ハイマー伝統のツーリング・シリーズ、魅惑の最新形態

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ハイマー伝統のツーリング・シリーズ、魅惑の最新形態

今や世界に名の通る巨大キャンピングカーメーカーとして君臨するハイマーだが、1957年以来生産されている特徴的な空力ボディ形状を持ち続けるシリーズが、「ツーリング」というキャンピングトレーラーである。

さらにポップアップルーフがあるので全高がおさえられ、丸みを持ったルーフ形状が風を受け流し、走行時空気抵抗や横風の影響が少なく、走行安定性能が想像するより高いレベルにある。

さらに壁が単に直立して立てられているわけではなく上下に少し絞られていたり、フレームがAフレームと呼ばれる二股に広がるタイプではなく、カプラー部分からアクスルに至るまで真っ直ぐの一本ものであることも、さらなる走行安定性へとつながっている。

過去に試乗で、高速周回路、いわゆる矢田部と呼ばれる試験場でけん引したまま高速度でバンクへ突入したこともあるが、そんな車両に対し過負荷がかかる環境下でも常に安定性を保っていたり、走行時にわざと意地悪なハンドル操作を入れてもトレーラーの挙動が穏やかだったのには舌を巻いたものである。

しかしこのボディデザインが優れているとはいえデメリットもあり、外寸に対して室内容積がほかのモデルと比較すると少なめであることは否めない。

ポピュラーな540最新モデル

ハイマーツーリング540
立って歩く部分はまるまるポップアップルーフが持ち上がる
ハイマーツーリング540アーバン
ハイマーツーリング540レジェンド
シート生地やカーテンなどカラーや仕上げに多少の違いはあれ、どちらもレジェンドというモデル。ほかにアーバンもあるが、ハイマージャパンではよりツーリングの伝統的デザインを持つレジェンドを中心に導入している

日本にハイマーが正規輸入され始めた30余年前、 フロントとリヤに2つダイネットを持つスタンダードなモデルはMTTというモデルが主流サイズだった。現代では、欧州各メーカー揃ってトレーラーの室内長サイズがモデル名となっている事がほとんど。

リヤの大型ダイネットを常にベッドとして利用し、フロントダイネットでくつろぐ2名で活用するのに優れたレイアウトとなっている。この基本レイアウトはサイズに関わらず中型モデル以上の基本形になる。

ダイネットテーブルは室外へ持ち出し、エントランス脇にセッティングして利用することもでき、キャンプ時のサイト構築が非常に簡単。

ハイマーツーリング540のトイレシャワールーム
ハイマーツーリング540のキッチン
車体中央左右に、トイレシャワールームとキッチンを配置

現代では標準的な設備内容だが、30年前の同サイズトレーラーと比較するとFFヒーターまで備えたフル装備状態で、それだけで生活できる完成された状態を最初から持っていた。

日本仕様では、サブバッテリーシステムも構築された状態で輸入され、清水タンクや温水器までセットし日本のキャンプ場などでの使用環境においても不具合を感じて改装をする必要がないセット内容に仕上げられている。

ハイマーツーリング540のベッド
足を引き出し、背もたれを載せるとベッド展開完了。ダブルサイズの広々とした就寝空間。フロントダイネットも同様にベッドになる

ツーリングシリーズの最後端フロアは、従来少し持ち上がってちょっとデッドスペースっぽくなっていたが最新モデルではそこがフラットになり、ベッド展開時に仕切板をフロント方向へ移すことでベッド下収納庫として大々的に活用できるようになった。

ハイマーツーリング540ポップアップルーフ
ポップアップルーフと連動するキャンバス地の壁が立ち上がり、プライベート空間はしっかり確保。ポップアップルーフの固定フックには、閉めているときにうっかり開かないようロック機構が付く

走行時空気抵抗が少ない特徴を持つポップアップループだが、これを持ち上げると驚くほど室内の縦方向空間容積が増大する。多くの人が懸念するのは雨が侵入してこないかだが、ほぼそれは無い。

非常に細かい話になるが、ツーリングシリーズの壁面断熱性能はとても高く、持ち上げられたポップアップルーフに設けられた換気用フラップというか窓と組み合わせることで、夏の暑い時期には下から上へドラフト現象が起こり空気が循環するため、思ったほど室内が熱くならないという特徴も持っている。

原点回帰の310

ハイマーツーリング310
小さく、誰が見ても可愛いと思えるボディデザインが人気。サイズは小さくても装備内容クウォリティは上位モデルと同じで、より軽快に普通乗用車でけん引できる

現在最もツーリングシリーズが製作開始した頃のイメージに近いのが310サイズ。もともとはパンというモデルと同系列のファミリアであり、最小のピュックよりも少し大きな車体サイズ、シャシーになる。

ハイマーツーリング310のテールランプ
最新モデルでは丸型テールランプを採用し、60年代の雰囲気を醸し出す。移動用のハンドルが大きくデザインされモールと一体化している

このところのツーリングシリーズの壁面は凸凹のないフラッシュサーフェースな素材が使われ、これもまた50〜70年代の雰囲気を持っているが、ディテールにこだわりより復古的なおしゃれなスタイルにまとめ上げた。

ハイマーツーリング310のフロントロッカー
フロントロッカーはLPGボンベ収納庫。このボディサイズでは驚くべき容積で、欧州仕様の7.5kgFRPボンベが2本設置できるサイズ

トラベルトレーラーの装備はFF暖房や3way冷蔵庫といった比較的電気に頼らない装備の運用が可能だが、そのエネルギー源はLPガスになる。23年6月からいわゆる30分ルールを超えて充てんできるようになる講習会も開かれるようになったので、全国でその機能を有効的に活用ができる。

ハイマーツーリング310のキッチン
車両中央部に必要十分な装備のキッチン、車両前後にダイネットという構成はボディサイズが小さくても健在
ハイマーツーリング310のインテリア照明
照明は間接照明も含めかなりオシャレに進化している。少なめに見えるが、室内の壁天井が白いのをうまく利用していて、光量的には十分な明るさ

エリバ・ツーリングとは

ハイマーピュック1
ハイマーピュック2
最小モデルで以前存在していたピュック。見ての通り小型乗用車でけん引できる軽量モデルで、登場時は1600ccのワーゲン・ビートルで引っ張るのが普通だったであろう

筆者が所有しているのは、ピュックというおそらく当時世界で2番目に小さなハードシェルボディのトレーラー。97年のモデルだが、基本デザインは30年以上経っているものの、テールランプはすでに角型。

欧州ではこのモデルが本当に一般的なようで、農業を営む人が農閑期に努めへ出かけるときの工場近くキャンプ場まで、小型車で軽快に引っ張って行き利用する様子をよく見たし、実際キャンプ場でそういう人からもだいたいそういうことだと話を聞いたものである。

そのあたりから考えても、秋から冬にかけて雪降る環境下でも安心して使われているのだということが十分に理解できた。

ハイマーツーリングのエンブレム
ハイマーはドイツのメーカーだが、エリバを冠するツーリングシリーズは以前はフランスにある工場で作られ、基本的にはそこで製造されたものが自走式でもエリバと名乗っていたが、現在はドイツ製造になっている

もともとはシリーズでピュック、パン、ファミリア、トリトン、トロールとサイズ分けしていたのが、ファミリア以上のボディサイズにラインナップがまとめられていた。23年からは、それらの名称が消えサイズで表記される。

ツーリングシリーズを購入したユーザーの車両保有期間は長い傾向にある。筆者も新車購入から四半世紀が過ぎているが、ほぼノーメンテナンスながら雨漏りらしいものも発生していないし、ポップアップルーフのテント生地を交換したこともない。不具合が起きないから乗り換えないが正解かもしれない。

長い歴史を持つツーリングシリーズは、ハイマーそのもののアイデンティティを築いてきたとも言え、今も昔も変わらず多くの人に受け入れられているモデルであるであることは間違いない。

540諸元

車体サイズ
全長5,990mm/全幅2,100mm/全高2,270mm
就寝定員
3人
車両総重量
約1,150kg

310諸元

車体サイズ
全長5,060mm/全幅2,000mm/全高2,270mm
就寝定員
3人
車両総重量
約820kg
WRITER PROFILE
鈴木康文(TAMA@MAC)
鈴木康文(TAMA@MAC)

1991年、月間AutoCamper誌の前身であるDomaniの立ち上げに参加して以来、一貫してキャンピングカーとモーターホームの記事執筆を主に、アウトドア一般にいたるまで幅広く各種メディアでの活躍を続ける。途中DVDの制作や編集も手がけ、マルチメディアに対する興味は人一倍。現在は、’88 Hymer S660と同時所有していたトレーラーの’97 Hymer Touring Troll Puckをけん引中。

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