1泊2日でキャブコン「新型SAKURA」の生活電源と走行性能のスゴさを検証してきた!

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1泊2日でキャブコン「新型SAKURA」の生活電源と走行性能のスゴさを検証してきた!

今年2月に発表された、NTB(日本特種ボディー)新型SAKURA。車両についてはデビュー時に詳しくレポートしたが、今回は新型SAKURAを借りて1泊2日のキャンプをする機会に恵まれた。

スペックだけでは真価を読み切れないのがキャンピングカー。どんなに豪華な装備だろうと、どんなに優れた車両だろうと、実際に使ってみなければ本当のところはわからない。

筆者が考える新型SAKURAのアドバンテージは

  • ベース車両にいすゞ・ビーカム2t車を使用していること
  • 930Wソーラーを搭載した大容量の生活電源システム

今回は、その2点に特化して「新型SAKURAの電気と走り」を1泊2日で徹底検証。さまざまなキャンピングカーを取材してきた経験を基に、新型SAKURAを実際に使って感じた率直な意見をお伝えする。

ポイント1:キャブコンの車内で家と同じように電気が使える

新型サクラのソーラーパネル

今回検証した新型SAKURAは、930Wのソーラーパネル(155Wソーラーパネル×6枚)と760Aの大容量サブバッテリーを搭載している。ソーラーパネルで発電した電気だけを使って家庭用エアコンを稼働することができ、ソーラー発電が行える日中なら、エアコンを使いながら余った電気で同時にサブバッテリーの充電も行える。まさに、究極のオフグリッドシステムだ。

新型SAKURAのサブバッテリー

ビルダーのNTBによれば、電圧24V程度がサブバッテリーの使用下限の目安とのこと。24Vを切ってもバッテリーの容量は十分に残っているが、バッテリーの寿命を考えて安全マージンを大きくとり、この数値を推奨しているそうだ。

1泊2日という短期間でSAKURAの生活電源システムの実力を検証するため、今回は徹底的にラフな使い方を試みた。基本的に、冷蔵庫、エアコン、インバーター、照明はすべてつけっぱなしの状態で、消費電力の大きい家電も積極的に使用する。容量に限りあるキャンピングカーのサブバッテリーにとって、かなり過酷な使用条件だ。

真夏の入浴後でも車内は快適

14:00 静岡県の道の駅「伊東マリンタウン」に到着

●サブバッテリーの電圧 →26.4V

新型サクラと伊東マリンタウン

サブバッテリーが満充電の状態で、午前中にNTB本社を出発。走行距離160km、3時間半のドライブで、1つ目の目的地である道の駅伊東マリンタウンに到着した。

伊豆の最高気温は、33℃。うだるような暑さの中、クルマを降りて道の駅で昼食と入浴を済ませることに。駐車中はエンジンを切った状態で、冷蔵庫、エアコン、インバーター、照明はつけたまま。しかも、炎天下で確実に性能を発揮できるように、エアコンの温度設定は18℃まで下げ、冷蔵庫の調節ダイヤルも最低温度に設定した。

伊豆中ばんばん食堂のまかない丼

昼食は、道の駅内にある伊豆中ばんばん食堂の「まかない丼」(1298円)。海を眺めながら新鮮な海鮮を味わった。

伊東マリンタウンのシーサイドスパ

昼食を済ませてから、シーサイドスパで温泉を堪能。伊東の海を一望できる露天風呂と大浴場で、源泉かけ流しの天然温泉を堪能した。

16:00 炎天下に2時間駐車したSAKURAの車内は!?

●サブバッテリーの電圧 →25.8V

炎天下の新型サクラ

温泉で火照った体に追い打ちをかける猛暑の中、駐車場に止めたSAKURAの車内へと逃げるように戻る。家庭用エアコンのおかげで、車内温度は22℃! 車内に入ると、アッという間に汗が引いた。こんな風に、旅先でもエアコンをかけた状態で快適に過ごせるのは、本当にありがたい!

快適な車内で過ごす筆者

この時点で、サブバッテリーの電圧はまだまだ余裕の25.8V。これだけ電気を使いまくってもビクともしない、“究極の生活電源システム”の実力を見せつけられた。

新型サクラのエアコン

ちなみに、今回テストしたSAKURAには、Wi-Fiスポットとして使える最新型のサイバーナビも装備されていた。おかげで、車内でスマホやタブレット、ノートPCをWi-Fi経由でインターネット接続でき、利便性は言うことなし。

ワークスペースとしての利用価値も高い新型サクラ

エアコンで快適な温度をキープしたダイネットスペースは、レジャーだけでなく、移動オフィスとしても活用できる。ゆとりある居住空間と究極の生活電源システムが、コロナ禍の快適なテレワークをサポート。ワークスペースとしての利用価値も非常に高い。

キャンプ場で調理家電をフル活用

17:30 キャンプ場「モビリティーパーク」に到着

●サブバッテリーの電圧 →25.4V

キャンプ場での新型サクラ

生活電源システムの検証のため、あえて外部ACコンセントは接続せず、キャンプで使用する電気はすべてサブバッテリーでまかなった

エアコン、冷蔵庫、インバーター、照明は変わらずつけたまま。車内温度が21℃まで下がって寒くなり過ぎたので、エアコンの設定温度を24℃まで上げた。

IH調理器一体型の炊飯器

夕食は、屋外でBBQ。
キャンピングカーの電気を駆使したお手軽キャンプということで、ご飯はIH調理器一体型の炊飯器で炊いた。定格消費電力800W(炊飯時)と、かなりの電気を必要とする調理家電だが、SAKURAのサブバッテリーはまったく音を上げる気配なし。

AM0:00 就寝

●サブバッテリーの電圧 →24.8V

車内のエアコン

車内のコンセントを使って、ノートPCやスマホを充電。エアコンは温度を25℃に設定し、冷蔵庫やインバーターもつけっぱなし。冷気が車内に循環するように、朝までサーキュレーター(定格消費電力42W)も併用した。

翌AM6:30 起床

●サブバッテリーの電圧 →24.4V

T-FAL電気ポット

家と同様に電化製品を使いまくる生活で、しかも夜間はソーラー充電が使用できない。さすがにサブバッテリーの電圧も低下してきたが、ここからが検証の本番!

モーニングコーヒー用に、定格消費電力1250WのT-FAL電気ポットを使って立て続けに3回お湯を沸かし、その後も朝食のカップラーメンのお湯を沸かすために電気ポットを使用。合計4回の電気ポット稼働という、通常のサブバッテリーシステムでは音を上げてしまうような過酷な使い方も、問題なくこなしてしまった。

AM10:00 キャンプ場をチェックアウト

●サブバッテリーの電圧 →23.7V

キャンプ場と新型サクラ

キャンプ場の出発と同時に、サブバッテリーの検証を終了。サブバッテリーの電圧は24Vを少し切った状態だが、天気の良い日中なら、クルマを止めた状態でもソーラーパネルが使った分の電気をどんどん充電してくれる。

今回の検証で、SAKURAの生活電源が「本当に使えるシステム」であることを確認できた。エアコン、冷蔵庫、インバーター、照明をつけたままの状態で、大消費電力の調理家電を何も考えずに使いまくる。そんな「節電とは無縁」の状況でこれだけ普通に使えるのは、キャンピングカーの常識から考えても驚異的。

SAKURAの生活電源システムがあれば、キャンピングカーの知識のない人が家と同様の生活をしても問題なく快適に過ごせる。多少でも節電を心がければ、さらに長時間安心して電気を使用できるだろう。

ポイント2:ビーカムが生み出すワンランク上の走り

伊豆スカイラインと新型サクラ

1泊2日の旅で、一般道、高速道、アップダウンの激しい峠道を約350kmドライブした。そこで感じたSAKURAの走りについて、率直な感想をお伝えする。

動力性能

走行中の新型サクラ

SAKURAのベース車両いすゞ・ビーカム2tトラックは、最高出力150馬力・最大トルク37.5kg-mの3.0Lディーゼルターボエンジンを搭載している。太いトルクとローギヤードなトランスミッションの組み合わせで、0-80km/hの常用域で動力性能に不満を感じることは皆無だ。信号待ちからのスタートも軽快で、高速道路の合流時の加速もスムーズ。急な上り坂でも登坂車線に入る必要はなく、アクセルを踏み込むだけでグイグイと登っていく。

カムロードやハイエースと比較してギヤ比・最終減速比が低いため、100km/hを超えるとエンジン音が大きくなり快適性はスポイルされる。ベース車のトラックはスピードを出すことが目的ではなく、0-80km/hの常用域で重量のある荷物を積んで軽快に走ることが求められるクルマ。高速道路では、80-90km/h程度の速度で太いトルクを活かしながらゆったりとドライブするのが心地いい。

スタビリティ

新型サクラのスタビリティ

堅牢なフレームを持つビーカム2.0tベースの恩恵で、走行安定性も良好だ。ボディの4隅でしっかりタイヤが踏ん張る感覚で、フラフラとした挙動もなく、トラックベースのキャブコンとしては非常に安定した走りを見せてくれた。

走行面の検証でもっとも驚かされたのが、アップダウンやタイトなコーナーが連続する峠道での走りだ。キャンプ場からの帰路、あえてキャブコンには難所と言える伊豆スカイライン~ターンパイク箱根を走行してみたが、まったく怖さを感じずスムーズに走れることに驚いた。

急なカーブではしっかり減速して走ることが大前提だが、過度なロールもなく比較的車体が安定しているので、不安を感じることなく連続するコーナーをスムーズにクリアできた。エンジンブレーキもよく利き、急な下り坂でも走りやすい。トラックベースのキャブコンとしては、十分な走行性能と言えるだろう。

不満を感じた点をあえて挙げると……

新型サクラの後方

今回のテストでもっとも不満を感じた点は、航続距離が短いこと。

新型SAKURA(4WD)の燃料タンク容量は、50L(2WD車は60L)。下道と高速道路を約350km走って燃費が7.4km/Lほどだったので、満タンから300km未満の走行で給油が必要になった。航続距離の短さは、旅のツールとして大きなデメリット。長距離ドライブの際、頻繁に給油をしなくてはならないのは手間だし、北海道のように広大でガソリンスタンド間の距離が離れている場所を旅する際にストレスを感じることもあるだろう。

ちなみに、同じ新型SAKURAでも、内装レイアウトの異なるリアエントランスモデルの4WD車にのみ150Lの燃料タンクがオプションで用意されている。航続距離を重視するユーザーは、そちらをチョイスするのがお勧めだ。

また、スムーサーEXは2~3速のシフトチェンジにクセがあり、違和感を覚える人もいるかもしれない。とはいえ、これは慣れの問題。太いトルクとローギヤードなトランスミッションで走り自体は非常に軽快なので、スムーサーEXの特性に慣れてしまえば快適にドライブできるはずだ。

生活電源(サブバッテリー)は驚くほどのポテンシャルを見せつけてくれたが、欲を言えばソーラーパネルの出力電圧や出力電流、サブバッテリーの残量、現在の使用電流などをディスプレー表示して、電気の“見える化”が可能になれば完璧! もっとも、「サブバッテリーの細かい数値を気にすることなく電気を使える」のがSAKURAのスゴさでもあるので、必要のない装備なのかもしれないが……。

新型SAKURA(サクラ)諸元

ベース車両
キャンピングカー専用シャシー いすゞ新型Be-cam
エンジン
クリーンディーゼル2.999L
寸法(mm)
全長5,230mm/全幅1,990mm/全高2,950mm
定員
乗車定員7名/就寝定員6名(2段ベッドモデルは7人)
価格
¥10,636,855(税別)~
WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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