プレシャス・モストRVの「ヴィーナス」は、今年5月にリリースされた新型ライトキャブコン。タウンエースをベースにしたスタイリッシュかつ軽量なボディで、6名分の乗車定員と大人4名+子ども2名分のベッドスペースを確保した、ファミリー向けキャンピングカーだ。
今回は、デビューしたばかりのヴィーナス(4WD/Xエディション)を最速試乗! 一見大柄に見えるシェル形状による、走行安定性への影響はあるのか?1.5Lガソリンエンジンで、キビキビ走ることはできるのか?実走テストで、ヴィーナスの走行性能を検証する。
気軽に乗れるファミリー向けライトキャブコン
ヴィーナスについては以前も本サイトで詳しく紹介しているが、走行インプレッションの前に改めて車両について解説しておこう。
タウンエーストラックのリアに居住用シェルをドッキングしたエクステリア。ベース車両との一体感も上々で、キャブコンらしい堂々とした佇まいでありながら、スタイリッシュなイメージも演出している。
インテリアは、センターにダイネットとキッチン、リアに常設2段ベッドを配したファミリー仕様の定番レイアウト。バンクベッド、ダイネットベッド、リア2段ベッドで大人4名+子ども2名分のベッドスペースを確保している。冷蔵庫や電子レンジが標準装備されているほか、オプションで家庭用エアコンや400Ahリチウムイオンバッテリーも選択可能。2人旅からファミリーユースまで、あらゆるニーズに対応するレイアウトと装備がヴィーナスの大きな魅力だ。
ビルダーのプレシャス・モストRVは日本特種ボディー(NTB)と協力関係にあり、車両開発にもNTBのアドバイスが活かされている。新型ライトキャブコンヴィーナスのコンパクトなボディにも、NTBのクルマづくりのDNAがしっかりと継承されているのだ。
タウンエースベースの特徴
特筆すべきは、低いフロアによる優れた乗降性だ。一般的なキャブコンやハイエースのキャンピングカーは運転席のフロアと座面が高く、Aピラーのアシストグリップをつかみながら「よっこいしょ」と乗り込むのがデフォルト。降りる際も高い位置から飛び降りるような形になるので、高齢者や子どもだと乗り降りに苦労する。対してヴィーナスは、フロアが低いタウンエースがベースなので、乗り降りが非常にスムーズ。自然な形でラクに乗り降りできるので、ミニバンからの乗り替えでも不満を感じることはないだろう。
フラットなシートは、商用車らしい立ち気味のポジション。シートはフラットな形状だが座り心地は良好で、頭上空間にゆとりがあるので窮屈さはまったく感じない。適度に高いアイポイントで、前方の視認性に優れているのも好印象。トラックのステアリングはフロアと平行気味にセットされていることが多いが、タウンエースのステアリングはミニバンのような立ち気味のポジションとなっており、普通車と変わらない感覚で運転できる。
助手席下に搭載した直列4気筒の1.5Lガソリンエンジンは、最高出力97馬力、最大トルク13.7kgf-m。キャブコンのエンジンとしては決してパワフルではないが、ヴィーナスの軽量設計シェルとの相性は良さそうだ。
走行性能向上に貢献するヴィーナスの優位性
パッと見はかなり迫力のあるキャブコンらしいスタイルだが、ボディサイズは全長4830×全幅1890×全高2760mmとなっており、全高こそ高いものの全長・全幅は3ナンバーサイズの大型ミニバンとほぼ同等。最小回転半径4.9m(2WD)と取り回し性にも優れており、細い道や狭い曲がり角でもストレスフリーで快適に走行できる。
ヴィーナスの最大の特徴は、「軽さ」だ。軽量構造のFRPシェルや家具材の最適化、ビスの本数など、あらゆる部分に工夫を加えることで圧倒的な軽量化を実現しており、ボンゴベースの先代モデルマルスやタウンエースベースのエクスペディションホークといった同社のライトキャブコンの中でも最軽量モデルに仕上がっている。車両重量は、動力性能、コーナリング性能、ブレーキ性能などを左右する重要なファクター。軽量設計のボディが、ヴィーナスの走行性能における最大のアドバンテージだ。
バンク部分は、滑らかなアールで構成したスタイリッシュな形状。高速走行時の空気抵抗を減少させ、アクセルレスポンスの向上や横風によるふらつきの軽減を実現している。
走行インプレッション【一般道】
一般道を走行してみて最初に感じたのは、とにかく運転しやすいことだ。3ナンバーミニバンと同クラスの大きすぎないボディサイズなので、キャブコンでも構えることなく気軽に乗り回せる。街中を走る際、とくにメリットを感じるのが1.9m未満のボディ幅。狭い道での対向車とのすれ違いでも、そこまで緊張することなくスイスイ走れる。最小回転半径4.9mの取り回しの良さで、Uターンがラクにできるのも大きなメリットだ。
乗り心地は、キャブコンとは思えないほど良好だ。キャブコンにありがちな不快な突き上げや振動はほとんどなく、ミニバン感覚で快適にドライブできる。コーナリング時は適度にロールするが、タウンエーストラックの低重心の恩恵もあって安定感は上々。一般道で多少ラフに振り回しても挙動が破綻することはなく、キャブコンとしてはかなり優れた走行安定性と言えるだろう。ただし、ブレーキはペダル踏み始めの初期制動が甘めなので、普通車よりも早めのブレーキングを心がけるのがベターだ。
気になる動力性能だが、これも一般道ではまったく不満を感じることはなかった。絶妙なギヤ比の恩恵もあってか、常用域での加速感はキャンピングカーとしては必要十分。もちろん「速い」「パワフル」というレベルではないが、普通の使い方で不満を感じることはないはずだ。
走行インプレッション【高速道路】
1.5Lのガソリンエンジンは、80km/hまではかなり快適に走行できる。高速道路を80km/hでドライブしていてもフラフラとした不安定な挙動を感じることはなく、揺れや突き上げの少ない乗り心地も好印象。純正シートはフラットな形状でリクライニング機能も搭載していないが、意外と座り心地は悪くなく、立ち気味のポジションで体への負担も少ない。
60~80km/hの中速域はストレスなく加速するので、合流時にも不安は感じない。ただし、80km/hからさらに速度を上げると、一気に加速が鈍り1.5Lガソリンエンジンのパワー不足が感じられるようになる。これは、タウンエーストラックのギヤ比が、一般道をキビキビ走れるローギヤード設定になっていることが要因だろう。アクセルを踏み込めば、平地なら90~100km/hの速度も出せるが、80km/hを超えるとボディの安定感が損なわれて運転の疲労感も増していくので、高速道路では左車線を80km/h程度でゆったりと走行するのがベター。そうした走り方なら走行性能や乗り心地に不満を感じることはなく、長距離ドライブも快適にこなせるはずだ。
気軽に乗れて、ファミリーユースも快適にこなせるヴィーナスは、幅広いユーザー層にマッチするライトキャブコン。軽トラックベースのキャブコンに乗っていて動力性能に不満を感じている人にも、かなり魅力的な乗り替え候補になるだろう。初めてキャンピングカーを運転する人でもミニバン感覚でドライブできるので、レンタル車両としても最適な1台だ。
6名乗車できるタウンエースベースのコンパクトなキャンピングカー「ヴィーナス」がデビュー