キャンピングカーのバッテリー選びは悩みます。リチウムイオンバッテリーがいいのか?それとも、鉛バッテリーか? オーナーにあったバッテリー選びは永遠の課題のようです。
最近では家庭用エアコンを設置したキャンピングカーも多く、大容量・高出力を求めて、リチウムイオンバッテリーを搭載したモデルも販売されています。
では、リチウムイオンバッテリーが優れているのか、というような簡単なことではありません。今現在のスペック=バッテリーの性格が利用方法にあっているか?を判断してバッテリーを選んでいるだけなのです。
リチウムイオンバッテリーが新しくて、鉛バッテリーは古いというイメージを持っているかもしれませんが、誕生してから約160年になる鉛電池は古いといえるでしょう。でも、長い歴史のなかで今も改良が続けられ、現在も自動車・産業の幅広い分野で使用されています。
それぞれのバッテリー特性を引き出した新しい製品が生まれ続けているのです。そんな最新のバッテリーが生まれる現場をみてみたい!その思いが通じたのか、古河電池の工場見学のお誘いが舞い込んできました。
目次
バッテリーを作り続け100年の歴史がある古河電池
今回、訪れたのは古河電池。古河電気工業の電池部門が独立して、1950年に設立された会社です。古河電気工業時代の1914年に電池製作所を開設しているので、バッテリーを作り続けて100年以上の歴史がある会社です。
国内外に多数の拠点がありますが、工場見学をさせてもらったのは栃木県日光市にある今市事業所。バッテリーというとコンパクトなイメージがありますが、工場はとても大きく、上の写真の青い屋根部分が自動車用バッテリー工場、その奥が産業用バッテリー工場に分かれています。
キャンピングカーなどに利用されるサブバッテリーは奥の産業用バッテリー工場で作られています。この巨大な工場の中で、バッテリーのパーツを1から作っていて、原材料の加工から始まって、鋳造、充填、化成、組立、充電、発送という工程をへて、各販売店へバッテリーが届けられます。
バッテリー産業は機密事項も多く、工場見学できる機会はほとんどありません。世界の産業でも、○○○○○のバッテリー工場が○○○○○にできた!などのニュースもよく聞かれるほど、産業の根幹を担う事業なので、各社の開発競争は激しいと考えていいでしょう。
そんな、貴重なバッテリー工場の見学を実現できたのは、古河電池との関わりが深いRVランドのおかげでした。 RVランドにとっても、バッテリー選びは悩みの種。そんな悩みの方向性を変えたのが古河電池の最新の鉛バッテリーだったのはいうまでもありません。
RVランドスタッフの研修も兼ね、スタッフと一緒に工場へ向かいます。今市事業所に到着すると、かわいらしいマスコットのバッテリー君が私たちを迎えてくれました。
鉛バッテリーの性能を引き上げることでマルチな性能を発揮
産業用のバッテリーの基本的な考え方として、スタンバイユースとサイクルユースというものがあります。スタンバイユースは主に設備のバックアップ用として、いざという時のために設置されるバッテリーのことです。サイクルユースはソーラー充電の街路灯などで利用される、日々、充放電を繰り返す用途で利用されるバッテリー。
もう少し、私たちの生活で考えてみると、毎日使うスマホは毎晩充電していますが、防災バッグに忍ばせた懐中電灯やラジオなどは、バッテリーを入れたままの状態です。この2つがバッテリーの用途として大きな区分となります。
簡単にいうと、スタンバイユースに求められることは、放電が少なく長期間の保管ができること。サイクルユースでは繰り返し利用しても、バッテリーとしての能力が低下しないことです。産業用バッテリーではこの特性を理解して、使う場面に合わせたセレクトが行われてきました。
それは古河電池の100年の歴史の中で繰り返されてきた課題、といってもいいでしょう。でも、バッテリーの使い方はさまざまです。特にキャンピングカーは、長期間、駐車場で停まっていることも多く、いざ外出した時は、バッテリーの充放電を激しく繰り返す、といった過酷な利用方法になることが多いのではないでしょうか。
先ほど出てきた、スタンバイユースとサイクルユースのどちらかに特化したバッテリーでは、キャンピングカーのような利用法になった場合、どちらかの性能を犠牲にしなければなりません。
そこで出てきたのがデュアルユースという考え方。古河電池独自の呼び方となりますが、スタンバイユースとリサイクルユースのちょうど中間の性格を持ったバッテリーのカテゴリーとなります。
このデュアルユースのバッテリーとして生まれたのが、キャンピングカーのサブバッテリーなどに利用されるFCR型バッテリーです。
キャンピングカーに最適なハイグレード鉛バッテリー
FCR型バッテリーの特徴は、スタンバイユースでありながら、放電回数が多くても、従来のバッテリーよりも寿命を伸ばしたことです。さらに、サイクルユースであっても、対応放電回数を増やして、長寿命化を達成しました。
どちらも同じこと?ではありません。サイクルユース、スタンバイユース、どちらであっても、同じような性能を発揮することが、本当は難しいのです。その性能を実現するためには、バッテリー設計を1から見直さなければなりません。
古河電池ではバッテリーの研究・開発を自社で行っているので、今までになかったバッテリー性能を引き出すことができたといってもいいでしょう。
バッテリーの中には極板が並んでいますが、この極板作りも鉛のインゴットから骨組みを作って、その間に特殊なペーストというものを流し込み、焼き上げる、という工程を経ています。このペーストに、高密度ペーストを採用して、さらに内部の成分を調整して、性能を引き上げることに成功したのです。
素材からオリジナルのブレンドを行い、使っている材料についても、徹底的に改良を加えることで、最高品質のバッテリーが完成しました。この手の込んだ製造工程を実現できるのは、自社で完結する、上写真にある工場のような、一貫したライン生産環境が必要なのです。
この FCR型バッテリー、特にキャンピングカーではFCR-50-12という12Vタイプが使われますが、そのサイズは220╳128╳363㎜というサイズです。シート下にもすっきりと収納できるサイズで、2個、3個と搭載した場合も、レイアウトしやすい形をしています。
定格容量は50Ah。ちょっと少ない、と感じる人もいるかもしれませんが、最後まで電気を出力し続ける能力が高いので、他メーカーの100Ahと変わらない性能を発揮してくれる場合もあるのです。実際に他社のバッテリーとの比較テストをRVランドで行ったところ、以下の結果が出ました。
商品名 | タイプ | 容量表記 | 20A放電時間 | 理論上の数値 |
---|---|---|---|---|
FCR50-12 | 鉛 | 50Ah | 約2時間 | 2時間30分 |
A社 | 鉛 | 100Ah | 約1時間50分 | 5時間 |
B社 | 鉛 | 95Ah | 約3時間 | 4時間45分 |
C社 | 鉛 | 100Ah | 約2時間30分 | 5時間 |
D社 | 鉛 | 105Ah | 約2時間40分 | 5時間15分 |
E社 | リチウムイオン | 100Ah | 約4時間30分 | 5時間 |
古河電池で行ったテストでは、サイクルユース状態でのサイクル寿命試験を行い、4000サイクルを達成したそうです。一般的な鉛バッテリーが1000サイクル以下であることから、その性能はリチウムイオンバッテリーと変わらない回数でした。
さらに、デュアルユース状態での試験では、スタンバイバッテリーの2倍以上のサイクル数を達成するなど、その性能の高さを誇ります。
徹底した品質管理が生む高性能バッテリーの安心感
いろいろな試験で好成績を叩き出した、古河電池のFCR型バッテリー。実際の製造工程を見てきたので、炉で溶かされたインゴット、ペーストなど、その1つ1つに性能を追及した秘密が隠されていたことに驚かされます。
工場のラインを大まかに分類すると、素材からバッテリーの部品を作って、バッテリーを組み上げ、電気を充電してチェック、そして、出荷という流れです。
各エリアでは多くの場面でオートメーション化が進んでいるので、その作業内容はほとんどがチェック作業のようにも見えました。1つ1つていねいに仕上がりをチェックしているのです。
バッテリーを充電して、放電している部屋では、大量のバッテリーが並んでいて、圧巻の光景。各バッテリーの状態を監視しながら、バッテリーの性能がチェックされていました。私たちの手元に届くバッテリーすべてが、このようにチェックされている、と思うと安心できます。
バッテリーにはシリアル番号が刻印されていて、製造工程でのデータが管理されているそうです。出荷の時も、この製品番号がチェックされます。後で何か調子が悪くなった場合など、製造工程までさかのぼって、品質を管理するシステムがあるのです。
100年以上のバッテリー作りのノウハウが詰め込まれたのが、現在、販売されているバッテリーとなります。その長い歴史こそが、古河電池のバッテリー性能といえるでしょう。
長年の絶対的安心感を引き継ぎながら、最新のバッテリーとしての性能を発揮するFCR-50-12。リチウムイオンバッテリーへ目移りしていた人も、この機会に、鉛バッテリーを候補に加えてみてはいかがでしょうか。