最新型ハイマーに見るヨーロッパ製キャンピングカーの走りと安全性

世界最先端のモーターホームハイマーB-MCI580は、メルセデスベンツ・スプリンターをベースにしたインテグラルモデル。専用シャーシを使用してボディのすべてをドイツ・ハイマー社が製作した、日本では「フルコンバージョン」と呼ばれるキャンピングカー最高峰のカテゴリーだ。

フロントフェイスやホイール、ステアリングに燦然と輝くスリーポインテッドスターが、ハイマーB-MCI580のアイデンティティ。インテグラルモデルにベンツのエンブレムを使用できるのは、メルセデスの定める安全性などの厳しい基準を満たした証であり、ハイマーの高い技術力とモーターホームメーカーとしての誇りを示している。

キャンピングカーというと居住性や快適装備に目がいきがちだが、本記事では「ハイマーB-MCI580」の「走り」と「安全性能」にスポットを当て、メルセデスベンツをベースにした世界最新モーターホームの“真の魅力”を紐解く。

先進の安全サポートシステム

ハイマー・B-MCシリーズの最大のポイントは、インテグラルモデルに最先端のセーフティサポートシステムがオプション提供されていることだ。センサー類の装着部分が残るセミインテグラルモデルと異なり、インテグラルモデル（フルコン）はボディのすべてをハイマー社が製造している。デリケートなセンサー類をオリジナルボディに搭載するには、相応の技術力と開発環境が必要。とくに今回のような安全デバイスを独自のボディに組み込むには、かなりハイレベルな技術力・開発力を要することは容易に想像がつく。それを実現できるのが、ドイツの名門ビルダー・ハイマー社のエンジニアリングだ。

注目すべきは、インテグラルモデルでは前例のないディストロニック・アダプティブ・クルーズコントロール（全車速追従機能付クルーズコントロール）が採用されていることだ。強風による姿勢の乱れを制御する補正機能付き横風センサーも標準装備。インテグラルモデルとしては画期的なこれらの最先端セーフティシステムが、乗員の安全をしっかりサポートしてくれる。

ほかにも、衝突被害軽減ブレーキ、コーナーセンサー、レインセンサー、ABS（アンチロック・ブレーキ・システム）、ASR（アンチ・スリップ・レギュレーション）、EBV（エレクトロニック・ブレーキパワー・ディストリビューション）、ESP（エレクトロニック・スタビリティ・プログラム）など、あらゆる安全サポートシステムが用意されている。世界最高レベルの安全性能が、ハイマー・B-MCシリーズの最大のアドバンテージだ。

「ハイマーB-MCI580」の走行性能を体験

ボディ左手の縦型ドアからドライバーズシートに乗り込むと、まずはブラック基調のインテリアパネルが目に入る。コクピットの雰囲気は、ヨーロッパのハイオーナーカーそのもの。重厚な意匠のインテリアパネルと、中央にスリーポインテッドスターが燦然と輝く太めのグリップのステアリングが、ドライバーの高揚感を高める。

スタートボタンを押してエンジンを始動し、シフトレバーをドライブに入れてクルマを発進させる。ボディサイズは、全長6990mm×全幅2290mm。日本の道路事情においてはかなり大柄な部類になるが、高いアイポイントと視認性のよい大型サイドミラー、上部にセットされたアラウンドビューモニターが、総合的にドライビングをサポートしてくれるため、ボディサイズに慣れてしまえば運転自体はさほど難しくない。

特筆すべきは、室内が「静か」であること。エンジンは2.2リッターディーゼルターボが搭載されているが、一昔前のディーゼル車のような特有のガラガラ音はいっさい聞こえない。街中の信号で停止するたびにアイドリングストップ機能が作動していたが、あまりにもアイドリング音が静かなので、最初はエンジンのオン・オフに気づかなかったほどだ。

177馬力の2.2Lディーゼルターボエンジンは、重量級のボディをストレスなく走らせるのに十分なパワーとトルクを持つ。9速ATミッションとの相性も良く、走りの印象はとにかく静かでスムーズ。一般道でも高速道でも、動力性能にストレスを感じることは皆無だ。

高速走行は、ハイマーモーターホームの面目躍如。まさに水を得た魚のごとく、圧倒的な安定感で高速クルージングを快適にこなす。一般的なキャンピングカーの安全運行速度は80～90km程度と言われるが、ハイマーは時速90kmから上で本領を発揮する。速度が上がるほど高まる、地面にピタッと張り付くような安定感は、ドイツ製のセダンやSUVと同様の感覚だ。

ボディサイズや形状を考えると、ハイマーの走行安定性の高さは称賛に値するレベル。ハイマーのモーターホームは、様々な想定で走行テストを繰り返し、メーカーとしての基準をクリアした車両だけがハイマー車として世に送り出される。サスペンション、低重心設計、重量バランスなど、あらゆる要素の相乗効果で圧倒的な高速安定性を生み出しているのだ。

移動時の安全性と快適性

走行性能もハイレベルだが、「最先端のセーフティサポートシステムがある」という安心感も、ドライバーの心理的余裕につながる大きなアドバンテージだ。今回の試乗ではこれらの安全装備を試す機会はなかったが、自動ブレーキにしても補正機能付き横風センサーにしても、いざというときに安全をサポートしてくれるという安心感がある。

キャンピングカーオーナーにとってうれしいのが、全車速追従機能付クルーズコントロールがオプションで用意されていることだ。機能のオン・オフや速度設定はすべてステアリングスイッチで操作でき、アクセルを放したまま設定速度をキープできるだけでなく、前のクルマの速度に合わせて自動で加減速を行ってくれる。ロングドライブが多いキャンピングカーでは、とくにこの機能が役立つ場面は多い。長距離運転の疲労が軽減されることで、より安全なドライブを実現できるはずだ。

機能性とデザイン性を両立したインテリア

インテリアは、ハイマーらしい上質な意匠と高い機能性が特徴だ。エントランスを入ってすぐの場所にダイネット、その対面にキッチン、通路を挟んだ向かい側にトイレ＆シャワールーム、リアエンドにベッドルームを完備。欧州モーターホームではスタンダードなレイアウトだが、ダイネットからリアベッドまでの動線、各装備の使い勝手など、長い歴史で蓄積したハイマー社のノウハウが細部にまで詰め込まれている。高級感のある間接照明や滑らかな曲線を適所に取り入れた家具デザインも、ハイマー製モーターホームらしい魅力だ。

エントランスを入ってまず視界に飛び込むのは、180度回転させたフロントシート2脚とL字型ソファで構成したダイネット。ゆったりと落ち着ける、上質な空間に仕上がっている。

機能性抜群のキッチンエリア。カウンタートップには、ガラスカバー付き3バーナーコンロ＆シンクが完備され、家と同様の感覚で快適に調理できる。キッチンの右手には、スマートな縦型の142L冷蔵庫、その隣にはクローゼットを装備。

キッチンスペースから通路を挟んで向かい側には、ゆったりとしたスペースのトイレ＆シャワールームが完備されている。

リアエンドのベッドルームには、長さ1920mm×幅860mmのベッドが2つ用意され、クッション性抜群のマットで快適な眠りをサポート。コクピット上部にもプルダウンベッドが装備され、最大5名の就寝定員を確保している。

メルセデスベンツをベース車に採用し、最新の安全装備を全車に用意したハイマー・B-MCシリーズ。モーターホームとしての快適性と、自動車としての走行性能・安全性のすべてを極めた世界最先端のモーターホームだ。

PHOTO／佐藤亮太