夏の行楽シーズン。一度はキャンピングカーを利用して、旅行に行ってみたいと考えている人も多いことでしょう。
最近では、キャンピングカーのレンタルも増えてきて、多くのユーザーがキャンピングカーを利用する機会が増えてきました。
そんな、普段から何気なく利用しているレンタカーですが、クルマを貸し出すにはいろいろなルールがあることを知っていますか。
そこで、今回はこのレンタカーについてフォーカスしてみました。
目次
「わ」ナンバーのレンタカーには特別なルールがある
レンタカーの特徴として、すぐに思いつくのが、ナンバープレートに記された「わ」の文字。これはクルマの車種や用途を表す文字で、「わ」はレンタル車両であることを表しています。軽自動車以外のレンタカーのなかには、ごく稀に「れ」も利用されています。
このレンタカーとしての表記が利用できるのは、認可された事業者だけに限られます。個人で明日から副業でレンタルを始めるからといって、簡単に「わ」ナンバーを申請することはできないのです。
最近話題になっているシェアリングサービスなどは、クルマを貸し出す行為ではありますが、この「わ」ナンバーのレンタカーとはまったく別のジャンルになります。借りる側にとっては混乱してしまうかもしれません。
レンタカーのプロフェッショナルに聞いてみた
そこで、業界のプロフェッショナルにレンタカーについて聞いてみました。今回、訪れたのは、長年、自動車整備を行いながら、レンタカー業務もしている横浜のモービルオート。4年前にキャンピングカーのレンタルを開始して、多くのユーザーに利用されている企業です。
場内には整備されたクルマがずらりと並んでいました。キャンピングカーはどれも新しいモデルばかり。レンタルキャンピングカーとしては珍しい、レジストロアウルなども貸し出しているのは特徴といえるかもしれません。
まずはレンタカーの基本的な話を常務取締役の齋藤健太さんに聞いてみました。
「レンタカーの事業をするためには、「わ」ナンバーを申請する前に、レンタカー事業者証明書等の交付が必要です。この許可を申請するにはクリアしなければならない条件があって、その基準に適合して証明書をもらわないと、「わ」ナンバーの申請すらできません」
レンタカー事業を始めるには、国土交通省への申請が必要で、公示基準と呼ばれるルールに従わないといけないそうです。
クルマを借りるときに提示される約款も用意しなければなりません。その内容もある程度の基準があって、各条項が一般的な基準と矛盾がないことが原則。例えば任意保険は、保険内容の最低条件が決まっていて、その金額を満たすことが求められています。
「弊社は長年、一般車両のレンタカー事業をしていて、レンタカー協会に加入しています。このレンタカー協会では利用者の利便性を図るため、保険などに関して基準が設けられています。キャンピングカーのレンタルを始める時も、このレンタカー協会の基準をクリアするように保険などに加入しています」と齋藤さん。
レンタカー事業を始めるには、約款などの申請書類作成、クルマの保管場所確保、台数によっては整備士の雇用、保険の準備など、いろいろなハードルがあるようです。
すべてがクリアになると、レンタカー事業証明書が交付され、「わ」ナンバーを申請して、ナンバープレートを手に入れてから、ようやくレンタカー事業がスタートできる、という手順です。
でも、レンタカー業務はスタートしてからが本番。車検の期間は短縮されて、有効期限の残りが2年を超えているときは2年に、残りが1年を超えている時は1年になるというルールまで存在します。簡単にいうと、乗用車登録されたクルマの場合、新車時の初回車検が2年、以降1年ごとに車検を受けなければいけないのです。
さらに点検は3ヶ月に1回が義務付けられていて、しっかりと安全が担保されているのです。ここまで整備してあれば、借りる側も安心といえるのではないでしょうか。
安心感に関しては保険も大切。モービルオート保険課課長の毛利健太郎さんがその重要性を教えてくれました。
「レンタカーは走行距離が長くなるのが当たり前です。特にキャンピングカーの場合は、一般的なレンタカーに比べても、走行距離が長く、運転のリスクも高まります。そこで、弊社では、トラブルが起きても保険でカバーできるように協会の基準に準じながら、そして、社内基準を設けて、さらに安心できる体制を整えています」
モービルオートは長年の業務を通して、保険会社との繋がりも強く、しっかりとした保証内容が整っているのも特徴です。長年の経験と企業規模が安心のバックボーンとなっているのを感じさせます。
レンタルキャンピングカーを整備できる体制が整っているか?が大切
「わ」ナンバーのレンタカーには1年車検に3ヶ月ごとの整備点検が義務付けられていました。この点検整備だけでも大変ですが、モービルオートではさらに厳しい自社基準を設けて、日常的に予防整備もしっかりと行っているそうです。
オイルのチェックやタイヤの空気圧・残りの溝チェック、さらに、各ボルトのトルク管理など、その項目は多岐に渡ります。
その整備内容は車載の点検簿にしっかりと記載されていて、日々のチェックシートを設けて管理されていました。
このきめ細かい整備ができるのも、整備工場を併設し、国家資格を有する整備士が整備しているからといえるでしょう。車検の指定工場としても機能していて、たくさんのクルマを整備してきた経験が活かされています。
点検項目のなかには、一般の家庭では難しい内容もあります。上写真のダブルタイヤの場合、空気圧チェックなども簡単ではありません。空気を入れるのも大変だし、ましてやタイヤ交換などは個人でするのは困難。しっかりとした整備工場が必要になってくるのです。
モービルオートのレンタル車両は新車のようにきれいに整備されています。機関的な整備はもちろんのこと、車内もきれいに清掃されていました。
「たくさんの人が乗るクルマだから、コンディションを維持することが大切」というように、車内の清掃にも力が入っているようです。クルマのローテーションも早く、新車投入のサイクルも短いといいます。
自動車整備工場として、そして、乗用車のレンタカー事業を通して培ってきたノウハウがレンタルキャンピングカーにもいかされているようでした。
日本RV協会もレンタルキャンピングカーの体制強化に尽力
今回はモービルオートを訪れ、レンタカーの基本について聞いてきましたが、すべての事業者が、同社のような恵まれた環境が整っているとえはいえません。
利用するユーザーの立場からすると、業者のレベルも統一してほしいところ。そこで、キャンピングカー業界からはレンタルキャンピングカー事業をサポートする動きがスタートしています。
日本RV協会のレンタカー事業部部長であるRVランド代表取締役の阿部和英さんにその活動内容を聞いてみました。
「キャンピングカーの業界団体である日本RV協会でも、レンタルキャンピングカーの需要拡大を認識しています。そんななか、多くの人にキャンピングカーを楽しんでもらうため、協会としてルール作りやマナーの啓発を行っています。特にレンタルされた方が、安心してキャンピングカーを楽しめる環境づくりが必要と考えています」
そのためにも、点検整備、車内清掃が必須といいます。企業に対しては3ヶ月点検のルールを徹底して、レンタカー事業者としての「わ」ナンバー取得を求めています。
最近では業務などもスムーズに行えるようにマニュアルを作成したり、幅広いサポート展開を行っているそうです。
「わ」ナンバーのレンタカーには、いろいろなルールが守られて運用されているのがよく分かりました。さらに業界でも「多くの人にキャンピングカーを楽しんでほしい」という思いで、レンタルキャンピングカーの健全な発展に貢献している姿勢がみてとれます。
レンタルキャンピングカーを利用する私たちも、今後の業界発展のためには、正しいレンタル事業者を選ぶことが大切なのかもしれません。
取材協力
モービルオート住所:〒221-0035 神奈川県横浜市神奈川区星野町3
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一般社団法人日本RV協会
住所:〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2-7-19 竹生第2ビル905
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