
1月30日~2月2日に、幕張メッセでジャパンキャンピングカーショー(JCCS)2026が開催された。JCCSは、日本のキャンピングカー業界の1年を占う、アジア最大級のビッグイベント。今年も昨年に続き1~6ホールでの開催となり、過去最多452台の最新キャンピングカーを体験しようと、4日間で5万2258人が会場を訪れた。
キャンピングカースタイルでは、イベント最終日に恒例の対談企画を実施。キャンピングカー専門家2人に今年のショーを振り返ってもらった。専門家の目に、ジャパンキャンピングカーショー2026はどう映ったのだろうか?
月刊オートキャンパー編集長 品田直人氏
キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」、キャンピングカー情報サイト「オートキャンパーWEB」、YouTubeチャンネル「とびだせ! オートキャンパーテレビ」の編集長を務める。
キャンピングカーライフ研究科/ライター 岩田一成氏
約20年に及ぶキャンピングカー取材で得た知識とユーザーとしての経験をベースに、雑誌、WEB、新聞、テレビ、YouTubeなど、様々な媒体でキャンピングカーの魅力を発信している。
目次
ベース車の多様化【トラヴィオモデルの登場】
【品田】以前のハイエースばかりだった状況から、かなりベース車が多彩になって、いちクルマ好きとしても、見て楽しいと思えるショーでした。もちろんハイエースがないわけではないですが、キャラバンベースも増えているし、フィアットデュカト、トラヴィオ、新型カムロードなど、ベース車のバリエーションが増えてきたのは喜ばしいことですね。
【岩田】自分的に一番の注目は、トラヴィオベースの登場。昨年のバンテックブースでトラヴィオの単体展示があって、今年は各社からトラヴィオベースのキャブコンが続々と登場しました。今年のJCCSは、まさに「トラヴィオ元年」! キャンピングカーのクルマとしての完成度は、ベース車に100%依存します。ベース車のバリエーションが増えるということは、クルマとして考えた時にメリットしかない。ハイエース・カムロード一色だった市場が、様々なベース車の登場で賑やかになったのは、キャンピングカー全体の魅力を底上げすることでもあります。
【品田】新たな可能性・活路として、このショーで明確に見えた部分ですね。トラヴィオは設計が新しいので、先進安全装置も充実しているし、1.9Lディーゼルエンジンの性能も高い。そもそもAT限定普通自動車免許で誰でも運転できることを想定したトラックなので、軽く作られているのも利点です。
【岩田】いすゞブランドの信頼性も大きいですね。過去に何度もいすゞの取材をしましたが、どの担当者からも「我々が日本の物流を担っている」という、トラックメーカーとしてのプライドが感じられる。トラック専門メーカーが作ったキャンピングカー専用シャシーは、構造・強度ひとつとっても安心感があります。トラヴィオベースという新たな選択肢が増えたことは、キャンピングカー業界にとってうれしいニュースですね。
バンテック・コルドリーブス
【品田】トラヴィオベースの新型車では、 バンテックのコルドリーブスがフルモデルチェンジしたのが最大のトピック。長年にわたって作り続けられてきたモデルが、今回のショーで劇的に進化しました。
【岩田】トラヴィオベースのキャブコンの中でも、ダントツで注目度が高かったのがコルドリーブスですね。ベース車がカムロードからトラヴィオに変更されて、ボディもコルドシリーズ伝統のプレーンなフォルムからエアロダイナミクスデザインに刷新された。しかも、電装系にはバンテックオリジナルの新開発リチウムシステム「イリス・ミー」を搭載。本当に「ワンステージ上に行ってしまった」という印象で、個人的に今年のショーの目玉的な1台です。
【品田】イリス・ミーは、8kWリン酸鉄リチウムイオン電池を使った自社開発のオリジナルシステム。最大16kWに拡張可能で、200Vの急速充電にも対応しています。新型コルドリーブスは、ベースしかり、デザインしかり、電装システムしかり、死角がないレベル。バンテックブースの今年のテーマは「未来都市」でしたが、それに相応しいモデルでした。
フィアットデュカトモデルの成熟
【品田】今年のショーでは、デュカト市場の成熟も感じられました。2023年のデビュー当時は各ビルダーが手探りで、内装の作り方ひとつとっても迷いがあった。何しろすべてが初めてで、市場が見えないですから。それから3年経って、各社のデュカトモデルも成熟の域に達してきました。
【岩田】デュカトモデルは、どのビルダーも細かくブラッシュアップを続けてきて、年々魅力が高まっていますね。当初は、各社が模索しながらトライしている感じでしたが、どんどん完成度も上がっているし、幅広いユーザー層に向けてバリエーションも増えている。バンコンやキャブコンからデュカトに乗り替える人が増えて、オーナーの声がフィードバックされるようになったことも大きいでしょうね。
【品田】ユーザーの認知度が上がり、家具やレイアウトも進化して、個性が見えるモデルが増えてきました。インポーターのステランティスも、今年はフィアットプロフェッショナルとしてブースを出展していましたし、ベースを供給する側も力が入っています。日本市場に向けて、「デュカトは安心・安全で壊れない」というのをメーカー側がアピールしたのは、非常に意味のあることだと思います。
【岩田】ベース供給体制と架装のトータルで市場が成熟したということですね。バンコンの主流だったハイエースの供給が滞っているのも、デュカトにとっては追い風。業界にとっての逆風が新たな活路を生み出し、ようやく実を結びつつあることを、今年のJCCSでしっかり感じとることができました。
トイファクトリー・ダヴィンチ6.0
【品田】デュカトモデルの中でも注目したのは、フルモデルチェンジしたダヴィンチ6.0。ユーザーからのフィードバックをもとに、2段ベッドがオプションで追加できるようになりました。これにより、2人就寝だったモデルを4人乗車・4人就寝に対応させ、より日本向けになった。ハイマーの元チーフデザイナー・フランク氏によるシティホテルのようなインテリアデザインと、トイファクトリーの技術力の融合で、美しさと実用性を両立した"才色兼備"のモデルです。
RVランド・ランドホーム デュカト
【岩田】ランドホーム デュカトのデビューも、センセーショナルでした。バスコンのランドホームは、RVランドのフラッグシップモデル。それをデュカトベースで再現するのは、かなりチャレンジングだし、デュカト市場の成熟の証ともいえます。2列目の電動ラグジュアリーキャプテンシートは、マッサージ・ヒーター・リクライニングなど、あらゆる電子機能が装備された豪華版。広いスペースなのに少人数で優雅に楽しむという、バスコン・ランドホームの思想がデュカトで表現されています。
エアコンモデルのデフォルト化
【岩田】全体の傾向として目立ったのは、エアコンのデフォルト化。何年か前だったら軽キャンパーやバンコンにエアコンが付いていると、それだけでもすごいと感じましたが、いまやエアコンがデフォルトの時代が到来しています。
【品田】ホワイトハウスブースには、トヨトミの車載クーラーが展示されていました。トヨトミは国内メーカーで信頼性もあるし、同社の家庭用スポットクーラーは、以前からキャンピングカーに搭載されることも多かった。そんな日本の家電メーカーが12Vの車載専用モデルを出してきたのも、エアコンが当たり前の時代を象徴しています。
【岩田】要は、そこまで市場が成熟してきているということ。エアコンのデフォルト化に伴って、設置技術の進化にも注目です。例えば、ランドホーム デュカトは、わざわざリアカーゴに逃げを設けて、室外機を縦置きにすることで耐久性を向上している。
【岩田】くるま工房くろぎの遊牧民ノマドシリーズは、ハイエース・キャラバンのボディをカットして、右手の家具内に室外機を内蔵。純正スペアタイヤを活かしつつ、独自の高効率排気排熱システムで冷暖房性能を担保しています。エアコンが付いているからすごいという感覚は、もう時代遅れ。いまやエアコン装備は当たり前で、その上でインストール技術まで求められるという、一つ上の段階に入っています。
専門家が注目したニューモデル
【岩田】NTBのジオロームは、いすゞ・ビーカムの中でも最上級のワイドキャブがベース。いすゞからNTBに「最上級のベースシャシーで、最高峰のキャンピングカーを作ってほしい」と提案があって、ゼロベースで開発が進められたモデルです。海外の輸入モーターホームはごく一部を除いて2WDが主流ですが、7mクラスのフラッグシップシャシーで4WDというのがポイントですね。外装は、NTBが培ってきたオフロード系キャンピングカーのノウハウを結集したオーバーランド仕様。内装は、素材や仕上げに徹底してこだわったラグジュアリー仕様。世界観の異なる内外装を絶妙に融合して、唯一無二のキャンピングカーを作り上げています。
【品田】LACブースでは、キアPV5をベースにしたEVキャンパー2台を展示していました。2人乗りのカーゴと乗用モデルのパッセンジャーをいち早くベースに採用して、キャンピングカーの新たな可能性を提案。大容量バッテリーを搭載したEVの強みを活かし、サブバッテリーがなくても十分な電力をまかなえる次世代ライトキャンパーに仕上げています。パッセンジャーは3ナンバー登録の車中泊仕様で、カーゴはIHコンロが備わった8ナンバー登録のキャンピング仕様。参考出品ですが、EVベースでキャンピングカーの可能性を大きく広げたエポックメイキングなモデルです。
【品田】ナッツRVでは、ニューモデルのクレア5.3REに注目しました。ここ数年、アウトドアが好きな人やペット旅を楽しんでいる人を中心に、リアエントランスモデルの魅力が再認識されています。その流れに乗って、クレアシリーズで初めてリアエントランスを採用したのがこのモデル。キッチンや個室をリアに集約して、独立した広いリビングスペースを確保しています。マルチルームを2つ完備していて、トイレやシャワールーム、乾燥室、物置き、汚れ物の保管庫など、異なる用途で使い分けられるのが贅沢ですね。
【岩田】キャラバンをベースにしたレクビィ・プラス LIV'N(リビン)は、乗り手の好みや使い方に合わせて、レイアウトや内装色を自由にカスタマイズできる新型バンコン。これまでは、自分の好みに合った1台を作るにはワンオフという選択肢しかなく、価格が高額だったり、納期が長かったり、そもそもワンオフを受けてくれる業者も少なかった。このモデルは、モジュール設計でカスタマイズ性を高め、シート形状やマルチルームの有無、フロア色、家具色、生地色などを3Dシミュレーションで確認しながら、自分仕様の1台を作ることができます。パターンはナント、最大270通り! 老舗ビルダーのレクビィが、新しいバンコンの可能性を見せてくれました。
【品田】ロッキー2のMVシリーズに、新たに加わったのがN-van MV。フリードクロスター、ステップワゴン、デリカD:5で人気を博したレイアウトをN-vanに落とし込んで、より手軽に車中泊を楽しめる1台に仕上げています。軽量・高剛性のアルミフレームにマットを置くだけで、ベッドやリビングにアレンジできるのが秀逸。12Vクーラー、リチウムイオンバッテリー、1500Wインバーターなど、必要な装備をすべて標準化したオールインワン仕様で、初心者からベテランまで気軽にクルマ旅を楽しめます。
まとめ
【岩田】トラヴィオベースの登場、デュカトモデルの成熟、キャラバンベースの台頭など、今年も見どころいっぱいのショーでした。多くのニューモデルが発表されたのはもちろん、バンテック「イリス・ミー」を筆頭とする新時代のリチウムシステムや、自分好みの1台を作れるレクビィ「プラスリビン」など、技術面や販売スタイルにも新しい試みが見られました。
【品田】バンテックでは、自宅に設置できる大容量サブバッテリー用200V充電システム「イリス・ホーム」も初公開されました。8kWのイリス・ミーを、空の状態から約1時間30分で満充電にできるとのこと。こうした急速充電システムが、今後キャブコンユーザーを中心に広がりそうな気がします。
【岩田】リチウム全盛の時代ですが、単なる大容量化だけではなく、その先まで見すえたバンテックの思想が感じられますね。リチウムイオンバッテリーの登場で電装システムが大幅な進化を遂げたように、キャンピングカーの生活電源は今後も加速的に進化を続けていくと思います。
【品田】個人的には、デュカトにもっと頑張ってもらいたい。国産ベース車と切磋琢磨しながら、架装のレベルもメンテナンス体制もさらに底上げして、日本のキャンピングカーのスタンダードとして定着していくことを期待しています。
【岩田】価格高騰が著しいキャンピングカー市場において、より手軽にクルマ旅を楽しめるミニバン・軽自動車ベースのライトモデルも重要な存在です。豪華装備の高額車両だけではなく、リーズナブルに車中泊を楽しめる魅力的なライトモデルもどんどん登場してほしい。キャンピングカーというカルチャーが、今後どのように進化・成長していくのか、今から来年のJCCSが楽しみですね。
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