ハイエースバンコンからフィアットデュカトベースのエトルスコへと拡大するトイファクトリーの戦略

メーカー・販売店インタビュー
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ハイエースバンコンからフィアットデュカトベースのエトルスコへと拡大するトイファクトリーの戦略

キャンピングカーへの期待や好みはさまざま。走りにこだわる方もいれば、快適性を求める方もいます。だからこそ、キャンピングカーは人それぞれのこだわりが具現化されているといえるのです。なかには、クルマ本来の性能に魅了され、同じベース車両をずっと愛用している方も。

トイファクトリー代表取締役の藤井昭文社長も、こだわりのベース車両に長く乗ってきた1人。愛してやまないのは、ハイエースベースのキャンピングカーです。キャンピングカービルダーとして活動しながら、家族とともに過ごしたハイエースキャンピングカーに特別な思い入れがあります。

そんなハイエースへの深い愛着があった藤井社長ですが、気になる新しいクルマが現れたようです。

旅する社長の愛車はハイエースのキャンピングカー

藤井社長の愛車「バーデンベースのキャンピングカー」

藤井社長の愛車は、トイファクトリーのバーデンをベースにしたカスタムキャンピングカー。このクルマは彼の個性が凝縮された逸品で、遊び心を追求した装備やトイファクトリーらしいスマートな家具が特徴です。

大容量のルーフラックを取り付け、ボディ両サイドに断熱性の高いエアロウィンドウを採用したグランデ仕様となり、ブラックのパーツで統一されたカスタムが精悍な雰囲気を醸し出しています。

RVパークに宿泊中の藤井社長と愛車「バーデンベースのキャンピングカー」

キャンピングカーを積極的に使用することで、オーナーとしてクルマとの接点を通じて独自の視点を築いてきました。そして、細かい仕様にこだわり、改善を重ねることで、トイファクトリーのキャンピングカーも進化を遂げたのです。

多忙な社長業の合間には、車内でデスクワークをこなすこともあり、大好きなクルマとの調和がみられる充実したライフスタイルを築いてきました。旅の途中ではクルマで宿泊することも多いといいます。

ベッドメイク

ベッドメイクをして布団に潜り込むと、その空間はまるでクルマとは思えないほどの快適さが広がり、目を閉じると、遠い記憶がよみがえってくるかのような感覚に。

幼少の頃からクルマでの旅を経験し、父親の手作りキャンピングカーでさまざまな場所を訪れた思い出が鮮明に残っているそうです。当時はクルマでの宿泊に疑問を抱きながらも、楽しいひとときを過ごしていたといいます。そして、家族でハイエースを改造し、旅に出る経験から得た洞察をもとに、ユーザーに寄り添った理想のキャンピングカー作りに邁進してきました。

世界に通用するキャンピングカー作りを極める

愛車の車内で話す藤井社長

藤井社長がキャンピングカー製作に着手したのは1990年代。当時、派手な装飾のカスタムカーとキャンピングカーが混在していましたが、トイファクトリーは他社とは一線を画す、シンプルで美しいクルマ作りに焦点を当てていたのが特徴です。

そのこだわりは数ミリ単位で考察されてきた家具のレイアウト、収納力を最大限に生かすための空間の使い方など、リアルユーザーが求めるキャンピングカー作りそのものでした。そして、シンプルな家具の美しさは、トイファクトリーというブランドとしての地位を築いていくのです。

雪道を走るキャンピングカー

トイファクトリーの象徴的な特徴は、高い断熱効果を発揮するクルマづくり。寒冷地であっても、車内で快適に過ごすために、徹底的な断熱処理が行われています。最新技術の投入と妥協のないこだわりが際立っていました。

30年以上にわたり、トイファクトリーは独自の方向性を突き進み、その機能性や美しさ、快適性を極めてきました。そして、そのトイファクトリーらしさを求めるユーザーも増加しています。トイファクトリーが作ったキャンピングカーの品質は、ヨーロッパの高級ビルダーですら「トイファクトリーのバンコンは世界レベル」と高く評価したそうです。

フィアットデュカトベースのキャンピングカー

トイファクトリーのキャンピングカー作りには、2022年に大きな転機が訪れました。この年、フィアットのデュカトが国内販売され、トイファクトリーは正規輸入ディーラーとして認定されたのです。

この重要な転機について、藤井社長はこう語ります。「もちろん、ハイエースは大好きでしたが、世界的に高いシェアを誇るデュカトがどのようなクルマなのか、クルマ好きにとっては気になっていました。そして、デュカトベースのキャブコンを1台輸入してみて、自分で使ってみたんです。スムーズな走り、揺れの少ないコーナリング、そして、快適に過ごせる居住スペース、と驚くことばかりでした。このクルマを日本でも広めたいと、ドイツなどへ行った時はメーカーの人に、輸入したい事を言い続けていました」。

これまでの努力と交渉の末、10年近くが経過して、とうとう正規輸入ディーラーとなり、フィアットデュカトをラインアップに加えることができました。

そして、トイファクトリーは、これまで培ってきた自社の技術力を投入して、フィアットデュカトをベース車両にした上の写真のモデル、オリジンを始め、ダヴィンチユーロバーデンという3つの車種を展開。これらはヨーロッパで販売できるほどのクオリティの高いキャンピングカーとなっています。

ユーロトイとしてヨーロッパのキャブコンを国内へ広めていく

洗練されたインテリアデザイン

トイファクトリーが製造するフィアットデュカトベースのキャンピングカーはバンコンとなります。これは、これまで築いてきたハイエースの技術力を最大限に発揮できるから、そして、世界クラスのバンコンクオリティを生み出すための製造環境も整ってるからなのでしょう。

しかし、トイファクトリーにとってキャブコンは異なる領域です。ヨーロッパの高品質で美しいデザインのキャブコン作りに追いつくには、トイファクトリーでさえも時間がかかるとの認識がありました。そこで、キャブコンに関しては、ヨーロッパのキャンピングカーを輸入し、販売することに力を注ぐことにしたのです。

これに伴い、輸入車専門のショールーム「ユーロトイ」が近くオープン予定で、ヨーロッパの複数のブランドが展開されることになりました。当然ながら、こだわり抜いたキャンピングカーがラインナップされ、そのなかでも、藤井社長がヨーロッパで品質やデザインを吟味し選んだブランドの1つが、上の写真のドイツのエトルスコです。

エトルスコのベッドスペース

エトルスコは2016年にに設立され、最高級キャンピングカーブランド「ハイマー」グループの一員として、イタリアを拠点に快適かつデザイン性の高いキャンピングカーを製造しています。今注目されている新しいブランドで、若手スタッフが多く、その先進的なデザインは老舗ブランドからも一目置かれる存在です。

インテリアの調度品はどれをとっても、上質を感じる作りです。トップ画像で藤井社長の背景に写っているクルマはエトルスコT6900SBという全長約7mの大型キャブコン。リアに独立したベッドルームがあり、スマートなインテリアデザインながら、ラグジュアリー感を強く感じさせる空間に包み込まれます。

エトルスコの細部に宿るモノづくりへのこだわりはトイファクトリーのバンコン作りにも共通する点も多いのではないでしょうか。

エトルスコのモチーフ

エトルスコのベース車両もフィアットデュカト。藤井社長が輸入を切望していたベース車両です。トイファクトリーが新たに作るキャンピングカーとバッティングするイメージですが、バンコンはトイファクトリーが自社でビルドし、キャブコンはディーラーとしてヨーロッパの最高品質キャンピングカーを国内に広める、という違った2つの目的に向かうことになります。長年抱いていた、フィアットデュカトへの思いが、本格的に始動してきたのです。

現在、藤井社長はハイエースのキャンピングカーからフィアットデュカトへの乗り換えを検討しています。ハイエースには多くの思い入れと思い出があり、手放すことは容易ではありません。しかし、新たな挑戦の段階に差し掛かり、フィアットデュカトとの新しいキャンピングカースタイルを実感しようとしています。

藤井社長は、子供として、そして父親として、キャンピングカーとのライフスタイルを歩んできながら、世界クラスのバンコン作りを実現しました。そして、今まさにスタートしようとしている挑戦により、その先にある新しい世界を、私たちに見せてくれるのではないでしょうか。

取材協力 トイファクトリー

WRITER PROFILE
渡辺圭史
渡辺圭史(わたなべ・けいし)

1971年東京生まれ。アウトドア好きな編集者、そして、算数が好きだったライター。アウトドア用品メーカー、出版社を経て、キャンピングカー専門誌編集長に。現在はフリーとして、いろいろなメディアにて執筆中。アウトドアをキーワードに、より楽しいライフスタイルを求めてゆるりと奮闘中。最近気になっているワードは、旅、ミニマリスト、車中泊。趣味はコンパクトな旅とモノづくり。

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トイファクトリー:Fiat Professional 正規ディーラー
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