ショー会場にずらりと展示されたキャンピングカー。実はその中に「(正確には)キャンピングカーではないキャンピングカー」があるのをご存知だろうか。 法的に「キャンピングカー」となるには、
- 乗車定員の1/3以上の就寝設備があること
- 給排水設備があること
- 調理設備があり、その場所の天井高が1600mm以上あること(つまり大人が立てるだけの天井高があること)
など詳細に条件が定められており、これら条件のことを「構造要件」という。 この構造要件を満たしていない車両は「法的には」キャンピングカーとはいわない。だが、そんな車両もキャンピングカー同様に販売されていて、しかも人気が高いのだ。 今回はそんな「車中泊車」に注目してみよう。
「キャンピングカー」と「車中泊車」
構造要件を満たすキャンピングカーの車検証には「用途車種=特種」「車体の形状=キャンピング車」という記載がなされ、俗に言う8ナンバー車両になる。
さてその8ナンバー車両。重量税が安いなどのメリットはあるが、当然、条件を満たすだけの設備も必要になる。ポップアップルーフなどボディを改造する必要があったり、設備が多い分コストもかかる。また、設備が多ければ、それだけ居住スペースを圧迫することにもなる。そこで「8ナンバーでなくてもいいから」、「設備を最小限に留めたコンパクトな車がいい」「車の中で快適に寝られればそれでいい」などの要望が出てくるようになった。
幸い日本では、食事や入浴といったインフラをキャンピングカーの外に求めることが簡単だ。全国各地に温泉はあるし、日帰り入浴施設も多い。コンビニのおかげで、夜中でも温かいご飯が食べられる。車にあれこれ生活設備は必要ないという人や、安全かつ快適に寝られればいいという人がいても不思議はない。「眠ることに特化したクルマ」=「車中泊車」は、こうしたいきさつから生まれたのだ。
「法的にはキャンピングカーではない」とはいえ、そうした車に寝泊まりしてはいけないわけではない。ましてそうした車が「違法」なわけでもない。
日本RV協会発表のキャンピングカー販売台数の資料によれば、車中泊車は直近4年間、右肩上がりに台数を伸ばしている。2017年の販売台数1,344台は前年比112.4%と順調だ。
こうした車中泊車はベースになった車両によって貨物車(4ナンバー)や乗用車(車のサイズや排気量によって、3ナンバーや5ナンバー)として登録される。対照表にある通り、ナンバー種別によって税金や自賠責保険の金額、車検の期間、高速料金などに違いもあるが、欲しい機能とかかるコストのバランスに納得がいけば、悪くない選択肢と言えるだろう。
8ナンバー | 3ナンバー | 5ナンバー | 1ナンバー | 4ナンバー | |
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自動車税 | 40,800円/年 | 51,000円/年 | 39,500円/年 | 16,000円/年 | 16,000円/年 |
自賠責 | 30,130円/2年 | 27,840円/2年 | 22,470円/年 | 24,040円/年 | 17,270円/年 |
重量税 | 37,800円/2年 | 32,800円/2年 | 32,800円/2年 | 16,400円/年 | 12,300円/年 |
車検間隔 | 2年毎 | 2年毎 | 2年毎(初年度は3年) | 毎年(初年度は2年) | 毎年(初年度は2年) |
高速道路料金 | 普通車 | 普通車 | 普通車 | 中型車 | 普通車 |
実は奥深い「寝るだけ」の世界
「寝られるだけでいいなら、普通のワンボックスカーでいいじゃないか」と思われるかもしれない。だが、実際の車中泊車には目に見えないところにまで、キャンピングカービルダーによる造り込みがなされている。そもそも「普段使いもしたい」「車内で快適に眠りたい」ために選ぶ車である。「室内で立って過ごす」とか「車内で本格的な料理ができる」などの機能をそぎ落として厳選した「眠り」にこそ、こだわって選びたいではないか。
では、「快適に眠る」環境とはどういうものか。詳細に考えてみよう。
ベッド
8ナンバーこそ取ってはいないが、ベッドはキャンピングカーの構造要件と同じ基準でつくられている。座った時に快適な、人体にフィットするフォルムのシートは、座面と背もたれが180度になるまで倒してみても、でこぼこである。その点車中泊車のベッドは文字通りのフラット。仮眠ではなく熟睡ができるベッドだ。
断熱性能
普通乗用車の車内の暑さ・寒さをご存知の方も多いだろう。キャンピングカーが真夏や真冬でも快適なのは、外見が乗用車そのものに見えても壁面に断熱材が仕込まれているからなのだ。普通車は走行中の暑さ・寒さのことしか考えていない。つまり、エンジンが作動している間のことしか想定していないので、冷暖房はエンジンがかかっていないと使えない。そして、エンジンを切った状態で長時間過ごすとも想定していないから、断熱材も最低限だ。しかし、車内で泊るとなればそれでは困る。そこで、車中泊車には断熱材が仕込まれているというわけだ。
電源システム
キャンピングカーはエンジンを切った状態でもFFヒーターや居室部の照明が使えるようになっている。外部から電源を取れるようになっているほか、エンジンに組み込まれているのとは別の『サブバッテリーシステム』が搭載されているからだ。そしてそのノウハウは、車中泊車にももちろん、生かされている。
「寝られればいい」。言うのは簡単だ。しかし改めて「快適な眠りには何が必要か」。そんな視点でぜひ、車中泊車を選んでみよう。断熱材はどこまで入っている?FFヒーターは?ベッドの広さは?マットレスの硬さは?…目的を明確に絞り込んだ分、コストもサイズも抑えられるのが車中泊車の魅力。唯一のこだわりを大切に、ベストな一台を探してみよう。