大容量リチウムイオンバッテリーでエアコンは何時間動く?実際に使用して性能を検証してみた!

キャンピングカー活用法
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大容量リチウムイオンバッテリーでエアコンは何時間動く?実際に使用して性能を検証してみた!

前回のコラムで、トラキャンのサブバッテリーをリチウム化したことを報告した。リチウム化に踏み切った理由や搭載システムの詳細はその記事内で詳しく書いたが、多くの人がもっとも興味を持っているのは「リチウム化の恩恵」「リチウムイオンバッテリーの性能」についてだろう。

筆者自身、鉛タイプのディープサイクルバッテリーを搭載したキャンピングカーを乗り継いで、15年以上もキャンプやクルマ旅を楽しんできたユーザーの1人。そんな筆者のキャンピングカーライフが、サブバッテリーのリチウム化でどう変化したのか。今回のコラムでは、実体験を基にリチウムイオンバッテリーシステムの性能と魅力をレポートする。

リチウムバッテリーでエアコンは何時間使える?

キャンピングカーの生活電源システムをリチウム化する理由は、「バッテリーでエアコンを長時間稼働したい」「家と同じように電気を使いたい」という2点に尽きるだろう。年々暑さが厳しくなっている夏場のクルマ旅において、もはやエアコンは不可欠なアイテム。エンジンを止めた状態でエアコンが長時間稼働できれば、暑い夏でも快適にクルマ旅を楽しめ、食事や買い物の際にペットを留守番させておくこともできる。では、実際にリチウムイオンバッテリーでエアコンを何時間動かせるのだろうか?

リチウムイオン

まずは、筆者のトラキャンに搭載したリチウムイオンバッテリーシステムについておさらいしておきたい。リチウム化の作業を依頼したのは、トラキャンの製作ビルダー・MYSミスティック。搭載したのは、同社のフラッグシップキャブコン・アンセイエに標準装備されている、最新・最高峰の純正428Ahリン酸鉄リチウムイオンバッテリーシステムだ。

ウインドーエアコン

トラキャンに搭載したウインドーエアコンは、キャブコンなどで使用される家庭用セパレートエアコンと比べて消費電力が大きいのがデメリットだ。冷房能力は申し分ないが、消費電力は700W(60Hz)と大食い。大容量リチウムとはいえ、どれだけ連続稼働できるのか不安が残る。

キャンピングカーのリビング

残暑厳しい9月中旬。トラキャンのシェル内で一晩過ごして、リチウムイオンバッテリーによるエアコン稼働時間を検証した。21時の時点で外気温は28℃、シェル内の温度は約30℃。ウインドーエアコンのほかに65ℓ冷蔵庫、室内照明、テレビ、USB充電もフル活用して、普段の使い方と同様の条件でリチウムの性能をテストした。

24℃設定でクーラーを稼働してから、1時間程度で室内温度が25℃前後まで下がり、3時間後の深夜0時時点で、バッテリー容量の約18%にあたる79Ahを消費。そのままエアコンをつけっぱなしで就寝し、スタートから11時間後の翌朝8時に検証を終了した。

最終的に使用した電気は、242Ah(バッテリー全容量の57%)。ウインドーエアコンと冷蔵庫を11時間連続稼働して、照明、テレビ、USB充電を使用しても、まだバッテリーの容量が186Ah(43%)残っている計算だ。大消費電力のウインドーエアコンで、この結果は予想以上! 消費電力の少ない家庭用セパレートエアコンなら、さらに稼働時間は延びるだろう。

バッテリーのコントロールパネル

このテストで、熱帯夜でも一晩は余裕でクーラーを稼働できることを実証できた。これなら、暑い夏のキャンプやクルマ旅も快適に楽しめて、ペットを留守番させるのも安心だ。

テスト結果(外気温28℃)

電気使用状況
クーラー(11時間)/冷蔵庫(11時間)/照明(4時間)/テレビ(2時間)/USB充電(スマホ・タブレット・電子タバコ・カメラ)

バッテリー使用量
・1時間半経過 40Ah(全容量の9%)
・3時間経過 79Ah(全容量の18%)
・11時間経過 242Ah(全容量の57%)

外部電源を使わず5日程度の連泊が可能

10月上旬に12日間の北海道キャンピングカー旅に出かけ、11月は富士山麓の「ふもとっぱら」、12月は西伊豆の「雲見夕陽と潮騒の岬オートキャンプ場」でキャンプを楽しんできた。そこで感じたのは、「クーラー以外は、何を使っても電気の心配がいらない」ということだ。

草原と羊とキャンピングカー

北海道の旅では、10月とはいえ朝晩の気温が6~8℃まで冷え込んだので、毎晩FFヒーターを稼働した。冷蔵庫は出発から帰宅まで12日間つけっぱなしで、夜は室内の照明をつけてUSB充電もフル活用。大消費電力の電気ポットや炊飯器も使用したが、1日の電気使用量は40~60Ah程度で、もっともバッテリー容量が減ったときで残量365Ahだった。リチウムイオンバッテリーシステムは走行充電の効率が高いので、滞在中にバッテリーの電気を使っても、翌日の走行で再び満充電状態に戻る。おかげで12日間の長期旅でも、サブバッテリーの容量をまったく気にせずに生活することができた。

富士山とキャンピングカー

11月と12月に行った1泊2日のキャンプでも、状況はまったく同じだった。FFヒーター、冷蔵庫、照明、USB充電、炊飯器、電気ポットを使用しても、チェックアウト時のサブバッテリー容量は360Ah程度。これならAC電源設備がない場所でも、5日程度ならまったく問題なく連泊できそうだ。

電気残量

アウトドアや災害時に役立つ電源車

電源コード

大容量リチウムイオンバッテリーシステムの搭載に伴って、シェルの外装にアウトプット用の2口コンセントを追加したのも大正解だった。

炊飯器 ケトル

北海道の長期旅や富士・西伊豆のキャンプでは、このコンセントを使用して屋外で炊飯器や電気ポットをフル活用。ポータブル電源を使用するのと同じような感覚で、キャンピングカーを電源車として使用できるようになり、アウトドアライフの快適性が大きく向上した。こうした使い方ができるのも、大容量のリチウムイオンバッテリーシステムだからこそ。屋外で安心して電気を使えることは、キャンプなどのアウトドアレジャーはもちろん、災害時にも大きなアドバンテージになる。

サブバッテリーをリチウム化する際の注意点

ECO POWER LITHIUM

「エアコンを長時間稼働できる」「大消費電力の家電を安心して使用できる」ことが、リチウムイオンサブバッテリーの最大のメリットだ。1年を通して快適なクルマ旅やキャンプを実現できるよう、今後さらにキャンピングカーの装備として定着していくことだろう。

ただし、今まで以上に多くの電気を使用できるということは、一歩間違えればリスクが増えるということでもある。安全なリチウムイオンバッテリーシステムを構築するには、相応の知識や技術が必要となるため、安易なDIYはお勧めしない。安全性・耐久性・保証面などでもっとも安心できるのは、やはり車両を製作したビルダーによるアップグレード。どうしてもビルダー以外で作業しなくてはならない場合は、豊富な実績を持った信頼できる業者にお願いするのが絶対条件だ。

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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