2月2～5日に幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2024」のMYSミスティックブースで、新作のトラキャン2モデルが初お披露目された。日本のキャンピングカー市場では圧倒的少数派となるトラキャンのニューモデルが、イッキに2台もデビューするのは異例のこと。ここ数年のピックアップトラック人気によって、トラキャンというカテゴリーが幅広い層に認知されてきたことの表れと言えるだろう。
MYSミスティックがJCCS2024でデビューさせたのは、同社のオリジナルシェルJキャビンシリーズの最新作「JキャビンKZ」と、ポップアップスタイルの輸入キャンパー・デシエルトの2作目となる「デシエルト02」。どちらも、現行ハイラックスと新型トライトンに対応しており、荷台に積載することでピックアップトラックがキャンピングカーに早変わりする。今回は、日本では珍しいオーバーランドスタイルのトラキャンシェル「デシエルト02」にスポットを当てていこう。
ワイルド系ポップアップシェルの最適解
まずは、COOLなビジュアルに注目していただきたい。ピックアップトラックの荷台にポップアップシェルを積載したエクステリアは、一般的なキャンピングカーとは明らかに違う独特のオーラを放っている。スタイル的には、海外で流行しているオーバーランドのイメージ。広大な国土を持つアメリカやオーストラリアなどで、砂漠や岩場が続く荒野を4WD車で走破しながら旅をする。そんな“オーバーランドカルチャー”を彷彿とさせるワイルド感が、デシエルト02のアイデンティティだ。
悪路走破性に優れたピックアップトラックの荷台に、ポップアップスタイルのコンパクトなシェルを積載するのは、海外のオーバーランダーたちの間で定番のスタイル。日本でもこうしたスタイルは少しずつ増えつつあるが、MYSミスティックはハヤリに乗ってデシエルト02をリリースしたわけではない。数10年前から海外製のポップアップキャンパーを輸入し、30年以上も海外のリアルなトラキャンカルチャーを見続けてきたMYSミスティック。そんな同社が考える“現代のポップアップキャンパーの最適解”が、今回リリースされたデシエルト02だ。
水平昇降式の大型ポップアップルーフを採用することで、低い全高と開放的な室内空間を両立しているのが、デシエルト02の最大の特徴だ。軽量コンパクト設計＆低重心のシェルでオフロード走行も難なくこなせ、停泊地でルーフをオープンすれば、最大4名が就寝可能な居住空間も確保できる。
リアエンドの右手にはDC12Vクーラーの室外機、左手にはFFヒーターの灯油タンクをセット。無骨なデザインで、機能性とワイルドなビジュアルを両立している。
水平ポップアップによる開放的な室内空間
室内に一歩足を踏み入れると、コンパクトな外観からは想像できないほどの開放感に驚かされる。水平昇降式ポップアップルーフによって、室内高は1970mmを確保。大人が立って歩けるのはもちろん、立ったまま手を伸ばすことも可能だ。
インテリアは、フロントにバンクベッド、センターに対面ダイネット、リアの左右にキャビネットを配したシンプルなレイアウト。限られたスペースではあるが、ゆとりある室内高のおかげでまったくストレスは感じない。2人旅はもちろん、小さな子供連れのファミリーにも対応できそうだ。
食事や休憩、テレワークなど、様々な用途に活用できる対面ダイネット。テーブルを外してマットを敷き詰めれば、長さ1740mm×幅730mmのベッドスペースになる。
バンクベッドは容易に展開できるスライド式で、ベッドサイズは大人3名がゆったり横になれる長さ1840mm×幅1740mm。頭上空間もしっかり確保されており、就寝時の圧迫感は皆無だ。
豪華な装備を満載したリミテッドモデル
デシエルト02には、シンプルモデルと上級モデルの2タイプが用意されている。シェル単品の価格は、シンプル仕様のスタンダードモデルが239万4700円、豪華仕様のリミテッドモデルが355万3000 円。スタンダードモデルでもFFヒーター・ルーフベント・室内照明などが標準装備されているので、シンプルな旅を好むならこちらで十分。快適性を重視するユーザーは、DC12Vクーラー・200Ahリチウムイオンバッテリーシステム・ソーラーパネル・冷蔵庫などがパッケージングされたリミテッドモデルを選べば、季節を問わず旅やアウトドアを楽しむことができる。
リミテッドモデルのリア右手には、DC12Vクーラーがスマートにセットされている。200Ahリチウムイオンバッテリーやソーラーパネルなど、生活電源システムの充実度も言うことなし。サブバッテリーでクーラーを長時間稼働できるので、真夏のクルマ旅も快適だ。
リア左手のキャビネット上部には、36L冷蔵庫（リミテッドモデル標準）を完備。あえてスマートなビルトインタイプではなく、クーラーボックスタイプの無骨なデザインを採用することで、デシエルト02のワイルドなキャラクターを強調している。
右リアエンドに装備したキャビネットの天板には、ガラスカバー付きのコンロ一体型シンク（リミテッドモデル標準）をビルトイン。コンロは扱いやすいカセットガス式で、カウンターの左手には折りたたみ式サブテーブルも装備される。給水・排水タンクは、各10Lのポリタンク仕様だ。
メインスイッチや室内照明・FFヒーターなどの各種スイッチ類は、左キャビネットのサイドパネルに集約されている。
現行ハイラックス＆新型トライトンに合わせて設計されたポップアップスタイルのキャンパーシェル・デシエルト02は、シェルを降ろせばピックアップトラック、シェルを積めばキャンピングカーと、“2WAYスタイル”で活用できるのが最大のウリ！ 「ピックアップトラックを普段使いしたい」「キャンピングカーでもカッコいいクルマに乗りたい」「他とは違うキャンピングカーに乗りたい」など、個性とこだわりを重視するユーザーにお似合いのワイルドなキャンパーだ。
- 岩田一成（いわた・かずなり）
1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家／キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。
