キャンピングトレーラーの基礎知識

キャンピングカーの選び方
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日本でもここ最近、キャンピングトレーラーの人気がじわじわと伸びてきている。販売台数を単純比較すれば、まだまだ全キャンピングカーの1割にも満たないが、伸び率は全カテゴリーの中でトップなのだ。
日本のキャンピングカー市場に変化が起きつつあるのか。そんな大げさな話でなくとも、トレーラーの魅力に気づきはじめた人たちが増えているのかもしれない。
ここで改めて、キャンピングトレーラーの基礎知識を整理してみよう。

誤解されることの多いトレーラー

キャンピングトレーラー

キャンピングカーに限らず言えることだが、知識が増えるほど、理解が深まるほど、「先入観のハードルは下がる」ものだ。
これからご説明しようとしているトレーラーの基本情報を説明すると、たいていの人は驚く。そして話を聞き終えるころには、トレーラーに対する印象が変わるという。
失礼ながら、キャンピングカーのことをよく知らない人ほど
「自走式とトレーラーと、結局のところどっちがいいんですか?」
なんていう質問を投げかけてくる。いい・悪いの話でもなければ、優劣もないのだが、よくわからないことはなるべく単純化して理解したいと思う気持ちもわからなくはない。

トレーラーE-Pro

前置きが長くなったが、そんなトレーラーについて、一つずつおさらいしよう。

Q. 特別な免許がいるんでしょ?

A. トレーラーの重量が750kg以下なら『けん引免許は不要』

これが最もよく聞かれる質問だ。よほど特殊なものだと思われているらしいが、日本の法律では「750kg以下のものなら普通免許でけん引できる」。それを超えるトレーラーをひくにはけん引免許が必要になる。
ここでポイントとなるのが、免許の要不要を決めているのが『重さ』だということ。どんなに大きくても中がからっぽで750kg以下ならけん引免許は不要である。
では750kgとはどのぐらいなのか。ちょっと想像がつかないという人も多い。実際、キャンピングカーショーの会場で『けん引免許不要サイズ』と表示して展示されている車両を見てみるとよくわかる。就寝定員4人(4人分のベッドがある)、キッチン(シンク、熱源)、トイレまで備えていても、750kg以下という商品は珍しくない。そもそもトレーラーにはエンジンも駆動装置もないので自走式に比べればかなり軽量なのだ。

ハイマーのトレーラー

Q. 運転、難しいんでしょ?

A. 前進する分には問題なし。バックには慣れるしかない!

これも「よく受ける質問」ランキングの上位に食い込む質問だ。トレーラー=巨大な海洋コンテナや車両積載車を思い出す人が多いらしい。確かに幹線道路の交差点を、あり得ない角度でカーブするのを見ると「さぞ難しいんだろう」と思われるのも無理はない。
確かに、大型トレーラーの運転は難しい。しかしあれはけん引免許が必要なクラスだ。逆の見方をすれば、けん引免許不要で引っ張れるトレーラーは、比較的楽に操作できる、ともいえる。
実際のところ難しいか・難しくないかは個人の感覚によるものなので断言はできない。しかし、まったく未経験の人でも「前に進む分には」30分も運転してもらえれば慣れてしまう。ここでいう「前に進む」とは、直進、左右のカーブ、そしてストップのことだ。
なぜそんな但し書きを付けたかというと、トレーラーのバック(後進)は最大の難関だからだ。教習所のけん引免許コースの講習でも、ひたすら「バックの練習」だと言っても過言ではない。
例えば、自分の右後ろに下がりたければ、今までは右にハンドルを切ったはずだが、トレーラーは逆=左にハンドルを切ると、右後ろに下がり始める。見ているだけで混乱しそうだが、ヘッド車とトレーラーの動きを理解できれば、あとは感覚をつかむだけ。しかしこればかりは訓練するしかない。
それでも、特に車庫入れなどでにっちもさっちもいかなくなったらどうするか。
まずいえるのは、さっさとヘッド車とトレーラーを切り離すこと。平坦な場所でけん引免許不要サイズなら手で押して動かすこともできる。大きいトレーラーにはオプションでムーバー(コントローラー)というデバイスをつけておけばいい。リモコン操作で車庫入れができるもので、巨大な「ラジコン」をイメージしてもらえればいいだろう。

トレーラーを選ぶ人が増えているわけ…メリットを整理する

トレーラーと乗用車

旅先での自由度が高い

トレーラーの最大の特徴は、なんといっても「ヘッド車とつながっている」ということだ。つまり、切り離してしまえば、ヘッド車だけで自由に行動できる。大きな自走式と違って小回りが利くので、現地での買い出し・お風呂・観光などにがぜん、自由度が高く便利なのだ。
トレーラーの連結・解除そのものはとても簡単。慣れれば5分もかからずできてしまう。もちろん、どこでも切り離していいわけではないが、キャンプ場やRVパークなど、宿泊や滞在が認められた場所なら問題ない。目的地を決めず、あちこち気ままに…という遊び方には向いていないが、拠点を決めてその周囲を観光したりするにはぴったりと言えるだろう。

乗用車でもけん引できる

小型トレーラーのレジストラ・クコ

軽量なトレーラーなら1800ccクラスの乗用車でも十分けん引可能。コンパクトカーでも引けるような小型超軽量モデルも登場している。
トレーラーを引くためには、ヘッド車側に「ヒッチメンバー」というパーツと、灯火類を連動させる配線コネクターを装着する。欧米では純正オプションにヒッチメンバーがあったり、最初から装備されていたりするのだが、残念ながら国産車で純正オプションが用意されている車はマツダ・CX-8や三菱・デリカD:5など数えるほどしかない。また、輸入車で、本国ではオプション設定があるのに日本仕様にはない、なんてことも珍しくないのだ。
「やっぱり日本でトレーラーを引くのは大変なんじゃないか…」
そんな風にがっかりする必要はないのでご安心を。純正オプションがなくても、ヒッチメンバー専門メーカーが車種ごとに販売している。そもそもキャンピングトレーラーなら、ビルダーやディーラーがヒッチメンバーの装着まで含めて相談に乗ってくれるはずだ。
このように、装備も手軽で普段愛用している乗用車で引っ張れるキャンピングトレーラーだが、ひとつ難点があるとしたら「走行中はトレーラーには乗車できない」ことだろう。目的地に着いた時、運悪く悪天候だったとしても、一度は車から出なければならない。そこだけは玉に瑕かもしれない。

イニシャル&ランニングコストが安い

乗用車でのトレーラー牽引

トレーラーといえども、道交法上はれっきとした「車両」。登録は必要だし車検もある。車庫証明だって必要だし自動車税もかかる。
だが、トレーラーにはエンジンない。構造もシンプルなので、自走式と比べて車両価格はかなり安い。走行に必要なメカニズムがないということは、スペース効率の点でも優れている。乱暴な比較かもしれないが、あるトレーラーと同じだけの室内空間と装備を自走式に求めるとしたら、車両価格はトレーラー価格の3倍ぐらい覚悟しなければならない。
税金などのランニングコストも同様だ。排気量ゼロだから自動車税は最低ランクだし、軽量だから重量税も安い。さらに、車検費用も交換する部品などが非常に少ないのでリーズナブル。任意保険も走行中の事故については、けん引している車両の保険でカバー(車両保険を除く)される。けん引免許不要タイプなら、車検費用まで含めても年間維持費は7万円前後という試算もある。
唯一のコスト増があるとすれば高速道路料金だ。トレーラーけん引時の高速料金は、「ヘッド車のワンランクアップ」。つまり、普通車でけん引していれば中型車料金になるということだ。自走式はかなり大きなサイズでも普通車扱いなので(8ナンバー登録車に限る)、この点に関してだけは不利かもしれない。しかしその他のランニングコストが自走式より全般に安いことを考えれば、(年間どれくらい高速道路を走るかにもよるが)、誤差の範囲なのではないかとも思える。なお、ETC車載器を「けん引あり」でセットアップしておけば、けん引時には自動でランクアップされる。

トレーラーの車内

「食わず嫌い」や「思い込み」でトレーラーを避けていた人も多いのでは? 自分たちの遊び方に合うかどうか、メリット・デメリットをじっくり検討してみよう。じわじわと販売台数が伸びているのは、メリットに感じる人が増えている証拠なのだ。

WRITER PROFILE
渡部竜生
渡部竜生(わたなべ・たつお)

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり

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