路
- 名古屋~仙台~苫小牧
- 航海時間
- 約15時間(仙台~苫小牧)、約40時間(名古屋~苫小牧)
- 運賃の目安
- 大人8300円~、車両5m未満2万6300円~(仙台~苫小牧)
※料金は時期によって変動
名古屋~仙台~苫小牧を結ぶフェリー。仙台~苫小牧航路は、夜に出港して翌日の朝10時に苫小牧に到着する時間設定が秀逸。眠っている間に目的地に着けるので時間のロスがなく、北海道に到着した日からたっぷりと観光の時間を確保できる。関東から仙台までの自走距離が適度であること、船が豪華で快適であること、航行時間に無駄がないことなどメリットが多く、筆者的にもかなりお気に入りのフェリーだ。
船は大きく豪華で、ロビーはまるで高級ホテルのよう。船内には、展望大浴場やレストラン、売店をはじめ、映画やショーを楽しめるシアターラウンジやカラオケルームなど、快適な船旅をサポートする設備が充実している。
また、バイキングスタイルのレストランも魅力のひとつ。筆者が太平洋フェリーを利用する際は、19時40分の乗船後に必ずディナーバイキングを利用している。モーニングとランチは大人800~1000円、ディナーは大人1500~2000円と、低料金で好きな料理を好きなだけ食べられるのがうれしい。
時期によっては、28日前までの予約・購入で運賃が最大50%オフになる「早割プラン」が実施されているので、うまく活用すれば旅行費用を大幅に節約することも可能だ。
- 船が豪華で設備も充実しており、快適な船旅を楽しめる
- 10:00苫小牧着なので、到着後の時間を有効に使える
- 運賃は時期による変動制で、トップシーズンは高額になる
- 運賃が最大50%オフになる「早割りプラン」がある
新日本海フェリー
データ
- 航路
- 舞鶴~小樽、敦賀~苫小牧東、新潟~小樽・苫小牧東、秋田~苫小牧東
- 航海時間
- 16~20時間(新潟~小樽・苫小牧東)
- 運賃の目安
- 大人6480円~、車両5m未満2万1500円~(新潟~小樽) ※料金は時期によって変動
舞鶴・敦賀・新潟・秋田と北海道を結ぶフェリー航路。旅の行程に合わせて、小樽港行きと苫小牧東港行きの2つの航路を選べるのがポイントだ。運賃は、長距離航路としては比較的安価な設定。筆者が北海道を旅行する際は、各フェリーの運賃と高速代・ガソリン代を合計して比較検討するが、費用面、体力面、行程を総合的に判断して、最終的に「新日本海フェリー」を選ぶことも多い。
大浴場やレストラン&カフェ、大スクリーンのビデオシアター、夏季限定のジャグジーなど、船内設備も充実。時期によって無料で参加できるビンゴ大会が開催されるなど、乗客を飽きさせないサービスも魅力だ。
なかでも注目は、2017年に就航した新造船「らべんだあ」と「あざれあ」(新潟~小樽航路)。両船ともに大部屋タイプを廃止し、もっとも料金の安い客室もプライベート空間が確保された1人用寝台となっている。さらに、船内には露天風呂も完備! 新日本海フェリーを利用する際は、新潟~小樽航路の「らべんだあ」「あざれあ」がお勧めだ。
- 長距離フェリーとしては、比較的運賃が安い
- 運賃は時期による変動制で、トップシーズンは高額になる
- 新潟、秋田のほか、関西便(舞鶴・敦賀)もある
- お勧めは新潟~小樽航路の「らべんだあ」「あざれあ」
シルバーフェリー
データ
- 航路
- 八戸~苫小牧、宮古~室蘭(2018.6~)
- 航海時間
- 約8時間(八戸~苫小牧)、約10時間(宮古~室蘭)
- 運賃の目安
- 大人5000円、車両5m未満2万5000円(八戸~苫小牧)
八戸~苫小牧を1日4便(片道7時間15分~8時間30分)で結ぶフェリー。航海距離が短いことから運賃が比較的安価で、時期による料金の変動もない。眠っている間に目的地に着ける夜発~朝着の便が選べるほか、船によってロッカー、マットレス、仕切りを設置した座席指定の2等室や、ペット同伴が可能な1等室が用意されているのも特徴だ。
実は、過去12年に及ぶ筆者の北海道旅で、唯一乗船経験がないのがこの「シルバーフェリー」。理由は、東京~八戸港までのアクセスが東京~青森港と距離的に大差ないため、最終的により運賃の安い青森発の津軽海峡フェリーを利用してしまうことが多いから。
ただし、道央、道東、道北に出やすい苫小牧港に着けるため、旅の行程が道央、道東、道北メインなら乗船するメリットは大きい。
さらに2018年6月には、岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新航路が開設される。宮古を朝8時に出航して、当日の夕方18時には室蘭に到着するこの新ルートは、八戸~苫小牧便と同様に、「できるだけ短い航海時間で、道央・道東・道北の観光拠点に到着できる」のがメリット。今年の夏、北海道を旅するユーザーから注目を集めそうだ。
- 乗船時間が津軽海峡フェリーの次に短い
- 時期による運賃の変動がなく、比較的料金も安価
- 2018年6月から宮古~室蘭の新航路が開設される
- 苫小牧・室蘭着なので道央・道東・道北観光に便利