トラックキャンパー略してトラキャンをご存知だろうか。誤解を恐れずに言えば、様々なジャンルのキャンピングカーの中で、日本では一番マイナーな存在だ。主にアメリカで製造・販売されているキャンピングカーだが、正確に言えば「カー」ですらない。ピックアップトラックの荷台に載せる居室のことだ。
このトラキャンを、日本で唯一製造している会社がある。山梨県にあるキャンピングカービルダー、MYSミスティック社である。
実はとても合理的でもちろん快適なトラキャン。その魅力についてご説明しよう。
アメリカらしい合理性から生まれたトラキャン
そんなトラキャンを愛してやまないのが、MYSミスティック社の佐藤 正社長だ。今でこそ、レジストロやアンセイエなどのキャブコンが主力商品になってきた同社だが、創業当時の主力商品はトラキャンだった。当初はランスなどアメリカ製のトラキャンを輸入していたが、それでは日本製のピックアップトラックには載らない。そこで、1999年に同社が開発・登場したのが純国産トラックキャンパーJ-cabinシリーズだ
煩雑な国産トラックに合わせて
アメリカで販売されているピックアップトラックの荷台寸法は、年式やメーカーが違っても似たり寄ったりで、だいたい2パターンぐらいしかない。よって、それに応じたトラキャンは、トラックの荷台の長さに応じたロングベッド用かショートベッド用があれば対応できる。一方、日本で販売されていた国産ピックアップトラックは、車種によって寸法がまちまちだった。今でこそトヨタ・ハイラックスぐらいしか現行車両はないが、以前には三菱・トライトンや日産・ダットサントラックなど、各種車両があったのだ。そのためJ-cabinシリーズの歴史はまさに搭載できる車両に合わせて製作してきた歴史ということになる。現在、同社がラインナップするJ-cabinシリーズは、アメリカ製フルサイズピックアップトラックから軽トラック用まで、実に12種類にも及ぶ。「載せられるトラックがあるならば、合わせて作る!」とも言うべき、佐藤社長のトラキャン愛の賜物だ。
トラキャンってどんなもの?
前に述べたように、キャブコンがトラックなどをベースに居室を架装するのに対し、トラキャンはトラックに「載せる」。つまり「居室」=「荷物」なのだ。荷物なので、当然、運転席から直接室内に入ることはできない。トレーラーのようにけん引するわけではないので車輪もない。このことから言えるトラキャンの最大の特徴は「キャンピングカーでありながら車両ではない」ということ。つまり、登録も不要なら税金もかからないし、不要なときは降ろせばいいというメリットもある。
では、具体的にどんな物なのか。写真を見てもらえればわかるだろう。ピックアップトラックの形状にぴったり合わせて作られた箱型の居室そのもの。降ろすときは4本の脚を伸ばして接地する。取り付け・取り外しは至って簡単だ。
アメリカ製のトラキャンは木製フレームのことが多い。が、MYSミスティック社のJ-cabinシリーズは、同社がボディーバス工法と呼ぶ独自のアルミフレームを持つ。手間もコストもかかる工法だが、軽量かつ耐久性にも優れている。
気になるのは室内のレイアウトだ。ピックアップトラックの荷台に載せるという制約があるため、どうしてもレイアウトにも限りがある。リアエントリーであること。エントランスの左右にキッチンや冷蔵庫を配し、中央部にはダイネット、常設ベッドはバンクベッドというレイアウトにほぼ固定してしまうのだ。それでも、基本的な生活装備は十分。むしろコンパクトにまとまっていて、機能的なキャンプギアを望む人にはうってつけと言えるだろう。
現在、新車で入手できる国産ピックアップトラックはトヨタ・ハイラックスのみ。もちろんハイラックス専用のJ-cabin HNも用意されている。専用設計なので、搭載した時のフォルムが実に自然でスタイリッシュだ。もちろん、オールド・ピックアップを愛用している人にも多彩なラインナップが用意されているので安心だ。
MYSミスティック社は国内唯一のトラキャン製造・販売会社というだけではない。車の足回りの強化など、トータルでプロデュースできる技術力でも知られている。軽量に作られているとはいえ、それなりに高さのある居室を積めば、運動性にも影響が出る。ただ、キャビンを売るだけではなく、安全・安心に走れるトラックキャンパーとしての完成形を提供できるのが、長年トラックキャンパーと向き合ってきた同社のノウハウだ。
普段からピックアップトラックを愛用しているという方、ピックアップトラックに憧れるという方にとって、トラキャンは悪くない選択肢だと思う。
日本製トラキャンのパイオニア
充実のラインナップ
MYSミスティックからの一言
トラキャンはキャンパー部が外せるという事から、約30年前の発売当初より2Wayの使用方と謳って参りました。しかし外すという行為は、便利でもありかつ面倒な作業でもあります。全ては慣れと心の持ちようによりますが、トラキャン乗りの方々は皆心身共にみなぎるパワーをお持ちの方が多いです。キャンピングカーはあくまで道具でどう使うかで価値は決まると思います。最近は軽トラに自作でキャンパーを作り載せる方も増えて来たようで、作る楽しみと使う楽しみ両方を味わえて最高だろうなと感じております。
ニッチなカテゴリーではありますが、個性的なレアなトラキャンをこれからも普及発展させて行きたく思っております。