小さな高級キャブコンVANTECH「シーダ(Cyda)」のまぶしい輝き

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バンテックの新車「シーダ」

シーダが他のボンゴキャンパーより高い理由は何か?

マツダのボンゴトラックが昨年マイナーチェンジを受け、これまでボンゴシャシーに架装されていた各ビルダーのキャブコンがニューバージョンに入れ替わり、それに加えて、さらなる新型車も誕生した。その新型車で、いま話題の焦点となっているのは「VANTECH株式会社(バンテック)」のシーダである。

理由は、他のボンゴ系競合車と比較して、車両価格が目立って高いことが挙げられる。他社がリリースしているものは税抜きで420~450万円台。それに比べシーダは490~520万円台となり、70万円ほど高価となる。しかし、その価格差には、単純に金額的なものに換算できないバリューがあるとバンテックの開発陣は語る。

そこには、現在同社が展開しつつあるキャンピングカーの新しい「価値創造」の秘密が隠されていた。シーダの設計を務めた開発担当者の木嶋伸介氏に、同車に織り込まれた“バンテック思想”を尋ねてみた。

「ジル」のダウンサイジング版

「ジルのダウンサイジング版」と木嶋氏は「シーダ」を一言で説明した。

木嶋氏
木嶋氏

ジルといえば、バンテックを代表する高級キャブコン。その仕上がりも装備面での充実ぶりも、もちろんデザイン造形においても国産キャブコンのトップクラスだと認知されたクルマだ。

高級感あふれる室内
高級感あふれる室内

木嶋氏にいわせると、「シーダは、パーツ類などもジルと同じものを使い、品質感においてもジルと比べて遜色のない仕上げになっている」という。具体的には、ジルレベルのハイグレードなヨーロッパ製エントランスドアが採用され、窓はアクリル2重窓。断熱材の素材や封入の仕方も、まさにジルそのもの。
そういった意味で、シーダはサイズ的にはライトキャブコンの部類に入りながらも、グレード的には高級キャブコンなのだ。

シーダ

広さを感じさせるための数々のアイデア

「だから空間デザインも、ジルやコルドと同じぐらいの“広さ”が感じられる室内設計を心掛けました」と木嶋氏。
確かに、このクルマには、空間を視覚的に広く見せるためのデザイン的工夫が随所に試みられている。

たとえば、ダイネットのテーブル高。エントランスから入ってきたときの開放感を確保するために、通常のテーブル位置より若干低めに設定されている。

やや低めに設置されたテーブル
やや低めに設置されたテーブル

さらに、サードシートのひじ掛け。
座っているときに、この位置にひじ掛けがあることはすごく楽なことではあるが、それがあると入り口のステップに立ったときに視覚的な圧迫感が生まれる。そのため、ひじ掛けも埋め込み式になっている。

埋め込み式のひじ掛け
埋め込み式のひじ掛け

小型キャブコンには珍しい、充実したマルチルーム

このような細かい工夫が積み重ねられているため、シーダではダイネットの後ろに壁によって仕切られたマルチルームが設定されても、室内空間が圧迫されていない。
このマルチルームがあることによって、シーダは使い勝手の幅をそうとう広げることになった。たとえば、ここにポータブルトイレを置けば緊急用のトイレ室として使うこともできるし、オプションのヒーターを装着すると、そのダクトを回してあるので、乾燥室としても使える。

プライバシーを確保できるマルチルーム
プライバシーを確保できるマルチルーム

いずれにせよ、扉付きの個室というのは、女性のプライバシーを確保するためには絶対必要なもの。いくら家族同士で使うといっても、着替えなどをするときには扉があった方が良いことはいうまでもない。

子供含めて6名が寝られるベッド数

就寝機能も充実した。
ベッド展開できる場所は全部で3個所。バンクベッドは縦横1,860mm取れているので、どちらの方向に寝ても大人2人が寝るには十分。子供なら3人寝ることができる。

バンクベッド
縦横1,860mmのバンクベッド

リヤベッドも計算され尽くした広さを誇っている。頭の部分がゆったりしていて、足先が狭くなっているという変形ベッドだが、大人2人が楽に寝られる広さが確保されている。
ダイネットもベッドメイクすれば、子供1人が寝るには十分な広さがある。従って、子供が小さい場合は家族6人の就寝スペースを実現しているクルマなのだが、構造要件上の「就寝定員」は大人4名となる。

計算しつくされたベッドスペース
計算しつくされたベッドスペース

洗練されたエアコンシステム

エアコンを含めた電装機器も洗練されている。日本の夏は年々高温多湿化傾向を強めており、エアコンは必需品になりつつある。
シーダにおいても、エアコン(オプション)を装着した場合を想定したさまざまな工夫が随所に凝らされている。

まず、AC電源の供給がない環境でも安心してエアコンが駆動できるようにと、トリプルバッテリーを装着するスペースが確保されている。また、バッテリーが供給できる電気がどのくらい残っているのかを正確に時間表示できる、新型のバッテリー残量計もオプションで用意されている。

そもそも、採用されているエアコンもインバータータイプなので、消費電力はそれほどが多くない。寝るときに26℃か27℃ぐらいの温度設定にしておけば、外気温と室内温が同じぐらい温度になったときに自動的に停止するので、バッテリー残量にそれほど神経質にならずとも、安眠できるようになっている。

ローテブルにあるUSBコンセント
ローテーブルにあるUSBコンセント

間接照明による“空間マジック”

シーダが“高級キャブコン”のゾーンで勝負できる理由は、確かに装備品のグレードの高さによるものもあるが、もう一つ見逃せないのは、“雰囲気”である。
高級なキャンピングカーというのは、おのずとそれにふさわしい雰囲気を持っている。具体的な言葉では言い表せなくとも、そこはかとない格調の高さがにじみ出ていれば、ユーザーはそこに「高級」なものを感じる。

シーダの場合、その高級感をかもし出す秘密の一つに、間接照明による空間演出が挙げられる。たとえば、キッチンカウンターの角に取り付けられている縦型LED照明。実用性を考えると、ここは明るくしたいところだが、光が強すぎると、ユーザーにはまぶしく感じられて雰囲気の良さは半減する。そこで、管の中にわざと抵抗を入れて、照明の色を落としている。

間接照明により高級感を演出
間接照明により高級感を演出

また、テーブルの上にあるダウンライトもタッチセンサー式になっていて、指先一つで3段階の調光を選択できるようになっており、微妙な光の演出が簡単な操作で手に入れられるようになっている。

このように、シーダの高級感というのは、非常に繊細な工夫の積み重ねによって成り立っている。もちろん、それは先行するジルなどの高級車が切り開いてきた道ではあるが、こういう緻密な演出というのは、長らく国産キャンピングカーでは追求しきれなかった部分だった。

しかし、いま日本のキャンピングカーは、ものすごい勢いでそういうセンシティブな領域にも説得力を持たせる技術を身に付け始めている。
バンテックは、間違いなくその最先端を走り切っているビルダーの一つだ。

シーダ 諸元

ベース車 マツダ ボンゴトラックGL(2WD・4WD)
エンジン型式 直4 DOHC 16バルブ
最高出力 75kW(102ps)/5,300rpm
最大トルク 147N・m(15.0kgf-m)/4,000rpm
ミッション 5速AT
乗車定員:7名 就寝定員:4名
全長 4,860mm/全幅 1,950mm/全高 2,820mm
車両本体価格 5,378,400円~(税抜き)

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