【ビルダー社長のキャンピングカー】フィールドライフ 福島雅邦代表

メーカー・販売店インタビュー
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【ビルダー社長のキャンピングカー】フィールドライフ 福島雅邦代表

キャンピングカービルダーの社長は、普段どんなクルマに乗り、どんなライフスタイルを送っているのだろうか? 自らキャンピングカーライフを実践するビルダー社長にスポットを当て、その愛車とライフスタイルを紹介することでビルダーのバックボーンを紐解くのが、本企画の趣旨だ。

今回ご登場いただくのは、群馬県渋川市で30年以上に渡ってキャンピングカーを作り続けてきたフィールドライフ福島雅邦さん。品質の高いメイド・イン・ジャパンにこだわり、エポックメイキングなキャンピングカーを数多く生み出してきた、老舗ビルダー社長の愛車遍歴とは?

フィールドライフ代表 福島雅邦さん
フィールドライフ代表 福島雅邦さん

キャンピングカーに出会った1970年代

若かりし頃から、クルマが大好きだった福島さん。独身時代は、フルチューンのサニーに始まり、クロカン4WD、輸入キャノピーを搭載したピックアップトラックなど、様々なカテゴリーのクルマを乗り継いで、自由なカーライフを謳歌してきた。

そんな福島さんがキャンピングカーの魅力に開眼したのは、結婚して長男が誕生した1970年代後半のこと。家族でキャンプを楽しむためのクルマとして、いすゞ自動車が製造していたウォークスルーバン「ハイパックバン」をベースにしたキャンピングカーを所有したのが、現在まで続くキャンピングカーライフの始まりだった。

キャンピングカーの中で話す福島さん

「リアにキッチンやトイレ、ベッドを装備した6名乗車のキャンピングカーでした。家族3人でこのクルマに乗って、よくキャンプに行きましたね。まだ赤ん坊だった長男のおむつを持参して、北海道・洞爺湖のほとりでキャンプをしたり……。キャンピングカーの楽しさや魅力を教えてくれた、“原点”とも言える1台でした」

遊びの経験をキャンピングカー開発に活かす

当時は、日本におけるキャンピングカーの黎明期。福島さんも、フィールドライフの前身である福島自動車で、キャンピングカー&バニングの販売やオリジナル車両の開発を行っていた。もちろん、自らもユーザーとしてキャンピングカーライフを謳歌。仕事でもプライベートでも、キャンピングカーに深く関わり続けた。

福島さんにとって2台目となるキャンピングカーは、当時活躍していたビルダー「MAC」のパーツを組んで製作した、コースターベースのワンオフ車両。ルーフを80cmほどかさ上げしてポップアップルーフを搭載し、室内にコの字ソファベッド、キッチン、トイレ・シャワールームを備えた本格的なキャンパーだった。

その後も、全長9mの中型バスにユニットバスまで装備したワンオフのバスコンや、革新的なハイドロバックパネルを採用したダイナ2tベースのキャブコン「シェルター2001」など、複数のキャンピングカーを乗り継ぎ、充実したキャンピングカーライフを送ってきた。そうした経験を活かし、1991年にフィールドライフを創業。オープンと同時に世界初となる軽自動車ベースのキャンピングカートライキャンパーを発表して、大きな注目を集めた。

「どのキャンピングカーに乗っているときも、日本中走りまくって、遊びまくりましたね。実際に使ってみて初めてわかることも多いですから、オーナーとしての経験がキャンピングカー開発における大切な土台になりました。世界初の軽自動車キャンピングカー“トライキャンパー”も、旅の途中に小さなクルマで車中泊している人を見かけたことがヒントになって開発した車両なんです」

フィールドライフ「トライキャンパー」
フィールドライフ「トライキャンパー」

日本初の軽キャンパーとして1991年にリリースされた、フィールドライフトライキャンパー。同社の中核モデルとして、長年に渡り人気を博した。

現在の愛車は“キャンピングカー史に残る国産クラスA”

フィールドライフの「プラッツ」

福島さんの現在の愛車は、フィールドライフが2000年にリリースしたプラッツ“国産初のフルコンバージョン”として、業界関係者やキャンピングカーユーザーに衝撃を与えた、エポックメイキングなモデルだ。実は福島さんにとって、現在のプラッツは2台目の愛車となる。1台目は、1998年から2年がかりで市販モデルに育て上げた、プラッツの記念すべき1号車だった。

「もともとそんなに台数が出るクルマではないと思っていたので、“自分が乗りたくて作った”感覚が強かったです。それだけに思い入れもあったし、実際に使ってみないとわからないことも多いので、テスト的な意味もあって自分で乗っていました」

フィールドライフの「プラッツ」のリア

フルコンバージョンとは、フレーム、駆動系、動力装置のみで構成された専用のベアシャーシをベースに、コクピットから居住部分までのすべてを架装メーカーが製造したキャンピングカーのことを指す。キャンピングカーのカテゴリーにおける最高峰であり、製造には高度な開発力と技術力が必要となる。ましてや、情報が少なかった20年以上前のこと。日本で前例のなかったフルコンバージョンの市販化というチャレンジは、非常に困難なものであったと容易に想像がつく。

「難題に挑戦することで、スタッフの技量や作り手のプライドを大きく向上できるはず。国内初のフルコンバージョン製作は、キャンピングカービルダーにとって未来への投資だと考えていました。開発着手から市販化まで2年がかりの一大プロジェクトでしたが、それだけに達成感は大きかったし、自分にとっても特別な存在になりましたね」

プラッツの運転席

福島さんが現在所有しているプラッツは、12年前にユーザーが新車で購入して大切に乗り続けていた個体を買い戻したものだ。生産終了までに、フィールドライフで製造・販売されたプラッツは、合計22台。中古市場でもお目にかかることはほとんどない希少モデルのため、レストアして自分で乗り続けることを決意したという。

プラッツの車内

「カーテン、マット、レンズ類を新品に交換すると同時に、ルーフエアコンを家庭用エアコンに、鉛のディープサイクルバッテリーをリチウムイオンバッテリーに、室内照明をすべてLEDに交換するなど、現代的な技術もプラスしました。長い年月を経た現代でも色あせない魅力がある1台だと、あらためて実感しています」

現代でも特別な輝きを放つ国産最高峰キャンピングカー

プラッツの側面

全長7800mm×全幅2200mm×全高3300mmの堂々たるボディは、キャンピングカーの最高峰フルコンバージョンの面目躍如というべきもの。ベースは、当時のトヨタ特販特装車両部から提供された、コースターHDB51のベアシャーシを使用。リアワイドトレッドのシャーシにハイパワーの4.2Lディーゼルエンジンを搭載し、4輪ABS、エアサスも装備する。

ルーフのリア部分 ルーフのリア部分に設けられた昇降式のスカイビュー

プラッツの最大の特徴と言えるのが、ルーフのリア部分に設けられた昇降式のスカイビュー。油圧システムのスイッチ操作でルーフがせり上がり、屋根の上に“もうひとつの居住スペース”が登場する。周囲を通気性抜群のネットで囲んだ居住部は、7~8人でテーブルを囲めるゆとりのサイズ。車上から花火見物をしたり、ビアガーデンとして活躍したりと、国産フルコンならではの優雅なひと時を提供してくれる。

キッチン

ボディサイズを活かした、開放的なリビングスペース。左右に配した大型アクリル窓で、採光性も抜群だ。

レンジフードとオーブンレンジ レンジフードとオーブンレンジ

キッチンには、ホーロー製のツーバーナーコンロやシンクをインストール。上部には、レンジフードとオーブンレンジも完備され、家と同様の感覚で車内調理も快適にこなせる。

家庭用エアコン

もともと搭載されていたルーフエアコンを取り外して、家庭用エアコンを新設。それに伴い、リチウムイオンバッテリーで生活電源システムも大幅に強化した。

トイレ&シャワールーム

十分な広さを確保したトイレ&シャワールーム。トイレには、ウォシュレット付き便座も装備している。大容量300Lの水タンクで、温水シャワーの使用も快適だ。

コクピット上部の昇降式ベッド リアエンドのキングサイズの常設ベッド

コクピット上部には昇降式ベッド、リアエンドにはキングサイズの常設ベッドを完備。

リアエンドのキングサイズの常設ベッド

リアカーゴの容量は、ナント4600L! 自転車やバイク、アウトドア・アクティビティの大型ギアも余裕で積み込める。

現在も続く至福のキャンピングカーライフ

福島さん

自身の思いが詰まったプラッツで、現在もキャンピングカーライフを楽しんでいる福島さん。その“キャンピングカー愛”は、昔も今も変わることはない。

「キャンピングカー歴は40年以上になりますが、今でも夫婦でプラッツに乗って年中出かけています。最近では、カーゴに積んだ2台の自転車で訪れた街をゆっくり散策する、“居酒屋探訪の旅”がメインですね(笑)。プラッツでキャンピングトレーラーを牽いて、娘の家族と3世帯で出かけることもありますよ」

キャンピングカーでの遊びや旅を通して、発想を育てる。それが、フィールドライフ創業時からの変わらないスタンスだ。キャンピングカーを実際に使い込むことから生まれるアイデアや工夫は、フィールドライフのクルマづくりへと確実にフィードバックされている。

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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