キャンピングカーの研究所!? 「日本旅車(たびぐるま)研究所」って何!?

メーカー・販売店インタビュー
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キャンピングカーの研究所!? 「日本旅車(たびぐるま)研究所」って何!?

キャンピングカービルダーかーいんてりあ高橋(本社:長野県長野市)とMYSミスティック(本社:山梨県甲斐市)、キャンピングカーレンタル会社マクレントジャパンが協力して設立した「日本旅車(たびぐるま)研究所」

神奈川県平塚市の広大な敷地で、かーいんてりあ高橋 関東支店、MYSミスティック湘南店、マクレントジャパンの3社が事業を展開しており、そこに日本旅車研究所が併設されている。

「日本旅車研究所」とは、どんな目的で設立され、どんな活動をしているのか。それを軸に、キャンピングカーの文化や今後の展望について、「かーいんてりあ高橋」の高橋社長(写真右)と「MYSミスティック」の佐藤社長(写真左)にお話をうかがった。

キャンピングカー業界における「日本旅車研究所」の役割

日本旅車研究所

とてもユニークなネーミングの「日本旅車研究所」ですが、「何を研究するの?」「どんな活動をしているの?」と疑問を持つ方も多いと思います。まずは、「日本旅車研究所」がどのような目的で設立されたのか教えてください。

【高橋さん】だいぶ前の話になりますが、「これからは、我々ビルダーがキャンピングカーのレンタカーをきちんと管理していかないとダメだ」と、レンタカー事業の促進について佐藤社長と話をしていたときに、レンタカーとユーザーの媒介として「日本旅車研究所」という名前が浮かんだんです。最初は軽い思いつき程度でしたが、そのネーミングが非常に面白いじゃないかということで、今後キャンピングカーの事業を伸ばしていくためにも、そういう場所を作っていく必要があると設立に至りました。

かーいんてりあ高橋の高橋社長

【佐藤さん】キャンピングカー全般に関するシンクタンク的なものがないので、それを作れたらいいなと思ったのがスタートですね。そこでキャンピングカーの情報集積をして、会員になってくれた人たちに、こういう話があった、こういう事故があったなど、キャンピングカーにまつわるさまざまなデータを提供する。そんな場所になればいいなという思いがありました。

キャブコンのバースト事例であるとか、横転事故であるとか、バッテリーの事故であるとか、ユーザー側としてもっとも気になる情報のひとつが安全面について。そうした安全に関するデータやリスク回避のアドバイスなどが提供されるのは素晴らしいですし、今後のキャンピングカー業界の発展において欠かせないことだと思います。

【佐藤さん】目指すところは、利益・不利益とは関係なく、事実をデータとして取り出せる場所です。日本のキャンピングカー市場がさらに発展していくためには、もっと有益なデータが蓄積されるべきだし、良いことも悪いことも埋もれていることも、すべて表に出る必要がある。そんなときに、「それって旅車研究所に確認すればいいよね」と思ってもらえるような存在になればいいと思っています。

【高橋さん】キャンピングカーの技術的な研究は言うまでもないですが、それと並んで大切なのは「遊び」などソフト面の研究ですよね。ユーザーが出かけた先でどんな店を使っているとか、どういう風に旅をしているとか。「日本旅車研究所」が、そうしたことを考える土台になればと。

MYSミスティックの佐藤社長

それが実現したら、キャンピングカー業界の発展を支える重要な存在になりそうですね。ちなみに、エンドユーザーに対する情報提供は、どのような形で行われる予定ですか?

【高橋さん】2020年の暮れに、「日本旅車研究所」の名前で新しいサイトを作りました。ホームページでレンタルキャンピングカーの予約ができるのに加え、キャンピングカーの楽しみ方などの情報を発信していけるように、少しずつコンテンツを充実させているところです。

あとは、ユーザーが必要とする情報をセミナー化するとか、そういった活動もしていきたいですね。旅先での施設情報は、ネットや雑誌ですぐに調べることができますが、私たちが考えるのはその先にあるプラスアルファの情報。この施設のワンちゃんがかわいかったとか、どの食べ物が美味しかったとか、既存の施設情報では足りない部分を補えるような、行った人でないとわからない情報を提供するのが理想です。

平塚市にある日本旅車研究所

購入ノウハウにしても使い方・遊び方にしても、ユーザーが一番欲しいのは実際に購入した人の話や、実際に「キャンピングカーこう使っています」という事例など、“活きた情報”なんですよね。それを提供するためには、技術面とソフト面の両方の情報やノウハウが豊富に蓄積されていることが大前提だと思います。そのような存在に成長していくためには、何が必要なのか?「日本旅車研究所」の今後の展望についてお聞かせください。

【高橋さん】まずは、「日本旅車研究所」の趣旨に賛同してくれる仲間を増やしたいですね。その際は、ビルダーや販売店だけではなく、幅広い層を仲間に加えていくことが重要です。業界のメンバーだけではなく、組織や団体の枠を越えた集まりにしていきたいです。

【佐藤さん】メディアでキャンピングカーの記事を発信している知識人の方たちにも参加していただき、そこで得た情報を発信できたらいいと思います。キャンピングカーに精通したエキスパートの知識や経験は、業者にとってもエンドユーザーにとっても非常に価値のあるものですから。あとは、キャンピングカーを媒介に集った仲間が、それぞれの業界のしがらみにとらわれず、自由にモノを言える場所にしていきたいですね。

かーいんてりあ高橋の高橋社長とMYSミスティックの佐藤社長

キャンピングカーを作る側、売る側、レンタルする側、そして豊富な取材経験を基にキャンピングカーの情報を発信する側。さまざまなプロフェッショナルが集まれば、それぞれの立場からバラエティに富んだ情報が得られると思います。「日本旅車研究所」が、業界の垣根を越えて集まれる場所になれば理想的ですね。

【高橋さん】一番は、そこなんです。業界のしがらみとか、会社の大小とか、業種とかに関わらず、言いたいことが言えて、やりたいことができる場所。それが、もっともこだわっていきたい部分です。キャンピングカーにまつわる話をしながら、みんなで面白いなぁ、もっと盛り上げていきたいなぁと、各方面のエキスパートが議題や情報を持ち寄って意見を交換し、有益な情報に昇華する。コロナがなければ、もっとみんなで集まってセミナーなども開催できれば面白いのですが、それはコロナ収束後の課題ですね。

ブームではなく本当の意味での“文化”を目指す

かーいんてりあ高橋のキャンピングカーとマクレントのレンタカー

ここ数年でキャンピングカーがテレビやネット記事などで脚光を浴びる機会が増えたと思いますが、それについてどのようにお考えですか?

【高橋さん】キャンピングカーがある程度認知され、自動車で宿泊するスタイルにも抵抗がなくなって、車中泊という言葉が忌み嫌われていた時代からすると、それがだいぶ当たり前のものになってきています。キャンピングカーがあれば、生活スタイルに多様性が生まれる。そこに多くの人が気づき始めるのが、文化として根付くということだと思います。

確かに、キャンピングカーがあると生活スタイルがガラッと変わりますよね。人生が変わると言ってもいいくらいに。あとは、ユーザーがキャンピングカーをどう使いこなすか。さまざまなライフスタイルに対応できる多様性こそが、キャンピングカーの最大の魅力だと思いますので。

【佐藤さん】欧米のRV文化は参考にはなりますが、マネをする必要はないと思っています。日本には特有の風土や環境で長年培われたやり方がありますから、大切なのは日本らしい文化に成長していくこと。例えば、欧米では長期休暇でレジャーを楽しむ文化が根付いていますが、日本では1ヶ月、2ヶ月の長期休暇は現実的ではない。そこで、週末や連休を利用して、できる範囲で車旅を楽しむ。それがいい形で熟成されて、日本らしい楽しみ方、日本らしいキャンピングカー文化として定着するのが理想ですね。

【高橋さん】大切なのは、文化が根付いたその先。キャンピングカーが文化として根付いたときに、ようやく一極集中から脱却した地方創生の時代が来ると期待しています。リモートワーク、自動運転、EV化も含めて、車旅の可能性は大きく広がっています。車旅がもっと便利で快適にできるようになれば、都会にとどまっていた人たちがどんどん地方に出てくるようになる。大都会だけに人が集まる状態が、そこでようやく解消されるのではないかと思っています。

レジストロ・クコ

コロナ禍においても、3密を避けて旅をするためのツールやテレワークの拠点としてなど、多くのメディアがキャンピングカーの多様性・優位性を取り上げていましたね。

【佐藤さん】周りのみんながやっていてカッコいいから自分もやるというのではなく、それが必要だからやるというのが本来の形だと思います。キャンピングカーのモバイルワークも、カッコつけやハヤリではなく、居心地がよくて仕事がはかどるから、それをやるというのが本筋。ブームにあおられて、話題性だけでキャンピングカーが取り上げられるのは少し違和感がありますね。

【高橋さん】私はブームという言葉が大嫌いで、マスコミがブームを作ることには大反対なんです。物というのは、必要に応じてできていかないと絶対にダメ。そうじゃないと、一時は物珍しさにワーッと人が寄ってきても、単なるハヤリで文化としては根付かない。急ぐ必要はないので、じっくりとキャンピングカー文化を成熟させていけばいいと思っています。

キャンピングカーを文化として根付かせるためには

かーいんてりあ高橋 関東支店とMYSミスティック湘南店

本当の意味でキャンピングカーの魅力を世間一般に広げていくためには、一過性のハヤリではなく文化として根付かせることが重要だと思います。そのためには、何が必要でしょうか?

【高橋さん】当たり前のことですが、一番必要なのはインフラです。周囲が車中泊を当たり前のように認めてくれるインフラができないと、キャンピングカーが文化にはなりえない。全国に181件(2021年3月26日時点)あるRVパークも、そうした考え方が推進の原動力になっています。

【佐藤さん】車中泊のインフラ整備で難しいのは、高規格なものだけを認めるのか、多様性を認めるのかということ。車中泊の受け入れ場所と一口に言っても、地面だけの場所、立派な建物が併設された場所、高規格な設備を持つ場所など、その形はさまざまですから。一定のルールを設けて画一的なものにするのか、多様性を認めるのか、そこが難しい。

【高橋さん】情報発信だけしっかりやっていけば、問題ないと思いますよ。ここは高規格ですとか、ここは町中にある普通の駐車場だけど周りにこんな施設があって楽しめますとか、要は発信の仕方。情報さえしっかりしていれば、それを見て選ぶユーザーも現地で「え?」とはならないはずです。旅行の途中で幹線道路沿いに泊まるのがベストという人もいるだろうし、逆に自然に囲まれて宿泊したい人もいるだろうし、車中泊を受け入れる施設には多様性があっていいと思います。

キャンピングカーライフを楽しむ人が増えれば、それを受け入れる場所も必要になるのは当然の流れですよね。しかも、ユーザーの好みや旅のスタイルによって、求める施設の形も違う。それを整備するのは大変なことだと思いますが、安心して旅を楽しめる施設がなければ、キャンピングカー文化は広がっていかない。

【佐藤さん】とにかく、安心してキャンピングカーで泊まれる施設の数を増やすことですよ。それがユーザーにとって最大のメリットになるし、それなしではキャンピングカー文化の発展はありえない。

【高橋さん】文化として根付くためには、キャンピングカーを受け入れる地元の人たちの意識も変えないといけない。せっかく施設を作っても、受け入れる側に歓迎の気持ちがなかったら意味がないですから。それをクリアするためにも、安心してキャンピングカーで泊まれる施設の数を増やして、「車中泊という旅のスタイルが当たり前になる」ことが重要だと思います。

マクレントのレンタルキャンピングカー

キャンピングカー業界のさらなる発展のために、「日本旅車研究所」の今後の活動に期待しています。

【佐藤さん】「日本旅車研究所」が、キャンピングカー文化の発展をサポートしていける存在になれたらいいと思います。キャンピングカーの良い点だけではなく、事故やトラブルなどの安全面も含めて「本当に役立つ情報」を提供できる場所にしていきたいですね。

【高橋さん】現在はコロナ禍ということもあって、思ったような活動ができていないのが現状ですが、ホームページでの情報発信、ユーザー対象のセミナー、業者対象のセミナーなど、さまざまな形で有益な情報を発信できるように引き続き準備を進めていきます。それには、各エキスパートの頭の中にある情報を集め、議論を交わし、そこから有益な情報をまとめていく作業が必要。それを1つのカタチとして提案できる場所に育てていきたいです。

日本旅車研究所
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WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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