国産キャンピングカーのベース車両に注目した時、バンコンの場合はハイエースやキャラバンなど、色々なメーカーが採用されています。一方で、キャブコンのベース車両といえば、カムロード、タウンエース、ハイエースなどのトヨタ勢が強い印象ではないでしょうか。
そんな国産キャブコンのラインアップに、珍しく、キャラバンベースのキャンピングカーを投入するメーカーが現れました。ベテランのキャンピングカー乗りであれば、知っているかもしれませんが、ファーストカスタムというビルダーです。 キャンピングカーの機能性を追求し、数々のモデルを輩出してきたビルダーで、多くのユーザーから支持されていました。そのファーストカスタムが、6年間ぶりに復活して、ニューモデルを発表したのです。「おやっ」と気になる人も多いのではないでしょうか。CBA-CC1 VENUSの車名はASTRARE(アストラーレ)CC1となり、VANTECH(バンテック)株式会社からの販売となりました。
目次
キャンピングカーの使いやすさを追求したちょうどいいサイズ感
今回発表されたモデルは日産のキャラバンをベースにしたモデルCBA-CC1 VENUSです。ボディサイズは全長4960mm、全幅2060mm、全高2740mm。フロント上部のバンクスペースを低く抑えたロープロファイルスタイルを採用しています。
豪華で大きなキャンピングカーではなく、国内の道路事情に合わせた、使いやすいサイズを追求して、開発が進められたそうです。
リアのフェンダーにシャープな印象を演出したり、ボディサイドの流れるようなプレスラインを付けるなど、デザイン性もこだわっています。そもそも、キャラバンをセレクトした理由には、新しいデザインであることも重要なポイントだったそうで、クルマ本来のデザインの新しさを活かした、おしゃれなキャンピングカーを目指したともいいます。
キャブコンでありながら、スライドドアとオートクロージャーを採用
一番の特徴とも言えるのが、エントランス部分にスライドドアを採用したことです。これは、駐車場などで、隣のクルマとのスペースが確保できなくても、ドアの開閉ができるので便利。特に車体の大きくなるキャブコンには効果的なギミックと言っていいでしょう。
リアのラゲッジドアも省スペース化されています。ドアのロックを外して、開けると、ゲートが上部にそのまま上がっていく仕組みで、後方へのスペースを必要としません。しっかりと、開口部も確保されているので、荷物の出し入れも容易です。
スライドドア、リアラゲッジドアにはオートクロージャーシステムが備わっていて、ドアを軽く閉めると、最後のロックは電動でサポート。特にリアラゲッジドアは、荷物をたくさん載せた時に、閉まりづらいことも多く、オートクロージャーが重宝するのではないでしょうか。
コンパクトなボディとは対照的な広さを感じるリビングエリア
サイドのエントランスから入ると、目の前がリビングエリア、ドア横にキッチン、マルチルームを経て、後方に常設ベッドがある、一般的なレイアウトです。全長、全幅ともに抑えられていますが、室内は広々とした印象です。
ベンチレーターが前後に2つ装備されているので、天井から降り注ぐ光が、室内を明るく照らし、開放感を出しているのかもしれません。ベンチレーターを2つ装備することで、スムーズな空気の流れを作り、快適な室内空間を作り出しています。
テーブル部分は広く、座っていても、ストレスを感じることはありません。開発段階で、キャンピングカーでもっとも長く滞在する場所が、このリビングエリアであるということをコンセプトに、広さ、シートの硬さなどを、しっかりと追求したといいます。
実際に座ってみても、対面に座っている人との距離に余裕がありました。これだけ、リビングスペースが広ければ、宿泊をしない、テレワーク専用として利用するのもいいかもしれません。
リアベッドは常設2段ベッドで、上段を跳ね上げて、下段のみを使うこともできます。また、下段のベッドも上の写真のように、アレンジできるようになっていて、就寝スペースだけでなく、荷物置きの棚として利用できるので、事務所など、色々な活用方法が見えてきます。
キッチンエリアはコンパクトにまとめられ、すっきりとしています。長年、キャンピングカーを製造してきたこともあり、ユーザーの使い方を直接見てきた経験から、どのような設備が必要か、改めて考え直した結果でした。
車両重量の増えてしまう水タンクは、実際にユーザーが使う平均的な量に合わせて、コンパクトな各13ℓのタンクを給排水に備えました。そして、調理設備として、コンロを設置するのではなく、電子レンジを設置することで、キャンピングカーとしての要件をクリアしています。
これも、ユーザーからのフィードバックを参考に、このサイズのキャンピングカーでは、コンロを使うことが少ないという判断だったといいます。その代わりに、キッチンエリアのキャビネットには、備え付けの分別ゴミ箱が組み込まれ、室内にゴミ箱を置く必要もなくなりました。
電子レンジの下には、大きな冷蔵庫が装備されています。容量は90ℓ。全長5mを切るキャブコンとしては珍しく大容量。旅をする上で、やはり冷蔵庫は必須。しかも、各地でお土産を買ったり、旅行中の食材を保管することを考えて、このサイズになったようです。
電子レンジや大きな冷蔵庫を装備するため、電源が強化されているのも特徴です。その対策として、リチウムイオンバッテリーを200Ah搭載。リチウムイオンバッテリーは高出力の負荷にも強く、電子レンジなどに最適です。強化されたバッテリーのおかげで、停車時に利用できる、高効率のDCクーラーも長時間稼働でき、快適な環境も作り出します。
電力の出力が高くなってくると、今度は電気を作る側も強化しなければなりません。その電力をカバーするために、高性能な充電システムCTEKが採用されました。独自の充電プログラムで、走行充電で効率的にバッテリーを充電。ロスの少ない高いパフォーマンスを発揮してくれるアイテムです。
コーナリングが気持ちいいドライビングフィール
ドライビングシートに座ると、サイドミラーに取り付けられたモニターの映像が目に飛び込んできます。両サイドに設置され、デジタルアウターモニターのように使うことができそうです。ボディサイドの視認性が向上し、狭い道でも安心して通過できます。
また、キャビンの電気をシャットダウンする、メインスイッチをステアリングの横に設置。クルマを離れる時や走り出す時に、メインスイッチの切り忘れで、リアに回り込むこともなくなるので、これは便利です。
エンジンは2ℓガソリン仕様。強化フレームが入っているボディで、車両重量がありそうですが、スムーズな走り出しが印象的です。歩道から車道に出る段差を通過しても、それほど揺さぶられことなく、初めてキャブコンに乗る人も安心して運転できそうです。
山道の登りでは、やはり、加速を強く感じることはありませんが、スピード低下で、後続車に迷惑をかけることはなさそうです。コーナリングでは、ステアリングに合わせて、スムーズにフロントが思い描いたラインに入っていき、コーナーのアウトでもボディの姿勢は安定していました。
強い横風や長距離の高速走行を確認していませんが、シェイプアップされたロープロファイルスタイルが効果を発揮しそうです。走りは安定していて、コンパクトなサイズなので、キャブコンの居住性と機能性を求める初心者にも、おすすめできる1台かもしれません。
(撮影協力:Hayama RV-SITE)
ASTRARE(アストラーレ)CC1諸元
- ベース車
- 日産キャラバンNV350
- エンジン
- ガソリン2L(ディーゼルの設定あり)
- 駆動方式
- 2WD(4WDの設定あり)
- サイズ(mm)
- 全長4,960mm/全幅2,060mm/全高2,740mm
- 定員
- 乗車定員7名 /就寝定員 大人3名+子供1名
- 問い合わせ先
- ファーストカスタム株式会社 東京営業所
- 住所
- 渋谷区神宮前2-32-4 神宮前シティータワー1001
- TEL
- 03-6434-5152