香川県にある岡モータースの敷地には、たくさんのキャンピングカーが並んでいます。いろいろなメーカーがラインアップされているので、この展示場に来れば、お客さんは違うブランドのモデルを比較しながら、キャンピングカーを選べるようになっています。
岡モータースの歴史をたどってみると、1961年に自動車販売店として創業し、地元でも屈指の大型自動車販売店として成長していったそうです。2004年にはキャンピングカー部門が設立され、キャンピングカーの取り扱いがスタートしました。
今では、メーカーの垣根を超え、いろいろなキャンピングカーが展示され、四国で最大のキャンピングカーディーラーとして親しまれています。そんな、現在の岡モータースのスタイルを確立した、岡モータース代表取締役の岡宏治さんにお話をうかがってきました。
目次
キャンピングカーを扱うことを決めた直感
自動車販売店として有名だった岡モータースがキャンピングカーを扱い始めたのは、友人がキャンピングカーに乗っていたことがきっかでした。偶然にも2人の友人が、キャンピングカーのメンテナンスで相談にやってきたといいます。
キャンピングカーが広まっていることを実感しはじめた頃、キャンピングカーを買いたいという話も入ってきました。当時、四国では新車のキャンピングカーを扱っているショップはほとんどなかった状態です。そこで、キャンピングカーメーカーのバンテックに、紹介もあったので、連絡をしたところ、すぐに営業担当がやってきたといいます。
中古のキャンピングカーばかりを見てきたので、営業担当が持ってきたバンテックの新車を見て、それまでイメージしていたキャンピングカーとは違った印象を受けたといいます。そして何よりも、「これ欲しい!」と感じたことが後に大きな影響力を発揮したようです。
キャンピングカーを営業して感じたこと
その直感を信じて、キャンピングカーの取り扱いをスタートさせました。最初はバンテックだけでしたが、すぐにアネックスのクルマも扱うようになったそうです。アネックスの工場は徳島にあるので、同じ四国ということもあって、話はトントン拍子で進んだといいます。
キャンピングカー部門がスタートした時、担当のスタッフは2人でした。分からないことも多いなか、営業からメンテナンスまで、さまざまな仕事をして、多忙な毎日を過ごしていたそうです。でも、一般的な自動車販売とは違った感覚を味わっていたといいます。
「キャンピングカーの営業がすごく楽しいと感じていました。一般的な自動車販売営業では感じなかった、家族を巻き込む感覚が強いんです。キャンピングカーを購入したお客さん、そして、その家族が笑顔で来店してくれた時は、キャンピングカーを提供できて、本当によかったと感じました」
ディーラーとして本気で取り組む姿勢
キャンピングカーの取り扱いをスタートさせ、日本RV協会へ加盟すると、たくさんのメーカーとの交流も増えました。そのなかで、四国への販路を広げたいというメーカーも多く、代理店として協力してくれないか、という声がかかったといいます。
そして、取り扱いブランドは少しずつ増え、現在のようなバリエーションになっていきました。しかし、ただ販売店として名前を連ねているだけではありません。
「ブランドを扱わせていただくからには、何事にも本気で取り組まなければなりません。アフターメンテナンスも、各ブランドに対応できるように、体制を整えてきました。そういった準備ができてからでないと、お客さんにおすすめできないです」と取り扱いに対する姿勢を感じる話をしてくれました。
ユーザーの求めるモノを形にしたい
キャンピングカーに興味を持ったお客さんが増えるにつれて、いろいろな要望も寄せられるようにもなったといいます。「豪華な装備は要らない」「ベッドがあるだけでいい」など。そこで、お客さんの求めているクルマを形にできないかと考えたそうです。
最初はビルダーに製造を依頼したこともありましたが、最終的に自分たちで作ることになりました。趣味の日曜大工で机などを作っていたこともあって、手元に横切り盤やルーターなどもあり、「なんとかなるだろう」と挑戦することになったそうです。そして、それまでに培ったノウハウを詰め込んで完成したのが、軽キャンパーのミニチュアクルーズでした。
完成したクルマをキャンピングカーショーに展示したところ、来場者からは好感触を得られたといいます。しかし受注しても、全てハンドメイドで製造していたので、月に1~2台作るのがやっとだったそうです。
軽キャンならではのスペースへのこだわり
ミニチュアクルーズはユーザーが必要十分と感じる、シンプルな装備で構成されているのがポイントです。さらに、軽自動車をベースにしているので、スペースの使い方にもこだわりました。室内への出っ張りを減らしたり、同じ空間をいろいろな用途につかえるよう、シートアレンジも多彩です。
水回りでは排水タンクを車外に取り付けたモデルもあり、車内のスペースを確保しました。排水タンクはステンレス製で、ワンタッチで排水できるコックが取り付けられています。特注で作られていて、軽キャンでは珍しい装備といえるでしょう。
専用工場を作りクオリティ向上
ミニチュアクルーズはバリエーションを増やし、ユーザーの求めるスタイルを具現化していきました。生産体制を整えるためにも、新工場が作られ、月間生産台数20台を目指しているそうです。そして、新工場完成で導入されたのがNC加工機でした。
「NC加工があれば、生産効率アップにもつながるし、精度が高いので、誰でも組み立てできるようになります」。その効果を大きいようです。でも、NC加工機を導入しましたが、オペレーションする技術者はすぐに育ちませんでした。
「みんな日々の業務に追われて忙しく、必然的に私が操作することになりました。もともと、コンピューターには抵抗がなかったし、グラフィックソフトも使っていたので、使えると思ったのですが、やはり、難しかったですね」と自ら設計を担当していることを明かしてくれました。
ものづくりが楽しくなってきた
ミニチュアクルーズの設計では、狭い空間を有効に使うため、1ミリ単位でサイズを調整しているといいます。例えば、ミニチュアクルーズHENROのリアテーブルは、セットしている時も、収納している時も、ピタリとハマって、ロックをする必要がない設計です。
左右の棚の位置も、テーブルのサイズに合わせて、寸分のズレも許されませんが、すべて組家具工法を採用しているので、誰が組んでも、ピタリと同じサイズの家具ができるそうです。この精度の高さを実現したのが、NC加工と設計へのこだわりだったのです。
その設計をしているのも、岡さんだというから驚きです。図面を見ながら、スペースを探して、数ミリ単位で修正していくのです。完成した家具を想像しながら、配線位置や扉なども考え、NC加工機がどのように動くかも考慮しているとは、プロ顔負けの腕前です。
なぜ、そこまでこだわって作業ができるのか。その秘密は「ものづくりが楽しい」と感じているからだそうです。いいものをユーザーに提供するために、考えながらものを作っていること自体が楽しいので、難しい操作方法なども克服できたのかもしれません。
ユーザーの笑顔に支えられ、キャンピングカーの営業に楽しさを感じ、そして、今ではモノづくりの楽しさに魅了されている岡モータース代表取締役岡宏治さん。この充実した環境が、新しいユーザーのニーズを見つけ、新しい驚きを提供してくれるのかもしれません。