クルマでの旅が注目されています。自由に行動できる、時間を有効にできるなど、メリットも多く、今後もユーザーは増えていくだろうと考えられています。そんな、クルマを使った旅をするユーザーに対して、熱い視線を送っているのが地方自治体です。
実はクルマと地方創生をつなげたいと考えている自治体も増えているんです。先日、一般社団法人の日本カートラベル推進協会(JCTA)が開催した「カートラベルにやさしいまち宣言」事業説明会では、クルマ旅と地方創生にいち早く着手した自治体や企業が集まっていました。
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カートラベルにやさしいまち宣言
会場でやさしいまち宣言を行ったのは三重県いなべ市、山梨県小菅村の2自治体。その2市の話を興味深く聞いていたのは、いろいろな地方自治体の担当者でした。クルマと旅することが、どのようにして地方創生につながるのか? 真剣な眼差しです。
事業説明会に参加したのは自治体以外に、ナビタイムジャパン、日本政府観光局、Carstayといった企業・団体。それぞれ、国内観光、インバウンド、シェアリングエコノミーに関しての説明を行い、今後の可能性と目標などを語ってくれました。
ビッグデータを利用した行動パターンの分析
ナビタイムジャパンはナビゲーションのアプリ「ナビタイム」で有名ですが、企業理念として時間の創出を掲げています。同社のサービスを使うことで、効率よく動き、新たな時間を生み出そうという考え方です。いろいろなサービスを提供していますが、そこで収集したデータを基に国内観光について、クルマを使った旅行者の動き方を説明してくれました。
ナビタイムのサービスを使っている人数は5100万人以上。その人々の行動をデータ化してみると、どの観光地が人気だったかがすぐに分かるそうです。そして、何よりも重要なのが、人々の動きです。人気のスポット周辺の観光地にも人が流れている傾向があり、拠点を決めて周遊する行動パターンが見えてきました。
グローバル展開する日本の観光地
訪日旅行=インバウンドに関して説明したのは日本政府観光局。国土交通省環境庁の管轄で、海外からの旅行者誘致のためにさまざまな活動を行っている機関です。国内では地方自治体との連携をとって、訪日旅行客を地方に送り込むことも考えています。
世界的に見ても、国境を超えて旅行をする人が増えてきました。そして、注目されているのが、増加するアジア圏の人々です。日本でもインバウンドの経済効果が伸びてきていて、外国人の国内消費金額は2018年で4兆5064億円と増加中。さらに政府は2020年に8兆円、2030年に15兆円を目指して、国内最大級の経済基盤とすることを目標にしているそうです。
順調にインバウンド経済を拡大させている背景には日本独特の環境があるといいます。安全性、地方ごとの魅力などに加えて、レンタカーの環境が整っているというのです。統計的には世界第3位のレンタカー環境が整っているとされ、さらに道の整備、道の駅などの施設の充実など、他国では見られない施設があることなどを挙げています。
リピーター客の増加も後押しして、地方へ観光客が流れていく傾向がみられるといいます。その時、街をつなぐ有力な交通網がレンタカーです。クルマでしか行けない場所にいける利便性、そして、宿泊場所不足を解決するクルマでの宿泊には期待が高まっているとのことでした。
活用できる場所を秘めたいなべ市
実際にカートラベルにやさしいまち宣言をした、いなべ市は市長の日沖靖氏が市の現状と今回の事業展開に関する期待を話してくれました。どこの地方自治体もかかえる問題を挙げて、カートラベルを積極的に誘致することで、新たな観光への切り替えが必要といいます。
例えば、いなべ市は伊勢神宮の近くですが、観光客の通過地点として滞在することがないそうです。また、市内にはゴルフ場が点在していて、土地の有効活用に苦慮しているのが現状とのこと。これを都市公園などと含めて、カートラベル施設として活用し、滞在する地域にしたいそうです。
防災の観点からもキャンピングカーなどに注目しているといいます。ネットワークを活用して、災害発生時にはキャンピングカーを市の施設に集め、一時避難場所を作る構想です。キャンピングカーなどの可動施設であれば、柔軟なレイアウト変更ができるため、避難場所であっても、既存コミュニティを再形成しやすいという利点があると期待していました。
今回カートラベルにやさしいまち宣言をしたことについて「私たちは施設や場所といったハードを持っているので、日本カートラベル推進委員会の持つソフト面、コンテンツに期待しています。お互いが持っているものを使えば、より充実した環境が生まれると思いまして、今回のやさしいまち宣言をさせていただきました」と語っていました。
つねにチャレンジャーでありたい小菅村
山梨県の都留地域にある小菅村は以前からクルマにやさしい施設の取り組みに関して積極的でした。今では道の駅こすげ、小菅の湯、フォレストアドベンチャー・こすげという施設が1個所に集まって、多くの来場者を呼んでいます。年間20万人の来場者があり、数年前、道の駅こすげにRVパークを設置したところ、道の駅の売上がアップしたという実績もあります。
しかし、小菅村の挑戦は続いています。いろいろなアイデアで、さらに10万人の観光客増を目指しているそうです。小菅村の特徴は都心部の源流域としての自然が豊かなこと。街灯も少なく、星空のきれいな場所としても魅力を引き出せるといいます。
小菅村の村長、船木直美氏は「今後も引き続き、カートラベルで遊びやすい場所であることを提案していきます。小菅村はつねにチェレンジャーであり続けたいと思っています。人口は約700人ですが、この村でできるなら日本もなんとかなるという、挑戦する気持ちで取り組んでいます」と語ってくれました。
ITでカートラベルをバックアップ
旅するクルマ、観光地、宿泊地など、国内にはたくさんの資源がそろってきました。しかし、そのすべてが活用されているわけではありません。その1つ1つをつなげる技術としてITが期待されています。そんなITのなかで注目されるのがシェアリングエコノミーです。
シェアリングエコノミーは簡単に言うと公共性の低かった資産を共有する考え方。スペース、モノ、行動、知識、お金など、さまざまな対象があります。シェアリングエコノミー協会発表では、市場規模が2018年で1兆8874億円、2030年には11兆1275億円に達するそうです。
例えば、空いている場所を宿泊施設として貸し出すなどがシェアリングエコノミーです。今回参加したCarstay株式会社はこの分野で注目されている企業です。クルマでの宿泊施設検索、予約、決算システム、ホストとしての貸出などをITを使って解決するサービスを提供しています。
代表の宮下氏はこれからの市場拡大に期待しながらも、カートラベルの発展に注目しているそうです。サービスを提供するとともに、ユーザーの行動パターンを分析しながら、地方創生にもつなげていきたいといいます。
スムーズなカートラベル実現に向けて
「カートラベルにやさしいまち宣言」の事業説明会では各自治体の活発な誘致、国のバックアップ、IT技術の発展などを知る機会となりました。また、一般社団法人日本カートラベル推進協会が中心となって、クルマ旅と地方創生を結びつける動きが具体的に始まっていることを実感しました。
特にキャンピングカーで旅をする人にとっては、スムーズな旅が行えるメリットが多そうですね。訪日も含めて、人が動き、地方創生へとつながる「カートラベルにやさしいまち宣言」。今後の展開に期待したいと思います。
カートラベルの活動について詳しくはホームページをご参照ください。
一般社団法人日本カートラベル推進協会(JCTA)