
日本特種ボディー(NTB)から、新型キャブコン「HAYATE(ハヤテ)」がリリースされた。最大の特徴は、2024年11月に発表された新型キャンピングカー専用シャシー「いすゞ・Travio(トラヴィオ)」をベースにしていること。車両総重量3.5t以上のキャブコンは準中型免許が必要になるが(2017年3月12日以降の免許取得者)、ハヤテは車両総重量3.5t未満なので普通免許で誰でも運転できる。もちろん、AT限定免許でもOK。初心者でも気軽に乗れる敷居の低さが、ハヤテの最大の魅力だ。

ボディは、全長4930mm×全幅1770mm×全高2930mmのコンパクトサイズ。全幅は1800mmを切っており、3ナンバーの大型ミニバンよりもスマートだ。最小回転半径4.4mの取り回し性と相まって、都市部の狭い道でもストレスなく運転できる。
本記事では最新キャブコン・ハヤテの真価を体験するため、埼玉の秩父・長瀞エリアでクルマ旅を敢行!ハヤテの走行性能と居住性を、1泊2日でじっくりと検証してきた。
抜群の取り回し性で快適クルマ旅


一般的なキャブコンは全幅2000~2100mm前後のモデルが多いが、ハヤテの全幅は1770mm! 車体をフロント正面から見ると、ベース車・トラヴィオのキャブとリアの居住用シェルが、ほぼ段差のないフラットな形状になっていることがわかる。左右のミラーもシェルで視界がさえぎられないため、後方視認性は抜群。狭い道でもスイスイ走れるスリムボディが、ハヤテの最大のアドバンテージだ。

関越道・花園ICで高速道路を降り、下道を走って秩父エリアへ。毎年12月に行われる秩父夜祭で有名な「秩父神社」は、2100年の歴史を持つ秩父地方の総社。関東有数のパワースポットとしても人気があり、1年を通して全国から大勢の参拝者が訪れる。

サクサクでジューシーなひれかつを、しょうゆベースの特製ダレにくぐらせてご飯にのせた「わらじかつ丼」は、秩父の名物グルメ。

長瀞は、都心から約2時間でアクセスできる自然豊かなエリア。もっとも有名なのは、約500mにって岩石が畳状渡に露出した国の特別天然記念物「岩畳」。長瀞エリアを流れる荒川ではラフティングやライン下りが楽しめ、年間300万人の観光客が訪れる。

長瀞駅から徒歩2分の場所にある「有隣」の豚みそ丼は、わらじかつ丼と並ぶ秩父の名物グルメ。秘伝のみそだれに漬け込んだ豚肉を丁寧に炙り上げ、ご飯の上に贅沢にのせた逸品だ。

大型キャンピングカーで観光地巡りをする際は、駐車場所に困るのがデメリット。その点、全長5m未満・全幅1.8m未満のハヤテは、観光駐車場やコインパーキングに問題なくクルマを止められる。コンパクトボディの恩恵でストレスなく観光を楽しめるのが、ハヤテの魅力だ。
ハヤテの走行インプレッション

トラヴィオのパワートレインは、120馬力の1.9ℓディーゼルエンジンと6速ATの組み合わせ。排気量と馬力だけを見ると「キャブコンにはパワー不足?」と感じるかもしれないが、ディーゼルならではのビッグトルクで走りは非常に軽快。320N・mの最大トルクは、カムロードの2.8ℓディーゼルターボエンジン(300N・m)を上回るスペックだ。

上級グレード専用設計の内装は、見た目のみならず快適性も抜群だ。クッション性・ホールド性に優れたシート形状で、ロングドライブの疲労感を軽減。電動パーキングブレーキやフルオートエアコンなども標準装備される。

走り出して感じるのは、とにかく運転がしやすいこと。アイポイントが高く前方視界が開けているので、キャブコン初心者でも構えることなく気軽に乗り回せる。高速走行時の動力性能も、キャブコンとしては申し分ないレベル。80㎞/hから100㎞/hの加速も、1.9ℓエンジンとは思えないほどスムーズだ。上級シャシーのビーカムと比べるとハンドルが軽く横風に弱い印象を受けるが、そもそもビーカムとは車格が違うのでこれは致し方ないところ。乗り心地もよく、動力性能も安定性もキャブコンとしては必要十分と言っていいだろう。

ディーゼル車らしい力強い低速トルクで、勾配のある山道もグイグイと登り、6速ATの動作も非常にスムーズだ。急カーブでは想像よりもロールが大きいと感じたが、これは車両の特性と道路状況に合わせた運転を心がければいいだけの話。キャブコンにありがちな路面からの突き上げも気にならず、運転中にストレスを感じることはなかった。

スリムボディの恩恵は、あらゆる場面で体験できる。都市部や山道の走行でも道幅を気にすることなくスイスイ走れ、狭い道で対向車とすれ違う際も過剰に気をつかう必要はない。普通車感覚で気軽にドライブできるのは、初心者やアクティブな旅を好む人にとって何よりのメリットだ。
ちなみに、今回の旅の走行距離は240㎞で、燃費は10.5㎞/ℓ。山道走行が多く、燃費を気にせずにアクセルを踏んでいたので、丁寧な運転を心がければさらに燃費は伸びるはずだ。ディーゼル車の燃料はガソリンよりも安い軽油なので、低燃費との相乗効果で燃料代はかなり安く上がる。
豊かな自然に囲まれたRVパーク


宿泊地は、埼玉県秩父郡にあるRVパークヘリテイジ美の山。サイトは6m×10mの広々サイズで、大型キャンピングカーやトレーラーも安心して利用できる。電源サイトも完備され、区画内であればサイドオーニングの展開やイス・テーブルの設置もOK。豊かな自然に囲まれたロケーションで、ゆったりとした時間を過ごせる。


入浴は、リゾートホテルヘリテイジ美の山の大浴場を利用。大きな窓から秩父の大自然を眺めながら、四季の薬湯風呂を堪能できる。事前に予約をすれば、ホテル内のレストランで朝食や夕食を味わうことも可能だ。
使いやすさに特化したインテリア

室内空間は、コンパクトボディからは想像もできないほど開放的。室内高は1910mmで、大人でも立ったまま生活できる。室内中央に対面ダイネット、その後方にキッチンとマルチルーム、最後部に2段ベッドを配したファミリー向けレイアウトは、使い勝手も抜群だ。

エントランスドアの上部には、家庭用エアコンを標準装備。RVパークやオートキャンプ場の外部電源で稼働できるほか、オプションの300Ahリチウムを装備すれば、バッテリーでの長時間稼働も可能になる。

室内左手には、ガラスカバー付きシンクをセットしたキッチンキャビネットを完備。キッチン上部の棚には、電子レンジも標準装備される。

エントランスドアの左手には、88ℓ冷蔵庫をビルトイン。ドリンクや食材、要冷蔵の土産物などを安心して保管できる。

スライド式バンクベッドは、大人3名が就寝できる長さ1950mm×幅1600mmの広々サイズ。

最後部には、チャイルドサイズ(1650×800mm)の2段ベッドを装備。ベッドの下はカーゴスペースになっており、下段マットを外せば背の高い荷物の積載も可能となる。

キッチンの向かい側には、マルチルームを完備。トイレや収納庫など、幅広い用途に活用できる。

今回の旅でハヤテを実際に使ってみて、走る道・止める場所を選ばない抜群の機動力と、ファミリーユースにも対応する室内空間を存分に体験することができた。トラヴィオベースのハヤテは、AT限定普通免許で誰でも気軽に運転できるのが最大のウリ。キャンピングカー初心者からベテランまで、幅広いユーザーが満足できるキャブコンに仕上がっている。
HAYATE(ハヤテ) 諸元
- ベース車
- いすゞ自動車 Travio
- エンジン
- ディーゼル1.9L
- 駆動方式
- 2WD
- 車体サイズ
- 全長4,930mm/全幅1,770mm/全高2,930mm
- 定員
- 乗車定員7名/就寝定員6名(大人5名+子供2名)
- 価格
- ¥9,989,511~