フィアットデュカトが国内マーケットでの正規販売開始を行ったのは2022年のことでした。それまでにも、海外キャンピングカーブランドモデルのベース車両として、広く認知されていましたが、ベース車両として正規に輸入されるのは初めての事だったのです。
その後、国内各社から、さまざまなモデルが登場して、フィアットデュカトベースのキャンピングカーを見かけることも多くなりました。
フィアットデュカトといえば、室内空間の広さが魅力。高い天井に加え、垂直に立ち上がった壁が、室内のスペースを効率よく確保してくれます。この広大なスペースをどのように活用するか、各社の腕の見せ所です。
そして、そのスペースを最大限に活かして、オーナーのアレンジがしやすいモデルが登場しました。それが、上写真のデュカトBASE VAN(ベースバン)になります。
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フィアットデュカトのニューモデル「シリーズ9」を投入
デュカトベースバンはフィアット正規輸入代理店のRVランドが作ったモデルです。今回のモデルを作るに当たって、最大の特徴となるのが、フィアットデュカトの新型がベース車両として使われたことです。
デュカトシリーズ9と呼ばれるモデルで、国内販売は2024年8月21日からスタートしました。ボディサイズはこれまでのシリーズと変わりありませんが、デザインと機能性がバージョンアップしています。
まずはエクステリアデザインをチェックしてみると、ヘッドライト回りのカラーが変更されているようです。これまで、ヘッドライトレンズの周囲がシルバーでしたが、ブラックカラーに変更されていました。ちょっとした違いですが、印象が変わっています。
そして、バンパー部分のデザインが少しだけ変更されているのが分かります。ナンバープレートの上に黒いパーツが取り付けられているのです。これは、センサーでシリーズ9の機能性をアップさせるパーツです。
フィアットのロゴが取り付けられたグリル部分は、RVランドがブラックアウトの塗装を施していて、RVランドによるカスタマイズでした。
シリーズ9へ新たに搭載された機能性が、先進運転システムです。ステアリング部分のボタンが増えているので、既存モデルとの違いがすぐ分かります。
追加された機能は「インテリジェントアダプティブクルーズコントロール」、「レーンセンタリング」、「トラフィックジャムアシスト」です。
インテリジェントアダプティブクルーズコントロールはオートクルーズの進化版で、前を走るクルマとの車間をキープしながら、速度を調整する機能です。前のクルマが停まれば、自動的に減速、そして、ストップまでを自動的にコントロールしてくれます。2秒以内であれば、前のクルマが再スタートした時、再び走り出す機能も搭載しています。
レーンセンタリングは、周辺の状況をセンサーでチェックしながら、道路の中央部分にクルマをキープしてくれるものです。そして、以上の2つの機能を使って、ドライバーをサポートするのがトラフィックジャムアシストになります。
トラフィックジャムアシストは、渋滞時の支援システムで、高速道路での渋滞時など、周辺のクルマのスピードに合わせて、道路の中央にクルマをキープし、ドライバーの疲労感を大幅に軽減してくれます。
実際にドライブしてみると、スムーズにスピードや車体をコントロールしてくれて、横入りなどで車間が変化しても、ゆっくりとその場の状況に合わせてくれるのがポイント。国内一般乗用車の先進運転システムでも難しい状況を難なくクリアしています。
ユーザーの求める形を表現した新しいキャンピングカーのスタイル
デュカトBASE VAN(ベースバン)の車内は家具もなく、すっきりとした状態です。観音開きのリアゲートを開けると、広々とした空間が広がっています。
以前からフィアットデュカトを販売しているRVランド。上の写真のようなキャンピングカー架装をしていない状態のクルマもたくさん販売してきました。そんな時、オーナーからの要望で多かったのが、室内照明、壁、断熱だけを施工してほしい、という声でした。
そこで、多くの要望を形にしたのが、今回発売開始したBASE VAN(ベースバン)。シンプルな最小限の家具で、最終的にクルマを育てて行くのは、オーナーの手に委ねられていますが、ベース車両の状態と比べると、その差は歴然です。
シンプルなレイアウトではありますが、フィアットデュカトのポテンシャルの高さを感じることができるでしょう。クルマとしての性能でもある先進運転支援システムに加えて、デュカト本来の使いやすさも十分に味わうことができます。
その1つがフロントシートのアレンジです。マットが厚く、座り心地の良いシートは回転させることができて、リビングソファのような使い方ができます。横幅のスペースにも余裕があり、ゆったりとリラックスした時間を過ごせるのではないでしょうか。
壁全体にはしっかりと断熱処理が施されていて、その内側をシナベニヤで覆っています。プロフェッショナルによる断熱処理は、これからバンをカスタムする人にとっては心強いものです。
フィアットデュカトは車体鋼板がそのまま室内に出ているので、外気温をダイレクトに室内へ伝えてしまいます。なので、断熱処理は必須でしたが、断熱加工の仕方が分からない、というオーナーも多かったのです。
室内仕上げ材に採用されたシナベニヤは、木目の美しい素材でもあり、オーナー自身が手を加えやすいように、と選ばれた木材です。塗装をしたり、造作物を取り付けたり、自由にアレンジするためのベースになってくれます。
シンプルな設備だからこそ、カスタムして楽しめるベースバン
天井もしっかりと木材で覆われていて、室内照明が取り付けられています。ボディ全体に防振加工も施されているので、雨音なども大幅に軽減してくれるそうです。天井部分が、このようにフルフラット化してあるのも便利です。塗装したり、壁紙を張ってもいいかもしれません。
基本となる電源はポータブルバッテリーなどを利用します。今ではポータブルバッテリーを持っている人も多く、システムをシンプルにするためにも、この方法が採用されました。
天井部分に取り付けられているダウンライトも、このシステムに組み込まれていて、ポータブルバッテリーを接続することで使えるようになります。
壁に埋め込まれているのがエアラインレールです。撮影車両は1号車の試作モデルとなるため、実際のエアラインレールがどのように取り付けられるかは未定ですが、拡張性の高いエアラインレールが装備されることは確実です。
エアラインレールには取り外しや、場所を調整できるアンカーを取り付けることができます。拡張性の高い設備で、モノを固定するだけでなく、車内の家具などを取り付けるためのベースにもなってくれます。
クルマのカスタムをしたい人にとって、ベースとなるクルマを加工することなく、モノを固定できるのは、ありがたい仕様です。レイアウト変更する時も、ボディに傷をつけていないので、作業もスムーズです。
リア部分に太いフレームが装備されていました。これはオプションのカンガルーバーと呼ばれるもので、エアラインレールに取り付けることができる汎用のバーです。このカンガルーバーをうまく使えば、ベッドを作ることも簡単です。または上部へ移動して、上部収納スペースを作ったり、自由にアレンジできるのが特徴です。
フロアにもアンカーレールが装備されていました。バイクなどを運ぶ時のアンカーポイントにもなります。大きなトランポとしての機能性も期待できることでしょう。
RVランドが作ったフィアットデュカトベースのBASE VAN(ベースバン)は、あえてシンプルなスタイルを採用することで、オーナーの自由度を高めていました。バンを手に入れて、自分だけのキャンピングカーを作りたい、というオーナーにはぴったりのモデルです。
断熱、防振、内装仕上げ、室内照明などの加工方法に悩むことなく、納車後からすぐにキャンピングカーとしての機能を楽しみながら、自分のクルマを育てていく、そんな過程も存分に楽しめるクルマになっているのです。
デュカトBASE VAN(ベースバン) 諸元
- ベース車両
- フィアットデュカトバン L2H2
- エンジン
- 2.2L マルチジェット3 ディーゼルターボ
- トランスミッション
- 9AT
- 駆動方式
- 2WD
- 最小回転半径
- 6.3m
- 車体サイズ
- 全長5,410mm/全幅2,100mm/全高2,525mm
- 価格
- ¥7,480,000~