輸入キャンピングカー(アメリカ車)

キャンピングカー紹介
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キャンピングカーをイメージした時に、最初に浮かぶ国はアメリカなのではないだろうか。ハリウッド映画にも度々登場するのを見ることもあるだろう。それも、カーチェイスシーンでの壊され役から、ストーリーの要となるバイプレイヤーまでこなしている。それだけ、アメリカの生活に溶け込んでいるともいえるだろう。2017年のキャンピングカー(トレーラーを含む)出荷台数はなんと50万4599台。これは日本の年間出荷台数の約100倍にもなる。
日本で見ると、アメリカ製キャンピングカーはやはり大きい。道路事情など、様々な理由から厳しい状況にあるのが現実だが、根強いファンが多いのを見てもわかるとおり、本場ならではの魅力にもあふれている。
そこで今回は、近年、販売台数が復活しつつあるアメリカ製キャンピングカーについて考えてみよう。

長い歴史をもつアメリカのキャンピングカー

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ヨーロッパ同様、アメリカのキャンピングカーも1920年代後半から30年代前半にその歴史は始まっている。銀色に輝くボディで有名なAirstream社は、アメリカでは数少ない当時から残るビルダーだ。
そもそも、ヨーロッパに比べればアメリカ自体、国の歴史は浅い。移民国家で人種も多彩。大地は広大で、東西南北で気候風土も文化風習もまったく違う。そんな状況を背景に誕生・発展してきたアメリカ製キャンピングカーは、考え方も装備も、使われ方も、ヨーロッパとは大きく異なる。
ヨーロッパは小さな国の集合体だ。ちょっと走れば隣国である。都市と都市の距離も比較的近い。一方、アメリカはただただ、広大な国土である。内陸には砂漠もある。山岳地帯も険しい。古くは駅馬車、やがては大陸横断のヒストリカルロードが敷かれ、大陸横断列車や長距離バスが発達した。人々は西へ東へ、長距離を旅して歩く。特に顕著なのは、シニア層のカップルだろう。子供たちも独立し、仕事からもリタイアしたシニア夫婦は、家を売り払って快適なキャンピングカーを買い、全米各地の子供たちや家族親戚の家を訪ね歩く、という人が珍しくない。大陸が広いせいか「ロードムービー」好きな人も多いが、リタイア後のセカンドライフに、広い大地をあちこち旅してまわりたいという人は多いようだ。

ダイナミックでおおらかな大陸気質

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そんな背景からか、長距離を旅することもあって、アメリカ製キャンピングカーはとにかく大きくて内部も豪華だ。もちろん生活面でも快適そのものなので、日本にもファンは多い。ただ、2000年ごろを境に、国内での取扱台数は減っている。というのも、その頃から本国では快適さや広さを求めてどんどん大型化が進み、車幅2.5m超のモデルが主流になってしまったのだ。日本の道交法では車幅2.5mまでしか登録できないため、せっかく新型モデルが出ても日本には輸入できない。そのため、年々数が少なくなってしまったというわけだ。
そんな中、日本の市場ではアメリカ製が減少。国産車はバリエーションを増やし、ヨーロッパ車も活況を呈してきた。が、ここ最近になってアメリカ勢の巻き返しがはじまっているのだ。
その主な要因としては

  • 大型化が進み過ぎて、アメリカ国内でも小型サイズを求める顧客が増えてきたこと(それでも日本では充分大きい)
  • アメリカでもフォード・トランジットやダッジ・プロマスターなど、新世代のダウンサイジングしたベース車が登場したこと。
  • 顧客の若返りを狙って、リーズナブルなモデルをビルダーが開発してきたことなどがあげられる。

これらの要因を背景に、少しずつではあるが日本で販売されるアメリカ車も増えつつあるのが現状だ。

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もう一つ、ここ数年の大きな変化としては、アメリカでのキャンピングカービルダーの業界再編があげられる。特に2000年以降、その動きが顕著なのだ。
大型化・豪華化が進む一方で、2008年のリーマンショックを受けて、老舗でも倒産した企業も出てきた。日本の自動車メーカー同様、合併したり傘下に入ったりといった変化が続いた結果、現在は大きくわけて2つのグループが大手といえる状況だ。

  • ウィネベーゴ
  • ソアーグループ(エアストリーム、ジェイコなど)

さらに日本でのアメリカ製キャンピングカーを語る上で忘れてならないのは、「アメリカに特注した日本仕様車」の存在だ。
これは、日本のキャンピングカーディーラーが、日本の風土気候や交通事情、生活事情に合わせてアメリカのビルダーに特注して作らせているもの。
例えば、居室部分のエントランスドアを左側に取り付けたり(アメリカ製のままだと右側)、靴を脱ぐ日本人のためにゲタ箱を取り付ける、断熱などを日本の気候風土に合わせるといった工夫だ。一時期より数は少なくなったが、こうしたモデルもまだ作られている。

アメリカ製キャンピングカーの魅力

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たっぷりしたスペース

ダウンサイジングしたとはいっても、それは本国での基準に照らしての話。アメリカでは「コンパクト」と呼ばれるサイズでも、日本へ持ってくれば十分「大型」だ。その分、室内空間にはたっぷりとしたスペースが。特にスライドアウト車(壁の一部が外にせり出して、居室が広くなる機構)ともなれば、とても車とは思えない、輸入住宅のような広さになる。

とにかく頑丈でシンプルな機能

搭載されている機器類は無骨だが頑丈にできており、基本的に90年代からほとんど変わっていない。よく言えば枯れており、悪くいえば進歩がないともいえる。ただこれにも理由があって、国土の広いアメリカでは「どこでも簡単に直せる」ことは重要なポイント。最先端すぎる装備では、旅先の田舎町でお手上げになる可能性だってあるということだ。そのため、住居部分の装備(冷蔵庫やキッチンまわり、照明、冷暖房など)も車両部分も、とにかく頑丈でシンプルな機能に徹している。

デザインは…アメリカン!

これは好みがわかれるところ。最新型の商品を見ても、やはりアメリカのインテリアだなと思わせる、大味なデザインが多い。レトロなアメリカンテイストの好きな人の中には、アメリカ車の醸し出す独特の雰囲気がたまらなく好きだという人も少なくない。

日常生活をそのまんま、持ち出す

ヨーロッパのように「旅先なんだから多少不便でもしょうがない」とは考えないのがアメリカ人。大型冷蔵庫も3つ口コンロも、とにかく自宅と変わらぬ便利な暮らしをあきらめたくない!とばかりに豪華な設備を一通り備えている。本国のオプションリストには液晶ディスプレイを利用した“フェイク暖炉”まである。

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アメリカ製キャンピングカーの弱点

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とにかく大柄なサイズ

「アメリカの基準で」コンパクトと分類されるモデルでも、全長は7m超。大型モデルともなれば10mを超えるサイズもザラだ。「奥様でも運転楽々」というキャッチコピーで売っている車が全長11mあるという国である。もちろん回転半径も大きくなるし、日本の道路事情では、入って行けない場所があることも。

繊細さに欠けるモノづくり

左右一対のはずのものが非対称だったり、化粧カバーを開けると、木材のカットがいい加減だったり。「見えない部分にまで気配りの行き届いた」日本製品を基準に考えると、お世辞にも「繊細」とは言い難いのがアメリカ製だ。彼らに繊細さを求めてはいけない。ある程度の割り切りは必要だ。そのおおざっぱさが許せる人か、許せない人かで、好みや評価は分かれるところだろう。

まとめ

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乗用車ですら、アメリカ車は大きいと敬遠されがちだ。さらに大型なキャンピングカーともなれば、ハッキリ言って「万人向き」とはいいがたい。ただ、なにしろ年間50万台超が売れる巨大マーケットである。子どもから大人まで、様々な人が使うことを考えて作られているので、とにかく頑丈でシンプル。そして使いやすくできている。各所のメカニズムについても、先に書いたように、いたずらに最新のシステムを追いかけることはせず、扱いやすく直しやすい事を優先しているように見える。それを、古臭く繊細さに欠けると捉えるか、少々ラフに扱っても壊れないタフな造りと捉えるかで、感じ方が全く違ってくるだろう。車両に関しても、それは同じだ。水もガソリンもない大陸のど真ん中で、もし車が止まってしまったら? それは死の可能性にも直結するシビアな問題だ。そのため、アメリカ製の車はよほどのことがないかぎり、路上で止まってしまうようなことはない。無骨だがタフで便利。そんなテイストが好きな人にはピッタリなのが、アメリカ製キャンピングカーなのだ。

WRITER PROFILE
渡部竜生
渡部竜生(わたなべ・たつお)

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり

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