【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2023」

メーカー・販売店インタビュー
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【対談】専門家が見た「ジャパンキャンピングカーショー2023」

2月3日(金)~6日(月)の4日間、千葉県・幕張メッセでジャパンキャンピングカーショー2023が開催された。日本最大の屋内キャンピングカーイベントである同ショーは、毎年ニューモデルがズラリと勢ぞろいする、業界の1年を占うビッグイベント。ようやくコロナの感染拡大が落ち着いてきたこともあり、若いカップルから年配夫婦、子連れファミリー、ワンコ連れまで、幅広い層の来場者で大盛況となった。

キャンピングカースタイルでは、イベント最終日に恒例の専門家による対談を実施。キャンピングカー専門家の2人に、今年のショーを振り返ってもらった。

品田直人氏

1人は、老舗キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」の編集長を経て、現在は「オートキャンパーWEB」、YouTubeチャンネル「とびだせ! オートキャンパーテレビ」の編集長を務める品田直人氏

岩田一成氏

もう1人は、16年以上に及ぶキャンピングカー取材で得た知識とユーザーとしてのノウハウをベースに、雑誌、WEB、テレビ、YouTubeなど、様々な媒体でキャンピングカーの魅力を発信しているライターの岩田一成氏

2人の専門家の目に、ジャパンキャンピングカーショー2023はどう映ったのか?

今年のショーは、まさに“デュカト祭り”

ジャパンキャンピングカーショーに並ぶデュカト

【岩田】 品田さん的には今回のショーはいかがでしたか?

【品田】 大満足の展示内容でしたね。いちキャンピングカーファンとして、久々に心から楽しむことができました。数年前にもフィアットデュカトが正規導入される話があって「これで日本のキャンピングカーが変わる!」と思っていたのですが、残念ながらその時は実現しなかった。それが今回は、デュカトの正規販売店5社が決定して、それぞれがデュカトベースのキャンピングカーでショーを盛り上げてくれました。

【岩田】 キャンピングカーは、あくまでもクルマ。当たり前のことですが、クルマとしての完成度はベース車両に依存します。新型カムロードもそうですが、ベースがよければ間違いなくいいキャンピングカーが作れる。そういう意味で、デュカトは非常に重要なベース車両だと思います。各社がデュカトベースの新作をそろえてきたことで、エポックメイキングなキャンピングカーが少なかったここ数年で、もっとも見ごたえのあるショーになりました。

品田氏と岩田氏が話す様子

【品田】 昨年暮れに、インポーターがメディア向けにデュカトの広報車の貸し出しを行いました。さっそく借りて乗ってみたら、これが非常に乗用車的。欧州市場7割を占める実力派モデルだけあって、走りもスムーズだし、非接触の充電器など装備も充実していて、従来の商用バンではありえないほどクルマとしてのポテンシャルが高い。これをベース車両にして、いいキャンピングカーができないわけがない。

【岩田】 足まわりもよくできているので購入後にあれこれいじる必要がないし、室内空間が広いのでバンコンでもキャブコンに匹敵する居住性を実現できる。これをベースにしたら、幅広い層に刺さる新たなカテゴリーが生まれるという期待はありました。

注目したデュカトベースのニューモデル

【岩田】 今回、各社からデュカトベースのニューモデルがデビューしましたが、品田さん的にはどれが印象に残りましたか?

ナッツのデュカト「フォルトナ」

【品田】 まずはナッツRVのフォルトナと東和モータースのスペランツァ。2社がパートナーシップを組んだ兄弟車ですが、基本コンセプトはナッツRVのライトキャブコン「マッシュ」の後継車という位置づけ。量産性を意識したファミリーユースモデルです。

内装は、ツインダイネットの構成が特徴的。ボディサイズが大きくなった分、マッシュのレイアウトよりも遊び心が増えていますし、リアに電動昇降式ベッドを装着すればファミリーでも快適に使用できます。ベッドルーム、ツインダイネット、キッチン、マルチルームと、キャブコンのように空間が独立しているのもいいですね。

トイファクトリーは、ハイマーの元メインデザイナー、フランク・ヴェンダー氏とのコラボモデルダ・ヴィンチオリジンで、既存モデルとはひと味違う“本場の世界観”を見せてくれました。

トイファクトリー、フランク・ヴェンダー氏とのコラボモデル「ダ・ヴィンチ」の外観 トイファクトリー、フランク・ヴェンダー氏とのコラボモデル「ダ・ヴィンチ」の車内

ハイエンドモデルのダ・ヴィンチには、ドイツ製キャンピングカーのシェア8割を占めるアグチシートが装着されています。わざわざアグチシートの日本総代理店契約を結んできたあたりからも、トイファクトリーのデュカトにかける意気込みが感じられますね。空間の使い方も、ありえないほど贅沢。欧州モデルは4名乗車が基本なのに対し、日本では多人数乗車、多人数就寝のニーズが高いですが、それでもあえて「4人乗れれば十分」という欧州の感覚を貫いた。ユーザーにこびないクルマづくりから、歴史ある本場のデザイナーの信念を感じました。

トイファクトリー、フランク・ヴェンダー氏とのコラボモデル「オリジン」の外観 トイファクトリー、フランク・ヴェンダー氏とのコラボモデル「オリジン」の車内

対して内装を柔らかなアースカラーで統一したオリジンは、オプションで6人乗車が可能なモデル。マルチルームを排した開放的な空間と、欧州ミニバンのようにシートを外してラゲッジとして使える作りが特徴です。欧州モデルはディテールの詰めが甘いケースが多いですが、本場のデザイナーとトイファクトリーのコラボモデルということで、ディテールの追求もハンパじゃない。これも“欧州と日本の融合”を体現した部分だと思います。

岡モータースの「グランクルーズWD」の外観

【岩田】 僕が個人的に注目したのは、岡モータースのグランクルーズWDとRVランドのルームですね。ショーで完成車を見るまで、デュカトベースのキャンピングカーはどれも欧州モーターホーム的な作りやデザインになるだろうと思っていましたが、岡モータースのグランクルーズWDは、「欧州車をベースにして日本のビルダーが内装を作った」というアイデンティティをしっかり感じさせてくれました。

岡モータースの「グランクルーズWD」のシート 岡モータースの「グランクルーズWD」のリビングルーム

軽キャンパーのミニチュアクルーズに高度な組家具を取り入れてきた同社が、そこで培った技術やノウハウをデュカトベースに落とし込んできた。キッチンの壁からスパイスラックがスライドして出てきたり、収納式ラップルトイレの土台に作り付けのティッシュボックスが装備されていたり、家具内に金庫が埋め込まれていたりと、芸が細かい。欧州モデルとは雰囲気が異なる書斎のようなサブダイネットも、オリジナリティがあっていいですね。

RVランドの「ルーム」の外観 RVランドの「ルーム」のリビングルーム

RVランドのルームは、バンライファー大工の鈴木大地さんを起用したあたりが、さすがと思いました。鈴木大地さんのアプローチはキャンピングカーというより「家」寄りで、感性が違う。マルチルームも付けず、普通だったらセカンドシートをセットしたくなるセンター部分のスペースを大きく空けて、デュカトの室内空間を最大限に活かしています。贅沢に空間を使った作りなので、最初に見たとき「広い!」と驚きました。この大胆なアプローチは、大工として多くの「家づくり」に携わってきた鈴木さんだからできること。本場海外のバンライフの世界観をデュカトに落とし込んだ、“映えるビジュアル”がとても印象的でした。

デュカト以外で印象に残ったのは?

【岩田】 デュカト以外で、品田さんが印象に残った車種や展示はありますか?

バンテックのリチウム電源ユニット「イリス」

【品田】 バンテックのリチウム電源ユニットイリスですね。ポータブル電源で定評のあるエコフローと組んで、バッテリー単体でシステムを組むのではなく安全なユニットごと積むスタイルを採用した。これは、非常によくできたやり方だと感心しました。

【岩田】 リチウムイオンバッテリーのシステム作りに長けているエコフローとバンテックがコラボして、コントローラーまで含めたユニットとして構築したのが画期的ですね。信頼性はもちろん、長期保証も魅力。リチウムイオンバッテリーでは、トイファクトリーが満を持して発表した安全性の高いスーパーBも注目です。あえて信頼性の高い鉛バッテリーにこだわり続けてきた2社がリチウムイオンバッテリーの導入に踏み切ったのは、確固たる自信の表れだと思います。

トイファクトリーの「スーパーB」

【品田】 ユニットを構築したバンテックと、バッテリー単体のトイファクトリー。アプローチがそれぞれ違っていて面白い。スーパーBは、既存モデルのサブバッテリーとリプレイスできるようなので、すでにトイファクトリーのバンコンに乗っているユーザーにもうれしいトピックですね。

バンテックの「コルドバンクス」

トピックでいうと、バンテックがコルドバンクスSをカムロードの2ℓガソリンエンジンベースで作ってきました。車重が軽いので現行の普通免許でも運転できて、価格もリーズナブル。こうしたモデルを待ち望んでいたユーザーも多いと思います。

【岩田】 新しいキャンピングカーに乗りかえたばかりの僕が言うのもなんですが(笑)、キャンピングカーは全体的に価格が上がっていますよね。もちろん、その分装備も充実していますが、価格で敬遠してしまう人がいるのも事実。その点、バンテックがリーズナブルなキャブコンをラインナップしているのは非常に意味のあることですね。

【品田】 やっぱりバンテックは優しいですよ。ベース車やパーツの値上がり、輸入コストなどを考えると、価格が高くなるのは仕方がない。ターゲットを富裕層に絞ってしまった方がラクだと思うんですが、それでもバンテックは幅広い層がキャンピングカーの魅力を味わえるように、リーズナブルなモデルを通常のラインナップとしてそろえている。これは、「日本に、キャンピングカーというカルチャーを」という、今回のショーのテーマを体現した1つの例だと思います。

ダイレクトカーズの「BR75」

【岩田】 幅広い層に魅力を伝えるという意味でいうと、ダイレクトカーズのBR75も面白い。デュカトと考え方は一緒で、結果的にキャンピングカーの良しあしはベース車両に大きく依存します。現行ハイラックスのクルマとしてのアドバンテージは、僕自身がハイラックスのトラキャンに乗ってよくわかっていますので、それをベースにした新しいキャブコンがデビューしたというのは大きなトピックですね。

【品田】 まず、見た目がカッコいい。キャンピングカーとSUVの融合という新しいスタイルにも、大きな可能性を感じます。海外でもオーバーランドはかなり尖ったスタイルなので、それをそのまま落とし込むだけではダメ。その点BR75は、ビジュアルだけでなく大容量リチウムイオンバッテリーや大出力ソーラーパネル、クーラーなど、トリップで培った快適装備をしっかり採用しているあたりが素晴らしい。

【岩田】 ぶっちゃけ、普通車の世界でクロカン4駆が主流にならないのと一緒で、ジャンルとしては決してキャンピングカーの主流にはなりえないと思うんです。ただ、間違いなくニーズはあるし、ベース車のハイラックス自体が20~30代の若者から「カッコいい」と人気を集めているクルマですから、既存層ではないユーザーの選択肢は確実に増えます。こうしたニューモデルでバリエーションが広がることは、キャンピングカー業界全体の底上げにつながる。ある意味、今回のショーに大きな花を添えたエポックメイキングな1台だと思います。

ダイレクトカーズの「BR75」

【品田】 欧州で流行しているミニマムキャラバンの流れを汲んだコンパクトサイズのキャンピングトレーラーも各社からリリースされていましたし、ここ数年ほぼタイムリーに海外の最先端スタイルが日本で楽しめるようになりました。充実した内容で「毎日通い詰めてもまだ見足りない」、そんな気持ちにさせてくれたイベントでした。

【岩田】 生活電源システムや空調システム、ディテールの繊細な仕上げなど、日本が世界に誇れる技術は数多くありますので、近い将来日本が世界にキャンピングカーを発信する時代がやってくるかもしれませんね。日本のキャンピングカーがどんな進化を遂げていくのか、これからが楽しみです。

PROFILE
品田直人(しなだ・なおと)
品田直人(しなだ・なおと)

キャンピングカー専門誌オートキャンパー元編集長。
現在はオートキャンパーWEB、YouTubeチャンネルとびだせ! オートキャンパーテレビの編集長。国内、海外のキャンピングカーを多数取材。
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WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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