【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2025」

メーカー・販売店インタビュー
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【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2025」

1月31日~2月3日に、幕張メッセでジャパンキャンピングカーショー2025が開催された。JCCSは、日本のキャンピングカー業界の1年を占う、アジア最大級のビッグイベント。今年は過去最大規模となる1~6ホールでの開催となり、全国から集まった423台の最新キャンピングカーを体験しようと、4日間で4万7180人が会場を訪れた。

キャンピングカースタイルでは、イベント最終日に恒例の対談企画を実施。かーいんてりあ高橋新型バンコン・フュージョンの車内をお借りして、キャンピングカー専門家2人に今年のショーを振り返ってもらった。専門家の目に、ジャパンキャンピングカーショー2025はどう映ったのだろうか?

オートキャンパーWEB編集長 品田直人氏
オートキャンパーWEB編集長 品田直人氏

キャンピングカー専門誌オートキャンパー編集長を経て、現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長を務める。

キャンピングカーライフ研究科/ライター 岩田一成氏
キャンピングカーライフ研究科/ライター 岩田一成氏

18年のキャンピングカー取材で得た知識とユーザーとしての経験をベースに、雑誌、WEB、新聞、テレビ、YouTubeなど、様々な媒体でキャンピングカーの魅力を発信している。

ハイエース以外のニューモデルの台頭

【品田】ベース車のハイエースが安定供給されていない現状。今後の見通しも不確定な中で、各メーカーからハイエース以外のモデルが増加しました。ハイエースと同等のボディサイズ・使い勝手・信頼性を、ハイエース以外の車種で提案していたのが個人的に印象に残った点。右も左もハイエースみたいな状況は、クルマ好きにとっては正直面白くない。結果、今回のショーはバラエティに富んだキャンピングカーを見ることができて興味深かったです。

スモールサイズのキャブコン

【岩田】「ピンチをチャンスにする」動きが見られたということですよね。個人的に今回のショーで一番印象に残ったのは、各社がスモールサイズのキャブコンを作ってきたことです。ここ数年、キャブコン市場では価格高騰やボディの大型化が顕著ですが、元に戻ったというか、より使いやすく、価格的にも手を出しやすいモデルが増加した。多くの人が乗りやすいキャブコンが増えるのはすごく意味のあることだし、歓迎すべきことだと思います。ダイレクトカーズミスティックバンテックアネックスなど、各社からスモール化の流れを意識したキャブコンが登場し、ナッツRVに至ってはジープニーアレッタ、今回デビューしたジョリビーと、コンパクトモデルだけでも3車種をラインナップしている。これが国産キャブコンの最新トレンドであり、JCCS2025最大のトピックだと思います。

【品田】 “キャブコンのジャストサイズ化”は、かなり多くのビルダーで見られましたね。ボディサイズが大きくなると取り回しが億劫になりますが、全長4.8mクラスのコンパクトモデルなら気をつかわずに運転できる。ナッツRVは、ボンゴトラックをベースにしたライトキャブコンの次世代型として、「スマコン(スマートキャブコン)」と銘打った新しいキャンピングカーのカテゴリーを提案してきました。

乗用ミニバンをベースにしたキャンピングカーや車中泊モデル

【品田】キャブコン以外でいうと、ミニバンやデュカトなど、ハイエース以外のキャンピングカーが目立ちました。とくに注目したのは、乗用ミニバンをベースにしたキャンピングカーや車中泊モデル。車室が狭いミニバンは架装が難しいと思いますが、どのクルマも限られた空間の中で割り切った作りをしているのが好印象でした。むしろ、移動時の快適性や安全性では、はるかにハイエースの上を行っていますから。

【岩田】クルマとして考えたときに、商用車とミニバンではレベルが違います。とくにキャンピングカーの価格が高騰している現在は、ミニバンキャンパーのメリットや存在意義は大きい。こうしたモデルがキャンピングカーの入口になる人も多いだろうし、選択肢が増えるのはユーザーにとって歓迎すべき傾向だと思います。ハイエース以外のベースとしては、ミニバンと並んでデュカトモデルも着実に増えています。デュカトベースのキャンピングカーも、いよいよ熟成の域に達してきた感がありますね。

スマートキャブコン、ミニバンベース、デュカトベース

【品田】スマートキャブコン、ミニバンベース、デュカトベース。それぞれがハイエースを使わずに何ができるかを表現していたのが、今回のショーの大きな見どころだったと思います。ハイエースが供給されないから仕方なくというネガティブな発想ではなく、「ハイエースがなくてもこんなに楽しめる」といったポジティブな考え方で、各メーカーの特色を活かしてキャンピングカーの可能性を見せてくれました。

専門家が注目したニューモデル【スマートキャブコン】

ナッツRVのジョリビー ナッツRVのジョリビーの車内

【品田】まずは、ナッツRVジョリビー(全長4790mm×全幅1960mm)です。装備と価格を見て、「こんなに安くていいの?」と驚きました。60ℓ冷蔵庫、電子レンジ、家庭用エアコン、300Ahサブバッテリー、エボライト急速走行充電システムまで標準装備して、価格は700万円台!同等の装備を付けたハイエースバンコンでも、その値段では買えないですよね。

ダイレクトカーズのオステリア ダイレクトカーズのオステリアの車内

【岩田】ダイレクトカーズオステリアも、「コンパクトサイズ・充実装備・低価格」の3拍子がそろったニューモデル。全長4850mm×全幅1920mmのボディに、家庭用エアコン、32インチモニター、80ℓ冷蔵庫、200Ahサブバッテリーが標準装備されていて、価格は700万円台に抑えられています。

MYSミスティックのレジストロトゥカノ MYSミスティックのレジストロトゥカノの車内

【岩田】MYSミスティックレジストロトゥカノ(全長4900mm×全幅1870mm)も注目です。個性的なデザインも魅力ですが、実はこのクルマ、フル装備状態でも車重は実測2.4tちょっと。軽さは、走行性能すべてにかかわる重要なファクターです。内外装すべてが純国産で、ルーフクーラー、300Ahリチウム、240Wソーラー、FFヒーターまで標準装備して、価格は800万円台!

バンテックのアストラーレ トリアス480

【品田】バンテックアストラーレ トリアス480も、全長4800mm×全幅1960mmのコンパクトモデル。ルーフベントが出っ張らないように天井のセンター部分を落とし込み、ボディ全体に雨水の流れや空力を考慮したデザインを採用しています。アストラーレブランドで新しいバンテックのスタイルを体現した、スタイリッシュで乗りやすいキャブコンです。

専門家が注目したニューモデル【バンコン・軽キャンパー】

トイファクトリーのジョイア トイファクトリーのジョイアの車内

【品田】トイファクトリージョイアは、歴史に残る1台といっても過言ではないと思っています。これまでのデュカトモデルは、キャンピングカー先進国のドイツ製パーツを使った欧州デザインが基本でしたが、ジョイアはハイエースバンコンの王道レイアウトをデュカトに落とし込んできた。L2H2なのでボディサイズもハイエースとそんなに変わらず、ゆったり5人が乗れて5人が就寝できます。

ダイレクトカーズ初のデュカトモデル、モルビア ダイレクトカーズ初のデュカトモデル、モルビアの車内

【品田】ダイレクトカーズ初のデュカトモデル、モルビアも注目です。ダイレクトカーズは、軽キャンパーからバンコン、キャブコンまで多彩なモデルをそろえていますが、デュカトベースの登場でさらにラインナップを拡充してきました。天然木を使用した内装の質感など、架装のレベルが年々向上しているのも素晴らしい。横向きの対面シートで、フロント回転シートを使わずにダイネットが作れるのも魅力です。

かーいんてりあ高橋のフュージョンの車内 かーいんてりあ高橋のフュージョン

【岩田】今回のショーの個人的なナンバーワンは、かーいんてりあ高橋フュージョン。遊び心はキャンピングカーに欠かせない要素だと思っていますが、このクルマはまさに「本気で遊んだ1台」です。キャンピングカーの始祖であるバニングをオマージュして、「昭和のデザイン&高度な縫製技術」と「令和の最新装備(リチウム・ソーラー・ルーフクーラー)」を融合。技術だけではなくいろいろな意味で、かーいんてりあ高橋にしか作れない1台だと思います。

キャンパー鹿児島の座座 キャンパー鹿児島の座座の車内

【岩田】遊び心の流れでいうと、キャンパー鹿児島座座もいいですね。軽トラの後部にシェルを一体化してバン風に見せたデザインもオシャレだし、ヒノキと畳で仕上げた内装も個性的。スペースが限られた軽キャンパーですが、畳敷きだとシートアレンジ不要で空間を有効に使えるのが魅力です。

ロッキー2のステップワゴンスパーダMV ロッキー2のステップワゴンスパーダMVの車内

【品田】ミニバンベースでは、ロッキー2ステップワゴンスパーダMV。ホンダ車に目を向けて、昨年からフリードやステップワゴンで車中泊モデルを作っていたロッキー2が、今年はステップワゴンスパーダをライトキャンパーに仕上げてきた。しかも、ルーフクーラーとリチウムシステムまで搭載。他社では扱っていないベース車両に目を付けたのが、さすがです。

まだまだあるJCCS2025の注目ポイント

バンテックブースにいすゞのキャンピングカー専用シャシー・トラヴィオ

【岩田】バンテックブースいすゞキャンピングカー専用シャシー・トラヴィオが展示され、今後同車をベースにしたキャブコンを開発していくことが発表されました。キャンピングカーの“クルマとしての完成度”は、100%ベース車両に依存します。いすゞのトラックはレベルが高いですから、これはキャブコンの未来を切り開く大きなトピックだと思います。

ホワイトハウスのStyle_iD

【品田】個人的には、キャンピングカーの価格高騰・大型化の対極として、ミニバンキャンパーがより価値を高めてきていると感じました。ファミリーは子供の成長に伴ってお金もかかるし、趣味専用のクルマを所有するのはなかなか大変。その点、ミニバンベースなら奥さんでもラクに運転できるし、ファミリーカーとしても使えて車中泊も楽しめます。

【岩田】Web上でシミュレーションしながらフリードクロスターを自由にカスタマイズできる、ホワイトハウスStyle_iDも注目を集めていました。バンレボロッキー2も、ミニバンベースのキャンピングカーを積極的に提案しています。ミニバンは乗り心地や走行性能、安全性などのレベルが高いし、マルチに使えるのが最大の魅力ですよね。

【品田】今年のJCCSは「ニューモデルだらけ」という感じで、とても楽しめました。バラエティに富んだキャンピングカーがズラリと並び、初心者や一般層も理屈抜きで楽しめる充実した内容だったと思います。来年も高品質なキャンピングカーがたくさん登場して、今年同様に注目モデルのセレクトに悩むような状況になることを期待しています。

【岩田】今年の注目は、「スマートキャブコン」「ミニバンキャンパー」「デュカトモデル」。特別な新作だけが話題をさらうのではなく、新しい傾向があったり、遊び心があったりと、ショー全体でキャンピングカーの魅力と可能性を感じさせてくれました。キャンピングカーのデザイン・装備・ベース車両が今後どのように進化していくのか、今から来年のJCCSが楽しみです。

かーいんてりあ高橋のフュージョンの車内で対談
PROFILE
品田直人(しなだ・なおと)
品田直人(しなだ・なおと)

キャンピングカー専門誌オートキャンパー元編集長。
現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長。国内、海外のキャンピングカーを多数取材。
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WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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