新エンジンを得たランドホームを試乗

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新エンジンを得たランドホームを試乗

コースターは日本の道路事情にマッチしたバスコンのベース車両だが、長らく製造が止まっていた。’23年2月に排ガス規制をクリアするそれまでの日野製エンジンからトヨタ製エンジンに載せ替えが発表され春からデリバリーが開始されたことが、実は今ちょっとしたキャンピングカー界でトピックスとなっている。

そんな新型シャシーでいち早く架装されたRVランドのフラッグシップモデルであるランドホームに試乗できる機会を得たので、その車両内容と変更点、試乗フィーリングをお伝えしよう。

新型ランドホームの特徴と傾向

ランドホームの室内
ドライブコンポーネンツ以外今回の変更はなかったため、ランドホームにおいても架装部分に大きな変更点はない

ランドホームはバスコン、世界的にはモーターホームといわれるカテゴリーで装備はフルスペック。さらにゴージャスな設定や質感が持たされているので価格もそれなりで、今回試乗したモデルはコースター標準ボディハイルーフLXベースで税込み1496万円。

確かに高額モデルだが、昨今の国産キャブコン、世界的に見ればこれはミニモーターホームというカテゴリーにあたるものは、それらもフルスペックで装備品を搭載すると1000万円を突破どころか既に同価格帯になってきた。ここで誰しもが「もしかしてコレならいける?」となる。

この辺りについては、後述する試乗の部分を参照してもらうとして、まずはランドホームの特徴と傾向を見ていこう。

リヤ常設ベッド
リヤ常設ベッド分割マットを採用し、横方向で寝ていると隣の人の寝返りの影響が受けにくい
最後部キャビネット
最後部キャビネットは収納だけでなくちょっとした作業台としても活用できる
トランクハッチ
ベッド下は、コースターお得意のトランクハッチがあるので、巨大な外部収納庫としてまるまる利用できる

基本レイアウトプランではリヤダイネットというのがランドホームの基本だが、最近の傾向として常設ベッドのオーダーが増えているようだ。

車両サイズ的に要準中型免許であり、そのサイズが取得時の普通免許で乗れたのはある程度年齢のいった年齢層。そういったユーザーには、特に乗車定員が10名というのはそれほどのメリットとして映らないのだろう。

マルチルーム
マルチルームは従来どおりとくに装備は持っていないが、このスペースにもエアコン吹き出し口がありかなり冷える
エアコン
キャビネット内へエアコンの冷風を通す工夫がされているので、どこに座っていても涼しい風が出てくる

ランドホームは、登場時からコースターが持つ強力なエアコンシステムをフル活用するため、前から後ろまでキャビネット奥にダクトが仕込まれている。FF暖房の方も同様に車両全体にくまなく送気できる。

このエアコン、さすが常用専用で作られているだけあり効きは抜群で、国産キャブコンが家庭用エアコンをリヤクーラー代わりに採用するのとは桁が違う走行時の冷却能力を持っている。それとは別に最後部に家庭用クーラーも装備しているので、エンジン停止時でも涼しい環境を作り出せるのも特徴だ。

鉛バッテリー
標準ではかなり強力な鉛バッテリー300Ah装備だが、オプションでリチウムイオン電池300Ahとそれに対応した走行充電強化と外部充電強化のシステムが25万3000円で組み込める

そもそも電源のシステム関係に強いRVランドだが、時流に乗り当然リチウムイオン電池も用意。ランドホームを選ぶユーザーは、もはやリチウム電池への換装が定番となりつつある。

ざっくり理由を言えば、同容量の同サイズの電池で考えればリチウムイオン電池は鉛バッテリーに比べて半分の重量で取り出せる電気量は約倍、机上の空論で計算すれば4倍の性能であり、サイクル放電数で言ったらさらにその性能比が大きくなるからだ。

エンジン、ミッション何が変わったのか

運転席
コンソールと運転席上ルーフにドライバー異常時対応システムのスイッチが付いたとか、排気ブレーキが無くなったなどがすぐ分かる
プリクラッシュセイフティの歩行者検知機能やミリ波レーダー
プリクラッシュセイフティの歩行者検知機能やミリ波レーダー、単眼カメラなどの収まりは、カムロードよりもハイエースっぽくあまり目立たない

新型になって多くの人が懸念しているのが、排気量が小さくなったことでドライバビリティが悪くなるに違いないという観念。確かに普通で考えれば低速トルクなどで不利になるだろうな、と思うが、以下スペックを書き出して見たのでじっくり見ていただきたい。

新型コースター 旧型コースター
エンジン型式 1GD-FTV N04C-WA
総排気量 L 2.754 4.009
最高出力:ネット kW(PS)/r.p.m. 110(150)/
2500
110(150)/
2500
最大トルク:ネット N.m(kgf・m)/r.p.m 420(42.8)/
1400~2500
420(42.8)/
1400~2500
トランスミッション形式 AK60E A861E
1速 3.741 3.314
2速 2.002 1.912
3速 1.342 1.321
4速 1.000 1.000
5速 0.772 0.750
6速 0.634 0.605
後退 3.538 3.134
減速比 不明 4.625

見比べれば分かるが、旧型に搭載されていたN04C-WAの最高出力と最大トルクの発生回転数域は、エンジンだけで見れば新型に搭載された1GD-FTVと根本的に変わらない。

そしてもう1つ頭に入れたいのはトランスミッションのギヤ比。新型コースターの最終減速比が得られなかったので確定ではないのだが、新旧で比較すると4速が等倍で、1速にいたっては新型コースターの方がギヤ比が大きい。6速全体通して見ると旧型の方がハイギヤード設定なので、同じ出力なら新型の方が加速重視とでも言えるような組み合わせになっている。

フィーリングが圧倒的に向上

運転席からの視野
マイクロバスならではのワイドボディから得られる視界は、運転者だけでなく後方着座の同乗者にも開放感を生み出す

さてスペックを頭に入れ鍵を渡されシートに潜り込む。あ、これはシートが違うと気づいたが、それはオプションのレカロが組み込まれていたから。ひと通りダッシュボードのスイッチ類などを見渡し違いを確認しつつエンジンをスタートすると、もはや旧型がなんだったのかと瞬間に理解する。

何しろ静かなのだ。シート下にエンジンがマウントされているが遮音がしっかりできているようで、さすが乗用がスタンダードのモデルと感心する。同じエンジンがキャブコンの現行カムロードにも載っていて、それに変更された時も静かさに驚かされたものだが、さらに静かなのだ。

動き出すともっと顕著で、加速時にミッションの設定が回転を上げ気味で引っ張る傾向がありそうだが、その状態の中でもキャブコンより離れた位置の助手席とで声を張り上げず通常会話ができるのだ。

加速感も悪くなく、排気量が小さくなったことを気にする必要はまったくないと言っていいレベル。重量がある車体なので、長距離高速移動などの時の燃費が同じエンジンを搭載したカムロードと比較し、どの程度になるかは気になるところではある。

バスコンもしくはモーターホーム、いわゆる箱型の大きな車両を運転したことがない人にはなかなか理解してもらえないのだが、全長5.2m前後のキャブコンより見切りのしやすさや死角の少なさから運転そのものが楽チンだし、最小回転半径は5.5mでありハイエーススーパーロングの6.1mで曲がれないようなところも難なく進行できてしまう。

そして決定的に国産キャブコンと違うのが、乗り心地全般。その最大の要因は、ホイールベースがカムロードで2545㎜、コースター標準ボディ3200㎜という違いからくるものだろうが、そもそもバネの効きが設計段階から決定的に違っている。ロールやピッチなどの発生も、通常の乗用車として考えていいレベルなのだ。

というわけで、今回のエンジン換装によるモデルチェンジは、キャンピングカー的に見るとかなり成功なのではなかろうか? という感想を持った。国内でのメンテナンス性の高さなども考慮すると、価格帯に手が届くのであればバスコンであるランドホームを選択肢に入れる時代になったのかもしれない。

WRITER PROFILE
鈴木康文(TAMA@MAC)
鈴木康文(TAMA@MAC)

1991年、月間AutoCamper誌の前身であるDomaniの立ち上げに参加して以来、一貫してキャンピングカーとモーターホームの記事執筆を主に、アウトドア一般にいたるまで幅広く各種メディアでの活躍を続ける。途中DVDの制作や編集も手がけ、マルチメディアに対する興味は人一倍。現在は、’88 Hymer S660と同時所有していたトレーラーの’97 Hymer Touring Troll Puckをけん引中。

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