キャンピングカービルダーの社長は、普段どんなクルマに乗り、どんなライフスタイルを送っているのだろうか? 自らキャンピングカーライフを実践するビルダー社長にスポットを当て、その愛車とライフスタイルを紹介することでビルダーのバックボーンを紐解くのが、本企画の趣旨だ。
今回ご登場いただくのは、「アネックス」「デルタリンク」「キャンピングカーランド」「ダイレクトカーズ」の中核4社からなるLACホールディングスの会長であり、老舗ビルダーアネックスの代表を務める田中昭市さん。アネックスの創設以来30年以上に渡ってユーザー目線のキャンピングカーを生み出してきた田中さんは、どんなクルマに乗り、どんな楽しみ方をしてきたのか。そのルーツとこだわりに迫る。
家族と一緒にキャンプやスキーを楽しむ
田中さんが初めてキャンピングカーを所有したのは、1980年代初頭。父が創設した「オートボディショップたなか」(アネックスの前身)に勤務していた時のことだった。当時はハイエースやキャラバンなどをカスタムしたバニングが流行しており、同社でも多くのバニングを製作・販売していた。
「初めてのキャンピングカーは、丸目2灯の40系ハイエース・スーパーロング。会社の福利厚生として、社員が自由に乗れるように作ったバンコンです。内装は、コの字ベッドとギャレーを搭載したシンプル仕様。当時は子供が幼稚園に入る前だったので、休日になると琵琶湖や富士山周辺に出かけてキャンプを楽しんでいました。まだ、キャンピングカーを見かけることはほとんどない時代でしたね」
1980年代後半になると「オートボディショップたなか」の業務は、60系・70系ハイエースのキャンピングカー製作が中心となっていく。1989年の100系ハイエースデビュー後は、キャンピングカービルダーとしての動きがより本格化。そんな中、田中さんが愛車に選んだのは、E24キャラバンのボディ後部をカットして居住用シェルを合体した、「オートボディショップたなか」のオリジナルキャブコンだった。
「2台目の愛車は、リアにFRPシェルを搭載した『アネックス』というボディカットキャブコンです。以前のバンコンと比べて室内が広かったので、両親や妹家族を含めた合計9人で正月スキーにも行きました。年末の大掃除後に出発して、中央道のサービスエリアで就寝。翌日の早朝からスキーを楽しみました。バニングやRVクラブのイベントにもよく参加しましたし、キャンピングカーの魅力や楽しみ方を教えてくれた1台でしたね」
現在でもウインタースポーツのベース基地としてキャンピングカーを活用しているユーザーは多いが、田中さんは今から30年以上前の1980年代後半から、現代と同じ楽しみ方で冬のキャンピングカーライフを満喫していた。こうした実体験の蓄積が、アネックスのクルマづくりに生きていることは間違いないだろう。
バンコンでキャンピングカーライフを実践
「オートボディショップたなか」は1987年に敷地面積700坪の徳島工場を開設し、1994年には田中さんが代表となってアネックスに社名を変更。プライベートでは3台目の愛車としてフォルクスワーゲンT4を購入し、車中泊仕様にして家族でスキーを楽しんでいた。2010年には、再び国産キャンピングカーにカムバック。4台目の愛車は、アネックス製のNV200バンコンリコルソSSだ。
「リコルソSSは、2009年のNV200リリース直後に製作したモデルです。この頃は子供たちが大きくなっていたので、夫婦+愛犬のクルマ旅が基本。仕事が週休1日だったので、キャンピングカーで前泊して朝からハイキングを楽しんだり、愛犬を連れて公園でゆっくり過ごしたり……。連休には、長野や富士山周辺でキャンプも楽しみました」
前泊を駆使したアウトドアレジャーやクルマ旅は、まさにキャンピングカーの王道的な使い方。子供が幼い頃はファミリー、子供が成長したら夫婦+愛犬と、ライフステージによってスタイルが変化しているのも面白い。キャンピングカーユーザーなら誰もが通る道を、ビルダー代表の田中さん自身が身をもって経験してきた。その後、2012年頃に乗り替えた5台目の愛車は、ハイエースワイドミドルのポップアップルーフバンコンだ。
「NV200はコンパクトで気軽に乗れるのが利点ですが、スキーでは荷物が多く室内が狭く感じられる……。そこで、街乗りできるサイズのハイエースワイドミドルに乗り替えました。下取りで入ってきた他社製のポップアップルーフバンコンをベースに、家具やシートなどの内装はすべて作り直し。昔からウェストファリアに憧れていたので、『それをハイエースで作りたい』というのがコンセプトでした。右サイドに家具、左サイドに1脚でベッドに展開できるRIBシートをセット。フロアは、建築足場用の杉板(古木)を張った土足仕様で仕上げました」
ハイエースワイドミドル、ポップアップルーフ、右サイドのロングキャビネット、古木を使った土足仕様のフロア……。ウェストファリアをイメージした内装は、のちにアネックスから販売されるRIWシリーズ・UTONEシリーズと共通する部分が多い。自身のキャンピングカーライフで得た貴重なノウハウが、アネックスのバンコンづくりにしっかりフィードバックされているのだ。
その後2016年には、6台目の愛車となるE26キャラバンベースのアネックス製ポップアップルーフバンコンコンポーザーに乗り替えた。住まいが大阪で周辺の道路や駐車場が狭く、車幅が広いハイエースワイドミドルの運転が少し億劫になってきたことから、日本の道路事情に適したナローサイズを選択。走る場所・止める場所を選ばない標準ボディの機動性と、ポップアップルーフがもたらす居住性を活かして、アクティブなキャンピングカーライフを満喫した。
現在の愛車はアネックス・ウトネ500ER
今年の夏、田中さんの新しい愛車が納車された。相棒に選んだのは、UTONE(ウトネ)500ER。ハイエースワイドミドルにエレベーティングルーフを装着した、マルチパーパスなバンコンだ。
「このサイズなら自宅のガレージにも止められるし、都市部でもそこまでストレスなくドライブできます。シティユースにも対応するスマートなバンコンですが、ひとたびキャンプや旅に出かければ、ルーフを上げて広々とした居住空間を実現できる。アウトドア、クルマ旅、ビジネス、ホビー、防災など、幅広い用途に活用できるウトネは、現在のライフスタイルにピッタリの1台です」
エレベーティングルーフをオープンすることで、開放感抜群の居住スペースを実現できる。ルーフをクローズすれば全高2105mmになり、都市部に多い自走式立体駐車場にも入庫可能。リアゲートには、断熱性に優れたアクリルウィンドー(オプション)が装着されている。
右手のロングカウンターには、ガラスカバー付きコンロ一体型シンクと上蓋式40L冷蔵庫をスマートにビルトイン。リアサイドにセットされた有孔ボード(オプション)は、フックで小物を吊るしたりマグネットバーでカトラリーを固定したりと “魅せる収納”も楽しめる。
運転席・助手席は、ホールド性に優れたレカロシートに交換。ロングドライブ時の疲労を軽減して、快適なドライブを実現できる。
リア右手には、RIWシリーズから踏襲されたアルミフレームのキャビネットを装備。オープンラックにTP規格のコンテナボックスを組み合わせることで、収納物をスマートに仕分けできる。アウトドアで、ボックスごと車外に持ち出せるのも便利だ。
ロングスライドレールでシートを前方に移動すれば、大きな荷物も余裕で積載できる広大なカーゴスペースになる。ヒッコリー天然無垢材を乱貼りしたフロア(オプション)で、見た目のオシャレ感も満点。土足のままでラフに使用できるのも利点だ。
キャンピングカーは生活に欠かせない存在
子供が幼い頃はファミリーでアウトドア、子供が成長してからは夫婦でクルマ旅と、多くのキャンピングカーユーザーが通る道を田中さん自身も経験してきた。現在進行形でキャンピングカーライフを満喫している田中さんにとって、キャンピングカーとはどんな存在なのだろうか?
「愛犬を連れて1人旅をしたり、夫婦+愛犬で自由な旅を楽しんだり、前泊してハイキングをしたり……。いつでも楽しく生活できているのは、キャンピングカーがあるからこそ。結果的に仕事につながっている部分はありますが、仕事を前提にして乗り続けてきたわけではなく、結局は『キャンピングカーが好き』なんです。キャンピングカーは便利だし、キャンピングカーのおかげで実現できるライフスタイルもあります。私にとってキャンピングカーは、『人生に欠かせない存在』。長年キャンピングカーのある生活を送ってきましたが、今後もそれはずっと続いていくと思います」