2人の専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2022」

メーカー・販売店インタビュー
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2人の専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2022」

千葉県・幕張メッセで2月10日(木)~13日(日)の4日間に渡って開催された、日本最大の屋内キャンピングカーイベントジャパンキャンピングカーショー2022

コロナ禍で改めてキャンピングカーの有用性に注目が集まっていることもあり、感染防止対策を整えての開催となった本イベントにも幅広い層のギャラリーが訪れた。

今回は、2人のキャンピングカー専門家に、今年のイベントを振り返ってもらった。

オートキャンパーWEB編集長の品田直人氏
オートキャンパーWEB編集長の品田直人氏

1人は、老舗キャンピングカー専門誌オートキャンパーの編集長を経て、現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長を務める品田直人氏

キャンピングカーライフ研究家岩田一成氏
キャンピングカーライフ研究家岩田一成氏

もう1人は、15年以上に及ぶ取材経験とユーザーとしてのノウハウをベースに、雑誌、WEB、イベント、テレビ、YouTubeなど、様々な形でキャンピングカーの魅力を発信している岩田一成氏

2人の専門家の目に、ジャパンキャンピングカーショー2022はどう映ったのだろうか?

最大のトピックは新型カムロードのキャブコン

【品田】各社が、新型カムロードを使ったキャブコンを製作してきましたね。なかでもバンテックが、いち早く新型カムロードをベースとしたジルシリーズとコルドシリーズを作ってきて即納体制を築いているのは、あっぱれとしか言いようがない。ただ、カムロードが新型になって、安全性と環境性能が向上した半面、それをベースに使用したキャブコンは総じて価格が高くなってしまった。

新型カムロードベースのZiL520
新型カムロードベースのバンテックZiL520

【岩田】品田さんと同じで、個人的に今回のショーの一番のトピックは、「新型カムロードベースのキャブコン」が各社から出そろったことだと思っています。意外と「新型」を声高にうたわずサラッと変わったという印象でしたが、実はこれってかなりすごいこと。キャンピングカーの走行性能や安全性能はベース車両に大きく依存しますから、価格が上がったにしても、カムロードのクルマとしての進化は、国産キャブコンの未来を支える大きな進化だと考えています。品田さんは、新型カムロードについてはどう思いますか?

【品田】正直な話をすると、個人的にはあまりいい印象を持っていない部分もあります。大きなネガティブ要素は、価格が高くなり過ぎたことと、ディーゼル車の場合、重量の関係で若い人が乗ろうと思ったときに準中型免許が必要になってしまうこと。

ディーゼル車が大径リアダブルタイヤの2WD/4WD、ガソリン車が小径ダブルタイヤの2WDというラインナップになったことで、多くのビルダーがガソリン仕様のモデルを設定しなくなったのも残念な点。ガソリンモデルなら、若いユーザーでも普通免許で乗れますから。ディーゼル車ベース一強の現状は、選択肢が狭まってしまったと感じます。

品田直人氏と岩田一成氏
対談する岩田一成氏(左)と品田直人氏(右)

【岩田】何かが変わると、メリットと共に必ずデメリットもありますね。ユーザーは「より安全に乗れるキャブコン」を長年待ち望んでいたので、新型カムロードの登場は喜ばしいことだし、高額になるのもある程度は仕方ない。何しろ、今まで1000万円を超えるキャブコンにも搭載されていなかった自動ブレーキなどの安全サポートシステムが装備されて、エンジン・ミッションも刷新されているわけですから。それはすごく大きな進歩だし、ベース車のよさはもっと評価されるべき。

【品田】確かに、先代カムロードは基本設計が古くて装備も最低限。ミッションも、古式ゆかしい4速AT。リアシングルタイヤだと、架装状態によってはバーストの心配もありました。

【岩田】それが、いまや全車ダブルタイヤに2.8Lクリーンディーゼル&6速ATですよ。カムロードに搭載されているGD型エンジンは、僕が乗っているハイラックスやランドクルーザープラドと型式が同じなんです。このディーゼルターボは、かなりいいですよ。燃費もいいし、静かだし、小排気量でも低速トルクが太くて、レスポンスもいい。

ヘッドライトにしても、今まではハロゲンだったので、購入後にユーザーがHIDとかに替えていたわけですよね。それが、いまやLEDヘッドライトが標準装備。自動ブレーキをはじめ、今までなかったものが付いたことは、クルマとして大きな進化です。クルマを乗る上で、安全よりも大切なものはないですから。

【品田】なんにせよ、新型カムロードベースのキャブコンが、今回のショーの目玉であることは間違いないですね。理想を求めて、ついつい「でもなぁ……」とデメリットに目が向いてしまいますが、新型ベースに大きなアドバンテージがあるのは確かです。

多様化するキャンピングカーと展示手法

トイファクトリーのニューモデルBALEIA
トイファクトリーの新型モデルBALEIA

【品田】キャンピングカーを買うユーザーの多くが、「ペットと使う」ことを購入動機に挙げています。今回のショーでも、ペット仕様のキャンピングカーが多く目につきました。

なかでもトイファクトリーは、専門の事業部があるくらいペット仕様のキャンピングカー開発に注力していますよね。ペットが認識しやすい色使いなど、ペットの習性まで考慮したキャンピングカーづくりが興味深いです。

愛犬家が本当に納得できる、ペットに寄りそったキャンピングカー。これは、ここ数年で大きく進化した部分だと思います。そのおかげで、「このクルマを買ったからペットを飼おう」というような、今までとは逆の発想も生まれそうですね。

対談

【岩田】キャンピングカーの使い方はキャンプと旅だけじゃないということが、この数年で広く認知されつつあります。今回のショーでも、ビジネス、福祉、ホビーなど、キャンピングカーの多様性をイメージさせてくれる車両や展示スタイルが増えた印象。RV協会の防災ブースも、キャンピングカーの優位性を示す象徴的な展示のひとつですね。

【品田】もともとキャンピングカーは、一部のコアユーザーから支持されてきた側面がありますが、その傾向がここ数年大きく変化して、ユーザーのすそ野が広がってきた。今年のショーは、初心者が使い方をイメージできるクルマと展示がさらに増えました。

【岩田】マルチに使えるのが、キャンピングカーの魅力。コロナ禍がひとつのきっかけになって、そうした理解や気づきが一般ユーザーにまで広がっています。リモートワークで使える、防災シェルターとして使える、趣味のスペースとして使えるなど、キャンピングカーの多様性が目で見えるような展示スタイルが増えたことも、ショーとしての進化が感じられる部分ですね。

プロが選んだ注目ニューモデル

【岩田】ショー会場をじっくり見ていくと新作はそこそこあるんですが、センセーショナルなものはあまりない印象。ここ数年そういう傾向はありますよね。

【品田】ベース車も架装部も熟成の域に達して、レイアウトも突飛なものは作れないということでしょうか。現状でも、かなり多彩なバリエーションがそろっていますし。

【岩田】クルマ自体、内装の作り込み、電気系統など、すべての技術やクォリティが年々向上している印象はあります。全体的にレベルが上がって、バリエーションもそろっているからこそ、エポックメイキングなモデルが少ない印象を受けるのかもしれないですね。

ダイレクトカーズの江の島
電動昇降式リアベッドを備えたダイレクトカーズの江の島

【品田】新作では、ダイレクトカーズの「トリップ・ログベース」と「江の島」が面白いと思いました。とくに「江の島」は、何でも詰め込める大型リアハッチや電動昇降式リアベッドなど、男心をくすぐるギミックが素晴らしい。リアから長尺物もラクに積めるし、9人乗り・7人就寝なので、いざという時にいっぱい乗れて、大人数で寝られる。使い方の可能性が大きく広がるキャブコンだと思います。

ダイレクトカーズのログベース
ダイレクトカーズのログベース車内

【岩田】「トリップ・ログベース」は、イマドキのアウトドア感やバンライフ感を強調したビジュアルで、スタイルにこだわるユーザーに人気が出そう。「江の島」は、ワクワク感ありますよね。リアの大型ハッチがバーンと開くのもそうですが、内装レイアウトが絶妙で、リアから見た時の奥行き感と開放感がすごい。電動ベッドを上げたら、そこは別世界みたいな。

【品田】ほかに気になったのは、ハイマージャパンの「B-MCI580」ですね。メルセデスベンツベースのハイマーは、キャンピングカー先進国の最高峰。電子デバイスもフル装備しているし、オプションで自動追従式クルーズコントロールも選べる。フルコンでそんなことできるのかと、その技術力に驚きました。

ハイマーB-MCI580
ハイマージャパンのB-MCI580(写真左)

【岩田】ある意味、その対極で独自路線を貫いているのが、MYSミスティックの新作トラキャン「デシエルト:De01」。日本では初めて見るスタイルですが、海外ではこうしたトラキャンで道なき道を走って野営をする「オーバーランド」が人気を集めています。日本よりも、むしろ本場海外のオーバーランダーに受けるかもしれないですね。

MYSミスティックのデシエルト:De01
オーバーランドスタイルのトラキャン「デシエルト:De01」

【品田】あとは、ナッツRVの「クレア」のニューフェイスもカッコいいし、トイファクトリーの「バレイア」の設計思想も素晴らしい。

ナッツRVのクレア
ニューフェイスのナッツRVクレア

【岩田】新型クレアのフェイスは、アグレッシブですね。安全デバイスのセンサー類をうまくかわしつつ、オリジナリティあふれる意匠に仕上げている。ここ数年、実用性だけでなく、スタイリッシュな見た目にこだわったキャンピングカーも増えて、より幅広いユーザーのニーズに応えられる態勢が整ってきました。

展示スタイルとしては、バンテックのブースが圧巻でしたね。ぜいたくに空間を使った、印象に残る見せ方。ショー全体のイメージを底上げするような、一昔前からは想像できないようなブースのカタチだと思います。ほかのブースでも遊び方をイメージさせるようなディスプレーが多く見られ、ショーとしての成熟を感じましたね。

バンテックブース
圧巻の展示をみせるバンテックブース

【品田】バンテックブースは、入口から和の雰囲気が全開で、ワクワク感も高まるし、キャンピングカー自体もより洗練されたものとして感じられました。「今年は何をしてくれるのか?」と、展示自体を楽しみにしている人も多そうですよね。

【岩田】あとは、フィアット・デュカトの国内正式導入。より安心して乗れるようになれば、ベースとしての魅力がさらに増してくる。価格帯と居住性を考えると、国産ベース車のバンコン・キャブコン両方のライバルになりそうですね。

フィアット・デュカト
フィアット・デュカト

【品田】まったく同感です。今後どうなるのか詳細については現時点ではわかりませんが、キャンピングカーのベース車として大きなアドバンテージを持っているのは間違いない。とくに最新モデルのデュカトは、クルマとしての魅力が詰まっています。まだどうなるのかはわからないので何とも言えませんが、今後の動きに注目ですね。

PROFILE
品田直人(しなだ・なおと)
品田直人(しなだ・なおと)

キャンピングカー専門誌オートキャンパー元編集長。
現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長。国内、海外のキャンピングカーを多数取材。
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WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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