今年で創業35年を迎えた、日本を代表するバンコンメーカーレクビィ。愛知県瀬戸市の本社、道の駅瀬戸しなのに隣接したサテライトギャラリーレクビィステーション、神奈川県のレクビィ オストの直営3拠点のほか、全国に販売店を持つ老舗ビルダーだ。
長年に渡り、機能性、実用性、使い勝手、デザイン性など、あらゆる側面からバンコンの可能性を追求してきた同社。今回は、独創的なレイアウトのバンコンを多数ラインナップするレクビィの“真摯なモノづくり”にスポットを当てる。
目次
ユーザーの使い勝手を考慮した独自の内装レイアウト
現在レクビィでは、ハイエンドからスタンダード、RBL(レクビィ・ブルー・ライン)と呼ばれるライト系まで、オリジナルのバンコン12モデルをラインナップしている。レクビィのバンコンは、一見してすぐレクビィのクルマとわかるような、オリジナリティあふれる内装レイアウトが特徴だ。
最大のポイントは、バンコンでありながら、キャブコンのように通路やトイレルームが確保されていること。空間の限られたバンコンの内装は、シート、ベッド、キッチン、収納など、様々な要素で「空間をギッチリと埋めていく作り方」が主流。しかし、レクビィのバンコンは、それらのレイアウトとは一線を画す。
フロントからリアまで歩いて移動できる通路が確保されていること。
リアエンドに個室のトイレルームが確保されていること。
バンコンでは贅沢にも感じられる、この独創的な設計思想の恩恵は大きい。「生活空間に動線が確保されている」「トイレがない場所でも車中泊できる」という2つのメリットは、実際に使ってみてこそありがたみを実感できる要素。ユーザー目線でキャンピングカーを作り続けてきたレクビィの“バンコン哲学”が、コンパクトな室内空間に集約されている。
快適性にこだわった簡単ベッドメイキング
レクビィのバンコンは、簡単な手順で展開できるベッドメイキングにもこだわっている。
室内空間がコンパクトなバンコンでは、シートとベッドを兼用にするのがスタンダード。この構造は空間効率に優れている半面、シートからベッド、ベッドからシートと、アレンジに手間がかかるのがデメリットだ。実際に使ってみるとわかるが、旅先でいちいちシートアレンジをするのは、結構なストレス。それを解消するため、レクビィではベッドメイキングをできるだけ簡単に行える構造を採用している。
具体的に挙げると、「カントリークラブ」「ファイブスター」には跳ね上げ式の縦型2段ベッド、「トップセイル」には引き出すだけで展開できるリアベッド、「プラスシリーズ」「ヴォーノ」には引くだけで展開できる横向きシートを装備。どれもベッドメイクの手間を最小限に抑えた、独自の設計がポイントだ。
簡単なベッドメイキングは、快適なクルマ旅をサポートする重要なファクター。“ユーザーファースト”の視点で開発されたシート&ベッド構造は、バンコンを知り尽くした老舗ビルダーだからこそ成せるワザと言えるだろう。
日本が世界に誇る一流素材でバンコンの可能性を提案
車内に使用されている素材にも、同社のこだわりが感じられる。
例えば、ハイエンドバンコン「シャングリラ」には、内装素材に国内最高峰のフルベジタブルタンニン革栃木レザーが使用されている。植物タンニンで時間をかけて鞣された栃木レザーは、使い込むごとに色合いや風合いが変わるエイジング(経年変化)が魅力の高級皮革。日本はもちろん世界でも評価が高く、財布や名刺入れなどの革小物に使用されることが多い国内最高峰のレザーだが、それをキャンピングカーの大きなソファに使用しているというから、何とも贅沢な話だ。
さらに、「シャングリラ」「カントリークラブ」のシンクにも注目だ。HPやカタログでは、「陶器製手洗い鉢」としか謳われていないが、実はこの鉢は、愛知県瀬戸市の陶芸家、波多野正典氏の作品。波多野氏は、陶芸展で数々の賞を獲得し、有名デパートで個展を開くほどの実力者で、その作品は、山に土を採りに行くところから完成まですべて1人で手掛けられている。金属製で事足りるはずのシンクに、あえて高価な伝統工芸品「瀬戸織部」を使用していることを、ご存知なかった方も多いのでは。
栃木レザーや瀬戸織部など、日本が世界に誇る一流の品をキャンピングカーの素材に取り入れる。それも、レクビィが考える「バンコンの可能性の提案」のひとつであり、同社のモノづくりに対する真摯な姿勢の表れでもある。
全車両の製造工程を記録・保管する「トレーサビリティ」
ほとんどの人は知らないと思うが、レクビィでは2009年からトレーサビリティ(生産履歴管理システム)を実行している。あまりなじみのない言葉だが、トレーサビリティとは、「商品の生産から加工・流通・販売などの過程を記録することで、さかのぼって履歴情報を確認できるようにすること」を意味する。
レクビィでは、製造したすべての車両の製作工程を撮影し、画像を車両ごとにフォルダ分けしてサーバーに保管している。製造過程を記録することで、作業の確実性を向上させると同時に、追加パーツの取り付けや修理などに必要な内部構造・配線の取り回しなどについて、販売店から問い合わせがあった際に、いつでも情報を提供できる体制を整えている。
車両の製作は、工場の各エリアで分担して行われるため、番号を振った袋に記録メディアを入れて車両にぶら下げておくことで、作業エリアが変わっても同じクルマの工程を順に記録できるようにしている。ユーザーの知らないところで行われているトレーサビリティも、レクビィのモノづくりに対する真摯な姿勢の象徴と言えるだろう。
エリア分けされた工場で熟練の職人が作業を行う
愛知県瀬戸市にあるレクビィの本社工場には、19名の製造スタッフが勤務している。工場内部は、縫製、木工、パーツの組み付け、断熱、配線など、作業ごとにエリア分けされ、熟練の専門スタッフが日々オリジナルキャンピングカーの製作を行っている。
レクビィのオリジナルキャンパーには様々なこだわりがあるが、中でも老舗ビルダーならではの豊富なノウハウが活かされているのが、断熱だ。「壁内の空気の流れを止める」ことで、車内の冷暖房効果をサポートするのが断熱の目的。天井・壁面・床面の内部に、異なる断熱材を多層化することで、最大限の断熱構造を形成している。使用する断熱材は、実際にテストを繰り返して効果の高いものを採用。一部車種には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のロケット技術をフィードバックした「ガイナ」塗装を併用するなど、表からは見えない部分にもクルマ旅の快適性をサポートするレクビィのこだわりが詰まっている。
バンコンの可能性を追求し続ける老舗ビルダー
今回の取材で印象的だったのが、インタビュー中にレクビィ増田浩一代表が語った「我々はバンコンの応援団なんです」という言葉。コンパクトな空間に通路やトイレルームを装備した独創的なレイアウト、簡単なベッドメイキング構造、日本が世界に誇る栃木レザーや瀬戸焼など素材に対するこだわり……。増田代表の言葉通り、レクビィのキャンピングカーには、バンコンの可能性が存分に詰め込まれている。
35年の歴史に裏打ちされた、老舗ビルダーレクビィのモノづくり。長年バンコンの使い勝手や快適性を追求してきた同社の進化は、これからも止まることはない。