【ビルダー社長のキャンピングカー】インディアナ・RV 降旗貴史会長

メーカー・販売店インタビュー
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【ビルダー社長のキャンピングカー】インディアナ・RV 降旗貴史会長

キャンピングカービルダーの代表は、普段どんなクルマに乗り、どんなライフスタイルを送っているのだろうか? 自らキャンピングカーライフを実践するビルダーの代表にスポットを当て、その愛車とライフスタイルを紹介することでビルダーのバックボーンを紐解くのが、本企画の趣旨だ。

今回ご登場いただくのは、神奈川県綾瀬市にあるキャンピングトレーラー専門店「インディアナ・RV」降旗貴史会長。30年以上に渡ってキャンピングトレーラーにこだわり続けてきた降旗さんは、どんなクルマに乗り、どんな楽しみ方をしてきたのか。その愛車遍歴から、インディアナ・RVのルーツとこだわりを紐解く。

インディアナ・RV会長 降旗貴史さん
インディアナ・RV会長
降旗貴史さん

初めての愛車は高校時代に乗ったキャロル

降旗さんが初めてのクルマを手に入れたのは、高校2年生のとき。16歳にして、日産ディーラー勤務の父親から譲り受けた中古のマツダキャロルを乗り回していた。

「当時は、16歳で取得できる軽乗用車運転免許があって、軽自動車は車検もいらない時代でした。高校2年でクルマを乗り回していたので、周りからは金持ちのお坊ちゃんなんて思われていたけど、全然そんなことはない(笑)。日産ディーラーに勤めていた親父に5000円で下取った中古車をあてがわれて、親父の会社のガソリンチケットで乗り回していただけです。ただでもらって乗り回しているから、クルマ=高級品・貴重品という感覚はなく、まさに下駄代わりでしたね」

大学時代のヒッチハイク旅で運命的な出会い

愛車の中で話す降旗会長

その後、19歳の時に大学を休学してヒッチハイクでヨーロッパを旅していた降旗さん。そこで、現在のインディアナ・RVにつながる運命的な出会いがあったという。

「オーストリアを旅していた時、ウィーンの交差点で偶然すれ違った日本人に声をかけられたんです。それがのちに一緒に会社を興すことになる、渡部(インディアナ・RV元会長~現相談役)でした。その後の僕の人生は、すべて渡部と一緒。彼は3つ年上の兄貴のような存在で、僕の人生を変えた男です。19の時から50年以上の付き合いになりますが、彼がいなかったら現在のインディアナ・RVはありませんでした」

ヨーロッパから帰国した降旗さんは、大学を中退して父親の勤める日産ディーラーに就職したが、ディーラーの営業マンという立場もあって自分のクルマは下取り車のサニーしか乗れなかったという。その後、父親が茅ケ崎で中古車ディーラーを創業し、降旗さんも父の会社に転職。そんな折、予期せずキャンピングカーの世界への扉が開くことになる。

「中古車ディーラーをやっていた時に、渡部から日本の中古車をメキシコに輸出する話があるけどどうだと声をかけられたんです。現地での商談の末にその話は流れてしまいましたが、その時にロサンゼルスで見たキャンピングカーに一目ぼれして、渡部と一緒に輸入を始めることにしました。彼は元大手商社勤務のエリートで、語学も堪能だし、世界中にコネクションを持っている。そこからはずっと彼が商品の交渉を担当して、商品が日本に着いたら僕が責任をもって販売するという2人3脚でやってきました」

トラキャン販売からトレーラー専門店へ

インディアナ・RVのトラキャンとトレイラー

渡部さんと協力して中古車ディーラーに「インディアナ・RV」という屋号のキャンピングカー部門を立ち上げた降旗さんは、アメリカのシャドウクルーザー社と契約して1992年にキャンピングカーの輸入をスタート。最初に販売したのはキャンピングトレーラーではなく、ピックアップトラックの荷台に積載するトラキャン(トラック・キャンパー)だった。

インディアナ・RVのトラキャン

「ボックスタイプのキャンピングカー(トラキャン)に目を付けて、1992年にインディアナ651・656というモデルの販売をスタートしました。珍しさもあって最初は注目されましたが、ピックアップトラックのダブルキャブは後席がリクライニングできないので、奥さんや子供には不評でしたね」

インディアナ・RVのトレイラー

「ボックスタイプは日本では伸びないと思って、早々にキャンピングトレーラーに路線を変更しました。当時日本に流通していたのはバンコンやキャブコンなどの自走式くらいで、トラキャンもトレーラーもほとんど見かけなかった時代。1993年にキャンピングトレーラーインディアナTR-4の販売を開始して、それが爆発的にヒットしたことがキャンピングカー業界への本格参入につながりました」

インディアナ・RVでは当初から「普通免許で牽引できる750kg以下のモデル」「左エントランス」などの日本仕様にこだわってきたが、1996年には「より日本に合うキャンピングトレーラー」を求めて、軽量化や断熱の技術が進んでいるヨーロッパ製キャンピングトレーラーへと販売モデルを移行。トレーラーでは珍しかったベバストFFヒーターの導入や、電気とカセットガスを駆使した脱プロパン化、脱着式の家庭用ウインドークーラー、リチウムイオンバッテリー&鉛バッテリーのハイブリッドシステム、Wi-Fi無線式バックカメラなど、快適・便利・安全の3要素を実現した「日本で使いやすいキャンピングトレーラー」を追求し続けている。

カセットガス供給機
カセットガス供給機で脱プロパン化を実現
Wi-Fi無線式バックカメラ
配線不要のWi-Fi無線式バックカメラ

トレーラーを牽いて北海道を周遊

30年以上もキャンピングトレーラーにこだわり続けてきた降旗さんだが、意外なことに自分で所有したトレーラーは過去1台だけ。そこには、キャンピングトレーラーを販売する側として独自の哲学があった。

「一時期は自分で所有してトレーラーライフを楽しんでいましたが、それをやってしまうと次の商品の開発・改良に支障が出てしまう。次々に新しいモデルが出てきて自分のトレーラーが旧型になってしまうので、1台を所有してしまうとそれに固執した考えしか出てこないんです。だから、『自分で所有する』のではなく、『新しいモデルが出たら1泊でも2泊でも必ず使ってみる』という考え方に切り替えました。ニューモデルを実際に使ってみて、走行安定性、居住空間、寝心地、冷暖房の利き、断熱性などを自分の目でチェックする。その体験が、より良い新型車の開発やセールストークのスキルアップにつながっています」

IndianaPORT6&Limited

あえて自分でトレーラーを所有することをしなかった降旗さんが、1997年頃に唯一所有したのがポルト6というポルトガルのトレーラー。ミニバンのセレナでポルト6を牽引して、北海道で気ままな1人旅をしたのが懐かしい思い出だ。

「北海道の旭川でイベントがあった時に、ポルト6を牽いて新潟~小樽航路の新日本海フェリーで北海道に渡りました。早めに出発して、小樽港から2泊くらい遊びながら旭川までドライブ。イベント終了後は稚内まで走り、フェリーで利尻島に渡ってレンタルの原付きで島を1周しました。その後は、オホーツク海沿いを南下して、猿払村でキャンプをしたり、日高の魚屋でお土産に鮭を買ったり……。食事は、市場やスーパーで新鮮な刺身を買ってトレーラーの中で食べるスタイルでしたが、とにかく北海道は何を食べてもうまい。キャンピングトレーラーの快適性を活かして、気ままな1人旅を楽しみました」

日本に合ったコンパクトなトレーラーライフ

愛車のトレイラー

インディアナ・RVでは、キャンピングトレーラーの販売と同時に、それを牽引するヘッド車の提案も積極的に行ってきた。最新の提案は、軽量・コンパクトなインディアナ300シリーズをヤリスクロスで牽引するスタイルだ。

愛車のトレイラー2

「ヤリスクロス+インディアナ300で、『大きなクルマじゃないと牽引できない』という先入観をくつがえしたいんです。ヤリスクロスにはヨーロッパ製の車種専用ヒッチが出ていて、コンパクトな1500ccでも1200kgの牽引能力がある。日本の道路事情でも、750kg以下のトレーラーならまったく問題なく牽引できます」

愛車のトレイラーの車内 愛車のトレイラーのキッチン 愛車のトレイラーのエアコン

「実は今、ヤリスクロスで『手軽に楽しめるトレーラーライフ』を実践するため、自分用のインディアナ300Lを製作しています。プライベートでトレーラーを所有するのは、これが2台目。今年の3月から会長職になったので、暖かくなって時間に余裕ができたら、まずは夫婦で大間のマグロを食べに行きたいですね。高知でカツオやウナギを食べるのもいいなぁ(笑)」

倉庫の中のインディアナRVトレイラー

30年以上キャンピングトレーラーの販売に携わってきた降旗さん。インタビューの最後に、牽引式のキャンピングカーにこだわってきた理由とその魅力をうかがった。

「面倒くさい&置き場所が必要などネガティブなイメージもありますが、リーズナブルな価格で広い居住空間を手に入れられるのがキャンピングトレーラーの魅力です。750kg以下のインディアナ300でも、居住性は1000万円クラスのキャブコンと同等かそれ以上ですから。普段乗っているお気に入りのクルマをヘッド車として使用できるのも、クルマ好きにとって大きなメリット。食べず嫌いする人は多いけど、1度乗ったらずっと乗り継ぐ人が多いのもキャンピングトレーラーの特徴です。より多くの人に魅力を知ってもらえるように、これからも様々なモデルや楽しみ方を提案していきたいですね」

愛車内の降旗会長
WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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