【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2024」

メーカー・販売店インタビュー
, , , , , , ,

【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2024」

2月2日(金)~5日(月)に開催されたジャパンキャンピングカーショー2024は、アジア最大規模の屋内キャンピングカーイベント。会場の幕張メッセ1~5ホールに全国から最新のキャンピングカーが350台以上集結し、幅広い層の来場者から注目を集めた。

キャンピングカースタイルでは、イベント最終日に恒例の対談企画を実施。キャンピングカーを知り尽くした専門家に、今年のJCCSを振り返ってもらった。2人の専門家の目に、ジャパンキャンピングカーショー2024はどう映ったのだろうか?

オートキャンパーWEB編集長 品田直人氏
オートキャンパーWEB編集長 品田直人氏

キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」編集長を経て、現在は「オートキャンパーWEB」、YouTubeチャンネル「とびだせ! オートキャンパーテレビ」の編集長を務める。

キャンピングカーライフ研究家/ライター 岩田一成氏
キャンピングカーライフ研究家/ライター 岩田一成氏

17年のキャンピングカー取材で得た知識とユーザーとしての経験をベースに、雑誌、WEB、新聞、テレビ、YouTubeなど、様々な媒体でキャンピングカーの魅力を発信している。

大きく進化を遂げたデュカトバンコン

ジャパンキャンピングカーショー2024

【品田】350台以上のキャンピングカーが集結した過去最大規模のショーということで、各社からニューモデルが多数登場しました。デュカトがデビューした昨年ほどの勢いは見られないかと思いきや、ふたを開けてみれば華々しさや充実度は昨年と同等かそれ以上。デュカトが正規代理店から安定して供給され、新型車が各社からラインナップされてきた。もはや「デュカトが根付いてきた」と明言していいほどの、盛り上がりを感じました。

【岩田】昨年秋のジャパンモビリティショーも、業界にとって大きなターニングポイントだったと思います。コロナ禍でキャンピングカーのユーザー層が広がったのと同時に、ジャパンモビリティショーのキャンピングカー展示で、一般層からの注目度がさらに高まった。あとは品田さんが言っていた通り、いよいよデュカトが本格的に始動した印象ですね。昨年は各社がデュカトモデルをデビューさせるところまででしたが、1年経ってバリエーションが増え、大きな進化を見せてくれました。

ホワイトハウスの<strong><noscript><img decoding=

【品田】一番の注目モデルは、電動ポップアップルーフを搭載したホワイトハウストリノ。ポップアップルーフのパイオニアであるホワイトハウスが、L3H2(全長6m)のデュカトをベースにいよいよ本気を出してきたなという。あのクラスの屋根でダンパーのみの手動式だと重くて開閉が大変なのですが、スマホやスイッチで操作できる電動式なのでそうした心配も無用です。

ホワイトハウスのトリノのポップアップルーフ

ポップアップルーフにクールスターの室外機を設置しているのもポイントです。通常だとポップアップルーフに室外機などの重量物を設置することはできませんが、力を入れずに開閉できる電動化の恩恵でそれを実現した。昨年のJCCSでは、デュカトベースのキャンピングカーに関しては周囲に先を越された感があったホワイトハウスですが、今年はビルダーの本気度をひしひしと感じました。

ナッツRVのゼニアTL

【岩田】ボクが注目したのは、ナッツRVゼニアTLです。全長6mの大きなボディをあえてマルチルームレス仕様にして、ボーダーバンクスで一番人気のツインベッドレイアウトを落とし込んだ。スライドドアやリアゲートから見たときに、広さと開放感に圧倒されました。ツインベッドはステップフロアがあるから、他とは違うぞというワクワク感がありますね。

ナッツRVのゼニアTLのリア

ナッツRVからは今年3モデルが追加されて、デュカトだけでも5モデルが出そろいました。L字ソファ仕様のゼニアLは、リアダブルベッドとリアプルダウンベッドの2タイプが選べるので、デュカトモデルのバリエーションは全部で6パターン。全長5.4m・6m、ツインベッド、ダブルベッド、マルチルームの有無など、2年目にしてこれだけ細かいニーズに応えられる体制が整ったのは素晴らしいです。

専門家が注目した新作キャンピングカー

【品田】装備が充実した高額なモデルも魅力的ではありますが、今回のショーではエントリーユーザーにピッタリの簡易車中泊モデルもかなり目につきました。

【岩田】多くのユーザーは、遊びのクルマに1000万円、2000万円はかけられない。ユーザー層が広がっている今、1台で普段使いもできる身近なモデルを望む声がかなり増えていると思います。キャンピングカーの価格が全体的に高騰している中、手軽に楽しめるライトモデルの需要は今後も増加していくでしょうね。

日産のキャラバン 日産のキャラバンの内装

【品田】日産キャラバンマルチベッドは、リアに折りたたみ式ベッドキットを搭載したライトな車中泊仕様。オプションを増やすとそれなりの価格になりますが、簡易的な仕様なら300万円半ばから購入できます。いまや全国のディーラーで、こうした車中泊モデルが購入できる時代。車内で寝て遊ぶくらいなら、これで十分と考えるユーザーも多いはずです。

バンテック新潟が販売するボクシーベースのMR-S ボクシーベースのMR-Sの内装

もう少し小さいクラスでは、バンテック新潟が販売するボクシーベースのMR-Sに注目しました。ベースがミニバンなので、車両装備が充実していて乗り心地も抜群。普通の人にもとっつきやすい、ライト仕様のキャンピングカーに仕上がっています。簡易的な車中泊モデルは、本格的なキャンピングカーよりも架装時間が短いので、注文から納車まで待たずに済むのもメリット。平日は普段使いをして、休日は気軽に車中泊の旅を楽しむ。そうした使い方に最適な1台です。

【岩田】能登半島地震でも、シートをリクライニングして車内で寝ている被災者が大勢いると聞きます。ミニバンの車内に体を伸ばして寝られるフラットなベッドスペースがあるのは、災害時にも大きなアドバンテージ。こうしたライトモデルなら、普段使い、レジャー、防災までマルチに使えるキャンピングカーのメリットを手軽に享受できますね。

ロッキー2の車中泊モデル、フリード+MV ロッキー2の車中泊モデル、フリード+MVの内装

【品田】ロッキー2は、2列シート仕様のフリード+をベースにしたフリード+MVという車中泊モデルを作ってきました。乗用車なので乗り心地や走行性能、装備面にアドバンテージがあり、ファーストカーとして普段使いも可能。車両持ち込みによる架装もOKなので、現在フリード+に乗っている人も気軽に車中泊ライフをスタートできます。

本格的なキャンピングカーはもちろん魅力的ですが、2024年はより幅広い層がキャンピングカーの魅力に触れられる簡易的なコンパクトモデルが目に付きました。ここを入り口にして本格的なモデルに移行する人も多いと思うので、キャンピングカーをカルチャーとして根付かせるために、こうしたライトモデルが果たす役割は大きいと思います。

エートゥゼットのエースG エートゥゼットのエースGの内装

【岩田】ボクが注目したのは、カムロードベースのスライドアウトキャブコン。エートゥゼットエースGと、ダイレクトカーズトリップ・ログベース・プレミアムエディションの2台です。スライドアウトはアメリカのRVでは定番ですが、日本のキャンピングカーではほとんど見かけることがなく、とくにカムロードの市販キャブコンとしては初だと思います。国産キャブコンの可能性のひとつとして、面白いアプローチだと思いました。

ダイレクトカーズのトリップ・ログベース・プレミアムエディション ダイレクトカーズのトリップ・ログベース・プレミアムエディションの内装

室内に入ってみると、どちらのモデルもやはり広い! 数10cmの拡張でも、その効果は絶大です。日本の道路事情に合ったボディサイズでありながら、RVパークやキャンプ場で今まで以上に快適なクルマ旅を実現できる。そこに、国産キャブコンの新たな可能性を感じました。

キャンパー鹿児島のタビークス

あとは、キャンパー鹿児島タビークス。このモデルの登場で、今までNTB(日本特種ボディー)でしか購入できなかったいすゞ・ビーカムベースのキャブコンが、キャンパー鹿児島でも購入できるようになりました。最大の魅力は、新型ビーカムの出来の良さ! 電動レーンキープアシスト、ブラインドスポットモニター、プリクラッシュブレーキをはじめ、前車との車間距離を保持しながら加減速や発進・停止を行う「全車速車間クルーズ」や、ドライバーの異常を自動検知して車両を緊急停止させる「ドライバー異常時対応システム」も装備されています。安全装備の充実度は、キャンピングカーのベース車両の中では群を抜いていますね。

【品田】基本的に、クルマの安全装備は設計の新しさで変わりますから。いすゞ・エルフをベースにした新型ビーカムは、昨年フルモデルチェンジしたばかりで設計が新しい。カムロードと比べると、基本設計がまったく違います。そんな素晴らしい車両が限られたビルダーにしか供給されていないのは、残念の一言。もっと多くのビルダーにベース車を供給できる体制が整えば、競合するカムロードも進化する可能性があるし、キャンピングカーも次のステージにレベルアップできるはずです。

【岩田】キャンピングカーの完成度は、ベース車両に依存します。架装部分ばかりに目を奪われてしまいがちですが、キャンピングカーがクルマである限り、ベース車両はもっとも重要なファクター。デュカトの正規導入がキャンピングカー業界に大きなメリットをもたらしたように、国産キャブコンにもより良いベース車両が求められますね。

【品田】期待できるのが、東京オートサロンのいすゞブースに展示されていたエルフmio。普通免許で乗れる車両総重量3.5t以下のトラックで、今年の夏からキャンパーベースとして供給を開始する予定とのことです。このベース車が業界全体に広がって、キャブコンのバリエーションが増えていくことを期待しています。

まだまだあるJCCS2024の注目ポイント

オートワンが扱う特定原動機付自転車(電動キックボード)

【品田】遊び方や旅のスタイルの提案として、オートワンが扱う特定原動機付自転車(電動キックボード)にも注目しました。今までの車中泊旅では、電動アシスト付き自転車や小径タイヤの折りたたみ自転車を積むのが一般的でしたが、特定小型原動機付自転車ならペダルをこぐ必要がなく、自転車よりもさらに活動範囲が広がります。コンパクトなので積載もラクにできて、大容量リチウムバッテリーを搭載したキャンピングカーなら充電環境も万全。現地での移動手段として、キャンピングカーとの親和性は抜群だと思います。

ダイレクトカーズの新型5モデル

【岩田】ダイレクトカーズは、今年も新型5モデルを同時リリースしてきましたね。毎年ニューモデルを発表してくるダイレクトカーズブースでは、アンベール式も定番化した感があります。毎年新しいモデルを発表し続けるのは大変だと思いますが、それに挑み続ける心意気が素晴らしいです。

【品田】ダイレクトカーズのブースでは、プラチナインテリアパッケージも展示されていました。職人がハンドメイドでレザーを貼り込んだ室内は、まさに高級ミニバン。ハイエースやカムロードなどの商用車に抵抗があるユーザーには、非常に有効なアプローチだと思います。

バンテックブース「バンテックタウン」

【岩田】昨年の対談でも話題になりましたが、バンテックのブースデザインは今年も素晴らしかったですね。テーマは、「バンテックタウン」。贅沢に空間を使って、独自の世界観を演出していました。普通なら1台でも多くクルマを並べたいと思うはずですが、毎年工夫を凝らしてブースを作るバンテックの姿勢は、周囲が思っている以上にすごいこと。こうした取り組みが、ショー全体のレベルアップにも貢献していると思います。

【品田】ここ数年で、JCCSがどんどんとキャンピングカー先進国ヨーロッパのイベントに近づいているように感じます。これだけ充実した内容で、たったの4日間じゃもったいない。今後はもっと期間を延長して全国のキャンピングカーショーをJCCSに集約し、さらなるビッグイベントへと成長してほしいですね。

【岩田】ベース車両、車種のバリエーション、架装のクォリティー、ブースの作り方。どれか1つだけが進化したということではなく、すべての要素がバランスよく進化していることが感じられるショーでした。日本のキャンピングカーが今後どうなっていくのか、今から来年のJCCSが楽しみです。

PROFILE
品田直人(しなだ・なおと)
品田直人(しなだ・なおと)

キャンピングカー専門誌オートキャンパー元編集長。
現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長。国内、海外のキャンピングカーを多数取材。
オートキャンパーWEBはこちら

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

キャンピングカーライター一覧へ

メーカー・販売店インタビュー
, , , , , , ,

レンタルキャンピングカーネット