バンコンベースの主役「ハイエース」の種類とメリット・デメリット【標準ボディ編】

キャンピングカーの選び方
, , ,

バンコンベースの主役「ハイエース」の種類とメリット・デメリット【標準ボディ編】

バン・ワゴンの内装をメインに架装を施したキャンピングカーが、バンコン(バン・コンバージョン)だ。日本で販売されているバンコンの多くは、トヨタ・ハイエースをベースに製作されている。

バンコンベース車両のメインストリームであるハイエースだが、そのバリエーションは実に多彩。同じハイエースでも、ユーザーの幅広いニーズに対応できるように数種類のボディサイズが用意されている。

ハイエースのスペシャリスト菅野勝明氏(ティピーアウトドアデザイン)

今回は、1BOX車カスタマイズショップ11社が集まった「ワンボックスネットワーク協同組合」の代表理事を務める、ハイエースのスペシャリスト菅野勝明氏(ティピーアウトドアデザイン)に、ハイエースのボディサイズのバリエーションとメリット・デメリットについて解説してもらった。第1弾は、「標準ボディ編」だ。

標準ボディ・ロールーフ

標準ボディ・ロールーフ

ハイエースのラインナップ中、もっとも町でよく見かけるスタンダードなモデルが、標準ボディ・ロールーフ(全長4695×全幅1695×全高1980mm)だ。その実力(機動性・積載性)は、工具や資材を積んで毎日現場を駆け回る“職人の仕事グルマ”として多く愛用されていることからも証明されている。

「標準ボディ・ロールーフは4ナンバーの小型貨物車登録で、サイズ的には5ナンバーのミニバンと同等です。最大のメリットは、ボディサイズがコンパクトで、運転に自信のない初心者や女性、年配ドライバーでも気軽に乗り回せること。同クラスのミニバンとは比べ物にならないほどの、広大な室内空間も魅力です。買い物や子どもの送迎などの普段使いから週末のレジャーまで、マルチに使えるのがポイントですね」(ティピーアウトドアデザイン菅野氏/以下同)

標準ボディ・ロールーフの側面

ハイエースでもっともコンパクトなモデル標準ボディ・ロールーフは、キャンピングカーのベース車両にも用いられているが、機動性と居住性は相反する要素。そこには、明確なメリットとデメリットが存在する。

「キャンピングカーのベースとして、“乗りやすさ”は最大の武器です。5ナンバーサイズのミニバンと同じような感覚で気軽に運転できて、一般的な駐車場の白線内に余裕をもって収まり、全高が低いので高さ制限のある自走式立体駐車場にも入れる。レジャーオンリーではなく、ファーストカーとしてあらゆる用途に使うことができます。あとは、スマートキーやセーフティセンスなどの装備が充実した、上級グレードのS-GLが選べること。クルマとしての性能や快適性を重視する人にとって、これは大きなメリットだと思います」

標準ボディ・ロールーフの室内空間

機動性や装備面で大きなメリットがある半面、コンパクトサイズならではのデメリットも。キャンピングカーとしての最大のデメリットは、やはり室内空間の狭さだ。

「ワイドボディのハイエースと比べると、室内空間はかなり狭くなりますね。ロールーフで天井が低いので、車内で立って歩くことはできないし、上部に収納スペースを設けることもできない。8ナンバーのキャンピング車として登録するには大がかりな加工が必要なため、一般的には4ナンバーの小型貨物車登録のままで、車検は1年ごとになります」

標準ボディ・ロールーフのリア

そうしたメリット・デメリットを踏まえると、標準ボディ・ロールーフベースのキャンピングカーは、どのようなユーザーに合っているのだろうか?

「装備がシンプルなぶん価格がリーズナブルなので、手軽にキャンピングカーを楽しみたい人にお勧めです。キャンピングカーをファーストカーとして使いたい人、普段使いメインでたまにレジャーで使用する人にもピッタリですね。室内空間は、夫婦+ペットで気軽に旅やキャンプを楽しむのにちょうどいい広さ。ファミリー4人が車内で就寝するには少し狭いので、家族で使用する際はキャンプ場でテントを併用して就寝スペースを増やすなどの工夫が必要になると思います」

標準ボディ・ロールーフの架装例
トラボイH200V(ティピーアウトドアデザイン)
価格:4,235,000円(車両持ち込み148万5000円~)

トラボイH200V

2列目に1200mm幅の3人掛けFASPシート、3列目に2人掛けの簡易シートを搭載したシンプル仕様。セカンドシートを前向きにすれば乗車定員5名が前向きに座って快適に移動でき、シートを後ろ向きにすれば最大5名でテーブルを囲める。

トラボイH200Vのベッド展開

シートをフラットに展開してリアのマットを組み合わせると、長さ2750mm×最大幅1200mmのベッドスペースになる。リアの上段には、長さ1500mm×幅1350mmの子供用ベッドを装備。小さな子供のいるファミリーユーザーにも対応する。

トラボイH200Vのリアのマット

標準ボディ・ハイルーフ

標準ボディ・ハイルーフ

ハイエースの標準ボディには、全高2240mmのハイルーフ車もラインナップされていて、数は少ないがキャンピングカーのベースとしても採用されている。全高が高いため純正だと1ナンバーの普通貨物車登録になるが、容易な加工で8ナンバーのキャンピング車登録が可能なので、ベース車としての利用価値は高い。

標準ボディ・ハイルーフの天井

「標準ボディ・ロールーフのメリットである機動力はそのままに、居住性を大幅に高められるのが最大のメリット。ロールーフと比べて圧倒的に室内高が高いのはもちろん、ワイドボディのミドルルーフ車と比べても天井がかなり高くなっています。加工は必要ですが比較的容易に8ナンバー登録することができ、ハイエース最大サイズのスーパーロングと同じ内装レイアウトをダウンサイジングして作ることもできます。全長・全幅がコンパクトなので運転がしやすく、ハイルーフならではの開放的な居住空間も実現できる。キャンピングカーのベースとしてはマイナーですが、もっと人気が出てもいい車両だと思います。

デメリットは、上級グレードS-GLの設定がなく、選べるのがベースグレードのDXのみで、車両自体の装備がチープなこと。クルマとしての性能にこだわる人は我慢しなければいけない部分もあると思いますが、標準ボディの機動性とハイルーフの居住性を両立したいなら、とてもいいベースだと思いますよ」

アクティブ派に最適なハイエース・標準ボディ

アクティブ派に最適なハイエース・標準ボディ

今回は、5ナンバーミニバンと同等サイズの「ハイエース・標準ボディ」について解説した。ロールーフとハイルーフで性格は異なるが、運転に自信のないドライバーでも気軽に乗れること、ファーストカーとして使えることが共通のメリット。リーズナブルにキャンピングカーライフを楽しみたいライトユーザーから、街中でもガンガン使いたい足グルマ派、クルマ旅の機動性を重視するアクティブ派、テントも併用するアウトドア派まで、幅広いスタイルにマッチする魅力的なベース車両だ。

次回は、バンコンのベース車両としてもっともポピュラーな、ハイエースの「ワイドボディ」について詳しく解説する。

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

キャンピングカーライター一覧へ

キャンピングカーの選び方
, , ,

レンタルキャンピングカーネット