日産が作ったキャラバンベースのキャンパー仕様車「MYROOM」にメーカーの強さを感じる

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日産が作ったキャラバンベースのキャンパー仕様車「MYROOM」にメーカーの強さを感じる

バンコンキャンピングカーの定番ベース車両といえば、トヨタのハイエースと日産のキャラバンではないでしょうか。この2つのモデルは商用車のクルマとしても、長年ライバル関係にある2大巨塔といえるでしょう。

今までは、キャンピングカービルダーがベース車両を仕入れて、架装を行ない、さまざまなモデルが誕生してきました。しかし、最近では、ベース車両を提供するクルマメーカー側が、就寝スペースのあるクルマを提供することもあります。

バンコンの定番ベース車両のハイエースとキャラバンにも、ベッドキットなどのオプション設定がある販売店などを見かけるようになりました。そんな流れに一石を投じたのが日産です。

同社のホームページに掲載されている、キャラバンのラインアップのなかに、「MYROOM」という名前のモデルが掲載されています。このクルマ、これまでのベットキットなどのモデルとはちょっと違ったアプローチで、新しいスタイルを提案しています。

日産が作った「部屋ごと出かけて憩うクルマ」

MYROOM

日産がキャラバンのラインアップの1つとしてモデルに加えたのがMYROOMというクルマでした。各地で開催されているキャンピングカーショーでも展示されているので、その姿を見た人は多いのではないでしょうか。

これまで、クルマメーカーが提供するキャンピングカー仕様のモデルの多くが、トランポの延長線上にあるような、簡易的な就寝スペースを確保したモデルでした。日産でもマルチベッドやトランスポーターなどのラインアップがありましたが、本格的なキャンピングカーとは趣向が違っていたように感じます。

しかし、このMYROOMはキャンピングカーのような完成された、機能性とデザインが特徴のモデルで、これまでのシリーズとは一線を画すキャンパー仕様です。

MYROOMの車内

その1つの特徴として挙げられるのが、車内に入ると、特別な空間がそこにあることです。広々としたベッドや室内のデザインを統一する調度品など、洗練されたパーツによって、特別な部屋が完成しているのです。

上の写真ではセカンドシートを倒して、全面ベッドレイアウトを展開。窓にはカーテンやブラインドが取り付けられていて、外界と遮断した特別な空間を生み出しました。

そのコンセプトは「部屋ごと出かけて憩うクルマ」というもので、自分たちの部屋を持ち運んでいるイメージになっています。自然の中、街中、どこへ行っても、理想とする自分の部屋がある特別感を感じられるのです。

自宅でもなく、オフィスでもない、自分だけの部屋ということで MYROOMと名付けられたそうです。

MYROOMのポータブルバッテリー

設備は必要十分な内容になっていて、テーブル、ベッド、照明が基本セット。室内の電源にはポータブルバッテリーが利用できるようになっています。ちなみにショーで利用されていたポータブルバッテリーは、リーフの使用済みEVバッテリーをリサイクルする取り組みで生まれた、高品質・高耐久のバッテリーでした。

キャビネットに電源差し込み口があって、ポータブルバッテリーの出力を接続することで、室内の電源をカバーできるように設計されています。

今ではポータブルバッテリーを持っている人も多いので、あえてバッテリー設備を搭載することなく、このような気軽な仕様で電源を使える、というのもポイントになっているのかもしれません。

バンコンであっても最高の快適性を提供するレイアウト

MYROOMの対面対座のリビングレイアウト

MYROOMにはベッド展開の方法が違う2種類の仕様があります。テーブルを設置した際のリビングモードには大きな違いはありません。基本はリアにフラットなマットを敷き詰め、スライド式のテーブル、そして、セカンドシートを利用したベンチシートが利用できるようになっています。

リア側のマットに座ることで、対面対座のリビングレイアウトにもなります。テーブル位置はスライドで自由にセットできるので、ベッド展開した時も利用しやすい仕様になっていました。

MYROOMの跳ね上げベッド仕様モデルの室内

上の写真は跳ね上げベッド仕様モデルの室内です。ベッドマットを右側に収納していて、フックを外せば、ベッドマットが倒れてくる仕様です。ベッドマットを収納している時は、後部をラゲッジスペースとして利用できます。

基本は折りたたみベッド仕様が標準となって、上記の跳ね上げベッド仕様が架装オプションの設定になっています。ベッド展開した時のサイズは、跳ね上げ式が1204×2192mm、折りたたみ式が1204×2228mmになっています。

どちらの仕様でも十分な広さのベッドスペースを確保しているのが分かります。ベッド展開時の天井までの高さは、どちらも970mmあるので、広さも十分といえるでしょう。

跳ね上げベッドにはダンパーが組み込まれていて、ゆっくりと降りてくるのが特徴です。跳ね上げ式だと、ベッドマットが一体化されていて大きいので、ダンパー機能があることで、展開もしやすくなります。

ゆっくりと閉まる動きも、利用者に対する安全性を高めていて、自動車メーカーらしい、心配りの行き届いた作りを感じることができます。

スムーズに展開できる自動車メーカーが開発したベッド兼用シート

MYROOMの兼用シート

美しい室内もさることながら、特徴的なシートにも注目が集まります。展示会ではシートだけが紹介されていて、その機能性の高さを多くの来場者にアピールしていました。

このシートはキャラバンMYROOMのセカンドシートに採用されていて、明るい印象のカラーリングと丸みを帯びたデザインが目を引きます。

これまでにもバンコンにはベッド展開できるシートがありましたが、より一般的な自動車のシートに近づいたデザインと使い勝手です。

MYROOMのベッド展開時のシート

座面、背もたれがそれぞれ動くようになっていて、ベッドにしたり、走行時のシート、リビングでくつろぐ時のシートに利用できます。座面の方さが裏と表で違っていて、走行時とベッドモードでは硬めのクッションが表に出てくるようになっています。逆にリビングモードの時は柔らかめのクッションが表になります。

走行時は体をホールドしてくれて、就寝時は不用意な沈み込みを抑え、リビングレイアウトでは、リラックスできるゆったりとした座り心地を提供します。

サイドにでているベルトを引くことでロックが外れ、簡単にシートを展開することができます。その動きが驚くほどスムーズで、ベッド展開も楽々。最新の一般的なクルマのシートを展開しているような軽さに驚かされます。

MY ROOMのリビングモードの室内

リビングモードではセカンドシートがリアに向いている状態になります。その時に見えるのが光景が上の写真。スライド式のテーブルが手前にあって、両サイドに窓、その奥にリアゲートが広がっています。美しい間接照明も相まって、クルマの中に居ることを忘れてしまうほどです。

上の写真には架装オプションのウッドブラインドとロールスクリーンが取り付けられています。架装オプションをセレクトすることで、リビングのソファに座って、外の視線を感じることなく、ロールスクリーンに映る映画を鑑賞するなど、楽しみ方も広がるのではないでしょうか。

自動車メーカーの作ったキャンピングカーのクオリティー

スライド式テーブル

キャラバンなどの商用車は、荷物の運びやすさなどの機能性が重要視されてきました。一方で、乗用車は車内での快適性も追及され、移動手段でありながら、長時間の移動であってもパッセンジャーの疲労を軽減させる工夫が多数見受けられます。

なので、自動車メーカーもキャンピングカーメーカー同様に、室内空間の快適性を追及する技術力には長けているともいえるでしょう。このMYROOMでも、メーカーとしての工夫を感じるポイントがありました。

まずは、全体的に稼働部分が非常にスムーズなこと。スライド式テーブルは移動の際に、力を入れることなく前後へスライドさせることができます。ロック機能がついているので、利用時に動くこともありません。

そのテーブルはリアのスペースにすっきりと収納することもできます。収納した際も、そのテーブルの部材が家具の一部であるかのように、出っ張りもなくきれいに収納されていました。

ウッドブラインド

架装オプションのウッドブラインドは専用設計で、ルーバーを調整するバーなどがすっきりとしているのが特徴的です。バーは縦に収納することもできて、走行時にフラフラと揺れることもありません。ちょっとした工夫ですが、すっきりとした印象を与えるには十分な機能性ともいえるでしょう。

ベッドマットの下部

さらにベッドマットの下部を見てみると、少し切り欠きが入っているのが分かります。これはベッドを持ち上げる時に手を入れるスペース。ちょっとした心遣いがデザインや設計に現れているのです。また、このスペースのおかげで、最後までベッドマットを降ろした時、指を挟むこともありません。

MYROOMは誰もが安心して快適に使える設計になっているのです。この誰もが快適に利用できるユニバーサルデザインは、自動車メーカーらしさといってもいいのではないでしょうか。

WRITER PROFILE
渡辺圭史
渡辺圭史(わたなべ・けいし)

1971年東京生まれ。アウトドア好きな編集者、そして、算数が好きだったライター。アウトドア用品メーカー、出版社を経て、キャンピングカー専門誌編集長に。現在はフリーとして、いろいろなメディアにて執筆中。アウトドアをキーワードに、より楽しいライフスタイルを求めてゆるりと奮闘中。最近気になっているワードは、旅、ミニマリスト、車中泊。趣味はコンパクトな旅とモノづくり。

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