ハイマーミュージアムに見る欧州キャンピングカーの歴史

NEWS
, ,

ハイマーミュージアムに見る欧州キャンピングカーの歴史

ハイマーといえば高級キャンピングカーとして、国内でも有名なブランドです。ヨーロッパらしい高級感あふれるインテリア、最新の技術を投入した快適な環境は目を奪われます。そんなハイマーが自社の歴史とともに残したのがキャンピングカーの歴史でした。

ハイマーミュージアム

ハイマー社に隣接するハイマーミュージアム。そこには、さまざまなキャンピングカーが展示されていて、歴史を振り返ることができるようになっています。自社製品ばかりでなく、キャンピングカー全体をとらえた展示内容が興味を引きます。

ヨーロッパがキャンピングカーの先進国として発展してきた理由など、キャンピングカーを深く知ることができる施設です。今回、ハイマーミュージアムを訪れたので、その一部をご紹介します。奥深いヨーロッパキャンピングカーの世界を楽しんでみてください。

キャンピングカーの始まり

初期のキャンピングトレーラー

そのそも、キャンピングカーは、どのようにして発明されたのか気になりますよね。おそらく地域によって、いろいろな経緯があると思います。ドイツではある営業マンが家族と過ごすために作った1台のキャンピングカーがスタートとされています。それが、このDETHLEFFES WOHNAUTOです。

DETHLEFFES WOHNAUTO

展示車両は当時のクルマを忠実に再現したレプリカモデルですが、現車が残っていないので貴重なクルマです。最初に作られたのは1931年のことでした。名前を見て気づいたと思いますが、あのキャンピングカーメーカーであるデスレフです。

新婚だったデスレフ夫婦と小さな娘さんが利用していたそうです。家族との時間を大切にするヨーロッパらしい考え方が30年代からあったのですね。寝るだけを想定したレイアウトで、テーブルとベッドという、簡易的な作りです。しかし、屋根が上がり、開放感がありました。

キャンピングカーが産業に変わる

DETHLEFFS TOURIST

デスレフさんが営業で利用していたクルマを見た人からは「どこで売っているの」「作ってほしい」と声をかけられ、話題になったようです。そこで、顧客向けにつくられたのがこのDETHLEFFS TOURIST(写真上)です。展示車両は1939年のものでした。販売価格は2160ライヒスマルク。当時、国民車としてのフォルクスワーゲンが1000ライヒスマルクだったので、だいたいの価値が分かると思います。

曲線フレームは木製で作られており、屋根が持ち上がる仕組みになっていました。持ち上げられた部分が窓になっているので、室内はとても明るいです。このクルマは1973年にオーナーの下取り車として入ってきたクルマだそうです。

航空技術で軽量化を実現

航空技術者のアイデアがいかされたトレーラー

これまでは簡易的なキャンピングカーでしたが、戦後になると一気にその機能性がアップします。1947年のHIRTH TRAMPは航空技術者のアイデアがいかされていました。合板ボディに漆塗りのテキスタイルカーバーを採用し、軽量化を実現しています。

合板ボディに漆塗りのテキスタイルカーバー

メーカーではホテルライクな空間として売り出し、仕事や会議室として使えることをアピールしていたようです。価格は4500ドイツマルク。高級な車両だったのではないでしょうか。

大型&高級へと進化するキャンピングカー

CONVENTRY STEEL CARAVANS KNIGHT 49

キャンピングカーという市場が成熟してくると、高級モデルも登場してきます。このクルマはイギリスで1949年に製造されたCONVENTRY STEEL CARAVANS KNIGHT 49です。40年代のイギリスで最も高価なモデルとして知られているモデルです。

会社オーナーのクリフォード・ドートリー氏が個人的に作ったクルマでしたが、世界中の裕福な貴族などに注目され、世界各国に輸出されたモデルです。展示車両は世界的に有名だったサーカス団の調教師が所有していました。

大きなクルマだったので、病棟としても使われたこともあったそうです。キャンピングカーの多彩な使い方は、この頃からスタートしているんですね。

イギリスでもキャンピングカーがスタート

イギリスのキャンピングトレーラー

イギリスの高級キャンピングカーが出てきましたが、実はイギリスも戦前からキャンピングカーを製造していたのです。その歴史は古く、このクルマはなんと1932年製。作ったのは飛行機理論などを教えていたクリフォード・ロジャー・フレミング・ウィリアムズさん。

イギリスのキャンピングトレーラー内装 イギリスのキャンピングトレーラーキッチン

1920年には自宅の庭に最初のキャラバンを作ったそうです。飛行機理論が専門だけに、合理化されたデザインが特徴です。販売車両として製造された、この1925シリーズ、CAR CRUSERは標準装備に水筒、ティーポット、磁器皿、卵カップが含まれていたというぜいたく仕様でした。

ヨーロッパ最初のキャンピングカー!?

イギリス最初のキャンピングカーECCLES MOTOR CARAVAN

イギリスのキャンピングカーの歴史に驚いていると、またもやイギリス風のクルマを発見しました。こちらは1930年製のクルマを1972年からレストアして完成させたECCLES MOTOR CARAVANです。イギリスらしい装飾が美しい室内です。

イギリスらしい装飾が施された車内

そして、驚くのが、このクルマを作るきっかけとなった、第一人者のビル・ライリーさんが最初にキャンピングカーを作ったのは1913年のことだったそうです。車両は残っていませんが、100年以上前にキャンピングカーがあったとは、本当に驚きます。

庶民の手が届くキャンピングカー

ZUNDAPPA JANUS 250

キャンピングカーが生まれてからしばらくは、キャンピングカーはヨーロッパでも高級なクルマだったようです。しかし、デスレフさんが自作のキャンピングカーを作ってしまったように、ヨーロッパの人たちは家族、そしてレジャーを楽しむことを大切にしています。

ZUNDAPPA JANUS 250の車内

そんなユーザーに応えるように、意欲的なモデルも開発されていました。3m以下のボディにベッド展開できるシートを取り付けたZUNDAPPA JANUS 250は軽キャンパーのような出で立ちで、たくさんの人が夢を見たのではないかと想像できます。

キャンピングカーでヨーロッパを旅する

ドイツのキャンピングカー

キャンピングカーがヨーロッパで発展してきましたが、なぜここまで発展してきたのでしょうか。前回のキャラバンサロンで出合った人と話をしていると、それは「ヨーロッパの立地が理由」ではないかという意見もありました。

例えば、ドイツの人がイタリアを目指すと、アルプス山脈を抜けなければなりません。日本であれば、海沿いを走れば、標高がそれほど上がりませんが、ヨーロッパでは必ず標高の高い場所を通らなければならないんですね。

その過酷な環境を通過するための機能性がヨーロッパのキャンピングカーには求められていたようです。また、ヒッピー文化などの影響もあり、ヨーロッパからインドを目指す人々も現れ、寒さ、暑さに耐えうるクルマが必要となり、キャンピングカー発展に大きな影響を与えたのかもしれません。

物資が少なくても豊かさを求めた人々

ドイツには分断の歴史がありました。東ドイツでは大衆車としてトラバント(下写真)がありましたが、注文してから納車まで10年以上かかるとも言われていたんです。そのような経済状況でも、人々はバカンスを過ごし、自然の中で自由を感じることを望んでいたといいます。

しかし、海を目指すのにも、超えることのできない西ドイツがあるので、イタリア方面に行けません。そこで、人気だったのが、東ドイツにあったミューリッツ湖。そして、キャンパーの憧れとなったのが、さらに北側の海岸線です。1954年に海岸を訪れたキャンパーは1万人程度でしたが、1970年には50万人が訪れていたそうです。その人気の高さがうかがえます。

トラバントとルーフテント

そんな東ドイツ国民のキャンパーもちゃんと展示されていました。クルマ自体が貴重であったので、自作のキャンピングカーも多かったようです。そんななか、このルーフテントは当時のレーシングドライバーが、自身のガレージで作り、提供していたモデル。1980年製のMULLER CAR ROOF TENTです。トラバントの上に設置できて、数分で組み立てられ、大人2人が過ごせるスペースを確保していました。

EIGENBAU BOGASCH

ルーフテントばかりでなく、ちゃんとしたトレーラーもあったようです。どこか東欧のデザインを感じる直線的なラインがいいですね。1986年式のEIGENBAU BOGASCHというクルマです。元々はチェコ人の設計で、当時の東ドイツで広まり、通称「Flunder」と呼ばれ親しまれていたそうです。

EIGENBAU BOGASCHのキッチン

宇宙船のようなスタリングで、逆スラントの窓にキッチンが取り付けられています。リビングエリアは窓で囲まれていて、開放感があります。

EIGENBAU BOGASCHの床

室内高さを確保するために、床が下がる仕組みです。ルーフを上にあげるより簡単な作りで、高い効果がありそうです。

ハイマーミュージアムではいろいろなキャンピングカーを見学できます。キャンピングカーが海外セレブだけのものだった時代、そして、庶民に広まった時代、いろいろな場面で活躍したキャンピングカーを見学するのは楽しいですよ。

休みを充実させる国民性、センスあるデザイン性など、見習いたい点も数多くありました。もし、キャンピングカーに興味を持っているのなら、ハイマーミュージアムはおすすめです。ぜひ、足を運んでみてください。

ハイマーミュージアム

年中無休(クリスマス、年末除く)
開館時間10〜18時(木曜日のみ21時まで)
入館料 大人11.50ユーロ 18歳未満無料
HPはこちら
WRITER PROFILE
渡辺圭史
渡辺圭史(わたなべ・けいし)

1971年東京生まれ。アウトドア好きな編集者、そして、算数が好きだったライター。アウトドア用品メーカー、出版社を経て、キャンピングカー専門誌編集長に。現在はフリーとして、いろいろなメディアにて執筆中。アウトドアをキーワードに、より楽しいライフスタイルを求めてゆるりと奮闘中。最近気になっているワードは、旅、ミニマリスト、車中泊。趣味はコンパクトな旅とモノづくり。

キャンピングカーライター一覧へ

NEWS
, ,

HYMER
HYMER

レンタルキャンピングカーネット