聖地とまで言われる北海道は、キャンピングカーオーナーなら1度はたっぷり時間を取って走ってみたいところではないだろうか。かく言う私もその1人で、昔からずっと憧れていたものだ。しかし車両が子供に言わせると“ハイマーバス”という全長7mのちょっと大きなものであったため、そこまで車両を持ち込むのも時間と経費が大変ということもあり二の足を踏んでいた。
ところがひょんなことから、車両を北海道に置いて出掛けた時に乗ればいいジャン!という夢のようなお誘いがあり、普段使っているテーブルやランタン、寝袋とか搭載したまま、釧路のとある車両保管場に持って行った。さらに日常のメンテナンスや継続車検も釧路でするわけで、自分で乗っていた時よりも車両がいつもピカピカというおまけ付き。私自身は、あまり車両を洗うことはなかったのです、ありがたいことです。
北海道の周り方
キャンピングカーで北海道を旅する人の多くは、道東や道北を目指すという。船で渡ると苫小牧や函館、小樽が入り口になるわけでそこからの距離は膨大、東名高速を走り切るより長い。その点ではスタートが釧路で済ませられる自分は随分と日程的にも恵まれた行動が取れる。というわけで、2週間弱でぐるっと北海道を巡った経路をザッとたどってみよう。
釧路から根室、標津を通り“熊出没注意”の看板並ぶ羅臼、知床国立公園を堪能した後、網走でとても大きなシジミにびっくりしつつオホーツク流氷館で本物の流氷を夏に鑑賞。
予定では全行程2週間ほどを考えていたが、それだけの時間を持ってしても完全に一周するのは無理と考え道北を諦め進路を西に取り北見、旭川、札幌を通り苫小牧入り。いや、正直言ってマジで遠いですよ稚内は。
道中での買い出しや日帰り入浴などは特に下調べをしていなくても困ることはなく、日用品の購入もホームセンターなどが割と見つかりやすく助かる。それにしても、北海道が意外に蕎麦処であることとか、ご当地米の多さに驚く道すがら。
苫小牧では、乗り物好きとしては押さえておきたい実物予備機のミールの展示。場所は苫小牧市科学センターで、街中施設にも関わらずモーターホームで普通に駐車できたのにはビックリ。
途中何泊もキャンンプ場を利用してはいるものの、よほどのハイシーズンど真ん中でない限り当日予約でたいてい問題なかったのはノープランで走る身としてはありがたい。
1週間も1人でフラフラしていると人恋しくなるもので、同時期に道南を走っている友人に連絡を取り洞爺湖で合流。ホームセンターでBBQに必要な道具を揃え、ちょっと奮発して食材を買い込み、いつになくゴージャスな食卓を実現。こういった時は、1人だと購入を躊躇してしまうようなものも気兼ねなく手に取れるので楽しい。
それにしても北海道という地は、町や市が格安のキャンプ場をそこここに用意してくれているので、キャンピングカーであまりガチガチな予定なく走り回るには本当に素敵な所だ。確かに道の駅などを利用している人も多くみられるが、キャンピングカーならやはりちゃんとしたキャンプ場に立ち寄るのを基本と心がけているところである。
洞爺湖を離れ、室蘭でホッキ貝をお腹に収め、鵡川のシシャモはまだ時期外れでガッカリし、日高で綺麗なサラブレッドを眺めつつ、南下してたどり着いたのは襟裳岬。いや、遠い、すごく遠い。でもその雄大な落ち込む地形に圧倒される。
そこから海岸線を北東方面に走り、大樹町の北海道スペースポートへ。国道からの入り口に、それほど大きくはないのだがスペースシャトルを形どったロケットモニュメントが建っている。大樹町宇宙交流センター SORAという展示施設に到着すると、そこには現行で商業飛行を目指すロケットの模型とかイッパイ。過去のモデルの展示もあれば本物?固体燃料が触れちゃったり、いやこんな最先端大々的に公開しちゃって大丈夫なのだろうかとも思ったりして。
向かいにはJAXAの巨大格納庫があり、ここから大気球実験のブツが引き出されるらしい。しかも出掛けた翌日の早朝打ち上げと聞き、駐車場にモーターホームを止め登っていく姿を観戦しようと交渉した。ところが朝になると風が出てしまったので打ち上げ中止でとても残念なことに。
そのあとは、だらだらと釧路湿原国立公園まで戻り設備の充実した達古武オートキャンプ場に入り、のんびりモーターホームの掃除をしながら雄大な景色を堪能、そして飛行機に乗って東京に戻ってきたのである。
実はこの旅の自分なりの裏テーマは乗り物だったのだが、それを追いかけ走り回っているだけでも色々な北海道を見て知ることができた。しかし2週間かけて足早に周っても、道北と道南は手付かずだったのである。
それと注意事項を1つ。道路にシカ注意とかペイントされていたら本当に気をつけましょうね。北海道は大型獣の天国ですし、そこへ我々が入り込んでいるわけで、万が一ぶつかっちゃったりしたらおそらく走れなくなっちゃいます。夜の真っ暗なところは、あまり走らないほうがいいでしょうね。
北海道への渡航方法
さてある時の北海道キャンピングカー旅を振り返って見たが、一般的に一番問題になるのは、車両をどうやって北海道に持ち込むかだ。そのほとんどはどこからかフェリーに乗せ北海道上陸というスタイルであり、その場合基本的に自走ということになり時間もかかるし経費も膨大。
そこで実際に北海道をキャンピングカーで旅している人はどうなのだろうと、北海道でキャンピングカーをレンタカーとして取り扱っていて現況に詳しい、北海道ノマドレンタカーの阿部晋也さんに聞いてみた。
北海道ではキャンピングカーのレンタルでの稼働率はかなり高いようで、千歳からスタートして出かける先で多いのは道東や道北がかなりを占めるそうだ。また冬の稼働率はもはやパンパンらしく、パウダースノーを求めて天気に合わせ移動するスキー客がほとんどらしい。
この場合は自分は飛行機移動なので、時間的な制約はかなり縮小できる。しかし自前のキャンピングカーで走りたい場合は…、なんと陸送という手があるらしい。例えば東京のような都心部から陸送をかけると、受け取りがノマドだった場合関東から9万円前後ではないだろうかとのこと。
陸送を業者に任せる場合、おそらくRORO船という一般人では使えない方法が用いられると想像するが、からだは飛行機で北海道まで飛べばいいので、そこまでの時間と経費を考えると、家族連れなどの場合かなりお得になるのではないだろうか。何しろ最近のLCCだと北海道上陸は1人1万円くらいなので。
キャンピングカーを北海道に置く方法
そして1度で北海道全部を巡るのはなかなか難しいという事実。そのような場合は、例えば1年くらいの間に何度か北海道に渡り全地域を制覇する、というような目的でモータープールを利用する方法が考えられる。その場合当然施設の整備場の利用やキャンプから帰ってきてのメンテナンス、掃除、ゴミ捨てにも対応できる。車両そのものは北海道に置いておいて自分は別の方法で移動するというわけだ。
たとえばノマドでは、一般的にモータープールと呼ばれる車両保管管理委託契約書を結んで居住地から離れた状態で車庫証明が取得可能な自動車保管施設も運営する。これは22年秋から開始したサービスで、現在30台ほどのキャパシティがあり、整備場付きで月額2万6000円。、実際に車庫証まで取ってナンバーを付け替える必要はないにしろ、整備も含めて対応できるという。
自分のハイマーバスでの場合は、この最後の整備や掃除をキャンプ場やどこかの施設を探してやっていたわけで、いろいろ考えても相当便利な環境ではないだろうかと思える。おまけに、車両は千歳のモータープールに置き女満別へキャンピングカーだけの回送も可能のようだ。23年秋からは、道東の釧路や帯広へも回送の実験を開始したいとのこと。
ちなみにレンタカーの追加情報として、カムロードベースは4輪駆動が基本な所が北海道という土地ならでは。メンテナンスに関しては、整備や販売でRVランド北海道と提携していることもあり欧州車も大丈夫となっている。
意外だったのは、車両を置く千歳のモータープールあたりは、あまり雪が降らないらしいこと。だとすれば、夏だけでなくかなり気軽に冬の北海道も満喫できるかもしれない。