
キャンピングカーの業界では、エアコンや電子レンジなどの電気製品を使うことが当たり前になってきています。特に大きなキャンピングカーでは、家庭用エアコンが標準装備され、キャンピングカーの設備要件として調理器具に電子レンジが搭載されているモデルも多くなってきました。
電源を確保できるRVパークなども増えてきて、キャンピングカー用電源が確保しやすくなったり、リチウムイオンバッテリーなどの大容量電源を貯めることができる技術の発展など、キャンピングカーの電化を推し進める理由がたくさんあげられます。
でも、環境が整ったとしても、電気を使ってしまったら、充電する必要があります。大容量のバッテリーを搭載しているのであれば、必然的に充電時間も長くなってしまいます。大容量電源が一般的になって、次なる課題はこの充電といってもいいでしょう。
そこで、日本特種ボディーは新たな急速充電を開発したといいます。短時間で電気を蓄えて、災害時にも活用できる新しい充電の魅力に迫ります。
5時間でキャンピングカーのバッテリーをフル充電

日本特種ボディーが新たに開発した急速充電システムは「エネクルーズブロック2」というシステムです。同社では以前から家庭用エアコンが気兼ねなく使えるように、電源システムの強化をおこなっていました。
早くからバッテリー容量を増やして、家庭用エアコンが安心して動かせることを目指してきました。リチウムイオンバッテリーを使って、電気容量も増やしてきました。
「エアコンを使っていると5kWhであれば、なんとか使えるのですが、やはり10kWhぐらいあると安心ですね」と代表取締役の蜂谷さんは言います。
しかし、バッテリーが大きくなってくると、次なる問題が・・・ それはバッテリーの充電問題です。大容量のバッテリーを充電するには時間がかかり、利便性が損なわれてしまう可能性があります。
満充電でキャンプ場へ行き、エアコンを余裕で使っていたら、次の日はソーラー充電や走行充電をしてもバッテリーへの充電が十分でなく、エアコンが使えなくなることが起こりえます。
そのような問題を解決するために開発されたのが、このエネクルーズブロック2です。走行時は2kWを超えることもあるそうで驚きです。

ソーラーパネルとの併用も可能で、走行充電中でもソーラーパネルから約700Wの電力を取り込むことができるそうです。走行充電の出力からすると小さいかもしれませんが、少しでも多くの電力が確保できるのは安心です。
その差が大きくなってくると、ソーラーパネルの必要性も低くなって、ソーラーパネルなしのキャンピングカーで、十分に電気を使えるようになるかもしれません。
実際に使ってみて次世代走行充電のパワーを知る

エネクルーズブロック2の実力を体験できる機会がやってきました。日本特種ボディーのSAKURAが車中泊の実証実験に参加していたのです。その日はあいにくの雨、しかも、寒い時期だったので、エアコンで暖房をつけていたそうです。
そして、解散となり、次の場所へ移動する時、クルマに同乗させてもらいました。バッテリー容量は400Ah。ソーラーからの充電はありません。純粋に走行充電だけの性能をチェックできるベストコンディションです。

エンジンスタート前、バッテリーモニターには9%の文字が表示されています。この時点で何かしらの電機製品を使っていたので、52Wほどの電力が消費されているのが分かります。もしキャンプ場で連泊する時、この状態だと、その日はエアコンを使えないかもしれません。しかも、エアコンでの暖房は、電気が足りなくて無理だと思います。
バッテリー容量を大きくしても、電気を使い切ってしまうと、その機能を十分に発揮できません。充電ができていなければバッテリー容量の大きさは意味を成さないのです。連泊した朝にキャンピングカーに乗っていると、時々、そのような感覚になることがあります。

エンジンをスタートさせると、アイドリング状態の充電入力が1kWを超えてきました。その数値はジワジワと増えてきて、走行中は2kWを超えることもあります。時間にして約20分走った後、バッテリーモニターを見てみると、残量が20%になっていました。
上の写真はアイドリング状態ですが、2.2kWで充電されていたようです。20分で約43Ah充電できたということです。400Ahを満充電にするには、平均5時間とのことです。少し走って、ここまで復活するのであれば、キャンプ場からの買い出し程度で十分に電気を貯められそうです。
安全性を担保した高出力充電システム

エネクルーズブロック2を搭載したSAKURAのインストゥルメントパネルに見慣れないスイッチがありました。これはハイパワー充電のシステムを解除するスイッチだそうです。常に最高出力の必要がなければ、走行充電のパワーを若干落として利用できるようになっているのです。
スイッチをオフにしても、一般的な走行充電は行われていました。スイッチをオンにすると、一気に入ってくる電気が増える状態。どのような仕組みになっているのか不思議です。
車両で発電し、コントローラーを介して大きな入力電流を発生させているのは確かなようです。日本特種ボディーはいすゞ自動車のベース車両Be-camを使っていますが、メーカーとの信頼関係も厚く、このシステムを開発する時も、アドバイスがあったようです。
高出力の電力を走行充電から得る方法として、電気を昇圧させる方法がありますが、単純に昇圧させるとエンジンに大きな負荷がかかり、オルタネーターに負担がかかる傾向があります。しかし、エネクルーズブロック2では、エンジンへの負担はあまりないとも。なので、燃費が一気に悪くなることもないようですが、燃費計測の結果では、オフの方が1km/Lほど燃費が良いようです。

システムはボックスに入った状態でパッケージングされているので、簡単に設置可能になっていました。シート下のスペースへきれいに収めることができます。日本特種ボディーが製造販売するSAKURA、AKATSUKIにも搭載していく予定のようです。
既存モデルへの後付けも可能で、すでに市販されているモデルでも搭載できる車種があるそうです。また、パッケージされているので、アフターパーツとしての流通も考えていて、この強力な急速充電システムが、色々なクルマへ搭載される日も近いかもしれません。
日本特種ボディーでは、AT限定普通免許で運転可能な、いすゞ自動車の最新キャンピングカー専用シャシーTravioをベースにした新型キャンピングカーをラインアップしていますが、こちらのモデルにもエネクルーズブロック2が搭載される予定とのことです。
キャンピングカーを急速充電できることで災害対策に貢献

急速充電できるようになると、大容量バッテリーも本来の性能を発揮できます。家庭用エアコンを動かしたり、さまざまな家電を自由に使うことができるようになります。電力供給が難しい場所でも、エネクルーズボックス2のおかげで電気が使えるようになるため、災害時の電源としても利用できると考えられます。
日本特種ボディーがラインナップするエクスペディションシリーズは機動性が高く、防災対策に適したモデルですが、エネクルーズボックス2でさらに電源を強化すれば、災害支援車両としての性能をさらに高めることができそうです。

写真提供:日本特種ボディー
キャンピングカーや車中泊車両の急速充電システムは防災対策としても注目されていて、急速充電に関する製品も多く登場しています。そんななか、日本特種ボディーが作った急速充電システムは、これまで急速充電システムで懸念されていた事を1つ1つ解決しているように感じます。以下の主な特徴からもその理由を感じられるのではないでしょうか。
- 10kWhの容量のバッテリーを走行充電できるパワー
- 高出力で充電していても、クルマへの影響が少ない
- ソーラーパネルとの併用ができる
- パーツとしてではなくシステムとして完成している
- 後付けが可能なパッケージになっている
実際に使ってみて、短時間でバッテリーが充電されている状態を見ると驚きます。これだけパワーがあれば、ソーラーなし、FFヒーターなし、オール電化されたキャンピングカーという新しいスタイルが生まれてもおかしくないでしょう。