
2025年の東京モビリティショーでKiaのEVラインアップが発表されたとき、多くの来場者が思い描いたのは、「そのEVプラットフォームでどのようなキャンピングカーが生まれるか」でした。スムーズでパワフルな機動力と大容量バッテリーの可能性。キャンピングカーとの親和性が高く、その期待は大きかったのではないでしょうか。
そして、満を持して2026年のジャパンキャンピングカーショーでLACグループがKiaのPV5をベースにしたキャンピングカーを発表しました。ワゴンとバンという2つのボディをベースにしたEVキャンピングカー2種。まだプロトタイプということでしたが、すぐに量産モデルともなりえる現実的な架装と使い勝手を備えた高い完成度でした。
日常使いしやすいPV5ワゴンベースのキャンピングカー
トップ画像のクルマがPV5のワゴンモデルです。そのワゴンボディをベースにした室内は、シンプルな構成でありながら、リアに広がるリビング空間が印象的でした。コの字型に配置されたシートが室内にゆとりを生み、コンパクトなボディサイズからは想像できない開放感を感じさせます。
足元に深さを持たせた設計により、腰掛けたときの姿勢はより自然で安定感があります。長時間座っていても疲れにくく、食事や会話、読書など、旅先で過ごす時間をゆったりとサポートしてくれます。この環境が、日常使いできるクルマの延長線上にあるというのが、この空間の大きな魅力です。
ベッド展開は非常にシンプルで、セカンドシートを倒してマットを広げるだけ。リアのコの字レイアウトの間にマットを敷いて完全なフルフラット就寝スペースが完成します。複雑な手順や力を必要とせず、誰でも短時間でレイアウトを切り替えられる点は、日常使いと旅を両立する上で大きな利点といえるでしょう。
写真のように片側のシートを立ち上げた状態にすれば、3名乗車にも対応できます。乗車人数と居住空間のバランスを用途に応じて調整できる柔軟性は、毎日の家族の移動や週末のレジャーなど、さまざまなシーンで活躍してくれます。
PV5のワゴンモデルはセカンドシートに広い足元空間が確保されていて、乗員がゆったりと足を伸ばして座ることができます。シートを倒した状態でもこのスペースは維持されるため、大型の荷物やアウトドア用品を収納する場所としても有効に活用できます。
さらにセカンドシート専用のエアコン吹き出し口が備えられていることで、後席でも快適な空調環境が保たれます。車中泊時や長時間の移動でも室内温度を均一に保てるため、季節を問わず安心して過ごせる車内環境が整えられることになります。
バンの実力を発揮したPV5バンベースのキャンピングカー
バンボディをベースにしたモデルは、スクエアな荷室形状をそのまま空間として活かせる点が大きな特徴です。無駄のない空間構成により家具レイアウトの自由度が高く、キャンピングカーのベース車両として理想的なパッケージングといえます。
ワゴンとの違いは、サイドウインドウがなく、リアが観音トビラになっていること。サイドドアにウインドウを設けない仕様はシンプルで、アクリル窓なども取り付けやすく、キャンピングカーベースとしては機能的といえます。観音開き式のリアゲートは、後方のスペースが少なくても、簡単に荷物の積み下ろしができるので、アウトドアシーンなどでの使い勝手を高める実用的な構造となっています。
リアスペースにはベンチシートとキャビネットを組み合わせたレイアウトを採用。空間を効率よく活用して広さを感じる作りです。天井も高く、家具配置はシンプルながら機能性をしっかり備えていて、停車時の居住性に配慮した設計です。
ソファは展開することでベッドスペースとして利用でき、旅先での休息や仮眠にも十分対応します。余裕のある空間設計により圧迫感が少なく、車内で長時間滞在しても快適に過ごせる室内環境が確保されています。
テーブルはキャビネット部に収納されていて、必要なときに簡単にセットできるようになっています。食事やコーヒータイム、ちょっとした書き物など、車内での滞在時間を快適にするための実用的な装備として活躍します。
ソファに腰掛けてのデスクワークにも適していて、移動先でのワークスペースとして活用できる点も使いやすいのではないでしょうか。広々としたカウンタートップの作業スペースもあるので、調理や機材の設置など多用途に対応できる十分な広さが確保されています。
EVキャンピングカーの可能性を感じるPV5
PV5は電気で走る完全なEV車両で、自宅で充電して日常的に使える利便性を備えています。夜間にコンセントへ接続しておけば、翌朝には充電された状態で走り出せるというライフスタイルは、これまでのガソリンスタンドへ行く、という燃料補給とは異なる新しい快適さをもたらしてくれます。
搭載されるバッテリー容量は71.2kWと大容量で、国産EVではトヨタbZ4Xと同じぐらいです。これだけの容量があれば航続距離も安心できるのではないでしょうか。
さらに、電源として考えると、余裕ある電気容量を確保しているともいえます。ポータブルバッテリーで70kWを確保すると考えた時、2000Whクラスのポータブルバッテリーが30個以上も必要になることを考えると、その容量の大きさがよく分かります。
両モデルには標準でAC100Vの出力コンセントが備えられていて、車両の電力をそのまま家電製品の使用に利用できます。キャンピングカー架装時に追加の電源工事を必要としない点は、EVベースならではの大きなメリットといえるでしょう。
さらに車両本体の電動コンプレッサー式エアコンを利用できるため、エンジンをかけずにエアコンを利用することが可能です。コンプレッサーの作動音だけの静かな環境を保ちながら、快適な室温を維持できることは、車中泊の快適性を大きく向上させてくれます。
EVプラットフォームは床下にバッテリーを配置する構造のため、自然と低重心設計が実現されています。この構造により走行安定性が高まり、キャンピング架装による重心ポイントが高くなる影響を受けにくい点は大きなメリットです。大きなボディであっても重心が下部にあるため、ふらつきが少なく、長距離移動でも安心感のあるドライブフィールを維持してくれます。
重心の低さはカーブや高速走行時の安定性にも影響し、ドライバーの疲労軽減にもつながります。車体の揺れを抑えた滑らかな走行感覚は、乗員全員の快適性を高める重要な要素です。キャンピングカーとしての居住性だけでなく、移動そのものの質を高めてくれるのがEVキャンピングカーなのです。
PV5は最大出力120kW、最大トルク250N・mという数値が示すとおり、想像以上に力強い走りをもたらしてくれます。EVは最大トルクまでのレスポンスもよく、トルクバンドが広いために、全域でスムーズにパワーを引き出すことができます。重量のあるキャンピングカーであっても加速は滑らかで余裕があり、ストレスのない走行性能を実感できると考えられます。
EVというと環境性能が注目されがちですが、本質的な魅力はそれだけではありません。自宅でエネルギーを補給できる安心感、インフラに依存しない新しい移動のあり方、そして力強く静かな走りがもたらすこれまでにないドライブ体験。こうした要素が重なり合うことで、EVは旅のスタイルそのものを変えていきます。EVが広げる可能性は、キャンピングカーの楽しみ方をさらに自由で豊かなものにしてくれるのではないでしょうか。



