「形のないモノから快適を」ハイエースキャンピングカーの走りを変えたユーアイビークル

メーカー・販売店インタビュー
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「形のないモノから快適を」ハイエースキャンピングカーの走りを変えたユーアイビークル

キャブコンオーナーは、乗り心地を気にしている人がたくさんいます。車内生活するキャビンスペースが大きいので、横風の影響を受けたり、カーブでフラついたり、ひやりとした経験は少なからずあるのではないでしょうか。

快適な室内空間であっても、移動で不快な思いをしては、キャンピングカーライフを楽しめません。そこで、注目されるのが、足回りを改善する方法。各社からいろいろな対策パーツが発売されています。

そんなメーカーの1つに、カムロードのスタビライザーとショックを発表したユーアイビークルがあります。キャンピングカーの世界では、あまり知られていないかもしれませんが、ハイエースの世界では有名な存在なのです。

いちはやくネットでの中古車販売をスタート

ユーアイビークル大阪店

ハイエースのパーツビルダーとして有名なユーアイビークルですが、スタートは中古車の販売だったそうです。しかも、普通自動車以外に、軽四ベースの移動販売車や福祉車両を扱っていました。

特に移動販売車両は特殊なクルマだったので、ネットでの販売に力を入れていたといいます。事業を始めたのは2000年頃で、まだ、クルマのネット販売が盛んではなかった時代です。

それでも、移動販売車は必要としている人が必ずいて、インターネットを通じて、全国から問い合わせが入ったといいます。特殊なクルマだったので、ネットに優位性があったようです。

ベッドをキット化して通信販売

その後、ユーアイビークルとして起業したのが2004年でした。ハイエースの200系が出てきた頃です。サーファーがハイエースを使うことに注目して、アシストグリップ、ルームバー、ベッドなど、車内で快適に過ごすギアを作り始めました。

何もない、ただの荷室を、居住するスペースとして利用するパーツは人気に。当時はベッドを大工に頼んで作ってもらう人もいたほどです。そんな時、キット化して、通販しているとは、ユーアイビークルは早かったですね。しかも、これまでの、移動販売車の販売経験を活かして、ネット通販を活用したのがポイントでした。

ユーザーが使うことを考えた本物の追及

ユーアイビークル大阪店店内

ユーザーの多くがサーファーなどで、クルマをトランポにして、レジャーを楽しんでいる人ばかりでした。そんなユーザーから乗り心地の話を聞くようになったといいます。

そして、彼らが遊び場へ行く時に感じた、不快感、不安感を解決するために、足回りのパーツ開発がスタートしたのです。

ユーアイビークルの基本的なコンセプトは「形のない場所に、これがあったらいい、というモノを作り出す」。パーツ交換してドレスアップするのではなく、何もない場所にパーツを取り付けて、車内での快適化を目指したのでした。

リアの荷室空間にベッドを作ったのも、コンセプト通りといえるでしょう。同じように、足回りのパーツ開発でも、純正では取り付けられていない、リアスタビライザーを開発して、走りを安定化させるなど、意欲的な製品開発が行われています。

さらに、スタイリングだけのカスタマイズでは、既存のユーザーが納得しません。実際に、長距離、悪路を走る、リアルなユーザーが納得しなければいけません。

ユーザーが納得する足回りを開発するために、何回も作り直し、試走を繰り返したといいます。開発陣も「絶対に妥協したくない」という思いが強く、製品が完成するまでに、時間がかかりました。

コンプリートカーからキャンピングカーの世界に

ユーアイビークルホームページ

「妥協しない」パーツ作りの先に見えてきたのが、自分たちの技術を詰め込んだ、コンプリートカーでした。快適な走りを実現する足回りを組み込み、車内はベッドや荷物の収納場所などを確保。ユーアイビークルのパーツだけで、1台のクルマが完成したのです。

その頃から、キャンピングカー業界も視野に入れるようになったといいます。車重の増えるキャンピングカーに、自分たちが開発してきた足回りを組み込む。多くのユーザーが満足してくれたパーツだけに、キャンピングカーであっても使えると確信したのでした。

「普通の走り」にするだけ

ユーアイビークルのスタビライザー

キャンピングカーショーでは、ユーザーの不満点を聞いて、改善できるメニューを紹介しています。話をしてみて、乗り心地を気にしている人が多いことに驚いたそうです。

キャンピングカーユーザーが目指すところは、普通に曲がって、まっすぐ走る、ただそれだけでした。だからこそ、パーツを組み込んだユーザーには「普通に走るようになった」と感じてほしいといいます。

カムロードユーザーへ向けた商品開発

乗り心地を改善したカムロード

キャンピングカーショーで快適な走りへ改善することをアピールしていると、キャブコンのベース車両、カムロードに乗っている人からも、声をかけられることが多くなってきました。

もしかしたら、乗り心地を気にしている人は、ハイエースよりも多いのでは。そう思って、試しに、カムロードベースの車両に乗ってみると、不安定な足回りに驚き! 新たなユーザーのために、カムロード用の足回りを開発しなければ、と感じたといいます。

形のない場所に快適を作る

カムロードに取り付けたスタビライザー

ノーマルのカムロードにはリアスタビライザーが付いていません。そこで、リアスタビライザーを装着して、走りを改善することに。ハイエースでやってきた手法です。しかし、車両重量が、これまで経験してきた数値とはまったく違うものでした。

そこで、ハイエースでのデータを基に、数値を割り出し、試作品を作ることにしました。ある程度の数値は算出されるのですが、強度をあげるだけでは、耐久性が落ちたり、製品としての価値が低くなってしまうので、ギリギリの調整が繰り返されたといいます。

ユーアイビークルのパーツは国内生産にこだわっています。品質を追求して、実際に使うユーザーのことを考えて、信頼性を優先させているからです。さらに、妥協のない製品作りをするには、こだわりを形にできる、国内生産しかないといいます。

カムロードの新しい走りを実現

ユーアイビークルのパーツ

長い開発期間を経て、カムロードの足回りが完成。新規のリアスタビライザー、強化フロントスタビライザー、サスペンションです。これまで、大きなキャブコンが不得意とされいた、コーナリング、直進性など、大きな改善がありました。

デモカーに乗った人たちは、その違いに驚きの表情を見せるといいます。これで、カムロードのユーザーにも、自信を持って、乗り心地の改善を提案できるようになったのです。

ユーザーへの思いが形となる

ユーアイビークルのショックアブソーバー

ユーアイビークルのスタッフにとって衝撃的だったのは、「風が強い区間は高速を降りる」という話を聞いた時だったといいます。せっかく、レジャーの道具として、楽しさを求めて購入したのに、そんな使い方をしているのとは、気の毒に感じたといいます。

そこで、不満を感じているユーザーを少しでも減らして、みんなに楽しんでもらいたい。創業当時のサーファーたちが、快適にサーフィンを楽しめるアイテムを開発してきたように、形にないものを作って、快適を感じてほしい、そう強く思ったそうです。

今後は次なる展開を考えているといいます。新しいパーツが生まれて、さらにキャンピングカーの乗り心地が良くなっていくのが楽しみですね。

WRITER PROFILE
渡辺圭史
渡辺圭史(わたなべ・けいし)

1971年東京生まれ。アウトドア好きな編集者、そして、算数が好きだったライター。アウトドア用品メーカー、出版社を経て、キャンピングカー専門誌編集長に。現在はフリーとして、いろいろなメディアにて執筆中。アウトドアをキーワードに、より楽しいライフスタイルを求めてゆるりと奮闘中。最近気になっているワードは、旅、ミニマリスト、車中泊。趣味はコンパクトな旅とモノづくり。

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