トレーラーの新しい魅力:インディアナ・RV降旗貴史代表インタビュー

メーカー・販売店インタビュー
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日本のキャンピングカーシーンで、「キャンピングトレーラー」というジャンルがこれだけ普及してきたのは、「インディアナ・RV」という会社の功績が非常に大きい。
この会社が、日本人のキャンピングカーライフの特徴を見据え、その使用実態をリサーチし、快適なトレーラーライフを送るための環境整備に尽力してこなかったら、ひょっとして、日本にトレーラー文化というものは根づかなかったかもしれない。
逆にいうと、トレーラーというのは、販売会社が組織の総力を結集してマーケット整備をしないかぎり、日本ではそう簡単に普及しないともいえる。

かつて、バブル経済を背景に、輸入車が勢いよく売れていた時代があった。そのときに、欧米のRVマーケットにおいては大きなシェアを占めるキャンピングトレーラーを日本に導入しようとした業者もかなりいた。
しかし、その当時華々しくトレーラーを売り出していた業者のなかで、現在も活躍している会社は非常に少ない。言葉は悪いが、多くの業者は、輸入車が手放しで売れる時代に便乗しようとしたに過ぎなかったからだ。

それに対し、いまトレーラーを主力商品の中軸に据えている会社は、みな自社の扱う商品に誇りと情熱を持っているところばかり。そして、何よりも顧客に「トレーラーライフの魅力」をプレゼンできる能力を持っている。 そんなトレーラーショップの代表的な存在が「インディアナ・RV(株式会社ヴィンテ・セッテ)」である。

インディアナ・RV展示場
インディアナ・RV展示場

この会社は、「マーケット」という概念をしっかり持っている。
すなわち、日本人のキャンピングカーライフや使用環境を緻密に調査し、人々が何を求めているのかというデータを商品にフィードバックする力を持っている。
そんな「インディアナ・RV」を統括し、商品開発プロデュースに全力を注いでいる降旗貴史代表に、同社が扱うトレーラーの特徴と、同社が提案するトレーラーライフの魅力を語ってもらった。

聞き手:キャンピングカーライター 町田厚成

インディアナ・RV 降旗貴史代表
インディアナ・RV 降旗貴史代表

ヨーロッパの巨大企業「トリガノ」が認めた優良ショップ

新しいトレーラー エメロード406
新しいトレーラー エメロード406

【町田】今年2月初旬に開かれた「ジャパンキャンピングカーショー」の会場で、新しいトレーラー「エメロード406」を披露されましたね。まずこのトレーラーの商品的な特徴からお話いただけますか?

【降旗】最大の特徴は、見てごらんのとおり、日本の左側通行帯に合った左エントランスドアを実現しているところです。
輸入車の場合、ドアはだいたい右側になるんですね。ヨーロッパ大陸もアメリカも右側通行だから。
しかし、右ドアだと、日本の場合、人の出入りが車道側になるんですよ。安全面を考えると、それはあまり好ましくないので、どうしても左エントランスを実現したかったんです。

【町田】インディアナさんは、昔はそういうタイプのトレーラーを用意されていたこともありましたよね。

【降旗】そうですね。かつては私たちもそういうトレーラーを扱っていた時代がありました。
しかし、輸入先が大きな会社になると、なかなか私たちの要望が通らないことがあるんですよ。
この「エメロード」を製作している会社は「トリガノ」といって、ヨーロッパ全土で20以上の工場と、4.000人規模の従業員を抱えた大企業なんですね。自走式もトレーラーも製作していますけれど、トレーラーだけで年間1万台以上出荷しています。

トリガノ工場
トリガノ工場

【町田】それはすごいですねぇ。

【降旗】そうなんです。この会社は母国のフランスを拠点としながら、ドイツ、イギリス、イタリア、オランダ、スペイン、スロベニアなどヨーロッパ中のキャンピングカーメーカーを統括する巨大グループの司令塔といった存在なんです。
この「エメロード」は、そのグループのなかで、「キャラベルエア」というブランドでトレーラーを製作している会社の製品ですが、日本のマーケットがあまりにも小さいため、これまで左側に扉を付けるような “日本仕様” には対応してくれなかったんですよ。

【町田】それが何で実現したんですか?

【降旗】私たちが、トリガノと接触を持つようになって10年経ったからなんですね。
その間、私たちもかなりの台数を売ってきましたから、トリガノのCEOから、10周年を記念する「盾」をプレゼントされて、「そろそろあなたの望む仕様をつくってあげてもいいよ」と言われたんですね。
それでようやく左側にドアを設けた日本仕様のトレーラーが実現したわけです。

トリガノCEOと
トリガノCEOと

【町田】ロットが大変だったのではないですか?(笑)

【降旗】もちろん(笑)! でも、おかげさまでこのシリーズは国内での評判がいいものですから、数が多くてもまったく負担にならないですね。

【町田】「トリガノグループ」というのは、どういうキャンピングカーメーカーが集まったグループなんですか?

【降旗】有名なところでいいますと、ドイツの「ユーラモービル」、「カルマン」、フランスの「ショーソン」、「オートスター」、「キャラベルエア」。イギリスの「オートトレイル」。つい最近では、スロベニアの「アドリア・モービル」も傘下に入りましたね。

【町田】規模としては、ハイマーグループに匹敵するくらいのものですか?

【降旗】いい勝負をしていると思いますよ。グループ全体の総売り上げでは、ハイマーグループの上を行くこともあります。

2ダイネット仕様のメリット

エメロード406リヤダイネット
エメロード406リヤダイネット

【町田】その日本仕様ですが、扉が左側に付いたことで、これまでの「エメロード」シリーズとは違う部分が出てきたのでしょうか?

【降旗】基本的には、人気のある「2ダイネット」というスタイルは崩していません。エントランスステップに上がると、まず右側がトイレルーム。その正面がリヤダイネット。
室内に入ると、左側にキッチン。そしてその奥がU字ダイネット。

エメロード406キッチン
エメロード406キッチン

このUダイネットというのは、もともと大型トレーラーに採用されるダイネット形式ですから、このクラスでは初の試みとなり、それなりに苦労しました。

エメロードU字ダイネット
エメロードU字ダイネット

でも、それがうまく収まってくれたおかげで、前後に分かれた二つのダイネットをベッドメイクすると、全部で4~5名の人間が寝られる広さになりました。

【町田】「2ダイネット」というレイアウトは、昔からインディアナさんの主力商品ではおなじみのスタイルだと思うのですが、このフロアプランはいつから始ったんですか?

【降旗】 「ポルト」シリーズを始めた頃ですから、1998~1999年頃ですね。
これが日本では当たったんですね。自走式においてもそうなんですが、日本のマーケットはファミリーユースを意識したものでないと駄目なんです。ほとんど2人でしか使わないシニア夫婦が買う場合でも、子供夫婦や孫と一緒に使うことを想定したレイアウトが好まれるんですね。ましてや、トレーラーは価格帯もリーズナブルですから、購買層は小さいお子さんのいるヤングファミリーが中心となる。
そうなると、ダブルダイネットならば、フロントかリヤのダイネットをベッドメイクして子供たちを寝かせてから、残ったダイネットで大人夫婦がお酒を飲んだりすることができる。
もちろん、大人グループが一つのダイネットで宴会していれば、残ったダイネットは子供たちの遊び場になる。
そういうように、2ダイネットはいろんな使い方ができるんですね。それが私たちの商品が多くのユーザーさんに支持された理由だと思います。

インディアナ・ポルト5 レイアウト
インディアナ・ポルト5 レイアウト

【町田】このモデルでは、本格的なトイレコンパートメントが設定されていますが、トイレ室の需要は増えているんですか?

エメロード406トイレ
エメロード406トイレ

【降旗】増えてますね。「汚物を処理するのが嫌だからトイレは使わない」という人が最初のうちは多いんですが、そういっていた人の9割は、最後にはトイレを使っています(笑)。それだけ便利なんですよ。
もちろん、トイレレスも可能です。そういう仕様を望む人のために、トイレルームはがらんどうにしておいて、必要ならばポータブルトイレを置けるような選択肢も残しています。
最近は「ラップポン」という便利な日本製のトイレもあるんですよ。これは便座の底にビニール袋をセットして、用を足す前に溶剤を入れておくと熱溶着でビニール袋が密閉されてしまうんですね。だからこぼれないし、臭わない。そのまま燃えるゴミとして捨てられるので、後処理が要らない。
トイレそのもの単価は16万円ですけど、なかなか便利なので購入される方も増えてきましたね。

ラップポン
ラップポン

プロパンガスの充填拒否はなぜ起こる?

エメロード406
エメロード406

【町田】インディアナさんの商品展開で、なんといっても一番の特徴といえば、輸入車を扱う会社としては、いち早く「脱プロパン宣言」をされたことですよね。
つまり、ヒーターやコンロなどの熱源を、LPGから灯油式FFヒーターに替えたり、カセットガスに替えたりということなんですが、その意図はどこにあったんですか?

【降旗】最大の理由は、ご存知のとおり、日本ではプロパンガスの充填が年々難しくなってきているからです。
なかには、「近所の知り合いのガス屋さんから供給してもらえるから大丈夫」というユーザーさんもいらっしゃいます。しかし、いったん旅に出てしまうと、もうそうはいかない。どこのガス屋さんも管理ユーザー以外には充填しないようになってきているんですよ。

【町田】そういうことならば、キャンピングカーユーザーがガスの充填を拒否されるケースが増えてきているというのも納得できますね。

【降旗】さらに、最近はフェリーでもプロパンは危険物扱いとなったため、プロパンを積んだ車両は乗船拒否されるんですよ。たぶん、こういう傾向はますます強くなっていくと思います。
うちは、そういう兆候が現れてきた7年前に、すでにガスに頼るシステムを廃止しました。ガスの充填がますます厳しくなっている現状をみると、私たちの判断は正解だったと思っています。

LPGに頼らない新しいエネルギー供給システム

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【町田】では、LPGに頼らない方法として、インディアナさんは今どういうシステムを組まれているのですか?

【降旗】まず、ガスに頼らざるを得ない最大の機器といば暖房器具ですから、これを灯油式のFFファンヒーターに替えました。灯油ならどこでも入手できますし、しかも安価で安全です。
それから、コンロなどの熱源としては「カセットガス供給ユニット」を使うことにしました。カセットガスボンベも、どこでも調達できますから、これも安心ですよね。
ただ、密閉性の強い室内でカセットガスを使い続けると一酸化炭素中毒の恐れも出てきますから、一酸化炭素警報機も標準でつけてあります。

【町田】ずいぶん思い切った “熱源革命” を断行されたんですね。

【降旗】私たちのシステムは、単なるLPGの充填拒否に備えた仕様というだけではないんです。災害時の「緊急避難用シェルター」という役目も負わせているんですね。
つまり、電気やガスというライフラインが断たれても、しばらくの間は住人を守る機能を持たせてあります。そのために、外部電源が取れない場所でもバッテリーを充電する装置としてソーラーパネルも標準設定していますし、そのバッテリーから電化製品の使用やモバイル機器の充電を可能にするために、インバーターも標準にしています。
さらに、バッテリーの電圧や電流をチェックするためのバッテリー管理モニターもつけています。

【町田】そうとう充実した装備類が盛り込まれているのでびっくりです。

【降旗】もちろん、装備品の数が増えても、電気の供給が乏しくなってくれば、そのような装備品も使えなくなってしまいますよね。
そこで、少しでも省エネ効果を高めるために、室内のライトは調光可能なLEDにして省電力化を図っていますし、暖房効果を上げるために、断熱材も質の高いものを選んでいます。従来の「EPS」という寒冷地対応型のものから、さらにグレードの高い北欧断熱といわれる「XPS」を採用するようにしました。

【町田】こういった装備類は、みな車両が日本に入ってから組み込まれることになるんですか?

【降旗】基本的にはそうですね。ただ、灯油FFヒーターなどは、現地ではあり得ない設定なのにもかかわず、今回は向こうのラインで装着してくれました。
だから、日本でのメンテナンスが心配だったのですが、幸いなことに、そのヒーターを輸入している日本法人の責任者がメンテを引き受けてくれることになったので、安心しているところです。

トレーラーのメリットとは何か?

キャンプ場でトレーラー
キャンプ場でトレーラー

【町田】今さらながらですけれど、キャブコンやバンコンといった自走式キャンピングカーに比べて、トレーラーのメリットとは何ですか?

【降旗】一つは、遊びの前線基地として使う場合、自走式とは比べものにならないくらいの機動力を発揮できるということです。なにしろ、トレーラーをヘッドから切り離してキャンプ場などに置いておけば、そのヘッドを使って、自由自在に買い物や周辺の観光に出かけられるわけですから。そこは車体が大きくなりがちな自走式キャンピングカーとはっきり違うところでしょうね。
それと、おカネのかかるエンジンやミッションなどが付いていない分、購入価格も安くなります。そこが子供の養育費や教育費に負担を感じているヤングファミリーには魅力的に感じられるところじゃないでしょうか。

【町田】ヨーロッパなどと比べて、日本のトレーラーの普及度はどうなのですか?

【降旗】まだ “発展途上” という状況じゃないですか(笑)。伸びるのはこれからですね。
ヨーロッパに行ったら、EUという経済圏を走っているキャンピングトレーラーは400万台もあるんですよ。それに対し、キャブコンとバンコンを合わせても向こうでは160万台しかない。だから、ヨーロッパは “トレーラー王国” という表現もできるんです。アメリカもトレーラーの方が多い国ですね。

インディアナTR-4
インディアナTR-4

【町田】日本とは逆の現象ですけれど、その理由は?

【降旗】一つは、風土的な使用環境の違い。ヨーロッパは土地が平坦なんですね。アルプスに近づかないかぎり、「山」がない。イギリスなどは「丘」しかない(笑)。だから小排気量の乗用車でも気楽にトレーラーが引けるけれど、日本の場合は8割が「山」で、アップダウンが激しい。ヨーロッパ大陸に比べると、トレーラーを引くには少し厳しい環境であることは確かですね。
それと、ヨーロッパの場合は、乗用車メーカーがトレーラーのけん引にすごく理解力がある。というか、トレーラーが400万台も普及している以上、どんな自動車でもトレーラーを引くためのセッティングが完了済みなんです。さらに、乗用車の取説には「この車は何kgのトレーラーまでなら引けます」というインフォメーションがみな明記されています。

【町田】なるほど。それが「トレーラー文化」というものなんですね。日本にトレーラー文化を普及させるための “特効薬” はありますか?

【降旗】そんなものがあったら、さっさと使ってますよ(笑)。
ひとついえることは、日本人全般に、アウトドアへの理解をもっと深めてもらうということでしょうね。
近年、アウトドアに接することが子供の情操を高めたり、感受性を磨いたりするという研究がいろいろなところから発表されるようになりました。そういう研究成果を生かし、ネイチャースクールなどを主催する団体も増えています。
そういう理解が深まるなかで、私たちが手軽に、快適に、安全にアウトドアを満喫できる場所といえば、やっぱり理想的なのがキャンプ場なんですね。

【町田】そのキャンプ場泊とトレーラーというのは、また実に相性がいいわけですね。

【降旗】そうです。キャンプ場に着いたら、雨風をしのげる簡単な “家” をまずサイトに建てて、安心できる住環境を整えてから、自然観察をしたり、昆虫採集をしたりできるわけですからね。
町のお風呂に入りたくなったら、切り離したヘッドに乗って、家族全員が町まで出かけられる。乗用車で行けば、道路の狭い町中の土産物屋でも料理店にも気楽に行ける。
そして、キャンプ場に戻ってきて、トレーラーの中でゆっくり酒を飲んで寝る。
このだいご味を一度味わった人たちは、もうトレーラーの魅力から離れられなくなりますよ(笑)。

WRITER PROFILE
町田厚成
町田厚成 (まちだ・あつなり)

1950年東京生まれ。 1976年よりトヨタ自動車広報誌『モーターエイジ』の編集者として活躍。自動車評論家の徳大寺有恒著 『ダンディートーク (Ⅰ・Ⅱ)』ほか各界著名人の著作の編集に携わる。 1993年『全国キャンプ場ガイド』の編集長に就任。1994年より『RV&キャンピングカーガイド(後のキャンピングカースーパーガイド)』の編集長を兼任。著書に『キャンピングカーをつくる30人の男たち』。現キャンピングカーライター。

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