【ビルダー社長のキャンピングカー】かーいんてりあ高橋 高橋宣行代表

メーカー・販売店インタビュー
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【ビルダー社長のキャンピングカー】かーいんてりあ高橋 高橋宣行代表

キャンピングカービルダーの社長は、普段どんなクルマに乗っているのだろうか? 自らキャンピングカーライフを実践するビルダー社長にスポットを当て、その愛車を紹介することでビルダーのこだわりやバックボーンを紐解くのが、本企画の趣旨だ。

今回ご登場いただくのは、長野県長野市と神奈川県平塚市に店舗を構える、創業36年のキャンピングカービルダーかーいんてりあ高橋高橋宣行さん。自身のモノ作りへのこだわりと情熱がたっぷり詰まった、特別な愛車に注目だ。

かーいんてりあ高橋代表 高橋宣行さん
かーいんてりあ高橋代表 高橋宣行さん

ターニングポイントとなった愛車のバニング

トヨタ・マークⅡ GSS

10代後半に乗っていた人生初の愛車は、トヨタ・マークⅡ GSS。イーグルマスクが特徴のボディに、最高出力140PSを誇るDOHC1.9Lツインキャブエンジンを搭載した、当時の高級スポーツセダンだ。

創業当初のかーいんてりあ高橋

その後、24歳のときに自動車の内装修理をメインに行うショップ「カーインテリア高橋」を開業。そこで、自分用にキャラバンのバニングを製作したことが、同ショップの方向性を定めるターニングポイントになったという。

「自分が乗るクルマとして、E20キャラバンの中古車をベースにバニングを1台作ったんです。モケット生地でトリムした車内にギャレーとコの字型ベッドを設置して、天井にはシャンデリア。まさに、1980年代のバニングスタイルですね。長野では、これが8ナンバーキャンピング車の第1号車でした。

このバニングはもともと自分用に製作したクルマでしたが、『欲しい』という人がいたので売ることにした。それが、自動車内装ショップからバニング製作・販売ショップへと舵を切るきっかけになりました。当時は、若い人がクルマ大好きだった時代で、その中心にバニングがあった。1980年代後半から1990年代にかけては、バニングの製作・販売が業務のメインでした」

かーいんてりあ高橋のバニング

1BOX車の内装をカスタムしたバニングは、日本におけるキャンピングカーの原点。1台の愛車が、かーいんてりあ高橋の方向性を決める鍵となった。

その後、2004年に200系ハイエースがデビューしたタイミングで、現在も同社の代名詞となっているロングセラーモデルリラックスワゴンを発表。200系ハイエースワゴンをベースにした3ナンバー仕様のライトなキャンピングカーは、当時ほかにやっているお店がないエポックメイキングなチャレンジだった。

ハイファールーフのバンコンを3台乗り継ぐ

かーいんてりあ高橋のハイファ―ルーフキャンピングカー

現在の高橋さんの愛車は、ハイエース・スーパーロングにオリジナルの“ハイファールーフ”を装着したバンコン。救急車(ハイメディック)のスーパーハイルーフがキャンピングカーのベース車として採用される前に、かーいんてりあ高橋が独自開発したオリジナル仕様だ。

「室内高をアップするハイファールーフは、当時としては、かなり画期的な取り組みだったと思います。作り手として思い入れが強いこともあり、1号車からずっと自分で使って、現在まで3台のハイファールーフ・キャンピングカーを乗り継いできました」

ハイファ―ルーフキャンピングカーと高橋社長

キャンピングカービルダーとして重要なのは、実際に使ってみて感じたことをフィードバックし、自分が使いやすいクルマを作ること。そんな思いもあって、高橋さんは、ハイファールーフ・キャンピングカーで家族とのクルマ旅を実践してきた。

「子供が小さい時は、ベビーカーを積んで家族と全国を飛び回り、クルマ旅の楽しさやメリットを実際に体験してきました。バンコンは見た目もスマートだし、機動性に優れているので、仕事が休みの日に思い立ったらすぐ出かけられる。それが、最大の魅力だと思います」

かーいんてりあ高橋オリジナルのハイファールーフ

ハイエース・スーパーロングの全高を250mmアップさせ、最大1900mmの室内高を実現した、かーいんてりあ高橋オリジナルのハイファールーフ。純正ルーフと比べてもまったく違和感がない、スタイリッシュなデザインもポイントだ。

自社のモノ作りを象徴する特別な愛車

かーいんてりあ高橋のリラックスキャビン

ハイファールーフのバンコンと並んで、高橋さんの大切な愛車となっているのが、2011年に衝撃のデビューを果たしたオリジナルキャンピングカーリラックスキャビン。ハイブリッド車の30型プリウスに搭載されたニッケル水素バッテリーから、生活用のAC電源を取り出すシステムを構築し、世界でも類を見ないエポックメイキングなキャンピングカーとして、各方面から注目を集めたモデルだ。

かーいんってりあ高橋の高橋社長

「リラックスキャビンは、2011年の東京オートサロンで発表したキャンピングカーです。現在乗っているのは、その時に展示した1号車。完成から10年以上経っていますが、今でも当時のままの美しい状態をキープしています。頻繁に乗るクルマではないですが、長野の本社と平塚の関東支店との往復などでよく利用しています」

3ナンバー仕様のキャンピングカーリラックスワゴン、オリジナルルーフで室内高を確保したハイファールーフと、常にキャンピングカーの新たなスタイルや可能性を模索してきた高橋さん。そうした様々なチャレンジの中でも、30プリウスをベースにしたリラックスキャビン“特別な1台”だという。

リラックキャビンの開発モデル

「30型プリウスのデビューと同時に、『このクルマでキャンピングカーが作れないか』と考え始めました。とにかく、自動発電システムという発想が素晴らしい! 使用電力に応じてエンジンの始動・停止を自動で行うプリウスの純正システムは、次世代のキャンピングカーとして必ず使えると確信しました。そこでまずミニカーを買ってきて、粘土でシェルの形状やデザインの構想を練り、自分で木を削り出してシェルの木型を作り、1年半かかってプリウスベースのキャンピングカーを完成させました」

リラックスキャビンのナンバープレート

愛車リラックスキャビンのナンバープレートは、「・・・1」。デビューから10年以上経った今も、他に類を見ない画期的なキャンピングカーの1号車であることを、静かに主張し続けている。

自動発電システムを生かした次世代キャンピングカー

リラックスキャビンの後方

30プリウスのルーフからリアエンドにかけてFRP一体型シェルを搭載した、近未来的なエクステリア。シェル搭載にあたってリアハッチは取り外しているが、剛性を確保するためボディのカットは一切行っていない。

リラックスキャビンのAC100Vコンセント

独自のAC電源供給システムで、プリウス純正のニッケル水素バッテリーからAC100Vの電源取り出しを可能にしたのが、リラックスキャビンの最大のポイント。1500Wの大出力で、電子レンジや炊飯器、ドライヤーなど、消費電力の大きな家電も使用できる。

使用電力に応じてエンジンの始動・停止を自動で繰り返すプリウスの発電システムを生かすことで、一般家庭約1週間分の電力供給が可能となった(燃料満タン時)。

リラックスキャビンのバンクベッドと高橋社長

バンクベッドは、大人2名が就寝できる長さ1800mm×幅1350mmのゆったりサイズ。可動式落下防止パネルを装備しているので、小さな子供がいるファミリーでも安心だ。

リラックキャビンの車内

プリウスがベースとは思えないほど、広々とした室内空間。室内高もしっかり確保されているので、大人が立って着替えをすることも可能だ。フロアベッドは、長さ1800mm×幅1150mm。バンクベッドとの組み合わせで大人4名が就寝でき、ファミリーでの使用にも対応する。

リラックスキャビンの前方

「誰もやったことのないプリウスベースのキャンピングカー・リラックスキャビンは、かーいんてりあ高橋のモノ作りを象徴する1台です。モノ作りでもっとも重要なのは、“発想力”。それを次の世代に伝えていきたいという思いもあって、1号車は販売せずに自分の愛車として乗り続けています。今後も、このクルマを手放すことは絶対にないですね」

誰も真似できない独創的なアイデアや発想の転換で、数々のエポックメイキングなキャンピングカーを生み出してきた高橋さん。愛車のリラックスキャビンは、自身のモノ作りの象徴であると同時に、キャンピングカービルダーとしての矜持でもあるのだ。

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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