ハイエースなどのバンをベースにしたバンコンは、各社のアイデアあふれるレイアウトや装備が魅力のひとつです。限られた空間をどのように利用して、オーナーのキャンピングカーライフを充実させるか、クルマによってそのアプローチも違っています。
強力な電力システムを構築したり、広々としたラゲッジルームを備えているタイプなど、クルマごとのキャラクターをみてみるのも楽しいものです。メーカーによっても系統が分かれていて、電気が強い、リビングが広い、マルチルームがあるなどの傾向をみることもできます。
そのなかの1つ、ハイエースのバンコンを作っているキャンパー鹿児島(双日モビリティ)はリチウムイオンバッテリーを搭載したモデルなどが有名ですが、ジャパンキャンピングカーショー2024では、既存モデルとは少し違った系統のバンコン「Granny(グラーニー)」を発表していました。
目次
開放的な車内空間を実現したハイエースキャンピングカー
グラーニーはリビングスペースとベンチシートを組み合わせたようなレイアウトです。エントランス部分にキッチンなどがまとめられていて、リビングスペースとしても利用できるようになっています。さらに後方には両サイドにベンチシートがあり、広々とした空間を確保しました。
エントランス部分からみてみると、視界を遮るキャビネットなどがないので、さらに広さを感じるのではないでしょうか。視線の高い位置にあるのはエアコンやオープンタイプの吊り下げ棚。広々とした雰囲気はそのままに、高い収納性を発揮しています。
リアに設置されているベンチシートは両サイドに座席があり、全体の乗車定員は運転席側と合わせて6名を確保していました。中央部分にマットを敷き詰めると、3名分の就寝スペースとなります。窓側には横に長いカウンターのようなスペースがあり、ドリンクをおいたり、スマホをおいておけるスペースとして利用できます。
一部、上に開く扉が付いていて、収納スペースとしても利用できるようになっていました。特に後部の収納スペースは深さがあり、長尺物を収納するのに重宝することでしょう。シンプルながら、使いやすい機能性が隠されていることが分かります。
エントランスと逆側にシンクやオプションの冷蔵庫がまとめられています。シンク前にテーブルが設置できるようになっていて、テーブルの上から食器を移動したり、飲み物の残りを捨てるのにも便利な位置。その横の冷蔵庫からはドリンクも取り出しやすいのではないでしょうか。
テーブルを取り外せば、広々としたキッチンとして利用することもできます。シンク横、冷蔵庫と逆側にはスペースが確保されていて、調理台としても利用できます。グラーニーはリア側にもリビングとして利用できるベンチシートがあるので、キッチンとダイニングを分けて利用する、というのもいいでしょう。
強力な電源システムを標準装備したバンコン「グラーニー」
キャンパー鹿児島(双日モビリティ)といえば、オリジナルのリチウムイオンバッテリーシステムを開発するなど、電気に強いイメージを持っている人も多いと思います。その強力な電力システムを求めて、キャンピングカーを選ぶ人もいるほどです。もちろん、このハイエースのキャンピングカー「グラーニー」にも強力な電力システムが組み込まれていました。
標準装備で容量300Ahのリチウムイオンバッテリー、リチウム用外部充電器が搭載されているのです。さらに、充電システムのC-TEKが採用されていて、大容量のバッテリーを効率よく充電できるようになっています。リアウインドーとキッチンの間にある壁にはスイッチパネルが設置されていて、リチウムイオンバッテリー用のモニターも取り付けられていました。
電力システムの強化により、家庭用エアコンも標準装備されています。ハイエースなどをベースにしたバンコンにも家庭用エアコンの搭載が目立ってきましたが、標準装備されているのは、少数派といえます。電力を強化することで、車内の快適性を高めているのです。
家庭用エアコンは吊り下げ棚の間にすっきりと収まっています。室外機があるので、配管が必要なのですが、配管などは家具の内側に隠されていて、その存在を感じることはありません。その、細やかな設計も室内を広く見せることに貢献しているのです。
エントランス部分のキャビネットは背が低くなっていて、折りたたみテーブルのチェアとしても機能してくれるようです。その手前には傘立てが設置されていました。キャビネット内部には電子レンジを収納。この電子レンジも標準装備となります。
電子レンジは大容量の電気を一気に使うので、その出力に耐え、さらに、急速な電気の充電にも対応したバッテリーが必要。そこで採用されるのが、グラーニーに標準装備されたリチウムイオンバッテリーなのです。バッテリー容量が大きいので安心して電子レンジを使うことができるでしょう。
コンパクトな空間に色彩の変化を感じる作り手主導のクルマづくり
グラーニーのインテリアをみてみると、シンプルな家具で構成されていますが、その1つ1つにウッディな雰囲気が漂っていることを感じます。エントランス部分から室内を覗くと、強めのブラウンカラーがウッディ感をさらに強調させているのが分かります。
今回のデザインをみて、気づいた人もいるかもしれませんが、これまでのキャンパー鹿児島のハイエース系キャンピングカーとはちょっと違った印象を受けると思います。その理由は、今回のグラーニー開発にあたって、新しい試みをしたからです。
それは製作現場からの意見を取り入れ、クルマの開発をしていることです。キャンピングカーの開発は、ユーザーからのフィードバック、営業担当が考える市場との親和性など、さまざまなファクターを取り入れながら、製作部門へとそのコンセプトなどが引き渡されます。
しかし、このクルマに関しては、製作現場が考えた、キャンピングカーのスタイルを形にしているのです。だからこそ、木目のテクスチャーを活かしたインテリアや厚みのある無垢材の採用など、作り手としてのこだわりを感じることができるのです。
そんな話を聞いてから、リアに回り込みフロントを眺めると、設計者のアイデアを感じることになります。前出の写真にあったエントランス部からの眺めと上の写真のリアからの眺めを比べてみると、その雰囲気の違いに気づくのではないでしょうか。
エントランス部からの眺めはブラウン系でまとめられ、90度視点を変えたリアからの眺めはモダンな明るいインテリアになっているのです。小さな空間ながら視線の位置によって色彩の変化を楽しむ。その職人魂のようなクルマづくりをグラーニー、そして、キャンパー鹿児島(双日モビリティ)のキャンピングカーに感じずにはいられません。
Granny(グラーニー)諸元
- ベース車両
- ハイエースキャンパー特装車
- エンジン
- ガソリン2.7L
- 駆動方式
- 2WD
- 車体サイズ
- 全長5,380mm/全幅1,880mm/全高2,280mm
- 定員
- 乗車定員6人/就寝定員3人
- 価格
- 750万円~