
事の発端は、北の大地をくるま旅していた時のこと。これまでも北の大地では、その通信環境で苦労する事が多く、勿論、ポケットWiFiなどの装備も持っていたのですが、場所によっては、全くつながらないという事が多々ありました。北の大地で通信の「陸の孤島」状態です。
これまでも2回、ポケットWiFiを契約&解約しました。結局、ローカルに強いと言われるドコモで、iPhoneでのテザリングを使っていたのですが、それでもダメな地域はあり、「ドコモよ、お前もか!?」とシーザーばりに嘆いていた時に知ったのがStarlink(スターリンク)でした。
目次
Starlinkとは?
一言でいうと「通信衛星によるインターネット通信システム」で、衛星から通信電波が降ってくるというものです。元々は、EVのテスラ創業者で米国の事業家イーロン・マスク氏の長期的目標である、宇宙産業を革新し人類を多惑星種族にする計画の一つとして進められているプロジェクトです。
2022年には40余りのスペースX社のファルコンロケットが打ち上げられ、2023年には約30回の打ち上げが行われ、一度に最大60基の衛星を打ち上げています。世界最先端の通信システムで、超高速のインターネットとモバイル通信を地球のあらゆる遠隔地に接続、最終的には膨大な数の小型衛星によるネットワークが展開される予定で、少なくとも約12,000の小型衛星が計画されています。
天体観測への悪影響が懸念されなかったら、40,000以上になっていたとも言われています。文字通り「星(衛星)とのリンク」なので、お空が見えるところならどこでも通信できる事になります。
気になる通信費ですが、プランによって違い、日本国内では個人向けの料金プランは主に2つあります。場所を固定して使う「レジデンシャル」は月額6,600円、場所を問わず使える「ROAM」は月額9,900円。(2023年11月時点)ポケットWiFiなどの端末に比べるとまだまだ高いですが、これでも以前よりは値下されて安くなりました。
キャンピングカーで使用する場合は当然「ROAM」となりますが、「ROAM」は通信速度がレジデンシャルよりも制限されます。これは混雑時には速度が低下する可能性があるというもので、スターリンクユーザーが多い地域、混雑する時間帯は不利になるかもしれません。
反面、利用の一時停止と再開がでるというメリットもありますので、私の場合は、北海道や九州、または電波が弱い所に行く時だけ利用するという事も考えています。

実際に使ってみた
私の場合、丁度キャンペーンで初期費用が半額(73,000円→36,500円)になっていたので、思わず飛びつきました。ブツが届いてから30日以内ならば無料で解約できますが、私は使っている内に手放せなくなって現在に至ります。
ポイントは大きく分けて5つです。
① 組み立て
最初に1セット届いた時には「デカい!」の一言。キャンピングカーのどこに置こうかと悩みました。が、考えてみればBSのパラボラアンテナも似たようなサイズです。BSパラボラアンテナと同様に、車外に常設するなら、毎回の組み立ては不要になるので問題ないでしょう。

② 設置
兎に角、お空を遮るものが無いようにしないといけません。谷間とか横穴式住居(あるかいそんなの)はダメです。オフ会などでキャンピングカーがズラリと並んだ状況では、それらよりも上の位置にアンテナを設置しないといけません。
幸いな事に私の愛車のアンセイエには「天窓」があるので、バンクベッドから登って天窓を開け、クルマのルーフ上に設置しました。これなら、余程大きな山や谷が空を遮らない限りは大丈夫です。

③ 安定化までの時間
アンテナを設置してルーターをオンしても、直ぐに使える訳ではありません。衛星とリンクする為の時間が必要になります。まずは、衛星の位置を確認して、つまり探します。アンテナは自動的に、衛星の方に向けて動きます。ここがなんかSFチックで好きです。
アプリでは安定化まで12時間かかるとか表示されますが、「そんなに待てるかい!」とツッコミを入れたくなります。勿論、実際はそんなに待たずに使えますが、衛星を完全にキャッチ出来た方がその分、電波も強くなります。

④ 通信状態
正直言って速いです。勿論、自宅などで使う光回線などには敵いませんが、ポケットWiFiや、スマホのテザリングよりは圧倒的に速いです。京丹後で使った時は、ダウン側はドコモのテザリングの8倍!アップ側が2倍!のスピード。個人的にはもう少しアップ側のスピードが速いと嬉しいです。

各地で試しました。
埼玉県小山市


千葉県袖ケ浦市


山梨県南都留郡

新潟県燕市

京都府京丹後市


福岡県朝倉郡


佐賀県神埼郡吉野ヶ里町


どのエリアも、ドコモのiPhoneではバー1~2本で、動画がアップできなかったところです。無事、重いデータをアップし終わったときは、思わず「イーロン・マスクありがとう!」と呟いてしまいました。電波の強さは、地域的特性もあると思いますが、その時の衛星との位置関係が左右すると思われます。
また、前述のとおり、ROAMは通信速度がレジデンシャルよりも制限される事の影響があるかもしれませんが、まだユーザーがそんなに多くなく、混雑する事も少ないと思うので、その影響は余りないと思います。
⑤ その他の条件
空を遮らないという大前提がありますが、その他にも気になった条件があります。
天候
これは車外に常設している場合は問題になりませんが、幾ら防水仕様でも、雨や雪がジャンジャン降っていたり風がビュービュー吹いている時に、アンテナを外に出すのは躊躇しますし、億劫にもなります。屋外設置を前提としているアンテナは良く出来ていて、寒い日や降雪時にはその対策として、アンテナの過熱機能もあるので、余程の悪天候でない限りは問題はないかと思いますが・・。

防虫対策
今年はカメムシの以上発生がありました。彼らは数ミリの隙間があると入ってきます。カメムシ以外にも夏場は蚊などの心配があります。これも車外に常設にすれば良い話ですが、その都度、設営する場合、つまり、ケーブルをドアや窓の隙間など、どこかを通さないといけない場合は要注意です。
良かったところ・イマイチだったところ
良かったところ
- Starlink導入の動機となった「空が見えるところなら、どこでもつながる」ところ
- ポケットWiFiよりも速い=重いデータも早くアップできる
- 時代の最先端を行く満足度。イーロン・マスクを助けている感じも満足?
イマイチだったろころ
- 通信費が過去に値下げがありましたが、それでもまだ高い
- 使える様になるまでの手間と時間がスイッチON!で使えるポケットWiFiよりは面倒
- 車内だけで完結しない。どうしてもアンテナを外に設置しないといけない。まあ、これはBSも同じですが・・
私見ですが、単にYouTubeを視聴したり、サイトを閲覧するだけなら、Starlinkまでは必要ないと思います。一方で、動画など、重いデータをアップしなければならない時は、Starlinkの本領発揮です。
キャンピングカーだけでなく、光などが引けない所にある別荘や、オフィス、船舶などでも活躍するでしょう。別の言い方をすると趣味で使うなら勿体ないけど、業務で使う場合は導入すべきですね。災害時のバックアップ用通信システムとしても使えます。
私の場合は、恥ずかしながら「ゆるチュ~バ~」をやっていて、しかもキャンピングカーで移動する事も多いので、どこでも、それなりのデータをアップ出来る本システムは正に「星に願いを!」が実現したようなものです。

Starlinkの未来
時代の最先端という事はまだまだ改善の余地がある、言い方を変えるとまだ「伸びしろがある」という事。
性能
今よりも確実に通信速度が速くなると思われます。
通信費
普及が進めば安くなるはず。逆にイーロンの事なので、普及したら値上げする可能性は否定できませんが。
接続方法
既にKDDIから、衛星とスマホが直接通信できるというサービスがアナウンスされています。つまり、auの4Gや5Gの圏外に移動した場合でも、空が見える場所であれば、スマートフォンがスターリンクの衛星と直接つながり、通信サービスを利用できるようになるというもの。2024年にSMSなどのテキストメッセージの送受信、2025年に音声通話とデータ通信のサービス提供が開始される予定の様です。衛星通信アンテナのように空に向けてスマホをかざすといったことも不要で、これによって山間部、離島、海上といった場所を問わず、日本全土がエリアになる訳です。

とまあ、進歩著しいデジタル技術ですから、これからどんどん性能が良くなり、リーズナブルな価格にもなると思いますが、それも今、使いこなさないと先はありません。そうなんです、それもあって、私は喜んで今「人柱」になっています。決して、キャンピングカーのルーフにアンテナを設置して「ドヤ顔」する為にやっている訳ではありません。