リチウムイオンバッテリー搭載車 日産NV350キャラバン“グランピングカー”

キャンピングカー最新情報

年々高まるエアコンと電子レンジのニーズ

 キャンピングカーは、ガス、電気、水道設備など家庭と同じようなライフラインを備えることの多い車両である。
 近年、そのなかで電装機器に対するニーズが非常に高まってきた。
 その理由のひとつに、エアコンへの依存度が高くなってきたことが挙げられる。日本の夏は年々高温多湿化傾向を強めており、昔なら“贅沢品”と目されたキャンピングカーのルームエアコンが、今や必要な装備品のトップに上がらんばかりの勢いを見せてきた。

 また、電子レンジも今では重要な装備品の一つになっている。
 かつてキャンピングカーの遊び方がキャンプ場に限られていた時代は、みな車内からガスバーナーや炭火コンロを持ち出し、オーニングの下でバーベキューなどを楽しんでいたが、現在は、キャンピングカーも普通の観光旅行や温泉めぐりの“足”という性格を強めており、食材を手に入れたときの調理も電子レンジで済ませるようになってきた。

エアコンをはじめ豊富な家電製品を使える
エアコンをはじめ豊富な家電製品を使える

 このような傾向が強まってくると、問題になるのは電気の供給である。
 これまで、キャンピングカー旅行中に電気を必要としたときは、走行充電によってサブバッテリーに貯えられた電気を小出しに使うか、キャンプ場に泊まって100VのAC電源を引き込むか、もしくは発電機を焚くという方法が一般的だった。

 しかし、前述したように、電気への依存度が増えてくると、既成の電装システムでは間に合わなくなってくる。
 特に、エアコンや電子レンジという突入時に高負荷のかかる家電は、たとえキャンプ場でAC電源を引き込んだとしても、供給アンペア数が足りずに使えないことが多い。

 そのような状況で威力を発揮するのが発電機であったが、騒音と排ガスを伴うため、キャンプ場では原則的に使用禁止の場所が多く、公共の駐車場で車中泊する場合でも、発電機の騒音に神経質な人々が増えてきたため、どうしても使用時間などが制限されてしまう。

リチウムイオンバッテリーは何がすごいのか?

 そこで、近年、発電機やAC電源の供給に頼らずに電気を確保するような電装システムがあちこちでトライされるようになってきた。
 たとえば、高性能バッテリーとソーラーチャージャーを組み合わせた電装技術などは、かなり緻密なシステムを組んだメーカーも出てきており、それなりの成果を上げたといっていいだろう。
 しかし、ソーラーシステムの精度をいかに上げようとも、そこで得られた電気エネルギーをバッテリーで貯えるには限りがある。いくら高性能バッテリーを用意しても、その蓄電容量に限界があるために、まったくの走行充電なしに2日も3日もエアコンを使い続けることは不可能に近い。

 このほど日産自動車が発表した「NV350キャラバン“グランピングカー”」(キャラバン・キャンピング特装車ワイドボディ)は、まさにその問題を解決するために企画されたキャンピングカーといってよい。
 この車も、基本的には、バッテリーに蓄電した電力をインバーターを介して100Vに変換し、それによってエアコン、電子レンジ、冷蔵庫などを駆動させるという方式には変わりないのだが、バッテリー自体が根本的に違う。従来の鉛バッテリーとは異なるリチウムイオンバッテリーが搭載されているのだ。

 このリチウムイオンバッテリーは、従来の鉛バッテリーに比べて次のような特徴がある。

 (1) 重量が軽い
 (2) 充電効率がいい
 (3) 発電容量が大きい
 (4) 寿命が長い

電源供給部
電源供給部


 このような数々のメリットを持ち、一度充電しておけば、電源供給のまったくない環境でも、エアコン、電子レンジ、冷蔵庫、IH調理器、テレビ、DVDプレイヤー、冷蔵庫といった家電製品を2泊3日から3泊4日ぐらいまでストレスなく使うことができる。
 それだけではない。
 今回日産が組んだバッテリーシステムでは、総電力量12kWhのうち、1.5kWを出力するバッテリーを3系統に分けているため、一つの系統で消費電力の多いエアコンを回したまま、もう一つの系統で、同じように消費電力の多い電子レンジを駆動させたりすることもできるのだ。

27億kmの走行テスト(?)を経験したバッテリー

 このような魅力にあふれるリチウムイオンバッテリーだが、実はキャンピングカーに採用されるのはこれがはじめてではない。同バッテリーを搭載したキャンピングカーはすでにいくつかの架装メーカーの手によって商品化されており、実際にユーザーの手元に渡っている。
 ただ、リチウムイオンバッテリーがキャンピングカーに搭載されるようになってからまだ数年しか経っておらず、商品的な安定性がどのくらい保証されるのか、現状ではそれを確かめる実証的データが乏しいのだ。

 しかし、このたび日産自動車が発表したこの「NV350キャラバン“グランピングカー”」のリチウムイオンバッテリーは、電気自動車の「日産リーフ」に採用されたものと同じだという。
 リーフは現在、世界で23万台走っており、それらを合わせた走行距離はおよそ27億km。つまり、「今回のキャラバンに採用されたリチウムイオンバッテリーは27億kmの走行テストを経たと見なすことができる」と日産の説明員はいう。

 そのため、日産自動車ではこのバッテリーを搭載したキャンピングカーに対して保証を付けることに踏み切った。保証の詳細はまだ不明ながら、バッテリー部分の点検、故障、メンテナンス、リコールなどもすべて日産自動車が責任をもって負うという。
 このことからも、日産がこのリチウムイオンバッテリーを搭載するキャラバンシャシーにそうとうな自信を持っていることが伝わってくる。

 ただし、まだ解決課題が残っている部分もある。
 それは、走行充電ができないことだ。
 走行充電を可能にするシステム構築も企画されたが、そこまで進めてしまうと機構が複雑になり、コストも膨れ上がるために、今回は見送られた。
 したがって、ユーザーが充電する場合は、家庭のコンセントを使うか、もしくはキャンプ場やRVパークなどでAC電源を借りて行うことになる。
 充電完了までには8時間程度かかるが、一度充電してしまえば、2~3泊ぐらいならまったく問題なく家電製品を使うことができる。

移動オフィスとして、エアコン、パソコン、コピー機も使い放題

オフィスカーとしての用途も広がる
オフィスカーとしての用途も広がる

 では、このバッテリーを搭載した「キャラバン“グランピングカー”」は、ユーザーのキャンピングカーライフをどのくらい豊かにしてくれるものなのだろうか。

 

 これまで日産車ベースのキャンピングカーをつくり続けてきた「日産ピーズフィールドクラフト」の畑中一夫社長は、次のように語る。

 「まずアウトドアで使うときは、100Vのアウトプットがありますから、アンプなどをつなげば野外コンサートなどに利用できるようになります。
 また、山奥などの建築現場で工事を指揮したりするときの拠点にもなるでしょうね。
 一方タウンユースとして使うなら、“移動オフィス”という使い方もあります。エアコンが自在に使えますから、夏場は仕事に出向いたアスファルトの駐車場が、たちどころに快適な商談スペースや休憩室に早変わりします。
 冷蔵庫で氷を作ることもできますので、景色の良い駐車場に停めておけば、夜はバー代わりにお客様を接待できます」

 日産としては、この車を17年度のうちに実売に漕ぎ付ける予定だという。各架装メーカーへデリバリするときの価格はまだ未定だが、ベース車両の価格に、バッテリー代として150万円程度を載せたものに収まりそうだ。
 国産キャンピングカーがまた一つ大きな飛躍を遂げそうなベース車の誕生である。

リチウムイオンバッテリー スペック

【総電圧】 360V
【定格出力】 2.0kW
【総電力量】 12kWh
【充電】 単層/交流/100V/50-60Hz
【充電時間】 8時間
WRITER PROFILE
町田厚成
町田厚成 (まちだ・あつなり)

1950年東京生まれ。 1976年よりトヨタ自動車広報誌『モーターエイジ』の編集者として活躍。自動車評論家の徳大寺有恒著 『ダンディートーク (Ⅰ・Ⅱ)』ほか各界著名人の著作の編集に携わる。 1993年『全国キャンプ場ガイド』の編集長に就任。1994年より『RV&キャンピングカーガイド(後のキャンピングカースーパーガイド)』の編集長を兼任。著書に『キャンピングカーをつくる30人の男たち』。現キャンピングカーライター。

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