いかにして No1キャンピングカーメーカーは生まれたか:ナッツRV 荒木賢治代表インタビュー

メーカー・販売店インタビュー
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現在日本で活躍しているキャンピングカーメーカーをいくつか頭の中に思い浮かべたとき、「ナンバーワン」という称号にふさわしい会社を挙げるとすれば、誰もが「ナッツRV」の名を掲げるだろう。
工場などの生産規模、販売店の数、従業員数、売上高。のみならず、車両開発のアイデアや技術革新の進展度まで含め、すべてにおいてナッツRVが国産キャンピングカー業界の頂点に立っていることは間違いない。
同社の生産拠点は国内と海外にまたがっている。北九州に敷地4千坪の本社工場を持ち、ほかに中国工場とフィリピン工場を稼働させている。さらに今年度には国内に大規模なパネル工場を建設する予定もあるという。
従業員数は、国内だけで120名強。中国とフィリピンで働く従業員を加えると、総勢370人程度の規模となる。
販売店は、北は札幌店に始まり、神奈川店、愛知店、京都店と展開。本社のある九州には、北九州店と大宰府インター店の2店舗を布陣させている。そのどれもが代理店ではなく直営店のため、ナッツ商品への愛情とメンテナンスの専門知識を持ったスタッフが常駐する。
業界内最大の巨大企業としての風格を漂わせているナッツRVだが、意外にも同社がこの業界に参入してきた歴史はそれほど古くない。会社が設立されたのは30年ほど前だが、キャンピングカー事業に特化したのはここ17~18年ほど前。現在業界の老舗といわれる会社のなかには、創業者の事業を継続する形で50年という歴史を持つ企業もあるというのに、ナッツは若い。逆にいうと、代表を務める荒木賢治氏は、たった20年の年月で、これだけの大事業をやってのけたわけだ。
その急成長の秘密は何か。ナッツRVの総帥である荒木社長に直接尋ねてみた。

聞き手:キャンピングカーライター 町田厚成

ナッツRV 荒木賢治代表
ナッツRV 荒木賢治代表

カスタムカー製作で2度のグランプリを受賞

【町田】まず、ナッツさんの会社としての始まりがどういうものであったのか。そこからお教えていただけますか。

【荒木】会社としてのスタートは30年前ですが、そのときはスポーツカーショップを運営していました。で、店の前の駐車場に、友だちからもらったハイエースの医療診察車を止めておいたら、それを珍しそうに眺めていく車が増えてきたんですね。どの車も車体から羽が生えていて、珍しい色のペイントが施されている。最初のうちは何だろうな、と思っていたんですが、それが、いわゆるカスタムカーだったんです。当時バニングといっていましたけれど、そういう車が全国的なブームになってきて、私もスポーツカーよりだんだんそっちの方が面白く見えてきたんです。
そこで、カスタムカーを手掛けている全国のショップさんをいろいろ周り、造り方のコツを聞いたりしながら、自分で製作するようになりました。

【町田】その時代というのは、いま活躍されているキャンピングカービルダーさんもみなカスタムカーをやっていらしゃった時代ですよね。

【荒木】そうですね。関西では「オートボディショップタナカ(現アネックス)」さん。愛知では「ロータス名古屋(現レクビィ)」さん。関東では「バンキング(現エートゥゼット)」さんや「ロータス(現ロータスRV販売)」さん、「ビークル」さん。東北では「ファーストカスタム」さん。九州では「セカンドハウス」さんなどが活躍していましたね。

【町田】ナッツさんが製作されていたカスタムカーはどう評価されていたのですか?

【荒木】カスタムカーの全国大会で、2回続けて「日本一」として認められるグランプリを受賞したんです。

デュッセルドルフの「キャラバンサロン」で目からウロコ

【町田】2度もグランプリを取ったというのは、すごいですねぇ !

【荒木】そうなんですが、2回続けて頂点を極めたということもあったのか、ちょっと熱が冷めてきたんですね。
そこで、次のステップをキャンピングカーに定め、猛烈な勉強を開始しました。それが今から17~18年ぐらい前です。勉強の手始めに、ドイツのデュッセルドルフで開催されている “世界一のキャンピングカーショー” である「キャラバンサロン」を見学することにしました。
まず、ショーの規模に驚きました。出展台数が2,000台。10日間開催。そんなキャンピングカーショーは日本にはありませんでしたからね。
さらに、世界の頂点を極めたようなキャンピングカーがずらりと並んでいる様子を見て、ほんとうに腰が抜けるような思いでした。まさに、“目からウロコ” 状態。同時に、「これはやりがいのある世界に触れたな」という思いがこみ上げてきたのを覚えています。

【町田】最初に手掛けられたキャンピングカーはどんなものだったんですか?

【荒木】「キャロット」というバンコンです。次に「スピナ」というキャブコンを出しています。
しかし、私たちが総力をあげて自社開発を進め、自信を持ってリリースしたのは、グランドハイエースをボディカットした「グランツ」からですね。そのころすでにナッツでは、内装の部署とボディ製造の部署を分けて効率化を進めていましたから、この車はかなりの台数を生産しました。グランドハイエースベースでは最も売れたのではないかと思っています。

ナッツRV グランツDD
ナッツRV グランツDD

「ボーダー」の開発で今の地位を築く

【町田】ナッツRVさんのキャンピングカーづくりの中で、成長への大きな転機となった車は何ですか?

【荒木】やっぱり「ボーダー」じゃないでしょうか。各社のグランドハイエースが売れていた時代に、そのベース車がなくなるという話が出てきて、それに代わるものとして、200系ハイエースをボディカットする方向にシフトされたビルダーさんも割といらっしゃったんですよ。
しかし、一度グラハイまで進んだお客様のなかには、ハイエースでは満足できないという声もあったんですね。そこで、うちは思い切ってコースターをボディカットすることにチャレンジしました。
もちろん試行錯誤の繰り返しで、開発にはそうとうな苦労を重ねましたけれど、結局、その過程で得たノウハウが、今のナッツを支える力となりましたね。

ボーダーバンクス2013年モデル
ボーダーバンクス2013年モデル

【町田】確かに、あの車は、メディアからもユーザーからもすごい注目を浴びましたね。当時、ヨーロッパで最先端モデルが使っていたアルミパネルを使用し、パーツにもヨーロッパの最新デザインと最新機能を持ったものをふんだんに採用されました。フォルムにもカラーリングにも相当こだわっていらっしゃいましたから、市場の評価は高いものになりましたよね。
あれを超えるようなキャンピングカーは、その後も日本ではつくられていないように思います。

【荒木】ありがとうございます。確かにあのボーダーは、それまでのキャブコンやバスコンというジャンルを超えて、ナッツが一から作り上げたまったく新しいキャンピングカーだといえます。
年間30台ぐらいしか生産できないんですが、国産車や輸入車という枠を超えて、「日本でいちばん高品質な車が欲しい」というお客様の声が後を絶たない。だから、われわれもあの車には特別なこだわりがあるんです。
年間30台の車なのに、レイアウトパターンを三つも用意していますし、トヨタのカタログ設定にもないコースター標準ボディで180馬力のエンジン出力を誇る車両の承認をとって販売を実現しています。

驚異の電装システム「EVOシステム」

【町田】電装システムも完璧なものを用意していますね。

【荒木】「エボリューションシステム」ですね。

【町田】これは簡単にいうと、どういう電装システムなんですか?

【荒木】われわれはこれを「超急速充電システム」と呼んでいますが、要するに、4~5時間のアイドリングで3つのディープサイクルバッテリーをほぼ満充電できる電装技術なんです。それに加えて、アイドリングだけで家庭用エアコンが連続運転できるようになっています。

ナッツRV EVOシステム
ナッツRV EVOシステム

【町田】すごく画期的なものですね! こういうシステムを企画された背景は?

【荒木】やっぱり年々高温多湿化している日本の夏では、キャンピングカーにおいても家庭用エアコンの需要が増加傾向にありますよね。
しかし、常時エアコンを駆動するとなると、いくらバッテリーを増設したり、リチウムイオン電池に変えたりしても、バッテリーの電気は使えばなくなってしまいます。なくなった電気を充電しようとしても通常の走行充電では、短時間でサブバッテリーを満充電にできません。
エボリューションシステムというのは、それを解決するために考えた機構なんですね。
具体的にいうと、オルタネーター本来の力を引き出すために特殊な回路を組み、アイドリングや走行充電だけでもサブバッテリーへの充電が驚異的に効率よくできるようにしたシステムです。

【町田】充電時間はどのくらいですか?

【荒木】300Ahのサブバッテリーが空になっても、アイドリングだけで4~5時間で満充電できます。
また、ソーラー充電も外部充電も、サブバッテリーのみならずメインバッテリーまで充電できるようになっていますから、ソーラーを装着して屋外に駐車しておけば、メインもサブもいつでも満充電状態になっています。
だから、旅先で万一メインバッテリーが上がってしまっても、ソーラーとエボシステムが機能していれば無事に帰ってこれるというわけです。

【町田】すごいですね! 現在この「エボリューションシステム」が選べる車は?

【荒木】今のところは、ボーダーとクレアですね。クレアにはエボシステム仕様と、それを搭載していない標準仕様があって、その価格差は約100万円なんですが、ここ最近はエボ仕様の需要の方が圧倒的に多い。そういう時代になってきているんですね。

アルミボディの採用によって生まれた数々のメリット

【町田】ナッツさんの車の特徴といえば、もうひとつカラーリングの美しさがあります。これはやはりアルミパネルを効果的に使っているところからもたらされるものなんですか?

アルミボディに色 クレア2015年モデル
アルミボディの色 クレア2015年モデル

【荒木】アルミは平滑性がありますからね。ペイントした状態がものすごくきれいになるという特徴があります。さらにアルミを多用すると、軽量化が実現できるし、リサイクル性もある。もちろんエココンシャスである。
しかし、アルミは仕入れる段階までが大変だったんですよ。実は、全ヨーロッパで使うアルミ素材の80%ぐらいのシェアを持つオランダの会社まで行って、何度も交渉したんですが、ほとんど相手にしてもらえなかったんですね。「最低でも10トン単位で買ってほしい」 というわけです。しかし、10トンといえば、200台分ぐらいの量となる。はたして、そんな量を買って大丈夫なのかと。
ずいぶん悩みましたけれど、開発技術の将来性のことを考えると、今後の世界の趨勢はアルミ化の方向だろうと。その先行投資だと思って決断しました。

大量生産は「量」だけでなく「質」も変える

【町田】やはり、大量生産ができるかできないかで、キャンピングカーづくりの根源的な部分が変わってきてしまうということですね。

【荒木】そのとおりです。大量生産というのは、単に同じような品質のものを大量につくることではないんです。商品の質そのものが変わってくる。私たちのアルミボディもそうですが、部材を大量発注・大量生産できる体制そのものがキャンピングカーに質的な進化をもたらすんですね。

【町田】そこのところが、なかなか日本のキャンピングカーメーカーさんには理解されにくいところですね。

【荒木】そうかもしれません。けっきょく日本のキャンピングカーづくりと、欧米のキャンピングカーづくりの差を一言でいえば、日本のキャンピングカー業界には大量生産するノウハウがないということです。

【町田】それがないと、どうなるのでしょう?

【荒木】高品質を維持したまま安い価格の商品というものがつくれない。僕は、キャンピングカーを年間1万台ぐらいつくっている会社をいろいろ見てきました。ヨーロッパではハイマー、ホビー、デスレフ、クナウス、アドリア。オセアニアではオーストラリア・ジェイコとかね。
  そういうところでは、もうパーツを全部ラインで流して、流れ作業で組み立てているわけです。そういう手法を採らないかぎり、製品の均質化も図れないし、コストを下げることもできない。コストが下がれば、販売価格も下げることができますから、多くの人が買えるようになる。

【町田】それがキャンピングカーを普及させる早道ですね。

【荒木】私はそう思っています。

少子高齢化はキャンピングカー市場にとって危機か?

【町田】ただ、日本はこれから少子高齢化という問題を抱えています。多くの国内企業が、それによるマーケットの縮小を心配しています。ナッツさんはそのことに対して、どう考えていらっしゃいますか?

【荒木】僕は逆に思ってます。「これから未曽有の高齢化社会が進む」などとマスコミはいいますが、今のシニアの方々を見ていると、みな身心がすごく元気ですよね。つまり「アクティブシニア」という人たちがどんどん増えてきて、長生き社会が生まれつつある。
で、人間というのは、長生きすれば遊びの時間も多く持つようになるんですね。うちの車を買ってくださるシニアの方は、「これからはキャンピングカーを使って積極的に遊ぶつもりだ」と皆さんそうおっしゃいます。

ナッツRV感謝祭会場にて
ナッツRV感謝祭会場にて

【町田】なるほど。昔の老人はお金を貯めても、それを孫や子に残すということを考えましたが、今のシニア層は自分が元気なうちにもっと遊ぼうという人が増えてきたということですね。

【荒木】そのとおりです。それが豊かな社会の証(あかし)だと思うんですよ。だって、“女性のキャンピングカー1人旅”も増えているんですよ。昔だったら女性1人のドライブ旅行なんてほとんど見かけませんでしたよね。そういう旅行もキャンピングカーだからこそ可能になるんですね。それだけ、キャンピングカーを軸とした “車中泊文化” というものも確立されてきたように思います。

「車中泊」が文化になる時代とは?

【町田】いまおっしゃった「文化」という言葉を、もう少し具体的に言い直すと、どういうことになるのでしょうか?

【荒木】僕は「文化」という言葉を、ひとつの文物が人々の生活に根付いている状態をイメージして使っています。
たとえば、「車中泊文化」といった場合、現象だけ取り出すと、単に「車の中に寝る」という意味でしかない。
しかし、その「車中泊」が、旅行というトータルな楽しみの一部として成立し、車の中で寝るためのノウハウも生まれ、家庭でも職場でも車中泊の経験や情報が面白い会話として成立する。そうなれば、もうそれを「文化」とみなすことができると思っています。

【町田】つまり、「ライフスタイルにまで昇華したもの」という意味ですね?

【荒木】そうですね。そういった意味で「車中泊」はもう立派な文化であると。ただ、「キャンピングカー文化」と言い切ってしまうと、それはまだキャンピングカーの普及度からいって、市民権を得られるような言葉にはなっていない。
しかし、「車中泊文化」といえば、多くの人が普通の乗用車で経験できるわけですから、そういう言葉には誰もがリアリティを感じることができる。要は、国民の多くが車中泊の楽しさを語り合うような社会が訪れれば、それが「文化」だと。

【町田】車中泊が「文化」になってきたのは最近ですよね。そういう言葉が当たり前に使われ出したのも、ここ10年ぐらいですね。

【荒木】僕は7年ぐらい前に、観光庁が出したパンフレットのなかに「自動車旅行」という概念がないことを発見したんです。電車、バス、船、飛行機の旅はあるけれど、みな泊まるところはホテルか旅館。マイカーを使った旅もけっきょくはホテル泊に集約されてしまう。
そこで僕は、観光庁の下部組織である「日本旅行業協会」まで出向き、自働車の中で寝泊まりする「くるま旅」という概念を旅行形態のなかに入れてくれ、と頼みに行ったことがあるんです。
それ以降ですね、ツーリズムという言葉のなかに「くるま旅」という概念が盛り込まれて、それが世の中に広まり始めたのは。

「文化」とは想像力だ

【町田】なるほど。観光庁が認めることで、「文化」として認知されるようになったと。

【荒木】けっきょく「文化」という形にまで昇華させないと、キャンピングカーなどは普及しないんですね。
日本の風土を考えると、ある意味、恵まれてすぎているんです。観光地の周辺にはホテルがいっぱい建っている。道中にはファミレス、コンビニ、高速のSA・PAなどというインフラが整備されている。
そういう社会では、「寝泊り可能な空間」としてのキャンピングカーをいくら宣伝してもほとんど説得力がないわけですよ。乗用車でドライブしてホテルに泊まればいいわけだから。
要するに、「車内で寝泊りする “楽しさ” 」を訴えないかぎり、誰の興味も引かない。その “楽しさ” を人々の心に上手にイメージ付けさせる力が「文化」なんですね。
たとえば、車に泊まることによって得られる「非日常的な面白さ」とか、「車を止めてこそ見られる幻想的な光景」とか。そういうように、ユーザーの想像力を刺激することこそ「文化」なのであって、今のキャンピングカー業界の広報に欠けているのは、その部分だと思っています。

新しい遊びの提案「CAMP JAPAN」

【町田】ユーザーの想像力を刺激する方法として、具体的にどんなものがありますか?

キャンプジャパン 富士スピードウェイにて
キャンプジャパン 富士スピードウェイにて

【荒木】キャンピングカーユーザーがこれまで味わったことのない体験を演出するという手もあるでしょうね。たとえば、キャンピングカーでサーキットを走ってみるとか。
実は昨年、「CAMP JAPAN」という名のイベントを企画し、その第一弾として富士スピードウェイを使って車中泊イベントを行いました。これは耐久レース(WEC第7戦)を観戦しながら、富士山の麓でキャンプやバーベキューを楽しむという企画だったんですが、レース公式練習前の時間に、キャンピングカーオーナーがコース走行を経験するという時間も設けたんです。
これはほんとうに参加者が喜んでくれました。今まで体験したこともなかったイベントだと。

【町田】そういう新しい遊びの提案はほんとうに大事ですね。

【荒木】私たちキャンピングカー業界人は、これまでは物をつくったり売ったりすることだけを熱心に追いかけてきましたけれど、これから先は、「売った後をどうするか?」、つまりお客様に「キャンピングカーをどう楽しんでもらうか」ということに心を配らなければならない時期が来たように思います。
私たちは、昔からそのことを考えていまして、年に1回から2回、お客様を招待して「感謝祭」というキャンプ大会を催しています。
これは多いときは400台ぐらいのキャンピングカーが集まる大規模な集会で、日本全国から楽しみにしていたお客様が集まってくださいます。 そこでは、エリアごとのチームに分かれた綱引き大会、玉入れ競争、豪華賞品が当たるじゃんけん大会やビンゴゲーム、コンサート、フォークダンス大会など、大人も子供も楽しめるたくさんのアトラクションが組まれています。

ナッツRV感謝祭
ナッツRV感謝祭

「人間力」を育てる「会社力」

【町田】そういう新しい遊びの提案というのは、ナッツさんの場合、どういうふうに生まれてくるのですか?

【荒木】やっぱり、キャンピングカーを提供する側の方が、まず遊んでいないと新しい遊びの提案も生まれてこないでしょうね。遊び方というのは、学校の教科書に載っているようなものではないですから、日頃自分が楽しんでいるものを頼りにするしかないわけですね。
そういった意味で、今うちでは社員に1ヶ月ぐらいの夏休みが取れるような体制づくりを進めているところです。お客様に遊びの提案をするためには、やはり社員自身が遊んでいないと駄目ですから。
すでにフィリピン工場では10日の連休を打ち出し、中国工場では1年に2回ほど1週間の連休を実現させている。国内はまだこれからなんですが、3年以内には、社員全員が1ヵ月程度の有給が取れるようにしていくつもりです。

【町田】そうなった場合、社員の意識もそうとう変わるでしょうね。

【荒木】けっきょく良い「労働力」というのは、良い「職場」からしか生まれない。私たちは「夢」を売る商売なので、社員自身が「夢」を持っていなければ、キャンピングカーの魅力をお客様に伝えきれない。
「人間力」という言葉がありますけれど、企業の場合は「会社力」というものもある。その「会社力」がないと、「人間力」を持った社員が育たない。
そういうことに気が付いて、去年本社工場に社員食堂も作りました。80人規模の収納力のある食堂ですから、それなりに大きい食堂だと思いますよ。

【町田】すごいですね! 社員食堂を持ったキャンピングカーメーカーなんて、日本にはありませんよ。

【荒木】とにかく、会社の力というのは「人材」なんですね。社員が喜んでくれるような会社でないと、「人材」そのものが育たない。
食堂を作って、社員においしい料理を食べてもらって、みながその職場を楽しいと感じてくれるのだったら、食堂の建設など安いものです。 会社を大きくしていくものは、やっぱり最後は「人の力」ですから。

【町田】素敵なお話をいろいろありがとうございました。

【荒木】いえいえ。まだまだできていないことはたくさんあるし、課題もたくさん残っています。しかし、言い訳をせずに、素直な気持ちで、前を向いて歩いていきたいと思っています。

WRITER PROFILE
町田厚成
町田厚成 (まちだ・あつなり)

1950年東京生まれ。 1976年よりトヨタ自動車広報誌『モーターエイジ』の編集者として活躍。自動車評論家の徳大寺有恒著 『ダンディートーク (Ⅰ・Ⅱ)』ほか各界著名人の著作の編集に携わる。 1993年『全国キャンプ場ガイド』の編集長に就任。1994年より『RV&キャンピングカーガイド(後のキャンピングカースーパーガイド)』の編集長を兼任。著書に『キャンピングカーをつくる30人の男たち』。現キャンピングカーライター。

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