「かわいらしいキャンピングカーに乗りたい!」など、スタイルでキャンピングカーを選ぶ人も多いのではないでしょうか。でも、なかなかしっくりとくるクルマに出合えるとも限りません。もしくは、キャンピングカーだから……、と夢をあきらめてしまう人もいることでしょう。でも、今回紹介するキャンピングカーを見たら、これまでの概念がガラリと変わってしまうかもしれません。
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ケンキャンが作ったこだわりの詰まったキャンピングカー
2023年7月に幕張メッセで開催されたアソモビの会場に、かわいらしいタイニーハウスが建っていました。これを作ったのは、YouTubeケンキャンのケンさんとやまめさんです。動画で製作工程を公開していたので、その存在を知っていた人も多いのではないでしょうか。ようやく完成して、会場での展示が初お披露目となりました。
どこかのテーマパークから抜け出してきたような小屋は、まさに動くタイニーハウス。軽トラックの荷台に載せられ、興味を示して近づいてくる来場者を、独特の世界へ引き込んでいます。みなさん写真を撮りながら、楽しそうに笑みがこぼれているのが印象的です。
全体のサイズは軽トラのトラキャンと同じぐらいです。全長が荷台から少し飛び出している程度。壁は荷台床面から垂直に立ち上がり、窓や屋根の軒先が車体幅?を少し広げています。もちろん、軽トラックの最大積載サイズ内なので、法規上も問題ありません。
右サイドには大きな窓がありましたが、左側には窓と扉が設置されていました。扉を開いても、荷台の横にあるアオリに当たらないように設計されています。サイドにあるこちら側のドアは普段の乗り降りに使うのではなく、荷物の出し入れ、いざという時のエマージェンシー用扉としての役割があるそうです。
全体的に、木材と漆喰で作られているような印象です。よく見ると、リア側には石積みの跡まで⁉︎もし、軽トラックがなかったら、森の中にあるタイニーハウスでしかありません。
エントランスはリアからになります。ちゃんと郵便ポストもあるので、こちらが玄関であることは確かなようです。ポストの下には家庭菜園の花壇があり、上部に小さな窓がかわいらしく設置されています。
ドアを閉めた状態で、乗り込むためのラダーが折りたたみで収納できるようになっていて、停車時はそのラダーを出して、玄関手前に階段が現れる仕組みです。ドアの部分はラウンドしていて、ドアの形状に合わせるように玄関の入り口部分が形作られていました。
ストーリーのあるこだわりのインテリアが独特の世界を作り出す
室内に入ると、ウッディな雰囲気のインテリアが広がっています。まさに、山小屋そのもの。室内はフラットなフロアが広がっていて、壁際に小さなキャビネットがあり、奥にソファが置かれていました。窓には可愛らしいカーテンが取り付けられていて、天窓からも光が差し込んでいます。
森の中にいたら、こんな感じになるのではないでしょうか。サイドのドアは荷物の出し入れに使われる予定ですが、自然の中でその扉を開け放てば、風が流れ込んできて、心地よさそうです。森の中にクルマを停車させれば、周りの自然を身近に楽しむことができることでしょう。
壁際の写真左側に写っている樽は、シンクで使う水用のジャグになっていました。インテリアに溶け込んだデザインで、まさか実用的に使えるとは気づかないかもしれません。
棚の上には、外の家庭菜園から収穫された様なニンジンなどをディスプレイ。この小物たちにもストーリー性を持たせたことが、ケンさん、やまめさんたちのこだわりでもあります。
実際に使う調味料入れなどは、棚から落ちてこないように、ガードが取り付けられていました。室内の装飾ディスプレイと実用性のあるアイテムが共存した、不思議な空間になっています。
お気に入りはこの小さな窓だそうです。リアにあるエントランス横の小さな窓。ここから眺める景色が素晴らしい、といいます。小さなピクチャーウインドーとして、このクルマの重要なアクセントになっていました。小さな窓から見える景色は、旅の思い出をより強く心に刻むことになりそうです。
実はすべてフェイク!?超軽量トラキャンを目指したキャビン作り
完成したキャンピングカーは、物語の中に登場するようなかわいらしい小屋を再現したすばらしい完成度でした。太めの梁が見えて、その間が土壁のように仕上げられています。でも、よく見てみると、その梁に木材が使われているのではないようです。屋根の上に載っている煙突も石造りのようで、実はまったく違う素材が使われていました。
実はそのすべてが、モルタルによって形作られているのです。まず最初にフレームを作り、そのフレームの間へ、断熱材のスタイロホームを入れて、FRPで全体をカバー。最後に仕上げとしてモルタルを使って、このデザインが完成しました。詳しくはYouTubeでも公開されているので、順番を追って見ていっても楽しいと思います。
この、窓部分の木の様な棚もスタイロホームで作られているそうです。ある程度の形に整形したスタイロホームを立体的に取り付けて、その上からFRPで覆い、モルタルで木材のようなテクスチャーを再現しています。
モルタル仕上げの造形だけでなく、そのカラーリングにもこだわりがみられます。一部にレンガが見えているような仕上げがあるのですが、そのレンガの再現性が高いうえに、カラーリングが絶妙でした。ブロック1つ1つのカラーリングが違っていて、場所によっても明暗がつけられるなど、凝った仕上がりです。
窓部分の青い木製風扉も、1から形作られたものでした。実際には、扉は固定されていて、完全な装飾としての役割を果たしています。中央の窓部分は木製で作られていて、開閉できる仕様。外扉(青いカバー)が閉まらないので、しっかりと風や雨をしのぐ必要があって、雨が侵入しないようにしっかりと作り込まれています。
ボディが完成してからも、装飾品にこだわりを追求
ボディ全体が完成した後も、このキャンピングカーを完成させるために、いろいろな加工が加えられました。そのこだわりはエクステリアの数々の装飾を見ても、すぐに分かるでしょう。
まずは、リアの玄関横にある花壇。ニンジンが植えられている様な光景が広がっていますが、もちろんフェイクで、その1つ1つは固定されています。走っても外れないようにしっかりと固定されていました。その上にあるガーデンツールは、キャンピングカーの雰囲気に合わせたアイテムを購入して、汚したりしながら、エイジング加工されているそうです。
金物1つを見てみても、かわいらしいアイテムばかりです。玄関の扉に取り付けられた取手も趣のある金物でした。全体的な雰囲気に似合うアイテムを探して、ていねいにスタイルが合わせられて、仕上げられているのが分かります。
室内に置かれていた、スキレットとジョッキ。これは、クルマの展示のために用意されたのではなく、実際に車内で使うために備えてある備品です。このキャンピングカーで食事をするならスキレットでしょ!ということで投入されたアイテムでした。
雰囲気ばかりではなく、その空間で過ごすスタイルまで追求している事に驚かされます。山小屋風の室内で、木製の扉を眺めながら、このスキレットで食事をする。トータルでコーディネイトされたスタイルの完成です。
棚の上には本が並んでいます。フロント側に取り付けられた棚なので、走り出した時に落ちてしまうのでは、と不安に感じてしまいますが、落ちないようにしっかりと固定されていました。本が横向きだったり、斜めになっていたり、その小屋が過ごしてきた時間が刻まれているかのような情景がしっかりと完成しているのです。
YouTubeケンキャンではすでに2台のキャンピングカーを持っているので、このクルマに対しては、キャンピングカーとしての機能性を追求していなかったともいえます。それでも、断熱材のスタイロホームをボディの基本的な構造とすることで、超軽量のトラキャンを完成させることができました。
また、このキャンピングカーで出かける時は、他のキャンピングカーに乗る時とちょっと目的が違うともいいます。快適な旅、素晴らしい旅先を探すというよりは、このキャンピングカーの雰囲気を楽しんでいるようです。このクルマを見かけた人にとっても、思わず笑みがこぼれてしまう、特別なキャンピングカーが生まれたのです。
今回のモデルの製作から車中泊シーンを紹介しています。