クーラー早期取り付けのテレビCMが流れる時期になると、いつも、今年の夏はどのようにクルマで過ごすかを考え始めます。天井から降り注ぐ熱気に悩まされる、あの暑い季節がやってくるのです。
完全に断熱されたキャンピングカーであっても、夏場は苦手といえるでしょう。最近のモデルには家庭用クーラーが装備されていたり、電源システムが充実しているので、快適な車内環境を作り出せますが、それに伴うコストもかかります。
キャブコンでは家庭用クーラーが一般的になりました。しかし、コンパクトなキャンピングカーでは室外機を装備する場所を確保するのも大変です。
そこで、毎年話題になるのが、後付けのポータブルクーラーです。今あるクルマに積み込むだけで、冷風を得られる画期的なアイテムですが、その性能については少し不安がありました。
多くのSNSやYouTubeでも、ポータブルクーラーが取り上げられていますが、決定的にこれだ!と感じるモノに巡り会えるのはわずか。でも、2022年の夏、気になるポータブルクーラーが登場しました。
それが、ポータブル電源で有名なEcoFlowから発売された「EcoFlow Wave」。今回は、販売代理店RVランドの協力で、実機のテストをすることができましたので、その冷え冷え具合を感じてみてください。
目次
ハイエースのキャンピングカーなどにピッタリのボディサイズ
EcoFlowは数々のポータブル電源をラインアップしています。どれもデザイン性が高く、クルマの中に置いておいても、インテリアの雰囲気をバージョンアップさせるほど。今回のクーラーもスマートなデザインが目を引きます。
ボディはボクシーなスタイルで、前後の全面で吸排気を行うようになっています。上の写真でみると、左上の写真から時計回りで、正面、右側面、左側面、背面、となります。正面と背面の上から1/4の位置にハンドルが取り付けられていました。
下の部分はバッテリーパックで、簡単に取り外すこともできます。正面下部の右側に見える斜めのLEDライトは電池残量を表しています。
ポータブルクーラーなのに1.2kWの優れた冷却能力を発揮
デザインも素晴らしいのですが、そのスペックも目を引くものでした。スペックは以下の通りです。
冷却電力 | 1200W(1.2kW) |
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バッテリー持続時間 | 専用バッテリーパック使用時 冷却モードで3時間 ファンモードで22時間 |
最適冷却面積 | 5〜8㎡ |
最大運転電力 | 600W |
騒音レベル | 55dB |
サイズ | 518×310×416㎜ |
重量 | 17.5㎏ |
容量 | 1008Wh |
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バッテリータイプ | 三元系リチウムイオン電池 |
バッテリー寿命サイクル | 800サイクルで容量80%以上 |
充電時間 | ACコンセントで2時間 ソーラーパネルやシガーソケットで約5時間 |
サイズ | 481×307×730㎜ |
重量 | 7.5㎏ |
やはり目立つスペックは冷却電力の1.2kWです。冷却電力はエアコンのカタログなどで表記されている冷却能力を表す数値です。
ちなみに3万円前後で販売されている、ポータブルスポットクーラーの冷却能力は約0.3〜0.7kW。その冷却効果はまったく別といっていいでしょう。
家庭用エアコンで6畳サイズが大体2.2kW。その約半分の冷却能力ですが、心配しなくても大丈夫です。
キャブコンでは家庭用エアコンが搭載されていることが多いので、ポータブルクーラーを利用するシーンはハイエースなどのキャンピングカー。であれば、十分な冷却能力といえるでしょう。
直感的な操作性とアプリでクーラーを制御
操作は至ってシンプル。上面のボタンで電源を入れて、温度やタイマーをセットします。設定温度、タイマー時間の画面に切り替えれば、フロントのダイヤルで簡単に数値を変更できます。自光タイプの表示で操作性の高いコントローラーです。
クルマの中でさっと操作できるのがポイントかもしれません。一般的なエアコンのリモコンのように、上下のボタンを押して、見えずらい液晶を確認するのは、クルマの中ではストレスになってしまいます。
上の写真で18℃と表記されているのは設定温度、下の3.4という数字は残り運転時間です。この場合、3.4時間稼働することを意味しています。空調系の残り稼働時間が分かるのはありがたいです。
熱帯夜など、せめてあと3時間は稼働させたい時など、事前に確認できるのはありがたいです。この残量表示があれば、電気がなくなって、寝てすぐに暑くなってしまうことも防げるのではないでしょうか。
さらに細かい設定にはスマートフォンアプリを利用します。
最近のEcoFlowのポータブルバッテリーに採用されているスマホとの連動アプリが利用できました。自分のEcoFlow Waveを登録すれば、設定画面が現れ、温度などを調整できます。そして、上右写真、右下のエコモードも設定できるようになるのです。
エコモードはLow、Medium、Highなどのレベルを設定できるようになっています。搭載されたスマートバッテリー割り当てアルゴリズムという機能で、冷却効果を発揮しながら稼働時間を伸ばすことができる優れもの。
例えば、バッテリーパックでの稼働時間約3時間を約8時間に伸ばすことができるそうです。そのシステムはコンプレッサーのオンオフの組み合わせをプログラムして、冷却モードとファンモードを効果的に切り替えています。
バッテリーメーカーが作ったクーラーらしさを感じる電源システム
電源はバッテリーパックを利用するか家庭用ACコンセントを利用します。専用バッテリはスライド式で本体に取り付けられ、サイドのコネクターでクーラー部と接続。この状態でソーラーパネルを接続したり、シガーコネクトやACコンセントを接続すると、バッテリーが充電されます。
もし、大きな容量のポータブル電源を別に持っていたり、サブバッテリーシステムを利用するのであれば、ACコンセントを利用して、クーラー部分だけで稼働させることも可能です。でも、やはりEcoFlowとの連携がおすすめ。その理由はXT150ポートの存在です。
EcoFlowのポータブル電源でバッテリー部分のみを追加できるモデルがあります。その機器の一部に取り付けられているのが、上写真のXT150ポート。このEcoFlow Waveとバッテリーの接続端子にもXT150ポートが採用されていました。
最近のモデルでいうと、DELTA MAX、DELTA Proなどにも搭載されています。もちろんこのバッテリーもRVランドでも取り扱っているので、詳細は同店へご確認下さい。
このXT150ポートを利用して、クーラーとバッテリーをXT150 to XT150ケーブル(DELTA Proの場合はスマート発電機アダプターも必要)で接続することで、電気を効率よく利用することができるのです。
詳しく説明すると、このEcoFlow Waveのシステムは直流で動くようになっていて、バッテリーの直流電源をAC変換することなく利用することで、変換ロスを軽減することができるというもの。そのシステムは稼働時間を約28%伸ばす効果があるそうです。
一般的なポータブル電源を接続する場合、AC100Vコンセントを利用することになるので、
【電源→DC→インバーター→AC】→【インバーター→DC→クーラー稼働】
という電気の変換が2回必要になります。これを
【電源→DC→XT150→DC】→【XT150→DC→クーラー稼働】
にしてくれるので、電気の変換がなく、効率がよくなるのです。
近年のポータブル電源は大容量化も落ち着き、制御システムが性能を左右するようになりました。そんななか、EcoFlowでは急速充電などのさまざまな制御システムで先鋭的な技術が目立っていました。今回のポータブルクーラーもEcoFlowらしいアプローチで、最先端の制御技術を投入して設計されていることを実感します。
カタログスペックでは分からないポータブルクーラーの性能
これまでにもたくさんのポータブルクーラーが発売されてきました。スペック的にも素晴らしいモデルがありましたが、実際に使ってみると、冷却能力に力不足を感じることも多かったのが現実です。
室外機を持たないポータブルクーラーの場合、どうしても熱が発生してしまうので、熱処理がうまくいかないことが多かったようです。
排気ポートがあっても、ボディ全体がじんわりと温まってきて、室内温度が上昇してしまうこともありました。クーラーを稼働させると、室温が上がってしまうという本末転倒な状況。
EcoFlow Waveも排気口があるタイプで、背面上部のハニカムメッシュ部分が排気になっていました。
実際にクーラーを稼働させてみると、しっかりとここから暖かい空気が排出されています。ここまではこれまでのポータブルクーラーと変わらないのですが、驚いたことに、しばらく運転していても、その熱気でボディが温められることはありませんでした。
背面にも吸気口があって、排気と吸気が上下に並んでいるのですが、吸気部分に排気の熱が伝わっていないのです。完全に分離している感覚です。
クルマなどの密閉された空間で利用する場合は、リアにアタッチメントを付けて、熱を排出させます。このアタッチメントもセットされているので、すぐにクーラーシステムを構築できそうです。
フロントの吹き出し口用のアタッチメントもついているので、外にクーラーをセットして、キャンプ用テントの中に冷気を送り込むなどの使い方もできます。
排水は自動排水設計になっていて、ヒートチューブで蒸発させるシステムが組み込まれていました。なので、排水を心配することもありません。湿度が70%を超える場合は水が出てくることがあるので、ドレンコックも装備されていて、ドレンホースを接続できるようになっています。
ポータブルクーラー「EcoFlow Wave」を実機レビュー
スペックをチェックして、スイッチを入れてみたら、その冷却効果に期待できそうな雰囲気。そこで、実際に使用を想定して、テストを行ってみました。
今回はRVランドのリノをお借りして、実験しています。ハイエースのバンコンモデルで、リアに大きなラウンジソファをレイアウトしたモデルです。セカンドシートをリアに向けると、完全なラウンジスタイルでくつろげるのが特徴です。
クーラーはフロントシートの間にちょうどよく収まるサイズでした。足元にDELTA MAXをセットして、電源も十分な状態で稼働させます。排気ダクトを車外に出すアタッチメントはRVランドで作ってもらいました。
ポータブルクーラーは直接風が当たらないと涼しさを感じないモデルが多いのですが、ちょっと条件を厳しくして、セカンドシートをフロントに向けて、背もたれを立ち上げ、その後ろのテーブルの上に温度計を設置しました。
この状態でテストすると、空間を冷やさなければならないので、本格的なクーラーとしての機能性が試されます。
季節は5月中旬、天候は晴れでした。カーポートに止めて、直射日光を遮りましたが、カーテンを閉めずに、日中のテストを行っています。
カタログスペックでは条件の整ったテントなどの狭い空間で、30℃から24℃まで下げるのに、わずか8分と表記されていました。今回は条件が悪いですが、その冷却効果はどうだったのか?
それが、上のグラフです。外気温度のログを30分間隔で設定していたので、曲線に違いが出てしまいましたが、車内温度はしっかりと下がっています。
これは温度計に直接風が当たっている状態ではなく、空間の温度変化を表しています。ポータブルクーラーの場合、クーラー本体が温まるので、空間を冷やすのは不得意。でも、EcoFlow Waveはすばらしい結果を叩き出したのです。
クルマの中にセットしやすいデザイン、スマートバッテリー割り当てアリゴリズムを使った稼働時間のカスタマイズ、DELTA MAXなどのポータブル電源との接続など、その機能性と拡張性は、これまでになかったポータブルクーラーともいえます。
しかも、実際の使用状況でしっかりと空間を冷やしてくれるとは、これは本気でおすすめできるポータブルクーラーといえるでしょう。
EcoFlow Wave価格・お問合せ先
クーラー本体価格:169,400円バッテリー価格:110,000円
クーラー&バッテリーセット価格:275,000円
お問合せ先:RVランド本社
TEL 0297-27-6767
RVランド EcoFlow Wave発売記念キャンペーン(2022年6月末まで)