ハイエースのキャンピングカーで有名なレクビィ。ラインアップも豊富で、いろいろなユーザー層から支持を得ているブランドです。バンコンなのに、リアに防水エリアがあったり、簡単に展開できる2段ベッドなど、いつも新しい驚きを提供してくれます。
2020年のジャパンキャンピングカーショーでも、面白いクルマがありましたね。ホビクルオーバーランダーです。どうして、こんなクルマが開発されるのか? その秘密を探るために、レクビィ主任デザイナー箕浦英二さんに、レクビィのキャンピングカー作りについて聞いてみました。
目次
内装にDIYの楽しみを残したハイエースでバンライフを提案
最近ではバンライフという言葉をよく耳にします。バンなどのクルマで、自由に生活するライフスタイルを指しますが、クルマだけでなく、その思想まで追求していることで、カルチャーとして発展し、大きなムーブメントを起こしているようです。
キャンピングカービルダーからは、この世界的な流れを意識した、バンライフ風のクルマが生まれています。レクビィでもいち早く、ホビクルに代表される、遊びと生活を楽しむクルマを作り、バンライフを表現していました。
ホビクルには、オーナーが自由にアレンジできる余白がたくさんあるクルマです。ベースとなるクルマを提供しながら、オーナー自身がDIYできる、楽しみを残していたのです。クルマを提供していたというよりも、カルチャーを作り出す空間を提供していたんですね。まさにバンライフ。。
みんなを驚かせたオーバーランダーというスタイル
そのホビクルシリーズに追加されたのが、ジャパンキャンピングカーショーで話題を呼んだオーバーランダーでした。主任デザイナーとして、このクルマを担当したのは箕浦英二さん。デビューについて聞いてみると。
「実は私も、完成したクルマには驚きました(笑)。もともとは生地担当の若手社員が、メーカーと開発していた、帆布風の難燃生地ができたのがはじまりでした。その生地を活かせるモデルは、従来からあるホビクルを発展させたモデルしかないと考えました」
箕浦英二さんはレクビィの製造工程の管理と、新型車のデザイン、車両開発から見た販売促進の方法を考えるのがお仕事だそうです。今回は若手社員の意見を取り入れながら、レクビィ本来のキャンピングカー作りの基本を守り、オーバーランダーを完成させました。
思考するデザイナーがレクビィブランドをパターン化する
レクビィのクルマは、どちらかというと自己主張は控えめに、「分かる人にはわかる」という印象があります。箕浦さんも同じように感じているようです
「本来ならメーカーとして主張しなければいけないのかもしれませんが「使った人が分かればいい」という姿勢があったのかもしれません。クルマは常に進化していて、形状をほとんど変えずに軽量化かつ使いやすさを追求して、目に見えない改良も多いのですが」
現場では、軽量化、使いやすさ、というクルマ作りの基礎がパターン化され、開発陣は忠実にそのセオリーを守り続けてきました。そして、クルマごとに、自己主張控えめな色付けをして、個々のユーザーの求める多彩なクルマを作ってきたのです。
ホビクルブランドでのミリタリーテイストとは
そんなレクビィのなかでも、オーバーランダーはちょっと自己主張強めかもしれません。
「生地からミリタリー風がよいと考えたのですが、何しろ初めてのことで作る前に社内でも議論がありました」と箕浦さん。
やはり、そうでしたか。でも、お客さんの反応はよかったようです。
「披露されるまで不安でした。「レクビィがなぜ?」みたいなことを言われるかと思いましたが、会場で展示されたホビクルオーバーランダーは好評で安心しました。ミリタリーすぎるという印象もなかったようです。今回のモデルで、レクビィに関心のなかったお客様に、レクビィのクルマを知っていただけたことは大きかったかもしれません」
ミリタリーとはいえ、平和なキャンピングカーというテイストは絶対に残したかったといいます。もっとハードな印象のクルマも作れたようですが、箕浦さんがブレーキをかける場面もあったそうです。
間取りを分析しながら動線を考える
ミリタリーテイストのホビクル、本来のレクビィを知っているお客さんにとってはどう写ったのでしょうか。レクビィのクルマといえば、使いやすさに定評があります。実際に乗ってみると分かりますが、車内の移動・動作が楽なんです。
限られた空間だけに、使ってみて気づかされることもたくさんあります。例えば、ギャレーの前に立った時、腰にぶつかる家具が少しオフセットされて、スペースを確保しているなど。まさに「分かる人にはわかる」ポイントが盛りだくさんなのです。
そんなレクビィのキャンピングカーシリーズのなかで、ホビクルオーバーランダーは、使いやすさと自由が共存している、といったところでしょうか。脱着できるシンクシステムや拡張性のあるラゲッジスペースなど、使う人のアイデアマインドを呼び起こしてくれます。
ホビクルオーバーランダーが展示された、ジャパンキャンピングカーショーの会場では、クルマのまわりでじっとしている人がたくさんいました。おそらく、頭の中で自分らしいスタイルを妄想していたのではないでしょうか。そんな、気分にさせてくれるクルマなのです。もしかしたら、これが主任デザイナー箕浦英二さんの求めていた姿なのかもしれません。
使いやすさはユーザビリティ
どうしてここまで使いやすくなるのか。それは箕浦さんを始め、開発陣が日頃から、キャンピングカーに対して、興味を持って接しているから、といっていいでしょう。他社メーカーのクルマでも、その機能性の根拠や効果をじっくりと観察しているそうです。
自社製品であっても、使ってみて、不便を感じるところを改善していくのがレクビィらしさ。レクビィ社長の増田浩一さんからも、いろいろなアイデアが出され、開発が進められるといいます。今回のオーバーランダーは議論が続きましたが、最終的に社長の言葉でGOが出たという裏話も……
開発陣、社長ともに、改善点を探す時、最重要ポイントとなるのが、ユーザビリティだそうです。ユーザーが使っていて、不便を感じている場所の改善はもちろんのこと、もったいないなぁなど、ちょっとした気づきをも形にしているのです。
今度、レクビィのクルマを見る機会があったら、使われていない家具などの状態をチェックしてみてください。特にベッド・マットなど、邪魔に感じることがありません。これがユーザビリティの1つなのだと思います。
ひとりキャンプの道具として
毎日を忙しく過ごしている主任デザイナー箕浦英二さんですが、休日はソロキャンプに出かけることが多くなったそうです。
「ひとりキャンプの機会が多くなりました。ハイエースを自分なりにアレンジして、キャンプできる仕様で使っています」
仕事を離れても、普段からハイエースをキャンプに使って楽しんでいるんです。だから、ユーザーに求められるポイントが思い浮かぶのかもしれません。完成されたキャンピングカーではなく、自分で作り上げるスタイルを実践しているのです。
ハイエースナローモデルのホビクルオーバーランダーも!?
話題を呼んだホビクルオーバーランダーですが、ナローモデルへの期待も高いようです。今後の展開はあるのでしょうか。
「今、開発しています。ナローに関していえば、旧型のナローホビクルの影響もあって、開発が遅れています。ホビクルはバンライフ系の元祖みたいなクルマでしたが、各社が力を入れ始めてから埋没してしまった感があるので、もう一度リブートしたいですね」
それは、新しいモデルが期待できるということでは。そこで、最後に箕浦さんに今後の予定を聞いてみると。
「今取り組んでいるのは、「ヴォーノ」のモデルチェンジで、基本形を変えずにより便利になる予定です。これは私ではなく、若手社員が取り組んでいます。年末から来年にかけて、オーバーランダー以上のインパクトのあるモデルを予定しています。お客様に「レクビィやるなぁ」と感じてほしいですね」と楽しげな笑みを浮かべながら答えてくれた。
プロフィール:主任デザイナー箕浦英二
自動車関連メーカーのコンピュータ技術者から、レクビィの前身ロータス名古屋に入社。以後、レクビィの主任デザイナーとして主要車種の開発に取り組む。最近のマイブームは、「ひとりキャンプ」