
世界的ショックアブソーバーメーカーのカヤバが、今年1月に開催された「東京オートサロン2025」で、フィアットデュカトベースのオリジナルキャンピングカー「VILLATOR」を発表した。
カヤバは2022年からキャンピングカープロジェクトをスタートし、2023年1月には油圧式のシェル拡張機構を採用した、キャブコンのコンセプトモデルを発表している。同車両は販売目的ではなく“カヤバグループの技術力を活かしたチャレンジ”という位置づけだったが、今回デビューしたVILLATORは、RVランドの製作協力を得て、市販化を前提に開発したモデル。すでに1月からRVランドで受注が開始され、多くのキャンピングカーファンから注目を集めている。
VILLATORは、1月31日~2月3日に幕張メッセで開催される「ジャパンキャンピングカーショー2025」にて展示されるが、キャンピングカースタイルではショー直前にカヤバ熊谷工場で独占取材を敢行! 話題のニューモデル「VILLATOR」の全貌をお届けする。

カヤバ キャンピングカープロジェクトのメンバー。写真に写っているメンバーのほかにも、多数のスタッフがVILLATORの設計・製造に携わっている。
カヤバ製キャンピングカーとしてのアイデンティティ

VILLATORのベース車両はフィアットデュカトL3H2で、ボディサイズは全長5995mm×全幅2050mm×全高2720mm。ビッグボディがもたらす広大な室内空間と、デュカトベースならではのスタイリッシュなエクステリアデザインが特徴だ。


ボディ下部はマットブラックでペイントされ、ボンネットからサイドにかけてアースカラーの幾何学的なグラフィック(ラッピング)が施されている。これらの外装カスタムが標準装備となっているのも、カヤバ製キャンピングカーらしいこだわりのひとつだ。

専用開発のショックアブソーバーは、さまざまなカテゴリーの自動車レースで製品供給や技術サポートを行う、世界的ショックアブソーバーメーカー・カヤバならではの装備と言える。
「足回りの開発前にデュカトベースのキャンピングカーを試乗しましたが、純正でも走りのレベルはかなり高いと感じました。これをさらに良くしていけば、もっと楽しいキャンピングカーになる。走行テストとセッティング変更を何度も繰り返し、ワインディング走行も楽しめる『滑らかで自然なコーナリング性能』と、『突き上げ感のないフラットな乗り心地』を追求したのが、VILLATOR専用スペシャルショックアブソーバーです。快適な乗り心地はもちろんですが、操縦安定性やコーナリング性能、キャンピングカーの大敵である横風の耐性も強化。目指したのは、『自宅から目的地まで楽しく安全に移動できるキャンピングカー』です」(カヤバ キャンピングカープロジェクト事業化推進チーム リーダー 林 太郎さん)

フロントショックアブソーバーは減衰力固定式で、リアショックアブソーバーは減衰力14段調整式。乗り心地と操縦安定性を両立するハーモフレック機構を採用し、「走り出して5mでわかる」ほど圧倒的な走行フィーリングの向上を実現した。専用開発のスペシャルショックアブソーバーで、「商用車」のデュカトが「乗用車」に生まれ変わる!

運転席と助手席には、ブリッドとカヤバが共同開発した専用バケットシートを装備している。ホールド性の高いシート形状が長距離運転の疲労感を軽減し、Sライン形状のバックレストが腰痛予防に貢献。ブラック基調にレッドのステッチとカヤバのロゴをあしらった、スポーティなデザインもポイントだ。
ワンランク上の上質なインテリア

VILLATORのコンセプトは、「別荘を、持ち運ぶ」。スポーティな見た目や快適な走りに加え、ワンランク上のクルマ旅を演出する居住空間の“質感”にも徹底してこだわった。レイアウトは、フロントに対面ダイネット、センター左手にキッチン、フロントダイネット後方にマルチルーム、リアに対面ダイネット兼ベッドスペースを装備した“2ダイネットスタイル”。ガイナ塗装+断熱材の施工など見えない部分にもこだわりを凝縮し、優雅にクルマ旅を楽しめる上質かつ快適なインテリア空間に仕上げた。

ダイネットは、回転させたフロントシートとセカンドシートでテーブルを囲む対面式。食事や休憩、デスクワークなど多目的に利用できるスペースだ。


必要十分なサイズと高い機能性を両立したキッチン。カウンターには角型シンク、キャビネットには引き出し収納と電子レンジ、85ℓ冷蔵庫をスマートにビルトイン。

フロントダイネットの後方には、十分な広さのマルチルームを完備。トイレルームとして使用できるほか、収納庫やクローゼットなどのフリースペースとしても便利に使える。

リアダイネットは、左右のベンチソファで2つのテーブルをゆったり囲める対面式。ソファの座面下は、収納スペースになっている。

リア左右に配したベンチソファの背もたれを中央部分に設置すれば、大人3名が余裕をもって就寝できる長さ1800mm×幅1800mmのベッドスペースになる。

リアダイネットの上部には、ドメティック製ルーフエアコンをセット。FFヒーターも標準装備されており、1年を通して快適なクルマ旅を実現できる。

サブバッテリーは、大消費電力の家電も安心して使える5kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーシステムを搭載。走行充電&外部充電システムも装備され、オプションでバッテリーの増設も可能となっている。
素材とデザインにこだわり独自性を追求


天井には、ケヤキの天然木を使用。木目に連続性をもたせることで、1枚板のような見た目に仕上げている。壁は、漆喰風の落ち着きあるフィニッシュ。随所に和のテイストを取り入れて、欧州製キャンピングカーとはひと味違う個性を演出したのがポイントだ。


天井と同様に、上部収納(吊り戸棚)にも天然木のケヤキを使用している。傾斜を持たせた形状で圧迫感を軽減し、飛行機の手荷物ロッカーや自動車のグローブボックスのような上下開閉構造で、使い勝手を向上。スライドドア上部に左右開閉式の上部収納を装備するなど、さりげない工夫で独自性を演出した。


リアエンドには、折りたたみ式の大型オープンデッキを装備。リアゲートを開けてデッキを展開すれば、リアダイネットとひと続きの開放的なスペースになる。上部には、ロール式のシェードも完備。景色の良いフィールドでデッキにチェアやテーブルを置けば、自分だけの贅沢な空間で食事やコーヒータイムを楽しめる。

快適な走りと上質な居住空間を両立したカヤバ製キャンピングカーVILLATORは、ワンランク上のクルマ旅を実現してくれる注目のニューモデル。1月31日~2月3日に開催される「ジャパンキャンピングカーショー2025」のRVランドブースに展示されるので、イベント会場で“世界のカヤバ”が開発したキャンピングカーの魅力を体験してみよう。
VILLATOR諸元
- ベース車両
- フィアットデュカトL3H2
- エンジン
- 2.2Lディーゼル
- ミッション
- 9AT
- 駆動方式
- FF2WD
- 車体サイズ
- 全長5,995mm/全幅2,050mm/全高2,720mm
- 定員
- 乗車定員4人/就寝定員3人
- 価格
- 1,950万円~